公認会計士は非常に難易度の高い国家資格であり、多くの勉強時間を要します。
しかし、資格が取得できずに長期間経ってしまった場合、どのような将来が待っているのでしょうか?
本記事では、公認会計士試験を浪人してしまった場合の末路と、おすすめの進路を徹底解説します。
万一の対処法も把握しつつ、効率よく学習を進めていきましょう。
公認会計士は合格率7〜10%の難関国家資格
試験年 | 出願者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和6年 | 21,573人 | 1,603人 | 7.4% |
令和5年 | 20,317人 | 1,544人 | 7.6% |
令和4年 | 18,789人 | 1,456人 | 7.7% |
令和3年 | 14,192人 | 1,360人 | 9.6% |
令和2年 | 13,231人 | 1,335人 | 10.1% |
令和元年 | 12,532人 | 1,337人 | 10.7% |
【参考】公認会計士・監査審査会「令和6年公認会計士 合格者調」
公認会計士は、弁護士や医師と並び「三大国家資格」と称され、独占業務である「監査」をはじめ、会計・税務のスペシャリストとして企業の信頼性向上と安定的な経営に貢献しています。
多様なキャリアパスや安定した収入が期待できることから、公認会計士試験の受験者数は近年増加傾向にあります。
しかし、公認会計士の資格は専門性が求められるため、試験の難易度も極めて高いです。
公認会計士試験の合格率は、例年7〜10%前後と極めて低く、合格までのハードルが高いことがわかります。

公認会計士試験の難易度を徹底解説|合格率や年収なども紹介!
公認会計士は、医師や弁護士に並ぶ難関国家資格のひとつです。令和5年(2023年)の試験における合格率は7%台と非常に低く、勉強時間も3,000時間以上が一般…
公認会計士は、医師や弁護士に並ぶ難関国家資格のひとつです。令…
公認会計士試験の浪人期間は平均3年
金融庁が発表した「公認会計士合格者アンケート調査結果」によると、短答式試験合格までの勉強時間は2年がもっとも多く、短答式試験合格から論文式試験合格までの平均期間は約1年です。
つまり、公認会計士になるためには、平均3年の勉強期間が必要であることがわかります。
また、公認会計士試験に合格するためには、平均3,000〜5,000時間の勉強時間が必要です。
たとえば、週休2日の会社員が2年間で公認会計士の資格を取得しようとした場合、以下のような勉強スケジュールが想定できます。
▼週休2日で4,000時間の勉強時間を2年間で行う場合
平日 | 4.5時間 |
休日 | 8〜9時間 |
→1週間で38時間の勉強時間の確保が必要
平日は仕事の前後で4.5時間、休日は8〜9時間程度、机に向かう生活を送らなければなりません。
勉強時間の確保ができない場合は、さらに数年かかる可能性もあるでしょう。

公認会計士になるために必要な勉強時間は?合格率や勉強方法をあ…
公認会計士は、医師や弁護士と並ぶ三大国家資格のひとつです。試験の合格率は令和4年と令和5年は7%台と低い傾向があります。一般的にどれくらいの勉強時間を確保す…
公認会計士は、医師や弁護士と並ぶ三大国家資格のひとつです。試…
公認会計士試験で浪人し続ける3つのリスク
公認会計士試験は合格率が低いため、難易度が高く、膨大な勉強時間が必要です。
公認会計士試験で長期浪人した場合、どうなるのかと不安に感じる方も多いのではないでしょうか?
公認会計士試験で長期間浪人し続けるリスクは、大きく3つ考えられます。
- 生活費の不安が大きくなる
- 学習意欲が低下する
- 職歴の空白期間が長くなり就職で不利になる
具体的に見ていきましょう。
生活費の不安が大きくなる
就職をせずに受験勉強に専念している場合、資金源がないため、貯金を切り崩して生活していくことになります。
想定以上に試験合格までに時間がかかってしまうと、貯金は減り続け、生活費の不安が大きくなるでしょう。
生活を切り詰めたり、アルバイトをしたりして、生活費を補いながら勉強をするケースもめずらしくありません。
しかし、労働による疲労や金銭的な不安から、学習の集中力を低下させる可能性があります。
生活費に対する不安を軽減するためには、あらかじめ3年分の生活費を貯金しておくなど、資金的な余裕を持って受験勉強に専念することが重要です。
学習意欲が低下する
公認会計士試験に向けて勉強を始めた頃は、学習意欲も高く、前向きに勉強を進めやすいです。
しかし、期間が長期化するほどモチベーションの維持が難しく、学習意欲が低下してしまいます。
公認会計士の論文式試験は年に1回の試験のため、不合格だった場合はさらに1年間の勉強を余儀なくされます。
合格に向けて、学習に取り組めるようになるまで、時間を要することもあるでしょう。
自身のモチベーションのあげ方やリフレッシュ方法を確立し、ダラけてしまいそうな状況を打破できる強さが必要です。
職歴の空白期間が長くなり就職で不利になる
受験勉強に専念して就職しなかった場合、職歴に大きな空白期間が発生し、就職活動において不利に働くことが考えられます。
空白期間の問題だけでなく、年齢が上がるにつれて、就職先が狭まる傾向があります。
近年では就労をしながら、公認会計士の資格取得を目指すパターンもめずらしくありません。
長期間の空白期間を作らず、就職活動に困窮しないためにも、就労をしながら公認会計士を目指すのも良いでしょう。
公認会計士試験で浪人し続けた末路とは?
公認会計士試験で浪人し続けてしまった場合、どのような末路となるのでしょうか?試験に合格できないと、就職できるか不安を感じる方も多いでしょう。
公認会計士試験で浪人し続けた場合、以下の3つの手段が考えられます。
- 会計事務所に就職
- 一般企業の経理部門に就職
- 別の資格取得を目指す
具体的に見ていきましょう。
会計事務所に就職
会計事務所への就職はもっともメジャーなパターンです。
公認会計士試験に合格できなかった場合でも、試験勉強で培った会計・監査などの知識は会計事務所での業務に生かせます。
また、公認会計士になるためには、資格試験の合格に加え、3年以上の実務経験が必要です。
会計事務所に就職して実務経験に該当する業務に従事できれば、試験合格後はスムーズに公認会計士になれます。
就職後も勉強を継続する意思があれば、会計事務所は勉強と仕事を両立させやすい環境といえるでしょう。
日々の業務が試験勉強の内容と関連しているため、実践を通じて知識の定着が図れるという利点もあります。
一般企業の経理部門に就職
公認会計士試験の受験を断念した場合、一般企業への就職も有力な選択肢です。
試験勉強で培った専門知識は、一般企業の会計・経理・財務部門でも高く評価されます。
とくに上場企業や大手企業では、複雑な会計処理が出てくるケースも多く、公認会計士の勉強で得た知識は役立つ可能性が高いです。
実際に、一般企業で活躍する公認会計士も多く存在します。
企業によっては独自の資格取得支援制度を設けており、業務と両立しながら引き続き公認会計士の資格取得を目指す、または会計関連の他資格へのチャレンジが可能です。
公認会計士試験の学習で培った会計の知識は、財務戦略にも応用できるため、将来的には経理部門のマネージャーや財務責任者など、上位職へのキャリアパスを視野に入れるのも良いでしょう。
別の資格取得を目指す
公認会計士試験の受験を断念した場合、これまでの勉強経験を生かして他の資格取得を目指す選択肢もあります。
会計や監査、税金に関する資格は公認会計士以外にも複数存在します。
公認会計士試験で学んだ基礎知識も、資格試験の土台となり、スムーズに身に付くでしょう。
また、公認会計士試験を通じて身に付いた勉強習慣は大きな財産です。
毎日コツコツと勉強する姿勢やスケジュール管理能力は、他の資格試験においても大きな強みとなるでしょう。
資格選定の際には、公認会計士試験と関連があり、勉強時間が比較的短い資格試験を選択することがおすすめです。
公認会計士の勉強を生かせる資格
公認会計士試験に向けて、勉強してきた人におすすめの関連資格は以下の3つです。
- 簿記
- 税理士
- 中小企業診断士
どの資格もこれまでの勉強内容と関連する部分があり、身に付けた知識を生かせます。
本章では各資格の合格率、勉強時間を踏まえた特徴と仕事への生かし方について解説します。
スタディングでは簿記や税理士、中小企業診断士の資格取得講座も行っており、短時間で効率のよい学習が可能です。
資格取得を検討する方は無料講座にてお試しください。
【無料】スタディング申込ページ
簿記
合格率 (日商簿記1級) | 令和6年11月(第168回) | 15.1% |
令和6年6月(第167回) | 10.5% | |
令和5年11月(第166回) | 16.8% | |
勉強時間 | 400〜600時間 | |
仕事での生かし方 | 経営管理や分析 大規模企業での会計処理にも対応 独占業務なし |
公認会計士試験は簿記試験の延長線上にあるといわれるほど関連性のある資格です。
簿記試験にも複数の種類があり、ビジネスシーンでの需要が多いのは「日商簿記」です。
過去3回の日商簿記1級の合格率は10.5〜16.8%と低めですが、勉強時間は400〜600時間と、公認会計士試験と比べ大幅に短縮できます。
日商簿記の1級は簿記の最上位資格であり、就職や転職時にも非常に有利になります。

日商簿記1級と公認会計士の違いは?学習範囲や難易度を比較解説
経理や会計の分野で資格を取るにあたり、「日商簿記1級と公認会計士のどちらを選ぶべきか」と悩む方は多いでしょう。日商簿記1級と公認会計士には共通点もありますが…
経理や会計の分野で資格を取るにあたり、「日商簿記1級と公認会…
税理士
合格率 | 令和6年(第74回) | 16.6% |
令和5年(第73回) | 21.7% | |
令和4年(第72回) | 19.5% | |
勉強時間 | 4000時間 | |
仕事での生かし方 | 税金に関する業務全般が可能 税金に関するアドバイス 税金に関する書類作成 |
【参考】国税庁「税理士試験」
税理士は、公認会計士同様に難易度の高い資格であり、公認会計士の資格取得に向け学んだ知識を生かすことが可能です。
また、税理士試験は科目ごとに受験をしていく形式です。
一度に多数の範囲を勉強しなくてはいけない公認会計士と比べ、学習を進めやすいでしょう。
税理士資格は独占業務のため、税金に関する相談や書類作成、税務代行などは資格取得者のみが行えます。
そのため、税理士資格を所持していると、転職に有利となるでしょう。

税理士試験の難易度を合格率・勉強時間から調査!試験勉強法も徹…
税理士は国家資格のひとつであり、税金のスペシャリストとして活躍できる資格です。独占業務を持ち、将来的に独立開業しやすい魅力的な資格ですが、その分非常に難易度…
税理士は国家資格のひとつであり、税金のスペシャリストとして活…

公認会計士の仕事内容を3つ紹介!税理士との違いも詳しく解説
公認会計士は、企業の財務諸表を監査し、正確性を保証するプロフェッショナルです。職務は多岐にわたり、監査業務のほかにも、コンサルティングや税務といった分野で活…
公認会計士は、企業の財務諸表を監査し、正確性を保証するプロフ…
中小企業診断士
合格率 | 令和6年 | 1次 | 27.5% |
2次 | 18.7% | ||
令和5年 | 1次 | 29.6% | |
2次 | 18.9% | ||
令和4年 | 1次 | 28.9% | |
2次 | 18.7% | ||
勉強時間 | 1,000時間 | ||
仕事での生かし方 | 経営コンサルティング業務 経営改善計画書や経営診断書の作成 独占業務なし |
【参考】JF-CMCA「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」
中小企業診断士は、経営コンサルティングを行うため、会計に関する知識は不可欠です。
公認会計士試験に向けて、学習してきた会計の知識を中小企業診断士試験でも生かすことができます。
中小企業診断士の実務に、独占業務はありませんが、事業計画の策定や資金調達・マーケティング支援など、多角的な側面から企業経営をバックアップします。
そのため、非常に汎用性が高く、どの部署でも資格取得で得た知識を生かしやすいでしょう。
過去3年間の合格率も平均28.6%となっており、公認会計士試験と比べ比較的合格しやすい傾向にあります。

中小企業診断士合格に必要な勉強時間は1,000時間!科目別の…
中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は「1,000時間」が目安とされています。つまり、1日に2時間の勉強時間が確保できたとして、1年以上の学習が必要というこ…
中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は「1,000時間」が目…

社労士・税理士・公認会計士など!中小企業診断士のダブルライセ…
中小企業診断士の資格は、他の資格との組み合わせ(ダブルライセンス)で活躍の可能性が広がります。専門性の掛け算で希少価値の高い人材になれば、集客アップや年収ア…
中小企業診断士の資格は、他の資格との組み合わせ(ダブルライセ…
まとめ
公認会計士試験に浪人しても知識を生かせる場所はある
公認会計士試験に浪人した場合の末路について解説しました。
- 公認会計士は合格率7〜10%の難易度の高い国家資格である
- 公認会計士試験に合格するためには平均3年前後の浪人期間が必要
- 資格取得ができなくても学んだ知識を就職活動に生かせる可能性は高い
- 公認会計士試験で学んだことを生かして他の資格に挑戦するのもおすすめ
長期間の浪人後、資格取得に至らなくても、学んだ知識を生かせる場はあります。
過度に不安にならず、次の試験に向けて着実に学習を進めていきましょう。
スタディングでは要点を押さえた動画講義によって、モチベーションに左右されることなく、短時間で学習が進められます。
まずは無料講座にてお試しください。