公認会計士の就職先は?人気の業種から就職の流れまでを解説

公認会計士に合格後、どこに就職するべきなのか疑問を抱いている方もいるでしょう。

公認会計士は、監査法人をはじめ、税理士法人・一般企業など、活躍できる場が多い資格です。

ただし、就職先ごとの業務内容やキャリアパスは異なるため、自分に合った進路を選ぶ必要があります。

本記事では、公認会計士の就職先や、試験合格後の就職までの流れを詳しく解説します。

将来のキャリアに不安を感じている方、自分に合った就職先を見つけたい方は、ぜひ参考にしてください。

公認会計士の平均年収は約922万円

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、企業規模1,000人以上に勤める公認会計士の平均年収は約922万円です。

監査法人勤務の場合、年収はおおよそ900万〜1,000万円前後が相場です。

大手企業への転職や独立開業を通じて、年収が上がるケースも少なくありません。

独立して会計事務所を構える場合は、年収に幅がありますが、その分自由度が高く、自分の裁量で働けるのが魅力です。

ただし、クライアントの獲得や経営面の責任はすべて自分で負う必要があるため、ビジネススキルも求められます。

公認会計士の就職先9選

公認会計士は、監査法人をはじめ、一般企業や金融機関など幅広い業種で活躍できます。

ここでは、公認会計士の代表的な就職先9つを紹介し、それぞれの特徴について解説していきます。

  • 監査法人
  • 税理士法人
  • 会計事務所
  • コンサルティングファーム
  • 一般事業会社
  • スタートアップ・ベンチャー企業
  • 銀行・証券会社などの金融機関
  • 公的機関・教育機関
  • 独立・開業

監査法人

監査法人は、公認会計士の約9割が最初に就職する代表的な就職先です。

主な業務は、企業の財務諸表が適切に作成されているかをチェックする監査業務です。

加えて、内部統制の評価やアドバイザリー業務も行います。

監査法人での勤務は、公認会計士としての実務経験を着実に積み、専門スキルを高める絶好の機会です。

そのため、将来のキャリアの土台を築くうえで最適な環境といえます。

以下では、監査法人の規模ごとの特徴を解説します。

大手監査法人「BIG4」

BIG4(四大監査法人)とは、世界的に展開する国際的な会計事務所グループ「BIG4」の日本法人にあたる監査法人の総称です。

国際会計事務所グループ(BIG4)日本の監査法人名
KPMG有限責任 あずさ監査法人
EY(アーンスト・アンド・ヤング)EY新日本有限責任監査法人
Deloitte(デロイトトウシュトーマツ)有限責任監査法人トーマツ
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)PwC Japan有限責任監査法人

BIG4は、国内外の主要な上場企業やグローバル企業、大企業が主なクライアントです。

監査業務だけでなく、コンサルティングや財務アドバイザリー業務など、幅広くサービスを展開しています。

また、研修制度も充実しており、グローバルな案件に携わるチャンスも豊富です。

一方で、業務量が多く忙しくなりがちですが、短期間でスキルアップしたい方や将来的に転職を考える方に適しています。

準大手・中堅監査法人

準大手・中堅監査法人は、BIG4に次ぐ規模の監査法人であり、クライアントの多くは中堅上場企業や地元の有力企業です。

代表的な法人は、下記のとおりです。

  • 仰星監査法人
  • 三優監査法人
  • 太陽有限責任監査法人
  • 東陽監査法人

これらの法人では企業の成長過程に深く関与できるため、クライアントとの距離が近く、やりがいを感じやすい環境です。

また、組織の規模が比較的小さいため、自分の意見が通りやすい魅力があります。

風通しのよい職場を求める方に適しています。

中小監査法人

中小監査法人では、少人数体制での監査業務が基本となります。

ひとりあたりの担当業務範囲が広く、裁量をもって働く機会が多いのが特徴です。

また、大手に比べてマニュアルに縛られすぎず、実務の本質にじっくり向き合える環境が整っています。

近年では、BIG4などから中小監査法人へ転職する公認会計士も増加傾向にあります。

理由は、下記のとおりです。

  • 残業が少なくワークライフバランスが取りやすい
  • 給与水準が意外と高い
  • 組織の中で昇進・昇格しやすい

地域密着型の支援業務に魅力を感じる方に向いています。

税理士法人

公認会計士は税理士登録を行うことで、税理士業務に従事できます。

そのため、税理士法人への就職は一般的な就職先のひとつです。

税理士法人では、下記のような業務に携わります。

  • 企業や個人の税務申告
  • 税務相談
  • 節税対策

規模としては、小規模な少数精鋭型から、大手監査法人の関連会社として展開する大手法人までさまざまです。

税務の専門性を高めたい方や、監査業務以外の経験を積みたい方にとって、有意義な職場となるでしょう。

税務のプロフェッショナルとしてのキャリアを築きたい場合に、適しています。

会計事務所

会計事務所は、公認会計士の活躍の場として挙げられます。

また、税理士登録をし、税務中心の業務を行う場合もあります。

中小企業や個人事業主を対象に、下記のような幅広い業務を行うのが特徴です。

  • 日常的な会計処理
  • 財務諸表の作成
  • 税務申告

公認会計士は、会計・税務両面に精通した専門家として、クライアントを支援できるのが特徴です。

監査業務を行う事務所もあるため、幅広い実務を経験できる環境です。

将来的に独立を視野に入れている方にも、適した選択肢といえるでしょう。

コンサルティングファーム

コンサルティングファームでは、公認会計士の専門性を生かし、企業の経営課題や財務戦略に対するアドバイスを行います。

財務アドバイザリーやM&A支援、企業再生支援といった分野で、高度な知識と経験が求められます。

中でも、FAS(Financial Advisory Service)に特化したファームは年収水準が高く、ハイキャリア志向の方に人気です。

業務の密度は高く、多様な業界のクライアントと関わることで、専門性と対応力の両方を養えます。

一般事業会社

近年、公認会計士が監査法人や会計事務所だけでなく、一般事業会社の経理・財務部門へ就職するケースが増加しています。

上場企業や大手企業では、会計士を社内に置くことで、財務戦略の高度化や内部統制の強化を図っています。

一般事業会社で担当する業務内容の例は、下記のとおりです。

  • 決算処理
  • 財務分析
  • 予算管理
  • 内部監査

経営判断に関わるポジションに就くことも可能です。

経営企画やCFO(最高財務責任者)といったキャリアパスも目指せる点が魅力で、働き方やワークライフバランスを重視する方に適しています。

スタートアップ・ベンチャー企業

急成長を目指すスタートアップやベンチャー企業も、公認会計士にとって魅力的な活躍の場です。

これらの企業では、事業拡大に伴い、下記の場面で公認会計士の知識と経験が重宝されます。

  • 財務や内部統制の整備
  • 資金調達
  • IPO(株式公開)準備

変化の激しい環境である一方、経営陣に近い立場で実務に携われるため、スピーディーな成長と実践的なスキルアップが期待できます。

企業の成長とともに、自身がCFOや経営幹部として活躍する可能性も高いです。

将来的に独立を目指す方には、貴重な経験を積める魅力的な選択肢といえるでしょう。

銀行・証券会社などの金融機関

銀行・証券会社などの金融機関でも、公認会計士の専門性が求められる場面は多くあります。

金融業界では、企業の財務状況を正確に分析し、リスクを評価する能力が不可欠なためです。

銀行と証券会社で行う業務は、下記のとおりです。

銀行融資判断
信用リスク評価
証券会社M&A
IPO支援
財務デューデリジェンス(企業の財務状況調査)

会計と財務の両方に精通した公認会計士は、複雑な財務諸表を深く読み解き、リスクを的確に把握できます。

そのため、投資判断や資金調達などの場面で、価値を発揮できるでしょう。

専門性を生かしつつ、経営判断に貢献するやりがいのある道です。

公的機関・教育機関

公認会計士の知識は、公的機関や教育機関でも活用されています。

金融庁や財務省、金融商品取引所などの機関では、下記の業務に携わります。

  • 監査法人や証券会社に対する監視・指導
  • 法定開示資料の審査業務

安定した職場環境と、公共性の高さが魅力です。

一方、教育機関では大学や資格学校の講師として、会計学や税法などを教えられるため、知識を次世代に伝えるやりがいもあります。

いずれも社会貢献性が高く、専門知識を深めたい方におすすめのキャリアです。

独立・開業

公認会計士として一定の経験を積んだあと、独立・開業を目指す方も多くいます。

自身の専門性を生かして、税理士業務やコンサルティング業務を自由に展開できる点が魅力です。

ただし、独立は容易な道ではありません。

事務所の設立準備や必要な設備の導入、クライアントを獲得するための営業活動は必須です。

安定した収入を確保できるまでは、相応の時間と努力を要します。

そのため、独立前から人脈を築いたり、特定の分野での専門性を高めたりするなど、周到な準備と戦略が成功への近道となります。

自身の強みを明確にし、ほかの事務所との差別化を図ることが重要になるでしょう。

公認会計士の仕事内容については、こちらの記事でも解説しています。

公認会計士の就職までの流れ

試験に合格しただけでは、公認会計士にはなれません。

正式な登録には、原則として3年以上の実務経験(業務補助等)と、実務補習所での単位取得・修了考査の合格が必要です。

そのため、多くの合格者はまず監査法人などに就職し、実務経験を積みはじめます。

一般的な就職までのスケジュールは、下記のとおりです。

8月〜11月
(合格発表前)
予備校や監査法人主催の説明会、就職イベントに参加
志望法人を絞り込む
11月中旬公認会計士 論文式試験の合格発表
合格発表から
約1〜2週間以内
最終面接〜内定通知(早ければ1週間以内に決定する)
内定後実務、実務補習を開始
公認会計士登録に向けた学習が始まる

人気が高い大手監査法人(BIG4)などは競争が激しいため、説明会参加やOB・OG訪問など、早めに準備を進めましょう。

就職後は、実務経験と実務補習を積み重ね、正式な公認会計士登録を目指します。

公認会計士になっても就職できない場合がある?

公認会計士試験に合格しても、「本当に就職できるのか」と不安に感じる方もいるでしょう。

リーマンショックなどの経済危機時には採用が絞られ、合格しても就職が困難な「就職氷河期」と呼ばれる時期がありました。

一方、四半期決算や内部統制報告制度が導入された時期には、公認会計士の需要が急増し、比較的就職しやすかった時期もあります。

長期的に見れば公認会計士の専門性は高く評価されており、需要も安定しています。

また、学歴よりも実務経験や意欲が重視されやすく、近年ではコンサルや一般企業、ベンチャーなど、活躍の場も広がっているのが特徴です。

ほかの職種と比較した場合、公認会計士は就職しやすい傾向にあるでしょう。

【あわせて読みたい】No.6「公認会計士 食えない」

公認会計士が就職先選びで失敗しない4つのポイント

公認会計士試験に合格したあとは、就職活動を行う必要があります。就職先選びで後悔しないために、下記4つのポイントを押さえましょう。

  • 就職スケジュールを把握して早めに準備する
  • 志望先の特徴・求める人物像を理解する
  • 面接対策と自己分析を徹底する
  • キャリアプランに合った就職先を選ぶ

就職スケジュールを把握して早めに準備する

公認会計士の就職活動は、合格発表から約2週間以内に面接や内定通知が集中する傾向があり、短期間で動きが活発になります。

大手監査法人では、8月下旬から説明会が始まり、11月中旬の合格発表直後から面接・内定が一気に進行します。

そのため、8〜10月のうちに説明会へ参加し、10月以降は自己分析や面接対策を進めておきましょう。

中小法人や企業、税理士法人などは通年採用もあります。

しかし、早めに行動することで、内定獲得への安心感につながります。

志望先の特徴・求める人物像を理解する

就職先によって業務内容や社風、キャリアパスは大きく異なります。

それぞれの特徴を正しく理解し、自分の性格や価値観と照らし合わせて選びましょう。

とくに志望動機と自分の強みをどう結びつけて伝えるかが、採用の成否を左右します。

企業研究を丁寧に行い、「この会社でなら自分の力が発揮できる」と思える場所を見つけましょう。

面接対策と自己分析を徹底する

公認会計士試験合格者は、学生や若手社会人が多く、ビジネス面接に不慣れな方が大半です。

そのため、企業向けの面接に慣れ、自己PRの精度を高めておくことがポイントです。

まずは自己分析を通じて、これまでの経験から自身の強みや弱み、価値観を整理します。

そのうえで、具体的なエピソードを交えて話せるように準備しましょう。

企業の求める人物像を意識した受け答えを心がけ、入社後の成長意欲や貢献意欲を明確に伝えられると、ほかの候補者との差別化につながります。

また、自己分析を通じて強みや経験を明確にし、エピソードを交えて伝える力を養いましょう。

模擬面接やフィードバックを積極的に活用し、場慣れしておくのも効果的です。

キャリアプランに合った就職先を選ぶ

就職はゴールではなく、公認会計士としてのキャリアのスタート地点です。

将来どのような働き方をしたいか、公認会計士資格をどのような分野で生かしたいかを考えましょう。

安定を重視するなら監査法人や官公庁、スピード感や裁量の大きさを求めるならベンチャーやコンサルが向いています。

自分の将来像から逆算して就職先を選ぶことで、「この職場は合わなかった」と後悔するリスクを減らせるでしょう。

まとめ

公認会計士としての第一歩を踏み出すには、就職先選びが重要です。

合格後のスケジュールを把握し、自己分析や面接対策を行ったうえで、自分に合う環境を見極めましょう。

仕事内容や企業文化だけでなく、自分のキャリアプランとも照らし合わせながら選べば、後悔するリスクを減らせます。

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