公認会計士試験「財務会計論」の勉強法と頻出テーマ3選!

公認会計士試験の中でも、財務会計論は合格の鍵を握る最重要科目です。

計算問題と理論問題の両方に対応する幅広い知識が求められ、出題範囲も広いのが特徴です。

学習量は、他の科目の2~3倍にのぼります。

だからこそ、まずは財務会計論の特徴をつかみ、正しい勉強法で計画的に学習を進めることが大切です。

この記事では、財務会計論の位置づけや特徴、勉強法、頻出テーマをわかりやすく解説します。

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公認会計士試験における財務会計論の位置づけ

財務会計論は、公認会計士試験の科目の中で最も試験時間が長く、配点も高いため、最優先で勉強するべき科目です。

科目の位置づけや最重要科目である理由について、解説していきます。

そもそも財務会計とは

財務会計とは、企業の状況を外部に報告するために、企業のさまざまな経済活動を記録することです。

公認会計士に求められる知識の中でもコアな部分であり、公認会計士試験でも重点的に問われる分野です。

財務会計では、企業の財産の状況や業績を示す「財務諸表」という報告書を作成します。

財務諸表は、業績発表に使われるのはもちろん、銀行からお金を借りようとする場合や、銀行に状況を説明する場合などにも用いられます。

財務会計論は、財務諸表の作成方法や、その背景にある考え方などを学ぶ科目です。

財務諸表の作成には、企業活動の仕組みについての理解が不可欠です。

そのため、財務会計論を学ぶことで、会計の知識にとどまらず、ビジネス全体に関する知識も身に付きます。

公認会計士試験では、記録や報告書の作成を学ぶ「計算分野」と、財務会計の考え方や制度の背景などを理解する「理論分野」に分けて学びます。

公認会計士試験における財務会計論

公認会計士試験には、短答式試験と論文式試験があります。

それぞれの試験で出題される科目と試験時間、配点は以下のとおりです。

【短答式試験】

試験科目試験時間問題数配点
財務会計論150分40問以内200点
管理会計論75分20問以内100点
監査論50分20問以内100点
企業法50分20問以内100点
【出典】公認会計士・監査審査会「令和8年公認会計⼠試験受験案内」

【論文式試験】

試験科目試験時間問題数配点
会計学300分大問5問300点
監査論120分大問2問100点
企業法120分大問2問100点
租税法120分大問2問100点
選択科目
(経営学・経済学・民法・統計学から1科目を選択)
120分大問2問100点
【出典】公認会計士・監査審査会「令和8年公認会計⼠試験受験案内」

財務会計論は、短答式試験の1科目として出題されます。

論文式試験では、2回に分けて実施される「会計学」の試験の後半に、財務会計論の知識が問われます。

財務会計論が最重要科目である理由

財務会計論は、公認会計士試験合格のために優先的に対策したい科目です。

短答式試験の出題科目は、「財務会計論」「管理会計論」「監査論」「企業法」の全4科目です。

財務会計論の試験時間は150分と最も長く、管理会計論の2倍に設定されています。

さらに、配点も200点と、他の3科目の2倍です。

一方で、論文式試験の出題科目は、「会計学」「監査論」「企業法」「租税法」「選択科目」の全5科目です。

このうち「会計学」の試験は、午前と午後に分けて実施され、午前は管理会計論、午後は財務会計論が問われます。

管理会計論の試験時間は120分・配点100点であるのに対し、財務会計論は試験時間180分・配点200点です。

このように、短答式・論文式どちらにおいても試験時間・配点の比重が大きいため、財務会計論は公認会計士試験の最重要科目と言えます。

計算・理論の両方が問われる試験

短答式試験の科目のうち、監査論と企業法で出題されるのは理論問題のみです。

これに対し、財務会計論と管理会計論では、理論問題に加えて計算問題も出題され、試験時間も長く設定されています。

計算問題では、仕訳や財務諸表の作成に関する問題が出題され、簿記の知識や正確な計算能力が求められます。

理論問題では、会計基準の内容や背景などを理解した上で、細かな違いを見極めながら適切な選択肢を選ぶ力が必要です。

短答式試験は、計算問題の配点が6割程度、理論問題が4割程度の構成です。

また、論文式試験では計算問題の配点が4割程度、理論問題が6割程度と、より理論寄りの構成となっています。

学習のバランスを考える際の参考にしてください。

公認会計士試験「財務会計論」の特徴

財務会計は、外部の人に企業の経済活動を報告するためのものであり、制度や細かいルールを覚えることが求められます。

他の科目と比較して学習量が多いため、優先的に勉強を進めましょう。

試験における配点が高いことから、得意科目にすれば合格に向けて有利に働きます。

財務会計論の特徴について、例題を見ながら確認していきます。

短答式試験の特徴

公認会計士試験における短答式試験では、選択肢から正しい解答を選びます。

財務会計論における短答式試験の特徴を、計算問題と理論問題に分けて見ていきましょう。

計算問題

令和6年第Ⅱ回短答式試験では、以下の計算問題が出題されました。

次の〔資料〕に基づき,当社の当期(X5年4月1日〜X6年3月31日)の従業員Aに対する退職給付費用の金額として正しいものの番号を一つ選びなさい。ただし,計算結果に端数が生じる場合,円未満をその都度四捨五入して計算すること。(8点)

〔資料〕
1.従業員Aの入社は,X2年4月1日である。
2.従業員Aは,X7年3月31日に退職予定である。
3.当期首において見積もられる従業員Aの退職給付見込額は,504,700円である。
4.当期末に退職金規程の改訂があり,退職時に支給される金額が15%増加することとなった。
5.割引率は,年2.5%であり,期間定額基準に基づいて退職給付債務を算定している。
6.過去勤務費用は,15年間にわたり定額法で当期から費用処理する方法を採用している(月数に応じた額ではなく,年数で按分した額を費用処理する。)。

退職給付費用
1.99,628円
2.101,745円
3.102,417円
4.102,516円
5.109,623円
6.109,722円

【出典】令和6年試験 第Ⅱ回短答式試験問題 財務会計論 問題14

与えられた条件に沿って計算を行い、正解の選択肢を選ぶ問題です。

計算過程で生じやすいミスを想定した誤答が選択肢に含まれることも多いため、正確に解答を導き出す必要があります。

理論問題

同じく、令和6年第Ⅱ回短答式試験から、理論問題を見ていきましょう。

「棚卸資産の評価に関する会計基準」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点)

ア.棚卸資産の評価に収益性の低下を反映させる会計処理を適用するに当たって,製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく,正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には,再調達原価で評価しなければならない。

イ.棚卸資産の範囲に含まれる事務用消耗品については,価格の下落が必ずしも収益性の低下に結びつかないため,価格の下落が物理的な劣化または経済的な劣化に起因している場合であっても,通常の販売目的で保有する棚卸資産と同様の簿価切下げを行う必要はない。

ウ.通常の販売目的で保有する棚卸資産について,収益性の低下による簿価切下額は,重要性が乏しい場合を除き,注記による方法または売上原価等の内訳項目として独立掲記する方法により開示しなければならない。

エ.トレーディング目的で保有する棚卸資産については,時価をもって貸借対照表価額とし,帳簿価額との差額は,当期の損益として処理する。この損益は,原則として,純額で売上高に表示する。

1.アイ 2.アウ 3.アエ 4.イウ 5.イエ 6.ウエ

【出典】令和6年試験 第Ⅱ回短答式試験問題 財務会計論 問題4

4つの記述を確認し、正しい2つの組み合わせを選ぶ問題です。

理論問題では、4肢6択が基本です。

全ての組み合わせが選択肢として用意されているため、それぞれの正誤を正しく見極める必要があります。

論文式試験の特徴

次に、論文式試験の特徴を確認していきます。

令和6年の論文式試験 会計学(午後)では、以下の問題が出題されました。

問題1
「退職給付に関する会計基準」および同適用指針に関する次の問1〜問3に答えなさい。
なお、問1は個別財務諸表を前提として解答すること。

問1
次の〔資料〕に基づき,以下の⑴および⑵に答えなさい。

〔資料〕
A社の当期末における退職給付債務,年金資産,未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の残高は,次のとおりである。

1.退職給付債務 1,000百万円
2.年金資産 1,080百万円
3.未認識数理計算上の差異(貸方) 100百万円
4.未認識過去勤務費用(借方) 120百万円

⑴ A社の当期末の貸借対照表において,退職給付に関して計上される科目とその金額を答えなさい。
⑵ A社の当期末の貸借対照表において,「資産の部」に年金資産が1,080百万円としてそのまま計上されることはない。その理由を述べなさい。

問2
退職給付見込額の期間帰属方法として,期間定額基準と給付算定式基準の選択適用が認められている。そのうち,期間定額基準を選択することが認められている根拠を説明しなさい。

問3
退職給付債務の計算における割引率について,「退職給付に関する会計基準の適用指針」には,「割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直し,退職給付債務を再計算する必要がある。」とあるが,どのような場合に「重要な影響」があると判断されるか説明しなさい。

【出典】令和6年試験 論文式試験問題 会計学〔午後〕第4問 問題1

金額を問う問題や会計処理の理由を述べる問題、制度の根拠を説明する問題が出題されています。

論文式試験は偏差値によって合格が決まるため、多くの受験生にとって正解を出すのが難しい問題は、解けなくても合否にあまり影響しません。

細かい部分にこだわりすぎず、合格に必要な知識を要領よく身に付けていくことが重要です。

公認会計士試験「財務会計論」の勉強法

公認会計士試験の財務会計論の勉強を進めるにあたって、必要な心構えと勉強法を解説します。

必要な心構え

財務会計論の学習量は多く、他の科目の2.5倍ほどです。

以下3つのポイントを押さえ、学習を着実に進めていきましょう。

覚えるべきものは覚える

制度やルールなど、覚えるべきものは正確に覚えることが大切です。

理論を理解すれば暗記する量は減らせるものの、理屈だけでは通らない部分もあります。

内容の理解をしつつ、「覚えるべきものは覚える」という姿勢が重要です。

問題演習から逃げない

記憶を定着させるには、繰り返し問題演習に取り組むことが不可欠です。

頭で理解できることと、問題が解けることは異なります。

学習した知識を使い、正答にたどり着く練習を日々積み重ねるようにしましょう。

苦手科目にしない

財務会計論は公認会計士試験でウェイトが高い科目であるため、苦手科目にすると合格が遠のいてしまいます。

決して苦手科目にはしないようにしましょう。

財務会計論で学習する内容は、公認会計士として就職した後も大いに役立ちます。

知識を仕事で活かすことをイメージしながら、勉強に取り組んでみてください。

具体的な勉強の進め方

財務会計論は、「内容の理解」と「問題演習」を繰り返しながら勉強を進めましょう。

他の科目よりも学習範囲が広いため、試験までに全ての分野の勉強を終えられるよう、計画的に進めることが大切です。

講義やテキストで学習をしたら、以下のタイミングで少なくとも3回同じ問題を解くのがおすすめです。

  • 学習後すぐ
  • 学習した日の夜または翌朝
  • 少し時間を空け、次の学習の前まで

また、3回解いたからといって終わりにするのではなく、空き時間を活用して何度でも解いておくと、記憶の定着につながります。

特に、計算問題では数多くの問題を繰り返し解くことで解答スピードが上がり、ミスも減らせます。

公認会計士試験「財務会計論」の頻出テーマ3選

財務会計論の頻出テーマは、以下の3つです。

  • 連結会計
  • 外貨建取引
  • 収益認識

それぞれの概要と学習のポイントを見ていきましょう。

連結会計

連結会計は、支配従属関係にある企業集団を1つのまとまりとして、親会社が連結財務諸表を作成する際に用いられる会計処理です。

企業集団に属する企業がそれぞれ作成する個別財務諸表だけでは、企業集団の会計情報が十分に確認できないことがあるため、連結財務諸表の作成が求められています。

連結財務諸表には、以下の4種類が含まれます。

  • 連結貸借対照表
  • 連結損益及び包括利益計算書(または連結損益計算書及び連結包括利益計算書)
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結キャッシュ・フロー計算書

連結財務諸表は、個々の企業が作成した個別財務諸表をもとに作成します。

学習内容が多いため、まずは連結財務諸表の作成手順を理解した上で、どの作成段階について学んでいるのか意識しながら勉強するのがポイントです。

外貨建取引

外貨建取引とは、売買価格や取引価格がドル・ユーロなどの外国通貨で示されている取引を指します。

外国通貨で行った取引について、日本円に換算して財務諸表を作成するための処理が外貨換算会計です。

外貨建取引は、取引が発生した時点での為替相場をもとに円換算して記録するのが原則です。

しかし、決算時には決算時の為替相場による円換算を行う場合もあります。

決算時の換算で換算差額が発生する場合は、為替差損益として処理する等、適切な会計処理が求められます。

以下は、公認会計士試験で出題される仕訳問題の例です。

【例題】

次の各取引について仕訳を示しなさい。

(1)商品1,000千ドルを掛で仕入れた(輸入取引)。取引日の為替相場は1ドル=120円であった。

(2)上記(1)の掛代金を支払った。決済時の為替相場は1ドル=115円であった。

計算のスピードや正確性を高めるために、繰り返し演習問題に取り組みましょう。

収益認識

収益認識では、企業としての通常の営業活動において、顧客との契約から得られる収益に関する会計処理、およびその開示について学習します。

従来は、収益認識に関する包括的な会計基準がなかったものの、2018年に企業会計基準委員会より「収益認識に関する会計基準」が公表され、2021年4月以後に開始される事業年度から強制適用となりました。

収益認識では、以下5つのステップで会計処理を行います。

▼ステップ1|契約の識別
要件を満たす顧客との取り決めを識別する

▼ステップ2|履行義務の識別
財やサービスに関する顧客との約束を履行義務として識別する

▼ステップ3|取引価格の算定
顧客への財やサービスの提供により企業が得られる対価を算定する

▼ステップ4|取引価格の配分
契約で識別したそれぞれの履行義務に取引価格を配分する

▼ステップ5|収益の認識
企業が財やサービスを顧客に移転し、収益を認識する

それぞれのステップにおけるルールや計算処理を理解し、演習問題に取り組んで知識を定着させましょう。

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まとめ

本記事では、公認会計士試験の最重要科目「財務会計論」の勉強法と頻出テーマについて解説しました。

  • 財務会計論は、公認会計士試験の科目の中で最も試験時間と配点の比重が大きいことから最重要科目に位置付けられており、最優先で勉強すべき
  • 計算問題と理論問題の両方に対応する必要がある
  • 覚えるべきものをしっかり覚え、繰り返し問題演習に取り組むことが合格への鍵
  • 頻出テーマは「連結会計」「外貨建取引」「収益認識」など
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