
「公認会計士を目指すなら、まずは簿記から勉強したほうがいいのでは?」と考える人もいるかもしれません。
たしかに公認会計士試験と簿記には共通する部分があります。
しかし、簿記から始めるのは遠回りになるケースも少なくありません。
この記事では、その理由をくわしく解説するとともに、簿記から始めるメリットや簿記の知識の生かし方についても紹介します。
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簿記から公認会計士を目指すのは遠回り
公認会計士を目指すにあたって、簿記から勉強する必要はありません。
もちろん、日商簿記検定の資格は公認会計士試験と共通する部分があるため、簿記の知識は役に立つといえます。
しかしそれは、公認会計士試験に向けた勉強の中でじゅうぶんに身につけることが可能です。
むしろ、簿記の資格取得にこだわって遠回りになるよりも、最初から公認会計士試験の対策に集中したほうが、効率的に合格を目指せます。
ここでは、簿記から公認会計士を目指すのが遠回りになってしまう理由についてお伝えします。
簿記の資格は公認会計士試験の受験に必要ない
ひとつめの理由が「簿記の資格は公認会計士試験の受験に必要ないため」です。
公認会計士試験は誰でも受験できるものであり、年齢や学歴、取得資格などの制限はありません。
簿記の資格を持っていなくても受験できるため、わざわざ簿記から勉強する必要はないのです。
公認会計士試験の概要についてはこちらの記事にまとめています。

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簿記の資格があっても公認会計士試験に直接的な優遇措置はない
公認会計士試験では、簿記の資格を持っていても、科目免除や得点加算といった直接的な優遇措置は一切なく、本番の試験におけるメリットはありません。
公認会計士試験においては、簿記の資格を持っている人と持っていない人は、同じ条件で試験を受けることになるのです。
簿記から始めると公認会計士になるまでに時間がかかる
簿記の資格を段階的に取得してから公認会計士を目指そうとすると、トータルの勉強時間が大幅に増えてしまいます。
具体的な勉強時間を見てみましょう。
簿記の資格取得に必要な勉強時間の目安は、以下のとおりです。
- 簿記3級:約50~100時間
- 簿記2級:約100~200時間
- 簿記1級:約400~600時間
公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は約3,000~5,000時間とされています。
つまり、簿記3級・2級・1級・公認会計士試験の順に勉強を進めるとなると、合計で約3,500~5,900時間にもなる計算です。
ただし、簿記の内容は財務会計論と重なる範囲が多いため、簿記の勉強を先行すればその分だけ財務会計論の学習時間を節約できると考えられます。
簿記から始める場合でも、実際には約3,500~5,900時間より少ない時間で済むこともあるでしょう。
とはいえ、最初から公認会計士試験対策に集中すれば、このうち数百時間を節約できます。
効率良く合格したいなら、簿記から勉強するのではなく、公認会計士試験の対策から始めるのが賢明です。
簿記合格と公認会計士試験合格に必要な勉強時間については、こちらの記事にまとめています。

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簿記から公認会計士を目指す2つのメリット
公認会計士を目指すにあたって、簿記の資格を取得する必要はないとお伝えしていますが、簿記から勉強を始めることには以下のようなメリットもあります。
- 公認会計士試験と簿記は重複する内容が多い
- 知識を段階的に積み上げられる
ひとつずつ解説します。
公認会計士試験と簿記は重複する内容が多い
日商簿記検定の範囲は公認会計士試験と重複する部分があります。
日商簿記検定の商業簿記・会計学は公認会計士試験の「財務会計論」と、工業簿記・原価計算は「管理会計論」と範囲が重なっています。
つまり、簿記で習得した知識を公認会計士試験対策にも生かせるのです。
知識を段階的に積み上げられる
簿記から勉強することで、知識を段階的に積み上げられる点もメリットのひとつです。
簿記の資格は以下のように、知識を積み重ねるように範囲が広がっていきます。
- 簿記3級:商業簿記
- 簿記2級:商業簿記+工業簿記
- 簿記1級:商業簿記・会計学+工業簿記・原価計算
前の級の知識をベースに、より深く、広くなっていくイメージです。
簿記から勉強すると、ひとつずつ丁寧に知識を習得できるため、勉強の途中で挫折するリスクも減らせるでしょう。
ただし、公認会計士試験では会計分野だけでなく、監査論や企業法などの理論科目も試験範囲であるため、単に簿記だけを極めても合格は難しいです。
こちらの記事では公認会計士の試験内容をまとめていますので、あわせて確認してみてください。

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簿記から公認会計士を目指すのが良い人の特徴2選
一般的には、簿記から公認会計士を目指すと遠回りになってしまいます。
しかし目的や状況によっては、簿記から段階的に学習を始める方が合っている人もいます。
具体的には以下のような人です。
- 自分が会計に向いているか確認したい人
- 経理や税理士補助などでの転職も視野に入れている人
それぞれ見ていきましょう。
自分が会計に向いているか確認したい人
これまで会計に触れたことがない人にとって、公認会計士の勉強はハードルが高く感じられるかもしれません。
そのような場合は、まず簿記から勉強を始めることで、自分が会計分野に興味をもてるか、理解できるかを確かめることができます。
簿記は会計の基礎的な知識を段階的に学べるため、学習の入口として最適です。
また、比較的短期間で成果が見えやすく、合格できれば自信につながります。
自分が会計に向いているのかわからず不安がある場合は、まず簿記で適性を確認するのもひとつの方法です。
経理や税理士補助などでの転職も視野に入れている人
公認会計士を目指しながら、経理や税理士補助への転職を視野に入れている人もいるでしょう。
そのような人にとって簿記の資格取得は、公認会計士試験の基礎を学べるだけでなく、転職でも有利になるというメリットがあります。
特に日商簿記2級以上を取得していれば、実務で求められる会計知識があることを証明でき、転職活動において高く評価される傾向があります。
もちろん公認会計士試験においても、その知識はじゅうぶんに生かせます。
公認会計士試験の勉強と転職を両立したい人には、簿記からのスタートが堅実な選択肢となるかもしれません。
簿記の知識は公認会計士試験にどう生かせる?
簿記の知識は、公認会計士試験に以下のような点で生かせます。
- スムーズに勉強をスタートできる
- 挫折リスクを減らせる
すでに簿記の知識がある人は、積極的にその知識を生かしていきましょう。
これから簿記を勉強し、公認会計士試験に生かしたいとお考えの人は、どのような点で生かせるのか確認してみてください。
スムーズに勉強をスタートできる
簿記の知識を持つ人は、すでに会計の基礎を理解した状態から公認会計士試験の学習をスタートできます。
会計のベースとなる概念を習得しているため、公認会計士試験の学習内容が頭に入りやすいでしょう。
また、簿記で培った基礎知識があることで、応用分野への展開もスムーズに進みます。
公認会計士試験の複雑な論点や計算問題にも、早く慣れることができ、効率的な学習が可能になります。
挫折リスクを減らせる
公認会計士試験の合格率は8%前後と非常に低く、難しい試験です。
その難しさゆえに、学習の途中で挫折してしまう人も多くいます。
会計の基礎知識がない状態で挑戦すると、専門用語や基礎知識の理解だけで時間がかかってしまい、本質的な学習に進む前に心が折れてしまうケースも考えられます。
その点、簿記の知識がある人なら、基本的な考え方にすでに慣れているため、初学者に比べて公認会計士試験の内容を理解しやすいです。
簿記で学んだ基礎の延長として捉えることができ、つまずきも減らせるでしょう。
公認会計士になるのに簿記から始めなくてもOK
この記事では「公認会計士になるには簿記から勉強すべき?」について説明しました。
以下、今回のまとめです。
- 簿記の資格は公認会計士の受験資格ではなく、試験における優遇措置もない
- 日商簿記検定と公認会計士試験の出題範囲には重複があるため、段階的に知識を積み重ねられる点は簿記から始めるメリット
- 会計の適性があるか確認したい人や、経理などでの転職を考えている人は簿記から学習を始めるのがよい
- 簿記の知識があれば、公認会計士試験の勉強をスムーズにスタートできたり、挫折リスクを減らせたりする
公認会計士になりたいなら、簿記から勉強するよりも、1日でも早く公認会計士試験の対策を始めるほうが効率的です。
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