2019年(令和元年)9月試験 FP2級試験の出題講評


2019年(令和元年)9月試験(9月8日実施)の問題の傾向を解説します。

FP2級学科試験

全体

今回の学科試験は、全体的に普通レベルの出題でした。各科目において一部難しい問題も散見されましたが、基本問題で確実に得点していきたい内容でした。合格ラインの60%を考えたときには、全科目均等によく出るテーマを学習していれば、難しい問題ができなかったとしても、十分に合格できるレベルだったと考えられます。

科目1

今回の科目1は、頻出テーマを中心に出題されました。職業倫理・関連法規として、顧客の確定申告書控えの取り扱いや税理士など他資格がないFPができる行為について問われています。次に、ライフプラン作成の際に活用される各種係数について問われましたが、実技試験対策もしていれば問題なく正解できる内容でした。また、雇用保険、公的年金、老齢基礎年金の繰下げ支給、遺族厚生年金、公的年金の併給調整等などのテーマは、定期的に出題される問題ですので、取りこぼしのないようにしましょう。また、最近の傾向として、確定拠出年金の出題が増えていますが、今回の9月試験でも1題出題されています。個人型年金(iDeCo)の掛金については、税制などの各種仕組みを確実におさえておきたいものです。また、日本学生支援機構の奨学金や国の教育ローンについては、近年出題頻度が上がっていますのでしっかり覚えておきましょう。経営分析指標については、固定比率・当座比率・自己資本比率などの意味と計算式をおさえておきましょう。今回は科目全体でオーソドックスな問題でした。

科目2

科目2では、今回も保険法・保険業法の出題はありませんでした。科目2は、前回に続き頻出テーマ中心の問題でしたので、対策をしっかりしていた方は得点を稼げたのではないでしょうか。生命保険の保険料の払込みが困難になった場合の方法・生命保険・個人年金保険の商品性(2題)、個人年金保険の税金、自動車保険の商品性、傷害保険の商品性、地震保険料控除、法人契約の損害保険の経理処理、第三分野の保険の商品性は例年通りの出題です。法人契約の保険の経理処理については、各保険の保険料を支払った場合の資産計上・損金算入の割合、保険金・給付金等を受け取った場合の処理を保険の種類ごとにおさえておきましょう。生命保険を利用した家庭のリスク管理についても、各種保険の補償(保障)内容をおさえていれば、対応可能な問題です。全体的に難易度の高い問題、珍しい問題は特に見られませんでした。

科目3

科目3は幅広い分野から出題される傾向にありますが、今回は頻出テーマと準頻出テーマの中に、一部珍しい問題が含まれていました。為替相場についてはやや珍しいですが、為替と物価の関係や為替の各種変動要因をおさえておけば対応可能です。米ドル建て外貨預金の円換算利回りについては、今回のように、実技試験だけでなく、学科試験でも出題されることがありますので、正しい計算の流れを理解した上で、正解を求められるように練習しておきましょう。上場投資信託(ETF)については、基本的な仕組みをおさえておけば、確実に得点できる問題でした。債券は固定利付債券の一般的な特徴についての問題で、基本的な内容となっていました。株式の信用取引については、深堀りする必要はありませんが、基本的な仕組みを理解しておく必要があります。シャープレシオについては、計算式を覚え、正しい数値を求められるようにしておきましょう。上場株式の税金については、配当や譲渡益・譲渡損失の取り扱いについて、NISA口座での取り扱いも含めて、確実に学習しておく必要があります。個人のセーフティネットについては、預金保険制度や投資者保護基金など非常に基礎的な内容で確実に得点したい内容でした。金融商品販売法・消費者契約法・金融商品取引法といった関連法規については、基本的な仕組みをおさえましょう。一般NISA・ジュニアNISA・つみたてNISAについては、話題の制度で、FP試験でも出題頻度が上がっていますので、3つの制度の概要を一通りおさえておく必要があります。

科目4

科目4は、例年通りに出題されています。我が国の税制、各種所得の分類、損益通算、所得控除、税額控除については、いずれも欠かすことのできない学習項目です。所得税の分野で毎回出題される所得控除については、扶養控除が出題されました。所得控除は各試験で項目を変えて出題されるので、すべての控除項目について基本的な内容をおさえておく必要があります。税額控除については住宅ローン控除の内容を確実におさえておきましょう。所得税の青色申告についても、よく出題される問題ですので、青色申告承認申請書の提出期限や青色申告特別控除などの基本事項を確実におさえておく必要があります。今回の試験では、前回に続き法人にまつわる問題が全体で2問出題されました。消費税も含めると3問です。特に法人税の損金、計算書類・申告書、消費税は、基本的な内容を一通り学習しておいてください。FP2級の試験勉強では、法人税・消費税のテーマは基本レベルの類似問題が出題されているため、過去問演習で対策するのが効果的です。

科目5

科目5では、これまでの傾向通り、頻出テーマが多数出題されました。不動産の売買契約、建築基準法、不動産の譲渡です。これらのうち、建築基準法については、延べ面積の最高限度を求める問題でした。不動産の譲渡については、3,000万円特別控除と軽減税率の特例といった定番問題でした。借地借家法では、「借地契約」「借家契約」の2題が出題されていました。次回以降も、「借地契約」「借家契約」のどちらかまたは両方が出題されてもおかしくありませんので、どちらにも対応できるようにしておく必要があります。その他には、不動産の登記、土地の価格、区分所有法、不動産の取得に係る税金(不動産取得税・登録免許税・印紙税)と定番に近い問題が出題されました。これら4つの問題については、基本的な内容が問われているため、得点しやすい内容となっています。最後の不動産の有効活用の手法(等価交換方式、建設協力金方式など)は、覚えておけば得点につながるため、上記の頻出テーマをおさえた後に学習するようにしましょう。

科目6

今回の科目6では、特に難易度の高い問題は含まれておらず、全体的に得点しやすい内容でした。贈与税の非課税財産、相続時精算課税制度、遺産分割(対策を含む)、相続税の非課税財産は最頻出テーマです。基礎的な学習をしっかり行い、確実に得点できるようにしておきましょう。その他には、民法上の贈与、親族等に係る民法の規定、遺言および遺留分、土地・家屋等の評価、相続税の納税資金対策についても問われていましたが、いずれも基本的な内容で得点をすることは十分可能です。ただ、非上場企業の事業承継対策については、若干レベルが高いため、上記の知識を固めてから応用的な内容としておさえておくようにしましょう。今回も事業承継対策を除くと難易度の高い問題は多くなかったため、科目6で着実に得点できた方が多いのではないでしょうか。


FP2級実技試験

【資産設計提案業務(日本FP協会)】

日本FP協会の実技試験は、今回も定番問題を中心に構成されていました。目新しい点・珍しい点と言えば、NISA・ジュニアNISA・つみたてNISAを比較して共通点と異なる点を答える問題、損害保険金に関する比例てん補の計算問題、相続税の債務控除、各種ローンに関する知識問題、夫婦で住宅ローンを借りる場合の主な組み方、収入保障保険の保障額です。ただ、全体として難易度が上がったわけではないため、試験本番にできる所から落ち着いて対処できたかがポイントとなります。保険証券の読み取り問題、総所得金額の計算、親族関係図に基づく法定相続分、キャッシュフロー表の穴埋め問題、6つの係数を使った計算、個人バランスシートの純資産額の計算など、日本FP協会の特徴である問題は今回も出題されていました。他の問題も、学科試験とも共通の頻出テーマから多く出題されているため、基本学習と問題演習をしっかり行っていた方は得点できたのではないでしょうか。今後もこの傾向は続くと予想されますので、日本FP協会の試験を受検予定の方は、資産設計提案業務の過去問をしっかり解いておきましょう。

【個人資産相談業務(金融財政事情研究会)】

こちらも出題形式は大きな変更がなく、通常通りの出題といって良いでしょう。公的年金制度の老齢給付に関する知識だけでなく、老齢基礎年金・老齢厚生年金の年金額の計算まで問われるのが金融財政事情研究会(金財)の特徴です。年金額の計算式については、資料は与えられるため、暗記の必要はありませんが、計算練習は反復して行っておく必要があります。株式投資では、ROE・PERなどの投資指標やNISA口座のロールオーバーについて問われています。タックスプランニングの分野では、学科試験のように、退職所得の金額の計算、所得控除、総所得金額の計算が出題されています。また、相続・事業承継の分野では、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例、建設協力金方式の特徴、事業承継など若干レベルの高い問題が出題されています。金財の問題は、日本FP協会の問題に比べて、ボリュームがやや多いので時間配分やケアレスミスに注意が必要です。語群選択問題や○×問題かと思いきや、しっかり計算させるという問題もあります。逆に言うと、暗記重視ではないため、理屈を理解し、計算ができるような人は、金財の試験に向いているとも言えるでしょう。
金財の問題は、資料のボリュームが多いのも特徴で、資料の読み取り力が求められます。学科試験対策では、ほぼ資料の読み取りを練習しないので、金財の実技試験を受ける人は、必ず金財の過去問で問題演習をして、出題形式に慣れておきましょう。


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