登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説

登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説

登録販売者は、ドラッグストアや薬局、スーパー、ホームセンターなど医薬品を扱うさまざまな店舗で活躍できる資格です。しかし、登録販売者として1人で業務にあたるためには、試験に合格するだけでなく実務経験が必要になります。

本記事では、登録販売者に必要な実務経験の期間や時間などの条件、手続きについて解説します。登録販売者を目指している方、働き方を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

登録販売者に必要な実務経験とは

まずは、登録販売者に必要な実務経験の内容について、以下4つのポイントでご紹介します。

  • 受験資格としての実務経験は撤廃
  • 管理者要件を満たす登録販売者になるには実務経験が必要
  • 実務経験があれば店舗管理者にもなれる
  • 実務従事証明書の申請について

受験資格としての実務経験は撤廃

登録販売者は第2類医薬品と第3類医薬品の販売ができる、医薬品販売のプロがもつ資格です。

第2類医薬品と第3類医薬品を合わせると、一般用医薬品の9割以上を占めるといわれており、私たちが入手する医薬品のほとんどを取り扱うことができます。

関連記事:登録販売者資格とは?仕事内容や取得のメリット、難易度を解説

登録販売者として活躍するためには、年に1度各都道府県で実施される登録販売者試験に合格する必要があります。

登録販売者試験には、特別な受験資格がありません。

2014年以前は学歴や実務経験が要件として定められていましたが、2015年度の制度改正により撤廃され、誰でも挑戦できるようになりました。

受験資格の撤廃により、先に実務経験を積むのではなく、試験に合格してから実務を開始するなど、キャリアアップの方法を選べるようになっています。

また、受験者数も増加傾向にあります。以下の表では、過去の試験における受験者数の推移をまとめました。

実施年度受験者数
2024年54,526人
2023年52,214人
2022年55,606人
2021年61,070人
2020年52,959人
2019年65,288人
2018年65,500人
2017年61,126人
2016年53,369人
2015年49,864人
2014年31,362人
2013年28,527人
2012年28,050人
2011年33,913人
2010年39,116人
2009年44,788人
2008年91,024人

参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について

正規の登録販売者になるには実務経験が必要

登録販売者には、店舗管理者や区域管理者になることができる「管理者要件を満たす登録販売者」と、「研修中の登録販売者」に分けられます。

管理者要件を満たす登録販売者は、医薬品を一人で販売することができます。

研修中の登録販売者は、医薬品を一人で販売できず、薬剤師や、管理者要件を満たす登録販売者の管理・指導のもとで勤務しなければなりません。
また、その旨が容易に判別できるように、名札に「研修中」などと表記する必要があります。

管理者になるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 一般従事者または登録販売者として過去5年のうち2年以上勤務※
  • 一般従事者または登録販売者として過去5年のうち1年以上勤務※かつ店舗の管理などの追加的な研修を修了
  • 一般従事者または登録販売者として過去5年のうち1年以上勤務※かつ過去に店舗管理者等の経験がある

※別途、通算の従事時間などに関する規定もあり

一方、研修中の登録販売者とは、試験には合格しているものの上記の実務経験を積んでいない方を指します。

受験資格としての実務経験は撤廃されていますが、管理者要件を満たす登録販売者として働くためには、実務経験を積む必要があるのです。

実務経験が一定に達していない「研修中の登録販売者」は、レジ打ちや品出しといった一般的な業務であれば問題ありませんが、医薬品の販売に関しては制限がかかります。

実務経験を積むためには、薬剤師や管理者要件を満たす登録販売者の指導のもと、研修生として働く必要があります。

直近5年間での実務経験が問われますが、連続して勤務する必要はありません。

例えば、「直近5年以内に2年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験」を満たす場合、月当たりの時間数にかかわらず月単位で従事した期間が2年以上あり、かつ、過去5年間において合計1,920時間以上従事した場合も、認められるとされています。

そのため、1年働いてから休職し、復職してから1年働いた場合でも、5年以内に合計1,920時間の基準を満たしていれば通算2年分の実務経験として認められます。

関連記事:登録販売者の管理者要件が緩和?実務期間1年でも満たせるってホント?

実務経験があれば店舗管理者にもなれる

管理者要件を満たす登録販売者になれば「店舗管理者」としても就労できます。

店舗管理者とは、医薬品を扱う店舗に設置が義務付けられている役職で、お店の責任者と考えるとわかりやすいでしょう。

医薬品だけでなく薬剤師や登録販売者の管理なども行います。

管理者要件を満たす登録販売者は、即戦力として期待され、就職や転職でも有利に働きます。

すでにドラッグストアやスーパーで働いている場合は、給料のアップや資格手当ての支給も期待できるでしょう。

また、店舗管理者としてキャリアを重ねることで、店舗内での昇進だけでなく、将来的な独立も視野に入ってきます。

関連記事:登録販売者の給料相場は高い?就職先や将来性についてもあわせて解説

実務従事証明書の申請について

実務・業務従事証明書は、管理者要件を満たしていることの証明として必要な書類です。

勤務先から発行してもらう必要があるため、仕事をやめる際には忘れずに依頼しておきましょう。

証明書が必要になったタイミングで依頼することも可能ですが、過去の職場が廃業になる可能性もあります。

念のため、退職時に受け取っておくのがよいでしょう。

なお、「実務従事証明書」は資格取得前に一般従事者として勤務した経験、「業務従事証明書」は資格取得後に登録販売者として勤務した経験を証明するものです。

管理者要件を満たすにはどちらの経験でもよいため、勤務の実態に合わせて書類を発行してもらいましょう。

申請書は各都道府県のWebサイトでダウンロードし、勤務先に必要事項を記入してもらったうえで提出します。

すでに退職していて、申し出があった場合、企業側は断ることができません。

登録販売者の実務経験に関するよくある質問

ここでは、登録販売者の実務経験に関するよくある質問とその回答をご紹介します。

  • 実務経験はパートやアルバイトでもOK?
  • 管理者要件を満たす登録販売者になったあとにも研修がある?
  • 実務経験なしでも登録販売者になれる?
  • 実務経験なしだと仕事がない?求人は見つかる?
  • 実務経験が積めない場合は?どこで働けばいい?

実務経験はパートやアルバイトでもOK?

登録販売者に必要な実務経験は、パートやアルバイト、正社員といった雇用形態とは関係がありません。

アルバイトとして2年間働いた場合でも、実務経験の要件を満たすことができます。

ただし、実務経験として認められるのは、薬事関係の業務に携わった時間のみです。

どの範囲の業務まで実務経験に含められるのかは、都道府県や勤務先によって異なるため、薬務課の窓口に問い合わせてみるのが確実です。

正規の登録販売者になったあとにも研修がある?

管理者要件を満たす登録販売者として申請が許可されたあとも、定期的に外部研修を受ける必要があります。

登録販売者の外部研修とは、簡単に言えば、登録販売者として働き続けるために必要な研修のことを指します。

薬局開設者や医薬品販売業者は、働いている登録販売者に対し、指定の研修実施機関による研修を受けさせることが義務づけられています。

毎年度受講が必要であることから、登録販売者の外部研修は「継続的研修」とも呼ばれています。

要件を満たした研修実施機関による研修を計12時間以上受講することで、薬局開設者や医薬品販売業者は義務を果たしたこととなり、登録販売者を雇用し続けることが可能となるのです。

受講後には受講証明テストが実施され、合格すると修了証明書が発行されます。

日々進化する医薬品業界のなかで、登録販売者は研修を通じて知識をアップデートし続けているのです。

実務経験なしでも登録販売者になれる?

実務経験がなくても、「研修中の登録販売者」になることは可能です。

前述の通り、受験資格から実務経験が撤廃されたからです。

ただし、実務経験がなければ「研修中の登録販売者」として勤務することになります。

医薬品の販売は、薬剤師または管理者要件を満たす登録販売者の管理・指導のもと行う必要がありますので、基本的には一般従事者と同じ扱いとなります。

実務経験を積み、「管理者要件を満たす登録販売者」になって初めて、1人での医薬品販売が可能になるのです。

実務経験なしだと仕事がない?求人は見つかる?

実務経験なしでも、登録販売者としての仕事は見つかります。

前述の通り、実務経験なしで働く場合は「登録販売者研修生」としての勤務になります。

登録販売者研修生の期間は、1人では医薬品販売に関わる業務を行えません。

薬剤師または管理者要件を満たす登録販売者の管理・指導のもと医薬品を取り扱うことになります。

ただし、お客様に対する売場の案内やレジでの会計業務、商品の品出しなど一般的な業務はもちろん可能です。

上記のような業務を担当しながら医薬品販売の実務経験を積み、実務従事証明書を取得できれば、単独での医薬品販売が可能になります。

店舗側も管理・指導役のスタッフをつける必要がなくなるため、待遇の改善も期待できるでしょう。

実務経験が積めない場合は?どこで働けばいい?

実務経験が積めない場合でも、インターネットで「実務経験なし」の登録販売者の求人を検索すれば、さまざまな求人情報がヒットします。

具体的な求人元としては、薬局やドラッグストア、コンビニ、スーパー、ホームセンターなどが挙げられます。

実務経験なしでも、登録販売者資格を持つ人材を求めている企業は十分見つかります。

まずは実務経験なしでも勤務可能な店舗で経験を積み、数年後にステップアップを狙いましょう。

まとめ

本記事では、登録販売者の実務経験について必要性や要件を解説しました。

ポイントをおさらいすると、以下の通りです。

  • 登録販売者試験は、実務経験がなくても受験できるようになった
  • 単独で医薬品を販売するには管理者要件を満たす必要がある
  • 登録販売者に必要な実務経験は、パートやアルバイトでも問題ない
  • 実務経験なしでも応募可能な求人は十分見つかる

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