
FPの実技試験は、実施機関や級によって科目が異なります。
それぞれ難易度も異なるため、自分に合った実施機関の科目を選ぶことが、合格への第一歩です。
この記事では、FPの実技試験の特徴や科目の選び方についてくわしく解説します。
実技試験に落ちないための対策法や、よくある質問についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
FPの実技試験とはどんな試験?
FP試験は、日本FP協会(以下「FP協会」という)と金融財政事情研究会(以下「きんざい」という)の2つの機関で実施されており、難易度の低い順に3級・2級・1級と3つのレベルに分かれています。
いずれの級も、学科試験と実技試験で構成されており、その両方で合格点の取得が必要です。
実技試験では、おもにFPとしての相談業務を想定した問題が出題されます。
実技試験の科目は、個人資産相談業務、保険顧客資産相談業務、資産設計提案業務など複数あり、試験実施機関や級によって異なります。
どの機関のどの科目を受検するかは、自分で選択可能です。
実技試験といっても、面接による口述試験があるのはきんざいの1級のみで、ほかの級は多肢選択式や記述式による筆記試験です。
3級・2級は学科・実技ともに、「CBT方式」と呼ばれるコンピュータ受検が行われています。
CBT方式についてはこちらの記事でくわしく解説しています。

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【級別】FP実技試験の合格率と難易度
FP実技試験の合格率と難易度について、級ごとに解説していきます。
試験実施機関別の詳細な合格率や最新の情報については、下記の記事で紹介しているので、参考にしてください。

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FP3級は初心者レベル
FP協会の3級実技試験の合格率は、85%前後と高い水準で推移しています。
合格率が高い理由としては、比較的オーソドックスな問題が出題されていることや、FPの勉強がはじめての人でも取り組みやすい内容であることがあげられます。
いっぽう、きんざいの3級実技試験の合格率は、「個人資産相談業務」は55〜70%、「保険顧客資産相談業務」は45〜50%、平均すると50%程度です。
いずれもFP協会と比べると合格率は低くなっています。
きんざいのほうが合格率が低い理由としては、金融機関などによる法人(団体)申込みの受検者が多く、モチベーションがあまり高くない受検者が多いことが考えられます。
FP3級の実技試験は、実施機関・科目によって合格率に差はあるものの、基本的な内容を学習していれば合格できる、初心者レベルの試験です。
FP2級は中級レベル
FP協会が実施する、2級実技試験の合格率は、50%前後を推移しています。
きんざいの科目別合格率は、「個人資産相談業務」35~45%、「中小事業主資産相談業務」25%前後、「生保顧客資産相談業務」35~55%、「損保顧客資産相談業務」60%前後です。
4科目全体でみると、40~45%となっています。
試験科目や実施回によっても大きく差があることがわかります。
3級と比べると、2級はどちらの機関でも合格率が低めです。
3級よりも実用スキルが問われるため、理解度が試される出題内容・出題形式になっていることが、理由としてあげられます。
FP2級の実技試験は、3級よりも専門的な知識が求められる、中級レベルの試験です。
FP1級はプロフェッショナルレベル
1級実技試験の合格率について、FP協会は80〜95%、きんざいは80〜90%を推移しています。
2級と比べると合格率が高くなっていますが、だからといって1級の実技試験が簡単というわけではありません。
FP1級の実技試験を受けるには、1級学科試験の合格やFP協会のCFP認定といった受検資格が必要です。
そもそも、FPについて深い知識を持つ人でなければ、実技試験を受検できません。
1級学科試験の合格率は15%前後ですので、非常に難易度の高い試験です。
FP1級の実技試験は、FPのプロフェッショナルを目指す上級レベルと言えるでしょう。
FP1級の受検資格の詳細については、こちらでご確認ください。
【参考】
日本FP協会「1級FP技能検定 試験要綱」
金融財政事情研究会「受検資格」
【級別】FP実技試験の科目
FP実技試験の科目について級ごとに紹介します。
実施科目は、FP協会ときんざいとで異なります。
受検科目は自分で決められますので、どの科目を受検するか選ぶ際の参考にしてください。
FP3級の実技試験は3種類
FP3級の実技試験は、以下の3種類です。
試験実施機関 | 試験科目 |
---|---|
FP協会 | 資産設計提案業務 |
きんざい | 個人資産相談業務 |
保険顧客資産相談業務 |
3種類とも、FPに必要な倫理観や関連法規を正しく理解したうえで、顧客に応じたプランニングができるかが問われます。
各科目の試験の特徴は以下のとおりです。
資産設計提案業務
日々の暮らしにかかわる幅広いお金に関する知識が求められる科目です。
ファイナンシャル・プランニングのプロセス全体を正しく理解する必要があります。
顧客情報を把握し、顧客のライフプランを正しく理解しているかが問われます。
個人資産相談業務
個人の資産相談業務が中心の科目です。
顧客情報を把握し、顧客の立場に立って、ライフプランの策定や金融、不動産、相続、贈与税、所得税などに関する相談に答えられることが求められます。
保険顧客資産相談業務
保険に関する相談業務を中心とした科目です。
顧客の属性や加入している保険商品、保有している金融資産などを把握したうえで、ライフプランに応じた適切な保険提案をおこなうことが求められます。
FP2級の実技試験は5種類
FP2級の実技試験は全部で5種類です。
試験実施機関 | 試験科目 |
---|---|
FP協会 | 資産設計提案業務 |
きんざい | 個人資産相談業務 |
中小事業主資産相談業務 | |
生保顧客資産相談業務 | |
損保顧客資産相談業務 |
各科目の試験の特徴は、以下のとおりです。
資産設計提案業務
3級と同様に、幅広いお金の知識をもとに、顧客の希望や目標を適切に整理し、プランの提案ができることが求められます。
キャッシュフロー分析・個人バランスシートの分析・保障分析・税金分析などによる分析も必要です。
個人資産相談業務
個人の資産相談業務が中心の科目です。
顧客のライフプランに応じた提案を、数字的な裏付けをもって提示できることが求められます。
中小事業主資産相談業務
中小企業を対象とした資産相談業務に関する科目です。
企業の経営状況を把握し、資産運用や税務、事業継承などの相談に適切に答える力が必要です。
生保顧客資産相談業務
生命保険に関する相談業務を中心とした科目です。
顧客の保有資産や現在加入している保険などについて把握したうえで、適切な生保商品の紹介や問題の解決策を提示する力が求められます。
損保顧客資産相談業務
損害保険に関する相談業務を中心とした科目です。
顧客の情報を把握し、損保商品をはじめとした保険商品の紹介および問題の解決策の提示が必要です。
FP1級の実技試験は2種類
FP1級の実技試験は2種類です。
試験実施機関 | 試験科目 |
---|---|
FP協会 | 資産設計提案業務 |
きんざい | 資産相談業務 |
各科目の試験のポイントは、以下のとおりです。
資産設計提案業務
顧客情報を収集し、顧客の生活設計上の希望を、具体的かつ適切な数値目標として設定することが求められます。
資産状況を分析し、それに応じたプランの検討・作成、提示する力が必要です。
資産相談業務
顧客の属性や保有金融資産、保有不動産に関する情報を把握し、資産運用、相続・事業承継などに関する相談に対応します。
適切かつ現実的な解決策を、顧客にわかりやすく説明することが求められます。
【実施機関別】FP実技試験の問題数や形式、合格点
ここからはFP実技試験の問題数や形式、合格点について解説します。
同じ級でも試験実施機関によって、問題数や形式が異なる場合があります。
それぞれ確認していきましょう。
FP協会
FP協会で実施される実技試験の問題数や形式、合格点は下記のとおりです。
級 | 問題形式 | 問題数 | 試験時間 | 合格点 |
---|---|---|---|---|
3級 | 多肢選択式 | 20問 | 60分 | 60点以上 (100点満点) |
2級 | 記述式 (数値・語句記入・語群選択など) | 40問 | 90分 | 60点以上 (100点満点) |
1級 | 記述式 (択一・語群選択・空欄記入・論述) | 2題 (20問) | 120分 | 60点以上 (100点満点) |
問題形式は級によって異なります。
2級は、記述式といっても論述問題ではなく、数値や語句記入・語群選択などの試験です。
1級では論述も出題されています。
どの級も100点満点で、60点以上が合格点です。
きんざい
きんざいで実施される実技試験の問題数や形式、合格点は下記のとおりです。
級 | 問題形式 | 問題数 | 試験時間 | 合格点 |
---|---|---|---|---|
3級 | 多肢選択式 | 5題 | 60分 | 30点以上 (50点満点) |
2級 | 記述式 (数値・語句記入・語群選択など) | 5題 | 90分 | 30点以上 (50点満点) |
1級 | 口述試験 | 2題 | 1回12分程度 | 120点以上 (200点満点) |
きんざいもFP協会と同様に、3級が多肢選択式、2級が記述式の問題です。
きんざい1級の実技試験は、面接形式で行われる口述試験が特徴です。
試験は異なる設例課題にもとづき、2回行われます。
設例は、それぞれの試験が始まる約15分前に渡されます。
3級・2級は50点満点中30点以上で合格、1級は200点満点中120点以上で合格です。
FP協会の実技試験とは満点が異なりますが、どちらも60%以上の正解で合格になります。
【実施機関別】FP実技試験の特徴
FP実技試験の特徴について、試験実施機関ごとに紹介します。
どちらで受検するのか迷う場合は、参考にしてください。
FP協会|迷ったらこちらがおすすめ
どちらの機関の実技試験を受けるか迷った場合は、FP協会を選ぶのがおすすめです。
FP協会の3級の実技試験は、合格率が85%前後と高い傾向にあります。
きんざいとの受検者層の違いもありますが、試験内容が違うことも関係しているでしょう。
FP協会の3級~1級の実技試験の科目は、すべて「資産設計提案業務」です。
資産設計提案業務には、ライフプラン・保険・金融・不動産・税金・相続まで幅広い知識が必要です。
しかし、自分の生活に馴染みのある分野も多いため、比較的勉強しやすいと感じるのではないでしょうか。
加えて、3級・2級・1級のいずれも同じ科目で受検できることから、順を追ってステップアップしやすいという特徴もあります。
きんざい|保険業務に生かしたい人におすすめ
保険業務にFP資格を生かしたい人は、きんざいを選ぶのがおすすめです。
きんざいの実技試験は出題範囲が比較的限定されていることもあり、FP協会の実技試験に比べ、専門性が高くなっています。
たとえば、3級の実技試験「保険相談業務」は、個人のライフプラン策定や金融資産の選択、不動産の有効活用、相続や贈与などにおける問題点を把握し、その相談に答えることが求められます。
保険業界で働いている人は、きんざいで受検することで、すでにある保険の知識をもとに勉強を進めることもできますし、業務ですぐ使える知識も身につけられるでしょう。
FP実技試験に落ちないための対策法3選
FP実技試験に落ちないための対策法を、次の3つに絞って紹介します。
- 過去問を徹底的にやり込む
- 時間配分を意識する
- 合格率が高い試験を選ぶ
効率的に勉強を進めるための参考にしてください。
過去問を徹底的にやり込む
FP実技試験に落ちないためには、過去問を徹底的にやり込みましょう。
FP試験では各科目で過去問を焼き直した問題が、多く出題されています。
とくに重要な部分に関しては、繰り返し出題される傾向があります。
過去問を何度も繰り返し解き、知識を定着させましょう。
また、問題をたくさん解くと、自分の苦手な分野が明らかになっていきます。
理解できていない分野がわかったら、そこを徹底的に対策することで、合格がぐっと近づきます。
FP協会・きんざいともに、公式サイトで過去問が公開されていますので、ご確認ください。
【参考】
日本FP協会「試験問題・模範解答 」
金融財政事情研究会「試験問題」
時間配分を意識する
過去問や演習問題などを解く際は、時間配分を意識しましょう。
とくに実技試験は、問題文が長いものや、計算や判断に時間がかかるものがあります。
各問題にどのくらいの時間をかけられるのかを、事前に把握しておくと安心です。
練習の段階から本番と同じ制限時間で解くことで、ペース配分も身に付きます。
FP実技試験の合格ラインは60%ですので、すべての問題に正解する必要はありません。
難しい問題に時間をかけすぎないこともポイントです。
合格率が高い試験を選ぶ
前述したとおり、FPの実技試験には複数の選択肢があり、合格率に差があります。
どれを受けようか迷ってしまう場合は、合格率が高い試験を選ぶのも一つの方法です。
ただし、「合格率が高い=簡単」ということではありません。
「FP協会は個人申込みの受検者が多い」「きんざいは法人申込みの受検者が多い」といった受検者層の違いも、合格率に影響していると考えられます。
実技試験に落ちないために、合格率が高い試験を選べばよいと安易に考えるのではなく、試験に向けて計画的に勉強を進めていくことも忘れないようにしましょう。
FPの実技試験でよくある3つの質問
FPの実技試験に関して以下のような質問がよく聞かれます。
- 学科試験と実技試験は同じ日に受検できるの?
- 実技試験だけ落ちた場合はどうなるの?
- 学科試験と実技試験、それぞれ違う実施機関のものを受検できるの?
ひとつずつ回答していきます。
学科試験と実技試験は同じ日に受検できるの?
学科試験と実技試験は、同じ日に受検することも、別の日に受検することもできます。
同じ日に受検する場合は、試験終了予定時間から15分以上空けてから、次の試験を予約することが推奨されています。
ちなみに、1級は学科試験に合格した方のみが実技試験を受検できるため、学科と実技を同日に受検することはできません。
実技試験だけ落ちた場合はどうなるの?
学科試験のみに合格し、実技試験に落ちた場合(一部合格)、次回受検時は学科試験が免除されます。
次回受検時に、学科試験をもう一度受検する必要はありません。
この場合、受検申請の際に試験免除申請が必要です。
一部合格による試験免除には、期限があります。
合格した試験実施日の翌々年度末を過ぎてしまうと、免除制度が利用できませんので注意しましょう。
くわしくは公式サイトに記載されている試験要項をご確認ください。
【参考】
日本FP協会「2級・3級FP技能検定 試験要綱」
日本FP協会「1級FP技能検定 試験要綱」
金融財政事情研究会「試験の免除申請について」
学科試験と実技試験、それぞれ違う実施機関のものを受検できるの?
学科試験と実技試験、それぞれ違う実施機関のものを受検することは可能です。
たとえば、FP協会で学科試験を受検し、きんざいで実技試験を受検しても問題ありません。
3級と2級はCBT方式に移行し、受検時間や受検場所を受検者本人が自由に選択できるようになったため、別機関が実施する学科試験と実技試験を同日に受検することも可能です。
ただし、合格証書を取得するには機関ごとに手続きが必要です。手続き状況によっては、合格証書の発行が遅れる場合もあります。
自分に合ったFP実技試験を選んで、合格を目指そう!
FPの実技試験について紹介しました。
本記事のポイントは以下のとおりです。
- FP試験は学科と実技の両方に合格する必要がある。実技試験では、おもにFPとしての相談業務を想定した問題が出題される
- FP3級は初心者レベル、2級は中級レベル、1級はプロフェッショナルレベル
- FP実技試験の科目は、試験実施機関や級によって異なる
- FP実技試験は1級のきんざいのみ口述試験で、そのほかは筆記試験。合格ラインはすべて60%以上
- 実技試験を選ぶ際、迷ったらFP協会を選ぼう。保険業務に生かしたいならきんざいがおすすめ
- FP実技試験に落ちないためには、過去問を徹底的にやり込もう。合格率が高い試験を選ぶのも手
- FP実技試験においてよくある質問を事前に確認しておこう
どの実技試験を選んでも、FP資格の価値に差はありません。
本記事を参考に自分に合った実技試験科目を選び、勉強を進めていきましょう。