
「公認会計士は食えないというのは本当なの?」と、疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。
2010年前後に、日本経済の景気悪化から、就職難で苦しむ公認会計士が増加しました。
しかし、現在は一転して、公認会計士は需要が高い職業のひとつになっています。
本記事では、公認会計士が食えないと言われる理由や業界の平均年収、公認会計士になってよかったという人の理由などを詳しく解説します。
「公認会計士は食えない」と言われる3つの理由
「公認会計士は食えない」と言われる理由には、以下の3つが挙げられます。
- 公認会計士の就職難の時代があった
- 競争が激しくなっている
- AIによる代替えが懸念されている
それぞれ詳しく解説します。
公認会計士の就職難の時代があった
「公認会計士は食えない」と言われる理由のひとつに、就職難・大量リストラが起こった時代のイメージが強く残っていることが考えられます。
2006年〜2008年ごろには、公認会計士の人材不足解消を目的に例年よりも多くの合格者が生まれました。
しかし、2008年に発生したリーマンショックの影響により、日本経済の景気悪化にともなって企業の多くが監査報酬の見直しや新規の株式上場を控えるようになりました。
その結果、公認会計士を必要とするクライアントが激減してしまい、監査法人も新たな公認会計士の雇用を控え、就職難やリストラが相次いだのです。
時間をかけて勉強をして資格を取得したにもかかわらず、就職できない人であふれたため「公認会計士になっても食えない」という印象がついたと考えられます。
競争が激しくなっている
現在では公認会計士の資格取得を目指す人が増えたため、就職や出世における競争が激しくなっています。
金融庁の公表しているデータによると、近年は出願者数と合格者数が徐々に増えています。
試験年 | 出願者数(人) | 合格者数(人) |
令和元(2019) | 12,532 | 1,337 |
令和2(2020) | 13,231 | 1,335 |
令和3(2021) | 14,192 | 1,360 |
令和4(2022) | 18,789 | 1,456 |
令和5(2023) | 20,317 | 1,544 |
令和6(2024) | 21,573 | 1,603 |
【参考】金融庁「令和6年公認会計士試験 合格者調」
合格者数が増加すると、それだけ就職先探しの競争が激しくなると考えられるでしょう。
AIによる代替が懸念されている
近年、人工知能(AI)の発展により、公認会計士の業務の一部が自動化されると不安視する人もいます。
2015年、野村総合研究所は、オックスフォード大学のFrey博士とOsborne准教授とともに、日本を対象にしたAIによる職業の代替可能性に関する共同研究を行っています。
同研究では、日本の労働市場の約49%がAIに代替される可能性があると示しました。会計士業務でも、特に監査業務には代替可能性があるとされています。
この結果から「会計・財務の仕事も容易に代替できる」と思われてしまい、公認会計士は食えなくなるという憶測が飛んでいるのでしょう。
ただし、Frey博士とOsborne准教授の研究資料にも記載があるように、公認会計士の全業務をAIが代替することは困難であると結論づけられています。
金融庁の「目指せ、公認会計士!」にも、AIについての言及がありますが、現状、完全に取って代わられることはないと記載されています。
【参考】理化学研究所「AI 等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」
【参考】金融庁「目指せ、公認会計士!」
「公認会計士になってよかった」という意見
批判的な意見があるなかでも、以下のように「公認会計士になってよかった」という声もあります。
- 三大資格として信頼性が高い
- 高年収を狙える
- キャリアの幅を広げられる
- 性別にかかわらず活躍できる
- 独立開業も目指せる
公認会計士という仕事のよい面にも目を向けてみましょう。
三大資格として信頼性が高い
公認会計士は、弁護士・医師と並ぶ「三大国家資格」のひとつとして知られています。(※弁護士・不動産鑑定士・公認会計士を三大国家資格というケースもあります。)
三大国家資格の保持者は、各々の分野において重要な社会的責務を担っています。
たとえば、公認会計士は、企業の財務情報の信頼性を担保する監査業務や、経営者の意思決定をサポートする財務アドバイザリー業務などです。
経済社会において極めて重要な業務を行うため、公認会計士は高い信頼性を得られます。

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高年収を狙える
公認会計士は、高年収を期待できる職業のひとつです。
厚生労働省の「職業情報提供サイトjobtag」によると、公認会計士の平均年収は746.7万円です。
国税庁の公表では、給与所得者の平均年収が460万円ですので、比較すると非常に高いことがわかります。
また、年齢別の年収を確認すると、30代後半で800万円超えで、50代前半では900万円を超えています。
就職先やポジションによっては、年収1,000万円以上も珍しくない仕事です。
経済的な安定性と将来性が、公認会計士資格の魅力のひとつと言えるでしょう。
【参考】厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag」
【参考】国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
キャリアの幅を広げられる
公認会計士の仕事は、会計業務全般に携わることが可能で、会社経営において欠かせない存在として、キャリアの幅を大きく広げられます。
監査法人での監査業務だけでなく、税務や経営コンサルティング、M&Aアドバイザリーなど、多様な分野で活躍することも可能です。
さらに、一般企業においても資金調達時の会社の監査やコーポレートガバナンスの支援、IR業務など業務は多岐にわたります。
活躍することで、企業の最高財務責任者や社外役員を任されることもあるでしょう。
公認会計士の知識とスキルは、ビジネスのさまざまな場面で求められるため、キャリアチェンジの際にも有利に働きます。
このように、公認会計士資格は「スペシャリスト」でありながら「ゼネラリスト」としても活躍できる、柔軟性の高い資格です。
性別にかかわらず活躍できる
公認会計士は性別に関係なく活躍できる仕事で、近年は監査法人や企業のなかで重要な役割を担う女性公認会計士も増えています。
金融庁が公表するデータによると、公認会計士の試験出願者は年々増えており、令和4年度においては女性合格者が全体の22%を占めていることがわかります。
当然、実績や経験を積むことで男女ともに出世の道が開けており、独立も実現可能です。
また、公認会計士の業務は、オンラインを活用することで、時間や場所の制限も少なくでき、ワークライフバランスを取りやすいという特徴があります。
育児や介護などのライフイベントと両立しやすく、資格を保有していれば復職しやすいというメリットもあります。
このような職業としての特徴や環境が、性別を問わず多様な人材が活躍できる場を提供し、公認会計士という職業の魅力を高めているのです。
【参考】金融庁「目指せ、公認会計士!」
独立開業も目指せる
公認会計士になり、キャリアを積むことで、会計・税務面の専門知識を活かして独立できることも公認会計士という資格の魅力のひとつです。
独立することで、自分の裁量で仕事を進められ、仕事の幅を広げられます。
たとえば、企業向けのコンサルティングを行ったり、中小企業の税務顧問として関わったりできます。
ただし、顧客の開拓をするといったことが必要になるので、独立前に十分な準備期間を設けることが大切です。
公認会計士の主な就職先
公認会計士の主な就職先は、以下の6つです。
- 監査法人
- 税理士法人
- 公認会計士事務所
- 一般企業の経理部や財務部
- コンサルティング会社
- 独立開業
それぞれ詳しく解説します。
監査法人
監査法人は、公認会計士のもっとも一般的な就職先で、企業監査を行うための組織です。
大手の監査法人として、以下の4社が挙げられます。
- 有限責任監査法人トーマツ
- EY新日本有限責任監査法人
- あずさ監査法人 – KPMGジャパン
- PwC Japan有限責任監査法人
監査法人では、主に上場企業や大企業の財務諸表監査を行い、企業の財務情報の信頼性を担保する重要な役割を果たします。
大手以外にも中小などさまざまな規模の監査法人が存在しているので、キャリアプランや働き方などを考慮して希望の規模の監査法人を選びましょう。
監査法人のなかには、国際的な案件に携わる機会も多くあり、グローバルに活躍したい人にもおすすめです。
税理士法人
税理士法人は、税務に特化したサービスを提供する組織です。
公認会計士は、一定の実務経験を積むことで税理士登録ができるため、税務を専門的に行う税理士法人に所属する公認会計士もいます。
税理士法人に務める場合は、監査業務ではなく税理士としてのコンサルティング業務を担当することになります。
専門スキルを活かして活躍できるので、公認会計士の就職先のひとつとして検討する人も少なくありません。
公認会計士事務所
会計事務所は「会計」や「税務」を行うことを主な業務とする組織です。
主な業務内容は、記帳代行業務や税務業務です。
記帳代行業務では、会社に代わって日々発生する伝票の処理や入金の処理において、複式簿記を用いて数値化する仕訳作業と、仕訳した結果を集計する記帳業務を行います。
税務に関しては、税理士だけが行える独占業務であり、公認会計士は税理士登録を行うことで、税務代理や税務書類の作成、税務相談を行えます。
なお、5人以上の公認会計士が在籍する会計士事務所であれば、監査法人として独占業務の監査業務を行うことも可能です。
コンサルティング会社
コンサルティング会社では、公認会計士の立場から、企業の財務・会計に携わり、経営課題解決を支援します。
財務・会計の知識を活かし、M&Aアドバイザリーや事業再生支援、経営戦略立案など、幅広い分野でコンサルティングサービスを提供できます。
コンサルティング会社での仕事は、クライアントの経営に深くかかわり、ビジネスの最前線で活躍できるのが魅力です。
外資系コンサルティング会社も多数あり、グローバルに活躍したい人にもおすすめです。
高い専門知識が求められる会計において、豊富な知識と経験を有する公認会計士は重宝されます。
一般企業の経理部や財務部
一般企業の経理部や財務部では、財務書類の監査や財務情報の信ぴょう性を担保するために、公認会計士の専門知識が重宝されます。
ここでは、財務諸表の作成や予算管理、資金調達、投資判断、内部監査など、企業の財務全般にかかわる業務を担当します。
実績を残すことでCFO(最高財務責任者)や役員として経営に参画するケースもあり、企業の中核を担う立場での活躍が可能です。
独立開業
経験を積んだのち、独立して自身の事務所を開業することも可能です。
独立公認会計士として、会計・税務・経営のアドバイザーとして活躍できます。
顧客のニーズに合わせてサービスを提供し、自身の裁量で仕事を進められるのが魅力です。
柔軟な働き方ができ、業務内容も自ら決められるため、顧客のコンサルタントを行いつつ、企業向けの研修を行ったり、個人向けのセミナーを開いたりもできます。
また、オンラインを活用することで時間や場所の制限を減らせるため、出産育児が落ち着いた段階で独立する女性も少なくありません。
ただし、顧客開拓や事務所運営など、経営者としての能力も求められるため、監査法人や一般企業で十分な経験を積んだのちに独立するのがおすすめです。
「食える」公認会計士になるために必要なこと
「食える」公認会計士になるために必要なことは、以下の2つです。
- 資格取得後のキャリアパスを考えておく
- 会計以外の知識を広げる
それぞれ詳しく解説します。
資格取得後のキャリアパスを考えておく
公認会計士として成功するには、資格取得後のキャリアパスを早めに考えておくことが重要です。
キャリアパスを明確にすることで、公認会計士として成功するための近道になり、進むべき分野の必要知識を事前に備えられます。
また、将来的に独立開業を目指すのか、企業の経営幹部を目指すのかなど、長期的なビジョンをもつことも大切です。
独立を目標にする場合でも、どのようにキャリアを積み重ねて独立するかで独立までの必要年数や独立後の方向性も変わります。
あらかじめキャリアパスを考えておくことで、目標に向かって最短距離を進めて、安定したキャリアを築けるでしょう。
会計以外の知識を広げる
公認会計士として活躍するには、会計や監査の知識だけでなく、幅広い分野の知識が求められます。
専門分野や得意分野を作ることで、ほかの公認会計士と差別化でき、より高い報酬を獲得しやすくなります。
たとえば、ITや税務、AI、M&A支援といった特定の分野に特化することで、自身の市場価値を高められるのです。
特定の分野に強い会計士になることで、企業からコンサルティングの依頼があったり、財務責任者としてのポストを用意されたりするケースもあります。
また、公認会計士の仕事のほとんどがクライアント業務であるため、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を磨くことも大切です。
これらの総合的なスキルが、付加価値の高いサービスを提供できる「食える」公認会計士への近道となります。
まとめ
公認会計士の仕事は、かつての就職難や競争の激化、AIによる代替の懸念などが原因で「食えない」という意見もあります。
しかし、難関資格だからこその高い信頼性や年収、幅広いキャリアの選択肢など、多くのメリットをもつ魅力的な職業です。
公認会計士として成功するためには、資格取得後のキャリアパスを考え、会計以外の知識も広げることが重要です。
社会の変化に柔軟に対応しながら、自身の強みを活かせる分野で活躍することが「食える」公認会計士への道となるでしょう。
また、これから公認会計士資格の取得を目指す人は、資格合格パートナーの「スタディング」を活用してみてください。
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