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登録販売者は第2類医薬品と第3類医薬品の販売ができる、医薬品販売のプロがもつ資格です。第2類医薬品と第3類医薬品を合わせると、一般用医薬品の9割以上を占めるといわれており、私たちが入手する医薬品のほとんどを取り扱うことができます。
登録販売者として活躍するためには、年に1回各都道府県で実施される登録販売者試験に合格する必要があります。以前は受験資格として「学歴」と「実務経験」が必要でしたが、2015年の変更でどちらも撤廃され、誰でも受験できるようになりました。
この変更により、実務経験を経た状態で試験にチャレンジするだけでなく、試験に合格してから実務経験を積むなど、キャリアアップの方法を自身で選択しやすくなっています。また、受験資格の撤廃により受験者数も増加傾向にあります。過去の試験データから受験者数の推移をまとめていますので、下記の表でご確認ください。
実施年度 |
受験者数 |
2022年 | 55,606人 |
2021年 | 61,070人 |
2020年 | 52,960人 |
2019年 | 65,288人 |
2018年 | 65,500人 |
2017年 | 61,126人 |
2016年 | 53,369人 |
2015年 | 49,864人 |
2014年 | 31,362人 |
2013年 | 28,527人 |
2012年 | 28,050人 |
2011年 | 33,913人 |
2010年 | 39,116人 |
2009年 | 44,788人 |
2008年 | 91,024人 |
※参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」
登録販売者には「正規の登録販売者」と「登録販売者研修生」の2種類が存在します。両者の違いは、実務経験の有無にあります。
正規の登録販売者とは、試験の合格前後問わず、直近5年間で2年以上(月単位で計算。従事期間の通算が1920時間以上)の実務経験を積んでいる方※のことです。一方、登録販売者研修生とは、試験には合格しているものの上記実務経験を積んでいない方を指します。受験資格としての実務経験は撤廃されていますが、正規の登録販売者として働くためには、実務経験を経る必要があるのです。
実務経験を経ていない、登録販売者研修生はひとりで医薬品を販売することができません。レジ打ちや品出しといった一般的な業務であれば問題ありませんが、医薬品の販売に関しては制限がかかります。
実務経験を積むためには、薬剤師や一定の権限をもった登録販売者の指導のもと、研修生として働く必要があります。期間は直近5年間で2年以上ですが、連続して勤務する必要はありません。月当たりの時間数にかかわらず月単位で従事した期間が2年以上あり、かつ、過去5年間において、合計1920時間以上従事した場合※も、認められるとされています。例えば、1年働いてから休職し、復職してから1年働いた場合でも、5年以内に合計1920時間の基準を満たしていれば通算2年分の実務経験として認められます。
※令和5年4月1日、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令が施行され、これまでの管理者要件に加え、「過去5年間のうち従事期間が通算して1年以上」かつ「就業時間が通算して合計1920時間以上」であり、毎年「継続的研修」と、「店舗又は区域の管理及び法令遵守に関する追加的な研修」を修了した場合にも、管理者要件と認められることとなりました。
参考:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
実務経験を積んだ後は、実務従事証明書の申請が必要です。申請書は各都道府県のウェブサイトでダウンロードできるため、勤務先に必要事項を記入してもらったうえで提出しましょう。すでに退職している場合でも、勤務先に必要事項の記入に関する申し出が可能です。申し出が合った場合は、企業側は断ることができません。
この申請が許可され実務従事証明書が発行されると、正規の登録販売者となり、ひとりで店頭に立って医薬品を販売できるようになります。
指定の実務経験を積み、正規の登録販売者として認められると、「店舗管理者」として就労できます。店舗管理者とは、医薬品を扱う店舗に設置が義務付けられている役職で、お店の責任者と考えるとわかりやすいでしょう。医薬品だけでなく薬剤師や登録販売者の管理などを行います。店舗管理者要件を満たす登録販売者は、即戦力として期待され、就職や転職でも有利に働きます。現在、ドラッグストアやスーパーで働いている場合は、お給料のアップや資格手当ての支給も期待できるでしょう。
また、店舗管理者としてキャリアを重ねることで、店舗内での昇進だけでなく、将来的な独立も視野に入ってきます。
登録販売者に必要な実務経験は、パートやアルバイトなど、雇用形態とは関係がありません。アルバイトとして2年間働いた場合でも、実務経験の要件を満たすことができます。
ただし、実務経験として認められるのは、薬事関係の業務に携わった時間のみです。どの範囲の業務まで実務経験に含むことができるのかは、都道府県や勤務先によって異なるため、薬務課の窓口に問い合わせてみるのが確実です。
正規の登録販売者として申請が許可された後も、定期的に外部研修を受ける必要があります。厚生労働省のガイドラインでは、年に2回、計12時間の研修を定めています。6時間の座学研修に2回参加するのが基本です。受講後には受講証明テストが実施され、それに合格すると修了証明書が発行されます。
このようにして、登録販売者は日々進化する医薬品業界のなかで、知識をアップデートし続けているのです。
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登録販売者の実務経験についてお伝えしました。現在登録販売者の試験を受ける際には実務経験は問われず条件などもありません。そのため未経験から勉強を始めて資格取得を目指すことができます。しかし登録販売者の資格取得後、正規の登録販売者として従事するためには、実務経験を積むことが必要です。