
女性公認会計士の年収が気になる方のなかには「女性でも高収入を目指せるのか」「男女で年収差はあるのか」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
女性の公認会計士が年収を上げるには、男女の年収差の背景を理解し、キャリアの方向性を見直すことが大切です。
この記事では、以下の内容を紹介します。
- 女性公認会計士の平均年収
- 公認会計士の男女間での年収差
- 年収差が生じる理由
- 女性公認会計士のキャリアアップ法
本記事を読むことで、女性公認会計士の年収に関する理解が深まり、キャリアパスや収入アップに向けた具体的な選択肢を考えることができるでしょう。
※ここで挙げている「女性公認会計士の年収」とは、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によるものです。「令和6年賃金構造基本統計調査」では、女性公認会計士と女性税理士の年収を合わせた平均年収が記載されています。厚生労働省の調査に基づき、本記事での女性公認会計士の年収は女性税理士を含むものとして記載しております。
女性公認会計士の年収と男女の年収差
日本公認会計士協会の取り組みや監査法人の支援制度により、女性公認会計士は増えています。
しかし、女性会計士の年収は男性と比べて低い傾向があります。
ここでは、以下の2つについて解説します。
- 女性公認会計士(女性税理士を含む)の平均年収は589万円
- 公認会計士の男女の年収差
女性公認会計士の平均年収は589万円
「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、女性公認会計士(女性税理士を含む)の平均年収は589万円であり、全職種における女性の平均年収である約419万円と比べて高い水準です。
女性公認会計士の初任給は、同調査の経験年数別の給与からみると約30万円でした。
こちらも、全職種の平均初任給約24万円に比べて高い値です。
また、公認会計士の年収は勤務先により大きく異なり、大手監査法人で働く場合は年収が高くなる傾向があります。
公認会計士の男女の年収差
男性と女性の公認会計士の年収差は、同じく厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると以下の表のとおりです。
▼年齢別の公認会計士(税理士を含む)の平均年収(男女別)
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20歳~24歳 | 約383万円 | 約359万円 |
25歳~29歳 | 約644万円 | 約545万円 |
30歳~34歳 | 約585万円 | 約507万円 |
35歳~39歳 | 約856万円 | 約683万円 |
40歳~44歳 | 約1,115万円 | 約517万円 |
45歳~49歳 | 約1,226万円 | 約527万円 |
50歳~54歳 | 約1,206万円 | 約900万円 |
55歳~59歳 | 約1,097万円 | 約687万円 |
データをみると、どの年齢層においても男性公認会計士の年収が女性を上回っています。
では、なぜ男性と女性で年収が異なるのでしょうか。
次の章では、女性公認会計士の年収が男性よりも低くなる理由について解説します。

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女性公認会計士の年収が男性よりも低くなる理由
女性公認会計士の年収が男性より低くなる原因は、以下の2つが影響していると考えられます。
- ライフスタイルの変化による影響がある
- 子育てと仕事の両立が難しい時期がある
ライフスタイルの変化による影響がある
結婚や出産といったライフスタイルの変化は、女性公認会計士のキャリアに大きな影響を与えます。
結婚や出産を機に休職や退職をする方も多く、キャリアが中断することがあるためです。
キャリアを中断することにより同じ年齢の男性と比べて経験やスキルを積む機会が少なくなり、昇進のスピードに影響が出ることがあります。
しかし、公認会計士は国家資格であるため、出産や子育てのために育児休暇を取得したあとも、一般的な職種に比べてキャリアが継続しやすいのが特徴です。
育児休業後に職場に復帰し、時短勤務制度を活用しながら働く女性公認会計士も増えています。
もちろんこれは女性に限ったことではありません。
たとえば、男性社員の育休取得率が約87%という監査法人もあり、男性も家庭の事情や育児のために時短勤務を利用するケースも増えています。
子育てと仕事の両立が難しい時期がある
出産後に子育てと仕事の両立のため長時間労働や出張が制限され、キャリアやスキルアップの機会が限られてしまう場合があります。
これらの問題を改善するため、日本公認会計士協会や監査法人ではフレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方ができる制度を整備しています。
支援制度の充実により、仕事と家庭を両立させながら、着実にキャリアを積み重ねられる環境が整いつつあります。
女性が公認会計士になる3つのメリット
きめ細やかな配慮が必要な公認会計士は、女性が活躍しやすい仕事です。
そのほかにも、女性公認会計士には、以下のようなメリットがあります。
- 女性公認会計士向けの制度が充実
- 高収入が見込める
- 仕事内容に男女差がない
女性公認会計士にも嬉しい制度が充実
公認会計士業界では、結婚・出産後も働き続けられる支援制度が整えられています。
たとえば、育児休暇やフレックスタイム制度、リモートワークなどです。
リモートワークの普及は、長時間の通勤を避けられるだけでなく、子育て中の女性が仕事と家庭を両立しやすい環境を生み出しました。
また、フレックスタイム制度を組み合わせることで、さらに柔軟な働き方が可能になります。
このような制度は、男女問わず取得可能な環境が整備されている企業が増加しています。パートナーと協力して育児を行いつつ、自分のペースでキャリアを築きやすくなっていると言えます。
高収入が見込める
前章で紹介したとおり、公認会計士は他の職業と比べて高い給与水準が見込める仕事です。
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、女性の全職種の平均年収よりも女性の公認会計士(女性税理士を含む)の平均年収は約170万円高く、高収入が見込まれることが分かります。
公認会計士の高い専門性を活かせる働き方のひとつとして、非常勤という選択肢もあります。
公認会計士の非常勤は時給2,000円~4,000円ほどと高水準です。
これにより、一般的なパートと比べてより安定した収入を得られる可能性があります。
経験やスキル次第では時給が8,000円まで上がることもあります。
米国公認会計士(USCPA)や税理士などの資格を取得したり、語学力や特定の業界知識を身につけたりすることで、さらに収入を増やすチャンスも広がるでしょう。
公認会計士は、ライフステージの変化に合わせて柔軟な働き方を選択できる資格と言えます。
仕事内容に男女差がない
監査や会計の仕事内容は男女で差がなく、重視されるのは知識と経験です。
企業の重要な意思決定に関わる監査業務や経営者へのアドバイザリー業務は、経験とスキルを持つ公認会計士に任されます。
昇給や昇進も実力本位で決定され、男女ともに平等なキャリアアップの機会が用意されています。

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女性公認会計士の働き方とキャリアパス
女性の公認会計士がスキルや経験を身につけたあとのキャリアパスは、以下の3つがあります。
- 監査法人
- 一般企業
- 独立開業
監査法人
監査法人で働く公認会計士は、企業や組織の財務報告書をチェックし正確さを保証する役割を果たします。
大規模なプロジェクトに関わることも多く、成長しやすい環境が整っている点が特徴です。
監査法人のキャリアパスは、以下のとおりです。
- スタッフ
- シニアスタッフ
- シニア
- シニアマネージャー
- パートナー
スキルや経験次第で、数年のうちにシニアスタッフに昇格できる方もいます。
監査法人では、役職が上がるたびに100万~200万円程度の年収アップも期待できます。
そのため、一般企業よりもキャリアアップに伴う年収の上昇が見込まれるのが魅力です。
一般企業
公認会計士の資格を活かせるキャリアのひとつとして、一般企業の経理や財務部門への転職が挙げられます。
一般企業では、公認会計士としての専門知識や分析力を活かした業務に従事できます。
一般企業への転職は、役職に就く機会が得られたり年収が高い水準で設定されたりするため、キャリアアップや年収アップを図れる点がメリットです。
また、転職によってより働きやすい環境を手に入れ、仕事とプライベートの両立を実現できる可能性もあります。
ただし、転職先の業界や企業によっては、専門知識や業務スキルを新たに習得する必要が生じるケースがあります。
独立開業
スキルや経験のある公認会計士は、独立開業が可能です。
独立によって年収アップを目指せることや、自分の裁量でワークライフバランスを調整できることが大きな魅力です。
一方で、経営者として責任を負う立場になったり、収入が安定しなかったりする可能性もあります。
また、個人事務所では大手企業の監査業務を受けにくいというデメリットも考えられます。
独立を目指す際は、自由度の高さに伴う責任やリスクを理解し、自身のキャリアプランに合わせて慎重に判断することが大切です。
十分な経験やスキル、人脈を持った公認会計士にとって、独立開業は魅力的な選択肢のひとつと言えます。
女性公認会計士が仕事と子育てを両立する3つのコツ
子育て中の公認会計士が仕事と家庭を両立させるコツは、以下の3つです。
- 出産前にキャリアを積んでおく
- 育児との両立を想定した働き方を考える
- 女性が働きやすい企業に転職する
出産前にキャリアを積んでおく
育児が始まると働き方や勤務時間が変わり、キャリアアップを望んでも経験やスキルを積むのが難しくなることがあります。
出産を視野に入れている方は出産前にキャリアの基盤を固めておくことで、復帰後もキャリアを継続しやすくなります。
また、最終的なキャリア目標を明確に設定し、出産後にどのような働き方をしたいのかを事前に検討しておくことも大切です。
さらに、育児と両立しながらキャリアを築いている女性の話を参考にしたり、転職エージェントに相談したりして、自分に合った働き方を探すことも良い方法です。
将来のキャリアアップのための準備を出産前にしておくことで、出産後もキャリアを継続しやすくなるでしょう。
育児との両立を想定した働き方を考える
仕事においては、単身者も家庭を持っている人も同じようにプロフェッショナルとしてのサービスを提供する必要があります。
育児や家庭と仕事を両立するには、女性に限らず同僚や上司の理解、協力が必要です。
また、限られた時間で効率的に業務をこなし成果を上げるには、前もって仕事を進める計画性と工夫も求められます。
さらに、家族の協力体制も重要です。
家事や育児を分担したりお互いの仕事を理解し合ったりすることで、よりスムーズに仕事と家庭の両立が可能になります。
最近では、男性側の企業の育休制度を活用し、家族間で協力している方も多くみられます。
周囲のサポートに感謝し、積極的にコミュニケーションをとることで、より良い職場環境を築けるでしょう。
女性が働きやすい企業に転職する
公認会計士の女性が働きやすい環境を求めて一般企業に転職することは、ワークライフバランスの改善と年収アップを実現する方法のひとつです。
企業選びでチェックすべき勤務条件は、以下の3つが挙げられます。
- 育児中の女性に対するサポート
- 働き方(勤務時間やリモートワークなど)
- 残業時間や出張の有無
たとえば、産休や育休、時短勤務制度が整っていれば、出産後の復帰がスムーズになります。
また、リモートワークやフレックスタイム制度など、働き方が柔軟な企業は、家庭と仕事の両立がしやすくなるでしょう。
さらに、残業時間や出張の有無についても確認し、プライベートと仕事のバランスが取れる環境かどうかの確認も大切です。
女性公認会計士が収入を増やす方法
女性公認会計士が収入を増やすために有効な方法は、以下の3つです。
- ダブルライセンスの取得
- USCPA(米国公認会計士)の取得
- ビジネススキルの強化
公認会計士資格の保有者は、無試験で税理士や行政書士の登録が可能です。
複数の資格を組み合わせる「ダブルライセンス」を取得して専門性を高めることで、活躍の場を広げられます。
また、USCPAを取得すれば、グローバル企業や外資系企業でのキャリアも築けるでしょう。
さらに、語学力やITスキル、コミュニケーション能力の強化も、年収向上につながる要素です。
女性公認会計士が年収を上げるには、会計や監査の知識に加えて他の分野の知識も持ち、公認会計士としての市場価値を高めることが重要になります。
女性公認会計士の年収は、キャリア戦略と資格が重要
本記事では、女性公認会計士の年収と男女の年収差について解説しました。
女性公認会計士の年収は、平均589万円と高い水準です。
しかし、男性に比べると低い傾向がみられます。
女性公認会計士の年収が男性より低くなる理由は主に、以下2つの背景が影響しています。
- 結婚や出産によるキャリアの中断
- 子育てとの両立の難しさ
近年の日本公認会計士協会や監査法人では、柔軟な働き方を支援する制度を整備しており、女性のキャリア継続をサポートしています。
また、転職や資格取得でキャリアアップや働きやすさを手に入れられる可能性もあります。
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