公認会計士は、医師や弁護士と並ぶ三大国家資格のひとつです。試験の合格率は令和4年と令和5年は7%台と低い傾向があります。
一般的にどれくらいの勉強時間を確保すれば、公認会計士を目指せるのか気になる方も多いでしょう。結論からいうと3,000~5,000時間は勉強する必要がありますが、本人の環境や勉強方法によって異なります。
この記事では、公認会計士試験の合格に必要な勉強時間や勉強時間が多い理由を解説します。働きながら公認会計士を目指そうとしている方や、逆算して勉強を進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
公認会計士試験の勉強時間は平均3,000~5,000時間
公認会計士試験の合格を目指すには、平均して3,000~5,000時間という膨大な学習時間が必要とされています。
目標とする合格までの期間によって異なるため、期間ごとの勉強時間の目安を解説します。
- 1年で合格を目指す場合の勉強時間
- 2~3年で合格を目指す場合の勉強時間
1年で合格を目指す場合の勉強時間
1年という短期間での合格を目指す場合、少なくとも約3,000時間の勉強時間を確保する必要があります。1日あたり8~10時間以上の学習時間に相当します。
とくに、基礎知識の定着から応用問題への対応力を身につけるには、短期間で密度の濃い勉強が不可欠です。
また、勉強方法によって必要な時間にも差が出ます。予備校や通信講座を利用する場合は、カリキュラムや指導に沿って効率的に学べるため、独学に比べて時間を短縮できます。
一方で、独学の場合は教材選びやスケジュール管理に注意が必要です。効率的な勉強環境を整え、1日ごとの目標を明確にすることが合格への近道です。
2~3年で合格を目指す場合の勉強時間
公認会計士・監査審査会の資料「公認会計士という職業の魅力」によると、公認会計士の合格までに「2年間で5,000時間」という目安が示されています。
会社員の場合、働きながら1日8時間以上の学習時間を確保するのは現実的ではありません。そのため社会人受験生は、2~3年で4,000時間以上の勉強時間を確保するのが賢明です。
1年目に約1,500時間、2年目から3年目にかけて2,500時間以上を目安に学習を進めるとよいでしょう。2~3年の受験期間なら無理のないペースで進められます。
基礎知識を1年目に十分に固めることで、2年目以降の応用問題や模擬試験で成果を上げやすくなるでしょう。
公認会計士試験の勉強時間が多い理由
公認会計士試験は、範囲の広さや内容の難しさなどが理由で、膨大な勉強時間を必要とします。
その理由は次のとおりです。
- 試験範囲が広い・内容が難しい
- 競争試験のため合格ラインが読みにくい
1つずつ詳しく見ていきましょう。
試験範囲が広い・内容が難しい
公認会計士試験の特徴として、広範囲にわたる試験範囲と、難易度の高い内容が挙げられます。
試験は短答式試験と論文式試験の2段階に分かれており、科目別の勉強時間の目安は次のとおりです。
試験区分 | 出題科目 | 配点 | 勉強時間(目安) |
---|---|---|---|
短答式試験 | 財務会計論 | 200点 | 約700時間 |
管理会計論 | 100点 | 約300~400時間 | |
企業法 | 100点 | 約300~400時間 | |
監査論 | 100点 | 約170~300時間 | |
論文式試験 | 会計学 | 300点 | 約300~400時間 |
企業法 | 100点 | 約200~300時間 | |
租税法 | 100点 | 約330~400時間 | |
監査論 | 100点 | 約100~200時間 | |
選択科目 ※経営学、経済学、民法、統計学から1つ選択 | 100点 | 約200時間 ※経営学 |
【参考】金融庁|令和7年公認会計士試験受験案内(1ページ)
短答式試験
短答式試験はマークシート方式で年2回実施されます。この試験に合格しなければ、論文式試験を受験することはできません。
なお、合格すれば2年間は短答式試験の受験が免除されます。
論文式試験
論文式試験は記述形式で、3日間にわたって合計13時間を要するハードな試験として知られています。
試験範囲の広さと問題の難しさから、十分な準備期間と学習時間が必要となります。
また、科目によって必要な勉強時間が異なるのも特徴です。
とくに会計学は膨大な学習量が求められるため、多くの受験生が重点的に時間を割いています。
まずは短答式試験の合格を目指して基礎を固め、そのあとに論文式試験の対策を進めましょう。
競争試験のため合格ラインが読みにくい
公認会計士試験は、一定以上の点数を獲得すれば合格できる絶対評価ではありません。
成績上位者から合格が決まる競争試験であるため、具体的な合格ラインが明確ではなく、多くの受験生がライバルの存在を意識しながら勉強する必要があります。
このように、競争試験ならではのプレッシャーが、勉強時間の増加を招く原因になります。
周囲の進捗や得点に影響されることなく、自分のペースでモチベーションを維持しながら学ぶことが大切です。
公認会計士の合格率と合格者の特徴
公認会計士は国家資格の中でもとくに難易度が高い資格のひとつであり、合格率が低いことで知られています。
ここでは、合格率や合格者の特徴について詳しく解説します。
令和元年から5年までの合格率を比較
公認会計士は国家資格の中でもとくに難しいと言われており、合格率の低さがそれを物語っています。
下表に、願書提出者や合格率などをまとめました。
区分 | 願書提出者 | 短答式試験合格者 | 論文式受験者 | 最終合格者 | 合格率 |
令和5年度 | 20,317人 | 2,103人 | 4,192人 | 1,544人 | 7.6% |
令和4年度 | 18,789人 | 1,979人 | 4,067人 | 1,456人 | 7.7% |
令和3年度 | 14,192人 | 2,060人 | 3,992人 | 1,360人 | 9.6% |
令和2年度 | 13,231人 | 1,861人 | 3,719人 | 1,335人 | 10.1% |
令和元年 | 12,532人 | 1,806人 | 3,792人 | 1,337人 | 10.7% |
令和5年の試験では願書提出者数が20,317人、そのうち最終合格者数は1,544人となり、合格率は7.6%でした。
令和元年から令和3年までは10%付近を維持していましたが、直近の令和4年と令和5年は7%台に低下しています。
合格者の年齢
公認会計士の試験合格者の年齢を下表にまとめました。
年齢 | 令和5年度 | 令和4年度 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 |
20歳未満 | 23人 | 21人 | 12人 | 7人 | 24人 |
20歳以上25歳未満 | 977人 | 929人 | 873人 | 799人 | 769人 |
25歳以上30歳未満 | 356人 | 337人 | 297人 | 299人 | 308人 |
30歳以上35歳未満 | 122人 | 117人 | 110人 | 128人 | 142人 |
35歳以上40歳未満 | 38人 | 26人 | 44人 | 44人 | 58人 |
40歳以上45歳未満 | 20人 | 19人 | 15人 | 23人 | 23人 |
45歳以上50歳未満 | 5人 | 5人 | 6人 | 18人 | 8人 |
50歳以上55歳未満 | 2人 | 1人 | 2人 | 11人 | 2人 |
55歳以上60歳未満 | 0人 | 1人 | 0人 | 4人 | 2人 |
60歳以上65歳未満 | 1人 | 0人 | 1人 | 2人 | 1人 |
65歳以上 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 |
合計 | 1,544人 | 1,456人 | 1,360人 | 1,335人 | 1,337人 |
令和5年では20歳以上25歳未満が63.3%を占めています。大学在学中、または卒業後すぐに資格取得を目指す方が多いと読み取れます。
最年少合格者は18歳、最高年齢合格者は61歳と年齢層は幅広いものの、若い世代が多くの割合を占めているのが特徴的です。
過去5年間のデータを比較しても、20代前半の合格者割合は一貫して高い傾向にあります。
一方で、働きながら挑戦する社会人や、定年後に資格取得を目指す方も一定数います。年齢による偏りがあるものの、誰でも挑戦が可能な資格であると言えるでしょう。
合格者の職業
令和5年の職業別合格者を、下表にまとめました。
職業 | 願書提出者 | 合格者 | 合格率 |
会計士補 | 49人 | 5人 | 10.2% |
会計事務所員 | 838人 | 81人 | 9.7% |
税理士 | 45人 | 0人 | 0.0% |
会社員 | 3,223人 | 117人 | 3.6% |
公務員 | 647人 | 17人 | 2.6% |
教員 | 45人 | 1人 | 2.2% |
教育・学習支援者 | 71人 | 1人 | 1.4% |
学生 | 9,022人 | 867人 | 9.6% |
専修学校・各種学校受講生 | 1,481人 | 114人 | 7.7% |
無職 | 3,661人 | 289人 | 7.9% |
その他 | 1,235人 | 52人 | 4.2% |
学生の願書提出者が9,022人ともっとも多く、次に無職・会社員が続いています。
学生の割合が高い背景には、大学時代に資格取得を計画的に進める方が多いことが挙げられます。
会社員や無職の受験者も一定数いることから、働きながら、または転職活動の一環として公認会計士資格取得を目指している方も多いと言えるでしょう。
公認会計士を目指す3つのメリット
公認会計士試験の合格を目指すための道は厳しいですが、合格後には次のようなメリットが得られます。
- 高い収入で生活が安定しやすい
- 幅広い業務に携われる
- やりがいを感じやすい
1つずつ見ていきましょう。
高い収入で生活が安定しやすい
公認会計士の平均年収は746万円で、日本の全職種の平均年収と比べて高い水準です。
さらに大手企業では平均年収があがり、922万円(※)となっています。
「BIG4」と呼ばれる4大大手監査法人では、早い人では30歳前後で年収が1000万円を超えることもあります。
公認会計士は専門知識と資格が求められる職種であるため、給与水準は一般的に高めに設定されています。
また、経験を積めば収入アップが期待でき、企業によっては資格手当が支給されることもあります。
さらに、公認会計士は経済情勢に影響されにくい安定した職種なため、長期的なキャリアを築きやすいのも大きなメリットです。

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幅広い業務に携われる
公認会計士の魅力のひとつは、キャリアの選択肢が豊富なことです。
会計監査やコンサルティング、税務など、さまざまな分野での活躍が可能です。
資格を生かして事業会社に勤務したり、コンサルタントになったり、税理士として独立開業したり(公認会計士は税理士登録が可能)と、理想の働き方を実現しやすいでしょう。
また、社会のさまざまな場面で必要とされる職種であり、失業のリスクが低いのも魅力です。
資格を生かした仕事の幅が広いため、どのような経済環境でも自身のスキルを活用できます。
理想の働き方や分野に挑戦したい方にとって、公認会計士は大きなメリットを感じられるでしょう。
やりがいを感じやすい
公認会計士の仕事は、社会的な意義が大きく、やりがいを感じられる職業です。
企業の財務諸表を監査することにより、投資家や株主の利益を守り、健全な経済活動を支える役割を担っています。
また、経営者と直接関わる機会が多く、企業の成長を支援する重要な立場でもあります。
とくに、財務的な課題を抱える企業に専門的なアドバイスを行い、その企業が業績を回復させたときには、大きな達成感を得られるでしょう。
常に新しい会計基準や法改正に対応する必要があるため、知的好奇心を満たしながら自己成長を続けられる点も魅力です。
このような充実感は、仕事だけでなく日々の生活にもよい影響を与えてくれるでしょう。
社会人が公認会計士を目指すための勉強方法
社会人が公認会計士を目指すには、限られた時間を効率的に活用し、自分にあった勉強方法を選ぶことが大切です。
以下では、代表的な3つの勉強方法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
- 独学で費用を抑えて勉強する
- 予備校や専門学校に通って学ぶ
- 通信講座で時間や場所に縛られずに学習する
1つずつ解説します。
独学で費用を抑えて勉強する
独学は、費用を抑えたい社会人にオススメの方法です。
まずは、公認会計士試験に必要な参考書や過去問題集を揃え、基礎から学習していく流れになります。
独学のメリット
- 学習にかかる費用を大幅に抑えられる
- 自分のペースで学習を進められる
独学のデメリット
- すべてを独学で進めるのは難易度が高い
- わからない内容を自分で解決するスキルが必要
- 孤独を感じやすい
社会人が独学で公認会計士を目指すなら、教材選びと学習計画の立て方がとくに重要です。
また、モチベーション維持が課題となるため、インターネットで同じ志をもつ仲間とつながり、孤独感を解消しながら学習を継続させるとよいでしょう。
予備校や専門学校に通って学ぶ
予備校や専門学校は、公認会計士試験の勉強方法として多くの受験生に選ばれる方法のひとつです。
予備校・専門学校のメリット
- 効率的なカリキュラムで必要な知識を学べる
- 独学では理解が難しい部分も解決できる
- 同じ目標をもつ仲間との交流で、モチベーションアップにつながる
予備校・専門学校のデメリット
- 学費が高額になる
- 通学に時間がかかる
- 講義の時間が決まっていて仕事との両立が難しい
予備校や専門学校では、基礎から応用まで体系的に学べるカリキュラムが組まれており、総合的な学習環境が整っています。
- 各科目の基礎知識から試験で頻出の問題
- 最新の試験傾向にもとづいた模擬試験
プロの講師による指導を受け、着実に合格を目指したい方には、予備校や専門学校での学習が適しています。
通信講座で時間や場所に縛られずに学習する
通信講座は、スマホやパソコンを使って自分のペースで学べる現代的な学習方法です。
通信講座のメリット
- 場所や時間に縛られずに学べる
- スキマ時間を効率的に使った学習が可能
- 仕事や家庭の事情にあわせやすい
- 理解できなかった部分を繰り返し学習できる
通信講座のデメリット
- 独学に近い形となるため、自己管理が重要モチベーション維持が難しい
予備校の半額程度の費用で済み、教材の保管場所に困ることはありません。
通勤時間やスキマ時間を活用して学習を進められるため、忙しい社会人でも効率よく学べます。
また、録画講義であるため、理解が難しい部分を繰り返し学習できる点も魅力です。
ただし、独学に近い形で進めるため、自己管理能力が求められます。
通信講座を選ぶ場合は、社会人の学習ニーズにあったものを選ぶことが大切です。
たとえば「スタディング」は通勤時間や移動時間にスマホで気軽に学べるため、社会人の学習スタイルに適しています。
スマホを活用した講座は、移動時間を有効に使いたい社会人には便利な選択肢となるでしょう。
公認会計士に関するよくある質問
最後に、公認会計士に関するよくある質問を紹介します。
- 独学でも公認会計士を目指せる?
- 簿記1級・2級から公認会計士を目指すのに必要な勉強時間は?
独学でも公認会計士を目指せる?
公認会計士試験は独学でも挑戦できますが、難易度は高いため、計画力と自己管理能力が必要です。
試験内容を深く理解するために、参考書を使った学習に加え、過去問題や模擬試験を活用して試験形式に慣れましょう。
また、独学では質問できる環境がないため、行き詰まるとモチベーションが下がりやすい傾向があります。
もし学習が思うように進まない場合や、勉強の方向性に不安を感じた場合には、予備校や通信講座などのサポートを活用しましょう。
たとえば資格合格パートナーの「スタディング」では、1動画5分から手軽に学べるため、通勤前や休憩中などスキマ時間を勉強時間に充てられます。
効率的な学習環境を整えることで、独学ではカバーしきれない部分を補いたい方は、検討してみるとよいでしょう。
簿記1級・2級から公認会計士を目指すのに必要な勉強時間は?
日商簿記検定試験の1級・2級から公認会計士を目指す場合は、1,000~1,500時間ほどの追加学習が必要です。
この時間は個人の理解力や学習効率によって大きく変動します。
簿記1級・2級保持者は、財務会計の基礎がすでに身についているため、その分野での学習時間を短縮できる可能性が高いと言えます。
しかし、公認会計士試験には監査論や企業法など、簿記には含まれない範囲が多いのが特徴です。
新しい分野をいちから学ぶ必要があり、さらに試験対策のための応用力を鍛える学習も必須です。
平日は1日2~3時間、土日は5~6時間ほど確保できれば、1年半から2年で合格に必要な知識が身につくでしょう。
仕事との両立を考える場合は、2年から3年の期間を想定して、無理のないペース配分で進めるのがオススメです。
まとめ|自分にあう勉強方法を見つけて、公認会計士を目指そう
公認会計士を目指すためには平均3,000~5,000時間という膨大な時間と努力が必要ですが、その価値は十分にあります。
資格取得後には高収入や幅広いキャリア選択肢など、多くのメリットがあります。
試験合格を目指すなら、自分にあった効率的な勉強方法を選び、無理なく継続することが大切です。
とくに社会人の方は、時間や場所に縛られず、スマホでも学習できる「スタディング」が適しています。
社会人の忙しいライフスタイルにあわせた柔軟な学習環境を提供しており、スキマ時間を有効に活用できるのが魅力です。
お試し講座は無料で受けられるため、独学を検討している方も、実際の学習環境や雰囲気を体感してみてください。