「弁理士は食いっぱぐれる」といわれる理由とは? ここではよく挙がる4つの理由について紹介します。
徐々にではありますが、弁理士の登録人数は増えてきています。
登録人数が増加し続ければ、弁理士が飽和状態に陥り、仕事がなくなる可能性があると考える方もいるでしょう。
特に2001年の弁理士法の改正前後から増加が顕著になっており、2003年以降は毎年400~500人ほど増加しています。
実際、2008年は8,000人程度でしたが、2013年には10,000人を超え、現在(2023年9月末時点)では11,824人まで増加しています。
また、直近10年では若年層の弁理士の人数が増えていることも注目すべき点といえます。
日本の特許出願件数は、リーマンショックなどの影響で2008年後半頃に大きく減少し、その後、2011年まで緩やかに減少し続けています。
2012年に一度は微増したものの、2013年~2015年の期間は再び減少に転じ、以降はほぼ横ばいの状態でした。
しかし、2018年からまた少しずつ減り続け、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、大きく減少しています。
特許の出願手続きや書類作成は弁理士にとって主要な業務の一部なので、出願件数が減少すれば需要の低下につながることも考えられます。
弁理士は資格試験の難易度が高く、合格するには多くの時間と労力を要します。
合格率は年によって変動がありますが、近年は6~10%の範囲で推移しており、国家資格の中でも難しい部類に入るでしょう。
一般的に必要とされる勉強時間は約3,000時間といわれており、1年かけて合格するためには1日5~10時間もの時間を確保する必要があります。
実際にそれほどの時間を確保できる方は少ないので、数年かけて合格を目指す方が多いでしょう。
また、弁理士の試験は短答式筆記試験、論文式筆記試験、口述試験の3つで構成されています。
資格を取得するためには、3つの試験すべてに合格しなければならず、出題範囲が非常に広いことも難易度を高くしている要因の一つです。
しかし、資格取得が困難であることと、合格後のキャリアプランを天秤にかけて悩むケースもあるといえるでしょう。
近年、進化しているAIによって代替される可能性があることも不安につながっています。
たとえば特許調査や商標調査のように過去の膨大なデータを調べる業務は、AIの得意分野といえそうです。
また、商標の類似判断や明細書作成などの業務もAIが対応可能な業務といえます。
すべての業務がAIによって代替されるとは考えられませんが、一部の業務がAIによって行われるようになる可能性は否定できないでしょう。
「弁理士は将来食いっぱぐれる」という意見がある一方、グローバル化による需要の高まりなどにより、これからも活躍するという意見ももちろんあります。
また、独占業務がありキャリアの選択肢が多いなど、現時点では弁理士資格を取得することによるメリットは非常に大きいといえるでしょう。
以下に弁理士がこれからも活躍する理由を解説します。
グローバル化を目指す日本企業の多くで弁理士の需要が高まっています。
研究開発や企業活動におけるグローバル化が進展する中、特許協力条約(PCT)に基づく特許の国際出願も年々増加しており、国内だけでなく国外における知財戦略の重要性が増しているためです。
国内の特許出願件数は確かに減っていますが、国際出願に対するニーズはこれからも増え続けることが予想され、将来性が高いと考えられます。
弁理士には独占業務がいくつか存在し、官公庁と関係のあるものが多いのが特徴です。
たとえば特許庁への出願申請代行は弁理士の独占業務となっており、資格を所有していない方では代行業務を行なえません。
出願者が自ら出願申請を行うことも可能ですが、申請手続きが難しく、一定の知識がなければ審査に通るのが困難なので、今後も弁理士に申請を依頼する人が多いでしょう。
弁理士の資格取得後は、大きく「特許事務所」「企業内弁理士」「独立開業」という3つの働き方の選択肢があるといわれています。
たとえば、企業内弁理士としてさまざまな経験を積んだ後、大手の特許事務所に転職する。または、築いたネットワークをもとに独立開業するなどの選択も可能になります。
いずれも高年収や自己実現を目指しやすいといえるでしょう。
弁理士の年収は平均700〜760万円程度であり、一般的なサラリーマンと比較すると高年収です。
企業に勤める場合でも、資格手当を受給できたり、昇進につながりやすかったりします。
独立開業して事業が軌道に乗れば、年収1,000万円以上も狙えるでしょう。
今後、AIの進化などにより弁理士の業務が減少したとしても、専門的な資格を有する人材であることに変わりはないため、資格がない場合と比較すれば高年収につながりやすいのです。
弁理士に向いているのはどんな人なのか、気になる方も多いでしょう。
弁理士は士業の中では数少ない理系出身者が多い資格の一つです。
とはいえ、文系出身者でも法律知識やコミュニケーション能力など活かせる点が多くあります。
以下に弁理士に向いている人の特徴を7つ紹介します。
弁理士の主要業務である特許出願書類、明細書の作成では、機械、化学、電気など、理工系の分野の知識も求められます。
特許が申請される発明は最先端の科学技術を駆使したものが多いためです。
実際、弁理士資格試験の合格者、志願者はともに理系が7割以上を占めており、理系最高峰の資格ともいわれています。
弁理士の仕事では法律も大きく関わります。
知的財産法、著作権法、不正競争防止法といった国内の法律はしっかりとマスターしておく必要があります。
さらに近年はグローバル化が進んでいることから、パリ協定やジュネーブ協定などの国際条約まで幅広い法律知識が必要です。
理系の資格といわれている弁理士ですが、法律の知識を学ぶ点においては、文系出身者の能力が活かせる場面もあるでしょう。
弁理士の主要業務である特許出願書類、明細書の作成では、先行事例や競合などのリサーチが不可欠です。
そのため、情報収集が速やかにできる人は適性があるといえるでしょう。
また、理工系の最新技術や法改正に関わる最新情報を常日頃から把握しておくことが大切です。
情報収集のツールとして、各分野の専門家や弁理士同士の人脈、交友関係なども重要なポイントになるでしょう。
弁理士の仕事では最新の発明・技術に関わるため、どんどん移り変わる技術や新しく出てくるものに関心を持つことが大切です。
物事に好奇心を持ち、毎日ニュースをチェックする人や学習好きな人が向いているといえるでしょう。
また、グローバル化が進んでいる近年では、海外への出願業務を行う事務所も多くなっています。
そのため、国内だけでなく、世界の最新発明・技術について興味・関心を持てる方は、特に適性があるといえます。
弁理士の仕事では特許申請業務を始め、論理的思考力が必要な場面が多々あります。
たとえば特許申請が却下された場面です。
このようなケースでは、弁理士は特許権を得るため、審査官に特許権を付与する理由を説明しなければなりません。
なぜ申請が却下されたのか考え、意見書などによって審査官を納得させるためには、論理的な思考力が必要になります。
また、論理的思考力はクライアントとコミュニケーションを取る場合でも、有効な能力といえるでしょう。
出願書類や意見書の作成などは、弁理士にとって必要不可欠な業務です。
時には過去の膨大な資料に目を通したうえで、多数の書類を作成しなければならないケースもあるため、細かい書類仕事が苦にならない人でなければ、仕事を続けるのは難しいでしょう。
また、書類にミスや漏れがあってはならないので、性格的には粘り強く、几帳面な人が向いています。
新しいものを世に生み出す場面に立ち会うため、クライアントとの丁寧なコミュニケーションは必須です。
クライアントと打合せして、特許申請する発明や技術の内容を理解したり、情報を引き出したりするためには、相手の話を聞く傾聴力がなければなりません。
また、独立開業した場合は自ら営業を行うこともあるでしょう。
独立開業する弁理士にとっては、より重要といえるでしょう。
今後、弁理士を目指す方は成功するためのポイントを掴んでおくことをおすすめします。
現在だけでなく、将来のことも見据えて知識を深めておくことが大切です。
以下に弁理士として成功する秘訣を4つ紹介します。
弁理士の仕事では最新の発明、技術に触れる機会が少なくありません。
特に近年ではIT分野を始め、技術の進歩が急速に進んでいます。
時代の変化についていくためには、自分も最新の技術を把握して、知識をアップデートしていく必要があります。
そのため、日頃から最新技術の情報収集に努めることが大切です。
国外における知財戦略の重要性が増しているため、海外での需要を見込んで語学力を身につけることも重要です。
外国の特許庁や海外事務所では英語でのコミュニケーションが基本になるので、特に英語を習得することをおすすめします。
また、語学力を身につけることは、海外の正しい情報を収集することにもつながります。
弁理士と親和性の高い資格を取得し、ダブルライセンスによって仕事の幅を広げることもおすすめです。
たとえば中小企業診断士、MBAなどの資格を所有していれば、経営の知識もある弁理士として認知され、他の弁理士と違いを見せられるでしょう。
特許申請をするクライアントは、経営者としての仕事を行っているケースも多いため、よりクライアントの悩みに寄り添え、信頼アップにもつながります。
弁理士としての業務を指導できる人は少ないのが現状です。
企業などでは弁理士の新人育成に一定の需要があるため、指導力のある弁理士は重宝される可能性があります。
そのため、実際に弁理士の業務を行っている方は、指導する機会があれば積極的に実施して、教える力を磨くことをおすすめします。
最後に、ポイントをおさらいしておきましょう。
なお、弁理士として独立・開業するためには、まず弁理士の資格を取得しなければなりません。
弁理士は試験の合格率は約6~10%と低く、難易度の高い試験なので、しっかりと試験対策する必要があります。
忙しい社会人の方はスキマ時間を活用することが大切です。
スキマ時間を徹底活用したい方は「スタディング 弁理士講座」をぜひチェックしてみてください。