弁理士試験の難易度・合格率は?【試験形式別に紹介】
弁理士資格を取得するためには「短答式筆記試験」「論文式筆記試験」「口述式試験」の3つすべてに合格する必要があります。ここでは、最終的な弁理士試験の合格率に加え、各形式の合格率についてそれぞれ見ていきましょう。
弁理士試験|最終合格率
まずは、短答式・論文式・口述式すべてに合格した最終合格者の人数と合格率を年度別に見てみましょう。
実施年 |
志願者数 |
最終合格者数 |
合格率 |
令和5年 | 3,417人 | 188人 | 6.1% |
令和4年 | 3,558人 | 193人 | 6.1% |
令和3年 | 3,859人 | 199人 | 6.1% |
令和2年 | 3,401人 | 287人 | 9.7% |
令和元年 | 3,862人 | 284人 | 8.1% |
平成30年 | 3,977人 | 260人 | 7.2% |
平成29年 | 4,352人 | 255人 | 6.5% |
平成28年 | 4,679人 | 296人 | 7.0% |
平成27年 | 5,340人 | 319人 | 6.6% |
平成26年 | 6,216人 | 385人 | 6.9% |
平成25年 | 7,528人 | 715人 | 10.5% |
平成24年 | 7,930人 | 773人 | 10.7% |
平成23年 | 8,735人 | 721人 | 9.1% |
平成22年 | 9,950人 | 756人 | 8.3% |
平成21年 | 10,384人 | 813人 | 8.5% |
平成20年 | 10,494人 | 574人 | 5.9% |
出典:特許庁「弁理士試験」
合格率は約6~10%となっており、弁理士試験の難易度の高さがわかります。合格を勝ち取るためには、3つの試験に合格できるよう計画的・継続的に対策を進める必要があります。
弁理士試験|短答式試験の合格率
弁理士試験は「短答式試験→論文式試験→口述式試験」という順で受験します。まず短答式試験に合格しなければ、論文式試験や口述式試験は受験できません。
関連記事:弁理士とは|仕事内容や資格試験の難易度、必要な勉強時間、年収の目安などまとめて紹介!
弁理士試験の第1関門となる短答式試験の合格率は、以下のとおりです。
実施年 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
令和5年 | 2,714人 | 337人 | 12.4% |
令和4年 | 2,754人 | 284人 | 10.3% |
令和3年 | 2,686人 | 304人 | 11.3% |
令和2年 | 2,259人 | 411人 | 18.2% |
令和元年 | 2,895人 | 531人 | 18.3% |
平成30年 | 3,078人 | 620人 | 20.1% |
平成29年 | 3,213人 | 287人 | 8.9% |
短答式試験の合格率は約10%〜20%となっており、第1関門を突破するだけでも難易度が高い試験だとわかります。ただし、1度合格すれば2年間は免除を受けられるため、まず短答式に絞って対策するという選択も可能です。
弁理士試験|論文式筆記試験の合格率
次に論文式筆記試験の合格率を見ていきましょう。
実施年 | 受験者数(必須) | 受験者数(選択) | 合格者数 | 合格率 |
令和5年 | 621人 | 132人 | 179人 | 28.0% |
令和4年 | 655人 | 144人 | 179人 | 26.3% |
令和3年 | 805人 | 180人 | 211人 | 25.1% |
令和2年 | 1,039人 | 231人 | 265人 | 25.0% |
令和元年 | 1,070人 | 224人 | 279人 | 25.5% |
平成30年 | 1,070人 | 213人 | 261人 | 23.9% |
平成29年 | 917人 | 194人 | 229人 | 24.2% |
論文式試験は短答式試験と比べて合格率が高く、25%前後となっています。しかし、これは合格率約10%~20%の短答式試験に合格した人のなかから、さらに25%の人しか合格できないということです。短答式試験も含めて考えれば、論文式試験合格のハードルは非常に高いといえます。
弁理士試験|口述式試験の合格率
最後に、口述式試験の合格率を見ていきます。
実施年 |
受験者数 |
合格者数 (うち免除者) |
合格率 |
令和5年 | 194人 | 188人(5人) | 94.3% |
令和4年 | 194人 | 193人(6人) | 96.4% |
令和3年 | 215人 | 199人(5人) | 90.2% |
令和2年 | 282人 | 287人(9人) | 98.6% |
令和元年 | 295人 | 284人(2人) | 95.6% |
平成30年 | 268人 | 260人(8人) | 94.0% |
平成29年 | 254人 | 255人(5人) | 98.4% |
口述式試験の合格率は非常に高く、9割以上の人が合格しています。論文式試験のあと、期間的な余裕があるため対策しやすい点も合格率の高さにつながっていると考えられます。
弁理士試験の難易度|他資格との比較
弁理士試験は、合格率が約6〜10%と難易度の高い試験であることがわかりました。弁理士試験の合格には、一般的に「3,000時間」の勉強が必要だといわれています。
関連記事:弁理士試験合格までの勉強時間目安と効率のよい学習法
ここでは、弁理士に関連する資格やその他の国家資格と比較しながら、弁理士試験の難易度を紹介します。
【難易度比較】弁理士と知的財産管理技能検定2級
知的財産管理技能検定とは、その名のとおり知的財産を管理する技能の習得レベルを測定・評価する国家試験です。
知的財産を扱う点において弁理士試験と似ている部分もありますが、合格までに必要な勉強時間は40~50時間程度とされており、難易度は低いです。知的財産管理技能検定2級の試験は学科と実技に分かれており、それぞれ合格率は30~50%ほどとなっています。
【難易度比較】弁理士と弁護士
弁護士は社会生活において起きる事件や紛争に対し、適切な予防方法や対処方法、解決策をアドバイスする法律の専門家です。
弁護士試験(司法試験)の合格率は20~40%ほどと低くありませんが、そもそも受験資格として法科大学院を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があります。司法試験予備試験の合格だけでも3,000~8,000時間の勉強が必要とされているため、弁理士よりも難易度は高いといえるでしょう。
【難易度比較】弁理士と司法書士
司法書士は、法務局や裁判所、検察庁に提出する書類の作成や登記などを行うための国家資格です。
司法書士試験の合格率は約4~5%と弁理士試験よりも厳しい数字になっていますが、必要な勉強時間は弁理士試験と同じ約3,000時間といわれています。
【難易度比較】弁理士と税理士
税理士は、確定申告・青色申告用の税務書類の作成代理や、税務相談への対応などを行う税務のスペシャリストです。税理士試験の合格率は15~20%ほどと弁理士試験よりも少し高めです。しかし、試験を受けるためには日商簿記1級合格などの受験資格を満たす必要があります。
税理士試験の合格に必要な勉強時間は、弁理士とほぼ同程度の2,500~3,000時間が目安とされています。
【難易度比較】弁理士と公認会計士
公認会計士は監査・会計のスペシャリストとして、企業や学校法人、公益法人などの監査・会計・税務・コンサルティングなどを担います。
公認会計士試験の合格率は7〜10%ほどで、弁理士試験と同等レベルです。しかし、公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は3,000~5,000時間ほどといわれています。
【難易度比較】弁理士と行政書士
行政書士は、国や地方公共団体の諸機関に提出する許認可等の申請書類作成や提出手続き代理などを行うための国家資格です。
行政書士試験の合格率は8〜15%ほどとなっており、合格に必要な勉強時間は500〜1,000時間ほどとされています。難関資格のなかでは比較的短い期間で合格を目指せる資格だといえます。
【難易度比較】弁理士と社労士(社会保険労務士)
社労士は労働・社会保険の問題の専門家として、書類作成や提出代行、労働関係紛争の解決手続きの代理、労務管理、労働・社会保険の相談などを行います。
社労士試験の合格率は5〜8%ほどで、合格に必要な勉強時間の目安は800〜1,000時間ほどといわれています。必要な勉強時間は少ないものの、合格率が低く簡単な資格ではありません。
弁理士試験の難易度|合格者の特徴は?
難易度の高い弁理士試験に合格する人には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、弁理士試験合格者の年齢や性別、職業、出身校系統、平均受験回数を紹介します。
弁理士試験合格者の年齢
弁理士試験合格者の年齢の内訳は以下のとおりです。
実施年 |
10~20代 |
30代 |
40代 |
50~80代 |
令和5年 | 31.4% | 47.3% | 13.3% | 7.9% |
令和4年 | 34.2% | 36.3% | 22.3% | 7.2% |
令和3年 | 23.1% | 43.7% | 23.1% | 10.0% |
令和2年 | 21.3% | 43.9% | 21.3% | 13.5% |
令和元年 | 16.9% | 49.3% | 21.5% | 12.4% |
平成30年 | 16.5% | 47.7% | 26.5% | 9.3% |
合格者全体の6~7割ほどが10~20代または30代と若い世代であることがわかります。ただし、もっとも多いのは30代であり、後述の職業内訳からもわかるとおり働きながら弁理士資格を取得する人が多いです。
弁理士試験合格者の性別
弁理士試験の合格者の性別を見ると、男性が7割前後と多数派であることがわかります。
実施年 |
男 |
女 |
令和5年 | 63.3% | 36.7% |
令和4年 | 68.9% | 31.1% |
令和3年 | 66.8% | 33.2% |
令和2年 | 74.9% | 25.1% |
令和元年 | 73.6% | 26.4% |
平成30年 | 74.2% | 25.8% |
弁理士試験合格者の職業
弁理士試験合格者の職業は以下のとおりです。
実施年 |
会社員 |
特許事務所 |
その他 |
令和5年 | 48.9% | 33.5% | 12.8% |
令和4年 | 45.6% | 33.2% | 21.2% |
令和3年 | 48.7% | 27.1% | 24.2% |
令和2年 | 51.6% | 27.9% | 25.1% |
令和元年 | 46.1% | 34.5% | 19.4% |
平成30年 | 52.7% | 31.5% | 15.8% |
会社員が約5割、特許事務所勤務者が約3割を占めています。社会人として働きながら、特に知的財産に関わる仕事をしながら弁理士試験に挑戦している人が多いと考えられます。
弁理士試験合格者の出身校系統(理系/文系)
弁理士試験の合格者には、出身校による違いもあります。理工系・法文系・その他という区分で見ていきましょう。
実施年 |
理工系 |
法文系 |
その他 |
令和5年 | 76.1% | 18.6% | 5.3% |
令和4年 | 76.7% | 15.0% | 8.3% |
令和3年 | 76.4% | 18.6% | 5.0% |
令和2年 | 79.4% | 15.3% | 5.2% |
令和元年 | 78.2% | 17.3% | 4.6% |
平成30年 | 82.3% | 12.7% | 5.0% |
割合としては理工系出身者が圧倒的に多く、全体の8割前後を占めています。
背景として、弁理士は特許法や意匠法などさまざまな法律に精通するだけでなく、最先端の知的財産を正しく把握するために技術分野の知識を必要とすることが挙げられます。そのため、理工系の学部で培った素養を活かせる仕事なのです。
ただし、その他の系統の出身者であっても、知財コンサルティングを担ったり英語スキルを身につけたりするなど、自分なりの強みを見つけることで十分活躍が可能です。
弁理士試験合格者の平均受験回数
弁理士試験合格者の平均受験回数は、以下のとおりです。
実施年 |
平均受験回数 |
令和5年 | 2.8回 |
令和4年 | 3.4回 |
令和3年 | 3.7回 |
令和2年 | 4.0回 |
令和元年 | 4.0回 |
平成30年 | 3.7回 |
難易度の高い弁理士試験には、平均3〜4回挑戦して合格する方が多いです。社会人の受験者が多いため、まとまった勉強時間が取りづらい点も短期間での合格を妨げている要因といえるかもしれません。
しかし、初回受験で合格した人も5~15%程度おり、不可能というわけではありません。効率よく計画的に学習を進めることで、短期合格のチャンスは広がります。
関連記事:弁理士試験に1年で合格するための学習法とスケジュール
難易度の高い弁理士試験を攻略するコツ
難関資格である弁理士試験の合格を目指すなら、ただやみくもに勉強をするだけではなかなかゴールにたどりつけないでしょう。弁理士試験攻略のコツを紹介します。
まずは勉強時間を確保する
どんな資格試験もそうですが、勉強をはじめる前に、「合格するにはどれくらいの勉強時間が必要なのか?」の大まかな指標の把握が重要です。その情報が分からなければ、どれくらいの意気込みと学習量を持って勉強に臨めばよいのかつかみにくいからです。
先述した通り、弁理士試験合格に必要な勉強時間は、「3,000時間」といわれます。1年で合格を目指す場合、毎日8時間の勉強が必要です。
免除制度をうまく活用する
現代のように社会の変化のスピードが早い時代において、社会人が何年もの期間にわたって1つの資格試験の学習を行うことは容易なことではありません。
とはいえ、多くの合格者は、働きながら勉強し合格を勝ち取っています。では、どのような戦略で試験に臨んでいるのでしょうか?
戦略の1つに、弁理士試験の免除制度の活用があります。この制度をうまく利用すれば、試験の負担軽減に期待が持てます。
免除制度は、短答式試験と論文式試験(必須科目)、論文式試験(選択科目)に適用されます。
例えば、短答式試験に合格すれば、2年間この試験が免除されます。次回の試験は短答式試験を受験することなく論文式試験に挑戦できるのです。
一度論文式試験(必須科目)に合格すれば、2年間試験が免除されます。また、論文式の選択科目は、試験に受かった日から永続的に試験免除となります。さらに、論文式試験の選択科目は、免除の対象となる資格を持っていれば試験を受ける必要はありません(技術士、情報処理技術者、司法書士、行政書士など)。
★弁理士試験の仕組みと短期間で効率的に受かるコツを知りたい方はこちら
効率的に学習を進める
弁理士試験は、出題範囲が広く、そのすべてを学習するには、膨大な時間が必要になります。そのため、やみくもに勉強していては、短期間での合格は難しいでしょう。複数年に渡ってチャレンジしている受験生も多くいます。しかし、適切な学習方法を行うことで、働きながら短期間での合格も可能になります。
スタディングでは、長年にわたり、短期合格者がどのように学習しているかの研究を行ってきました。さらに、心理学、脳科学など、人間の能力向上に関する知見を組み合わせることで、だれでも短期合格者と同じように効率的に実力を高めるための独自の勉強法「スタディングメソッド」を磨き上げてきました。
弁理士講座を含む、すべてのスタディングの講座・コンテンツはこの「スタディングメソッド」に沿って自社で開発されており、従来型の紙ベースの教材よりも効率的に学べるようになっています。
弁理士講座では、主任講師の伊藤隆治が長年の受験指導経験から編み出した短答式試験合格メソッド、論文式試験合格メソッドとスタディングメソッドを融合させ、「弁理士講座合格メソッド」を誕生させました。
- 全体構造・手続きの流れを理解して学習を進める
弁理士試験合格に必要な知識量は膨大で、かなり細かい知識も要求されます。そのため、はじめから細かい内容まですべて理解しようとすると、消化不良により途中で挫折してしまう恐れがあります。スタディングでは、大きな項目から学んで全体を把握し、細かな知識は大きな項目に関連付けて合理的に知識を身につけられるようにしていきます。また、権利の発生から消滅までの手続きの流れをイメージしやすいように、図解などを利用して解説しています。 - 権利・条文・判例などの基本事項の理解を徹底する
弁理士試験の勉強は、権利のイメージを持つことができると理解が進みます。また、試験問題は、条文・趣旨・判例から出題されており、これらの基本の習得なくして合格は困難です。スタディングでは、権利のイメージを持てるように図表を用い、条文・趣旨・判例についても重要な部分を丁寧に解説しています。 - 未知の問題にも対応できる現場対応力を養成する
弁理士試験は単なる暗記の試験ではありません。試験では、暗記だけでは対応できない現場思考の問題が出題されることもあります。このような問題に試験現場で柔軟に対応できるツール(方法論)を持つことが合否にも影響します。スタディングでは、例えば、論文式対策として「15×3論文勉強法」などパターン化による現場対応型ツールを提供しています。「15×3論文勉強法」は過去に出題された問題の分析から問題文を15のパターンに分類して初見の問題が出題されてもその場で応用できる方法論を身につけることができるようにしています。 - 徹底した過去問分析に基づく目的別アウトプットで解く
受験生の中には試験に合格するために試験範囲の全てについて、丁寧に学習しようとする方もいますが、試験範囲を満遍なく丁寧に学ぶと膨大な時間が必要です。働きながら学習をしている方が多い弁理士試験においては、合格に必要な範囲に限定して学習することが合格への近道です。スタディングでは過去問分析に基づく頻出テーマに限定して解説を加えています。 - スキマ時間を活かして勉強する
勉強は机に座って行うというのが今までの学習スタイルですが、仕事をしながら、家事をしながら合格しようとする場合、物理的に机に座って学習する時間を確保することは困難です。スタディングではスキマ時間で学習できるようにスマートフォンで学習できるだけでなく動画や問題演習もスキマ時間に合わせた学習ができるように工夫しています。 - 最後まで完走する
試験で公表されているデータは、申込者数、受験者数、合格者数の数字です。しかし、実際には、受験する前に「勉強を途中でやめてしまった人」がたくさんいます。途中でやめなければ、合格する可能性が高くなります。スタディングでは、勉強を継続できるシステムを用意しております。例えば、効率的、継続的な学習をサポートする「学習フロー」(あらかじめ学習する順番が最適化されている)、「学習レポート」(進捗状況がグラフと数値で表示される)、など、IT技術を駆使した学習支援機能が充実しています。
まとめ
本記事では、弁理士試験の難易度や合格率について、ほかの国家資格との比較や合格者の特徴をまじえて紹介しました。弁理士試験の合格率は約6~10%と低く、難易度の高い国家資格です。しかし、効率よく対策ができれば1~2年といった短期での合格も不可能ではありません。