登録販売者は試験に合格しても、実務経験が十分でない場合は「研修中」扱いになります。「すぐに勤務を開始できないの?」と不安に感じる方もいるでしょう。
登録販売者の「研修中」とは
登録販売者の「研修中」とはどのようなものか、以下2つのポイントで解説します。
- 正規の登録販売者になるには実務経験が必要
- 管理・指導のもと業務にあたることになる
順番に見ていきましょう。
正規の登録販売者になるには実務経験が必要
登録販売者試験に合格しても、実務経験が十分でない場合は「研修中」という扱いになります。
勤務中には、名札やバッジにも「研修中」との表記が必要です。
登録販売者試験の受験資格としての実務経験は撤廃されたものの、「正規の登録販売者」になるには一定の実務経験が求められるのです。
具体的には、管理者要件と呼ばれる以下いずれかの条件を満たす必要があります。
- 直近5年以内に2年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験
- 直近5年以内に1年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、指定の追加的研修を修了(令和5年4月1日より適用)
つまり、実務経験がまったくない状態で試験に合格した場合は、最短でも1年は「研修中」の登録販売者として勤務することになります。
関連記事:登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説
管理・指導のもと業務にあたることになる
研修中の登録販売者は、単独での医薬品販売ができません。
医薬品を販売する際には、薬剤師や管理者要件を満たす登録販売者による管理・指導が必要です。
また、「管理者要件」という名前からもわかる通り、店舗責任者として勤務するためにも必須の条件となっています。
将来的に店長などのポストに就きたいと考えている場合は、早い段階で管理者要件を満たすのがよいでしょう。
研修中の登録販売者にできることは?
研修中の登録販売者にできることは、以下の2つです。
- 医薬品以外の一般商品の取り扱い
- 管理・指導のもとでの医薬品販売
こちらも順番に見ていきましょう。
医薬品以外の一般商品の取り扱い
登録販売者は医薬品を取り扱うための資格であるため、その他の一般商品であれば研修中であっても取扱いが可能です。
例えば、多くのドラッグストアでは医薬品以外にもさまざまな日用品や食品が並んでいます。
医薬品販売の資格を持たない一般従事者と同様、研修中の登録販売者は一般商品の販売や陳列、補充が可能です。
関連記事:登録販売者の就職先はドラッグストア以外にもある?多様な働き方を紹介
管理・指導のもとでの医薬品販売
薬剤師または管理者要件を満たす登録販売者の管理・指導のもとであれば、研修中であっても医薬品の販売が可能です。
ただし、単独で業務にあたれないことは店舗の人件費増加につながるため、実務経験がある登録販売者のほうがニーズ・給料が高い傾向にあります。
登録販売者としてキャリアを築いていきたいなら、早めに管理者要件を満たすのがよいでしょう。
「研修中」から正規の登録販売者になるメリット
管理者要件を満たし、正規の登録販売者になることには以下のようなメリットがあります。
- 単独での業務が可能になる
- 店舗管理者になれる
- 給料が上がりやすい
- キャリアアップが狙える
順番に解説します。
単独での業務が可能になる
前述の通り、正規の登録販売者になって初めて単独での医薬品販売が可能になります。
求人への応募条件として実務経験が求められているケースも多く、正規の登録販売者になることでキャリアの幅が広がるでしょう。
店舗責任者になれる
正規の登録販売者になれば、店舗責任者になる資格が得られます。
登録販売者としてより大きな収入を得たいなら、店舗責任者である店長になることは必須ともいえます。
給料が上がりやすい
登録販売者の求人は多数見つかりますが、実務経験が必須となっている場合は給料が比較的高い傾向にあります。
また、店舗責任者になることで給料がアップすることも少なくありません。
パート・アルバイトとして登録販売者が働く場合、時給の目安は900~1,200円程度といわれています。
一方、正社員として登録販売者が働く場合の月収目安は20~25万円程度、店舗責任者の場合は30~35万円程度とされています。
登録販売者としての給料を上げていきたいなら、早い段階で管理者要件を満たし、店舗責任者を目指すのがよいでしょう。
関連記事:登録販売者の給料相場は高い?就職先や将来性についてもあわせて解説
キャリアアップが狙える
管理者要件を満たすことで正社員として採用されやすくなり、将来的なキャリアアップも狙えます。
企業の人事制度によるものの、店舗責任者になったり、本部に異動したりと選択肢が広がるはずです。
「研修中」の登録販売者では正社員としての採用が難しいほか、店舗責任者にはなれません。
まずはアルバイトやパートとして未経験の状態から勤務を開始し、管理者要件を満たしたあとに正社員の求人に応募するなど、計画的にステップアップを果たしましょう。
正規の登録販売者になるためのポイント
ここでは、正規の登録販売者になるためのポイントとして、以下5点をご紹介します。
- 1,920時間以上の実務・業務経験が必要
- 実務経験と業務経験は合算できる
- 期間内であればブランクがあってもOK
- 追加的研修を受講すれば1年でも要件を満たせる
- 要件を満たしたら実務・業務従事証明書を取得する
順番に見ていきましょう。
1,920時間以上の実務・業務経験が必要
前述の通り、正規の登録販売者になるには以下のいずれかを満たす必要があります。
- 直近5年以内に2年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験
- 直近5年以内に1年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、指定の追加的研修を修了(令和5年4月1日より適用)
対象期間や条件は異なるものの、いずれの場合も「通算1,920時間以上」の実務経験が必要であることがわかります。
後者の条件は令和5年4月1日に新たに追加されたものであり、より短期間で正規の登録販売者になることが可能となりました。
試験合格後に早い段階でキャリアアップを果たしたい人にとっては、嬉しい変更だといえます。
関連記事:登録販売者の管理者要件が緩和?実務期間1年でも満たせるってホント?
実務経験と業務経験は合算できる
管理者要件の実務経験は、厳密には「実務経験」と「業務経験」に分かれます。
実務経験と業務経験の違いは以下の通りです。
- 実務経験:「一般従事者」として薬剤師または登録販売者の管理・指導のもと実務に従事した経験
- 業務経験:「登録販売者」として業務に従事した経験
つまり、登録販売者になる前の資格を持たない状態でも、実務に従事した経験があれば合算できることになります。
期間内であればブランクがあってもOK
管理者要件は直近5年以内に満たすことが求められているだけであり、間にブランクがあっても問題ありません。
例えば、登録販売者として勤務したあと出産や育児で一時的に業務を離れたパターンなどが考えられます。
復帰前と復帰後の実務経験を合算して所定の要件を満たしていれば、管理者要件を満たしたものとみなされるのです。
追加的研修を受講すれば1年でも要件を満たせる
前述の通り、「直近5年以内に1年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、指定の追加的研修を修了」という要件は令和5年4月1日より適用となりました。
従来は2年以上の実務経験が必須でしたが、これにより最短1年でも正規の登録販売者になることが可能となっています。
指定の追加的研修は、対面もしくはオンラインにて合計6時間以上の受講が必要となっています。
必要な実務経験の期間が1年縮まることを考えれば、十分受講の価値はあるでしょう。
ただし、1年で通算1920時間以上働くということは、一か月に換算すると、単純計算で月に160時間働くということです。
月に160時間働くためには、1日の勤務時間が8時間だとして、月に20日間働くということになります。
「直近5年以内に1年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、指定の追加的研修を修了」の条件を満たしたい場合には、フルタイムでの勤務が必要になるイメージを持っておくとよいでしょう。
要件を満たしたら実務・業務従事証明書を取得する
管理者要件を満たしたら、実務従事証明書または業務従事証明書を勤務先に発行してもらいましょう。
勤務簿の写しとあわせて都道府県に提出することで、正規の登録販売者としての申請が可能です。
現在の勤務先を退職する場合にも、証明書の発行を依頼しておくとよいでしょう。
いつでも依頼は可能ですが、過去の勤務先が廃業してしまうと発行者がいなくなり、証明書が必要なタイミングで困る可能性があります。
まとめ
本記事では、登録販売者の「研修中」はいつまでなのか、何ができるのかを解説しました。
ポイントをおさらいすると、以下の通りです。
- 登録販売者の試験に合格しても、十分な実務経験がなければ「研修中」となる
- 正規の登録販売者になるには管理者要件を満たす必要がある
- 研修中の登録販売者が医薬品を販売するには、薬剤師や管理者要件を満たす登録販売者による管理・指導が必要
- 正規の登録販売者になれば、給料やキャリアの面でプラスになりやすい
- 管理者要件は最短1年で満たすことが可能
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