公認会計士試験に受験資格はあるのか?合格率や試験内容なども解説

公認会計士試験は、日本の難関国家試験のなかでは珍しく受験資格がありません。

そのため、年齢や性別、国籍などに関わらず誰でもチャレンジできます。

また、試験科目の免除制度が用意されており、学歴や保有資格によってはさらに受験しやすくなります。

本記事では、公認会計士試験における受験資格の概要や科目免除制度、難易度などを詳しく解説するので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

公認会計士試験の受験資格とは

公認会計士試験の受験資格について、現在と過去を比較して解説します。

ほかの国家試験の受験資格との違いも解説しているので、参考にしてみてください。

受験資格はない

公認会計士試験の受験は学歴や職業、年齢、性別、国籍などの制限がないため、願書を提出すれば誰でも挑戦できます。

短答式試験は、第Ⅰ回・第Ⅱ回があり、以下の条件に該当する方は第Ⅱ回短答式試験への出願が必要です。

  • 受験する年から2年までさかのぼった短答式試験合格者
    (2025年に受験する場合は、2023年・2024年の合格者が対象)
  • 短答式試験の全部免除を受けた方
  • 旧公認会計士試験の第2次試験合格者(短答式試験みなし合格者)

【参考】金融庁「令和7年公認会計士試験受験案内」(p.1)

出願期間は、第Ⅰ回短答式試験と第Ⅱ回短答式試験で異なるので注意しましょう。

2005年以前の旧公認会計士試験の制度

2005年以前の旧試験制度では、公認会計士試験は1次試験・2次試験・3次試験の三段階で構成されていました。

1次試験は、国語・数学・外国語・論文の4科目で構成される筆記試験で、受験資格はとくにないものの、大学(短大・高等専門学校を含む)卒業者であれば試験を免除されていました。

1次試験に合格する、または試験免除の適用を受けた人が、2次試験の短答式試験と論文式試験に進めます。

会計士補として実務経験を積んだのちに、3次試験の筆記試験と口述試験に合格して登録を受けると、晴れて公認会計士になれたわけです。

試験制度の見直しにより、旧試験の2次試験と3次試験の一部が、現在の「短答式試験」と「論文式試験」に分けられました。

筆記試験(第1次試験)・短答式試験・論文式試験・筆記試験(第3次試験)・口述試験の全5回あった試験回数が、2024年時点では2回に減っています。

ほかの国家資格との比較

公認会計士と同じく難関国家試験である医師や弁護士、税理士の試験では、以下のような受験資格があります。

医師国家試験

学校教育法に基づく大学の医学部に入学し、必要な単位を取得したのちに卒業している
【参考】厚生労働省「医師国家試験の施行について」

司法試験

・法科大学院の課程を修了している(3年以上在籍し、93単位以上を取得している)
・司法試験予備試験に合格している 
【参考】法務省「令和7年司法試験受験案内」(p.1 第1受験資格)

税理士試験(税法科目)

・大学や短大、高等専門学校を卒業して、経済学や法律学などの社会科学の授業を1つ以上受けている
・大学3年生以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得している
・日商簿記1級の資格を取得している 
【参考】国税庁「税理士試験受験資格の概要」

※受験資格の一部を掲載
※記載した全条件を満たすものではない

上記のように、受験資格に学歴を求める試験が多いなかで公認会計士試験には学歴の要件がないため、比較的受験しやすい資格だと言えます。

公認会計士試験の科目免除制度

公認会計士試験では、学歴や保有資格によって、試験科目の免除を受けられる制度があります。

具体的な資格要件と免許科目は、公認会計士・監査審査会の資料にて確認ができます。

なお、試験科目等の免除の適用を受ける場合は、出願前に手続きを行い「免除通知書」を取得しましょう。

公認会計士試験の具体的な試験内容

公認会計士試験は、「短答式試験」と「論文式試験」の2段階に分かれています。

両試験の概要や出題内容、合格基準などを詳しく解説します。

短答式試験

短答式試験は、公認会計士に必要な基本的な専門知識の理解度を測る目的があり、論文式試験の受験に足りる知識を有しているかの判断にもなります。

短答式試験に合格することで、合格発表日から2年間は短答式試験の受験が免除されます。

同年の論文式試験が不合格だとしても、翌年と翌々年に限って、短答式試験を受けずに論文式試験からの再挑戦が可能です。

短答式試験の受験科目と試験時間、問題数、配点は以下の通りです。

試験科目試験時間問題数配点
財務会計論120分40問以内200点
管理会計論60分20問以内100点
監査論60分20問以内100点
企業法60分20問以内100点

【出典】金融庁「令和7年公認会計士試験受験案内」(p.1)

合格ラインは審査会が定めており、総得点の70%以上獲得が目安となります。

ただし、以下条件の両方に当てはまる場合は不合格になる可能性がありますので気をつけましょう。

  • 得点が40%未満の科目がある場合
  • 上記科目において、回答提出者の成績を上位から並べた際に、下位33%に入る場合

ほかの受験者の得点によっても、合格と不合格のラインが決まります。

論文式試験

論文式試験は、受験者の思考力や判断力、論述力などを総合的に判断するための試験で、年1回3日間に分けて実施されます。

「試験の成績が十分に優秀」と審査会が判断した受験者は、2年間にわたって一部の試験科目が免除されます。

論文式試験の受験科目や試験時間、問題数、配点については下表の通りです。

試験科目試験時間問題数配点
会計学300分大問5問300点
監査学120分大問2問100点
企業法120分大問2問100点
租税法120分大問2問100点
選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のなかから1科目を選択)120分大問2問100点

【出典】金融庁「令和7年公認会計士試験受験案内」(p.1)

合格ラインは、短答式試験同様に審査会が定めており、令和7年試験の得点目安は52%以上です。

ただし、得点が40%を下回る科目があると不合格になる可能性があるので、全科目で最低ライン得点を目指さなければなりません。

公認会計士試験の難易度

公認会計士試験は日本の最難関国家資格の1つとして知られており、合格までに2、3年を費やす人も少なくありません。

ここでは、公認会計士試験の難易度について、平均勉強時間と合格率の観点から解説します。

平均勉強時間はおよそ3,000〜5,000時間

公認会計士試験に合格するのに必要な勉強時間の目安は、3,000〜5,000時間です。

金融庁が公開している「公認会計士という職業の魅力」には、「試験に合格するには2年間で5,000時間が必要」と記載されています。

仮に3,000時間で合格を目指すのであれば、単純計算で1日8時間以上を勉強に費やさなければなりません。

会社員の場合、毎日8時間以上の勉強時間を確保するのは現実的ではないため、5,000時間を目安に2〜3年かける必要があります。

受験までに数年かかることも、公認会計士試験が過酷な難関試験だと言える理由のひとつです。

直近2年間の平均合格率は7%台

公認会計士試験の合格率は低く、令和4年(2022年)と令和5年(2023年)の直近2年間に関しては7%台でした。

令和元年(2019年)から令和5年までの合格率の推移は、以下の通りです。

試験年出願者数合格者数合格率
令和元(2019)12,532人1,337人10.7%
令和2(2020)13,231人1,335人10.1%
令和3(2021)14,192人1,360人9.6%
令和4(2022)18,789人1,456人7.7%
令和5(2023)20,317人1,544人7.6%
令和6(2024)21,573人1,603人7.4%
【参考】公認会計士・監査審査会「令和6年公認会計士試験 合格者調」

【参考】公認会計士・監査審査会「過去の試験結果等」を参考に作成

合格率を見ると、令和元年(2019年)から令和5年(2023年)にかけて徐々に下がっている一方で、願書提出者数は7,800人ほど増加していることがわかります。

合格者数は200人ほどしか増加していないので、受験者数の増加によって合格率が徐々に下がっていると考えられます。

公認会計士資格試験に関してよくある質問

最後に、公認会計士試験に関してよくある4つの質問に回答します。

  • 高卒でも受験できるのですか?
  • 先に簿記1級や2級を取得したほうが有利ですか?
  • 試験に合格したらすぐに公認会計士になれるのですか?
  • 独学でも問題ないのですか?

それぞれ詳しく解説します。

高卒でも受験できるのですか?

公認会計士試験には、受験資格の制限がありません。

そのため、現役の高校生でも、高卒でも問題なく受験可能です。

また、令和4年(2022年)試験では合格者の最低年齢が17歳とのデータもあります。

先に簿記1級や2級を取得したほうが有利ですか?

公認会計士試験の内容とかぶる部分も多いため、簿記の資格をもっている人は勉強がスムーズに進む可能性があります。

しかし、公認会計士として働くことが目標であれば、簿記資格の取得に時間をかけるよりも、はじめから公認会計士試験の勉強を進めるのがおすすめです。

簿記と公認会計士の違いについてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。

試験に合格したらすぐに公認会計士になれるのですか?

公認会計士試験に合格しても、すぐに公認会計士として働けるわけではありません。

具体的には、以下の過程を経て公認会計士登録を受ける必要があります。

  1. 公認会計士資格試験に合格
  2. 3年以上の業務補助
  3. 一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務試験を通過し、日本公認会計士協会による修了考査に合格する
  4. 公認会計士登録を行う

資格試験に合格しても、実際に公認会計士として働けるまでに3年以上かかります。

独学でも問題ないのですか?

公認会計士試験への挑戦は、独学でも問題ありません。

しかし、短答式試験と論文式試験を合わせて5科目以上と学習範囲が膨大で、勉強時間が最低でも3,000時間を超えるため独学では困難な部分が多いのも事実です。

公認会計士試験の学習方法でおすすめなのは、専門学校の対面講義や通信講座の活用です。

公認会計士試験のような難易度の高い試験では、適切な学習方法や重要分野の絞り込みなど、戦略的な勉強が欠かせません。

専門学校や通信講座であれば、過去の経験から問題の傾向や重要ポイントを順序立てて学ぶことが可能です。

また、資格試験に精通した講師から教えてもらうことで理解が進みやすく、不明点が出た場合にもすぐに質問ができます。

さらに通信教育であれば、時間や場所を選ばず勉強できるため、忙しい社会人にもおすすめです。

専門学校や通信講座の受講と独学を組み合わせることで、合格の可能性を高められるでしょう。

まとめ

公認会計士試験は、学歴や年齢、性別、国籍などに関わらず誰でも受験可能です。

ただし、公認会計士試験には試験科目の免除制度があり、学歴や保有資格によって試験科目を減らせます。

学習範囲が膨大であり、最低勉強時間が3,000時間以上は必要になるので、免除できる科目があれば積極的に制度を活用しましょう。

試験科目の免除制度に関する詳しい内容は、本記事や金融庁の「免除申請の手続について」を確認してみてください。

なお、「スタディング 公認会計士講座」では、公認会計士の資格取得を目指す講座を用意しています。

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