はじめに商標登録とはどんなものか、商標登録をするメリットは何かを解説します。
漠然とした考えで登録するのではなく、目的を正しく理解したうえで判断することが大切です。
商標とは事業者が自社の取り扱う商品やサービスを他人のものと区別するために使用するマーク(識別標識)のことです。
商標は「商標権」という知的財産権によって保護されるため、他の事業者によって模倣されるリスクを回避できます。
そして商標登録とは、特許庁へ商品やサービスの商標を出願し、商標権を得ることです。
実際に商標登録をするには、特許庁に申請して審査を受ける必要がありますが、審査には約6ヶ月から1年ほどかかります。
審査に合格したら、登録料を納付して商標登録が完了します。
商標登録の有効期間は10年ですが、更新手続きをすることで延長できます。
商標は「商標権」によって保護されるので、事業者は商標登録することで、独占的な商品やサービスの権利を得られます。
商標登録によって権利を独占的に得られれば、商品やサービスの模倣を防ぎ、自社ブランドを守れるメリットがあります。
なお、商標登録できるのは、文字、図形、記号、立体的形状やそれらを組み合わせたものなどです。
また、2015年(平成27年)4月からは、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標や位置商標も登録の対象となり、より多様なタイプが登録可能となりました。
ただし、一般的すぎる言葉、すでに商標登録しているものに似ているもの、公序良俗に反しているもの、他人の名前を含んでいるものなどは登録できないので注意しましょう。
弁理士は知的財産に関する専門家です。
特許権など知的財産の権利を取得するための申請書類の作成、拒絶後の再審査対応などを主として行います。
そのため、商標登録手続きは弁理士の得意分野であり重要な業務の一つといえます。
弁理士は特許や商標などの知的財産権に関する業務を行う専門家です。
知的財産の権利化のサポートが主な仕事内容であり、以下の3種類に大別されます。
特許関連の出願手続きでは、申請を依頼された発明や考案、意匠、商標に関する先行案件の調査を行ったうえで、特許の妥当性が確認できれば、申請書類の作成や手続きの代行を行います。
もし特許が認められず、出願拒否を通告する拒絶理由通知書が届いた場合は、拒絶後の再審査対応を行うケースもあります。
また、海外へ特許を申請する業務の場合は、海外の法律知識や英語力にも精通したスキルが求められるでしょう。
なお、弁理士になるには、国家試験である弁理士試験に合格する必要があります。
弁理士試験は難易度が高く、合格率は10%を切ることも珍しくありません。
しかし、弁理士試験に合格すれば、知的財産権の専門家として活躍できるチャンスが広がります。
商標登録するためには、特許庁に指定の申請書を提出して審査を受けなければなりません。
スムーズに登録手続きを進めるためには事前調査が欠かせないため、専門家である弁理士が担当するケースが多くなっています。
以下に商標に関わる弁理士の仕事内容を解説します。
調査
まずはクライアントとの相談や事前調査を行います。
登録したい商標のイメージが固まっている場合は、すでに他者によって登録されていないか、類似したものが存在しないかを調査し、登録できる可能性や競合状況を把握します。
なお、このような事前調査を商標調査と呼びます。
出願のための書類作成
続いて特許庁のルールに従って、出願書類を作成して特許庁に提出します。
出願書類には出願する人の氏名や住所、商品やサービスの内容、商標の図形、色彩などを正確に記載しなければなりません。
受理された後は特許庁の審査に移りますが、審査は出願から約6ヶ月から1年ほどかかるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。
出願後の対応
特許庁の審査に通った場合は問題ありませんが、拒絶される可能性もあります。
拒絶された場合でも、弁理士が説得力のある意見書を提出すれば、商標登録の可否を再度審査してもらえることがあります。
また、一部の指定商品(指定役務)を削除・限定する手続補正書を提出することで、審査が通るケースもあります。
拒絶後の対応
弁理士が意見書や手続補正書を提出しても特許庁の判断が変わらず、「拒絶査定」(登録できないとの審査結果)がなされる可能性もあります。
その場合でも「拒絶査定不服審判」を請求して、拒絶査定の取り消しを求めることが可能です。
弁理士は、拒絶査定不服審判の審判請求書作成や審判請求後の特許庁とのやり取りなどをクライアントの代理で行います。
なお、それでも登録できなかった場合は、審決等取消訴訟を提起することもできます。
商標登録後の対応
審査が通った場合は、特許庁から出願された商標に登録決定通知書が送付されます。
正式に商標登録が完了した後は商標権が発生するため、差し止め請求や損害賠償請求を行えるようになります。
また、商標権は登録から10年または5年で存続期間が終了しますが、更新手続きをすれば永続的に権利を保有できます。
弁理士は更新の手続きや商標の管理も業務として行います。
専門知識のある弁理士が商標登録を行なえば、調査や書類作成がスムーズに進むなど多くのメリットがあるため、弁理士に依頼するのが一般的です。
しかし、弁理士に依頼することによるデメリットが存在するのも事実です。
以下に具体的なメリットとデメリットを解説します。
商標登録を弁理士が行う場合の主なメリットは以下の3点です。
商標登録には、自分の商標が既存の商標と類似していないかどうか、先行事例の調査をする必要があります。
また、商標が他社の商標と競合しないかどうかを調べることも大切です。
商標が他社と類似していたり、競合性が高かったりすると、市場での識別性が低くなるほか、紛争に巻き込まれるリスクもあるため、業界や市場の動向を分析して、競合調査を的確に行うことが大切です。
弁理士は専門的なデータベースやツールを使って、先行事例や競合の調査を効率的に行えるので、正確な判断ができるでしょう。
商標の出願手続きでは、申請書や添付資料など複数の書類を作成する必要がありますが、法律や規則に沿った正確な記述や表現が求められます。
そのため、知識のない方では難しく、専門知識のある弁理士に依頼することで、手続きがスムーズにでき安全性も高まるメリットがあります。
弁理士に依頼することには、デメリットもあります。
主に以下の2点があげられます。
商標登録を弁理士に依頼する場合、弁理士の報酬や手数料などの費用が発生します。
費用は商標登録の難易度や審査期間などによって変動しますが、一般的には数十万円程度かかるので、少ない金額とはいえません。
一方、自分で商標登録を行う場合は、商標登録申請料だけで済むため、費用を節約できます。
また、弁理士も得意分野が異なるので、依頼する場合は選び方が重要です。
自分の商標登録の目的や内容に合った弁理士を見つけられれば、スムーズに商標登録を進められますが、不適切な弁理士を選んでしまうと、トラブルや時間のロスなどが発生する可能性もあるでしょう。
実際に商標登録を行なう場合はどの程度の費用がかかるのか、気になる方も多いでしょう。
弁理士に依頼する場合、個人で行なう場合、それぞれに分けて解説します。
弁理士が商標登録を行う場合、弁理士報酬が発生します。
金額は依頼する弁理士によって異なりますが、10万~20万円程度が一般的な相場となっています。
依頼をすれば、商標登録の申請手続きや審査の対応などを弁理士が代理で実施してくれるため、手間や時間を抑えたい方にはおすすめです。
また、このほかに印紙代など特許庁に支払う費用が発生します。
出願時に支払うもの、登録時に支払うものの2種類があり、申請する区分数によって変わりますが、少なくとも3万円前後の費用がかかるでしょう。
個人が商標登録申請をする場合、弁理士報酬はありませんが、印紙代など特許庁に支払う費用は発生します。
少なければ3万円ほどの費用でおさまるでしょう。
なお、商標登録は10年間有効ですが、その期間を延長するためには、更新登録料を支払う必要があります。
10年間の更新の場合は、区分数×43,600円、5年間の更新の場合は、区分数×22,800円がかかるので注意しましょう。
最後に商標登録の概要や弁理士が商標登録を行う場合の業務内容、メリット・デメリットなどポイントをおさらいしておきましょう。
なお、弁理士として独立・開業するためには、まず弁理士の資格を取得しなければなりません。
弁理士は試験の合格率は約6~10%と低く、難易度の高い試験なので、しっかりと試験対策する必要があります。
忙しい社会人の方はスキマ時間を活用することが大切です。
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