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国家資格ではないですが、公に認められている立派な資格です! |
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登録販売者とは、一般用医薬品の販売のプロがもつ資格で、2009年に施行された改正薬事法によって新設されました。一般用医薬品には第1類医薬品・第2類医薬品・第3類医薬品があり、登録販売者は第2類と第3類のみ販売できる資格です。薬剤師のように、医薬品の調剤を行うことはできません。
以前は、薬剤師が調剤業務と販売業務の両方を担っていました。登録販売者の誕生により、薬剤師がある程度調剤業務に専念できるようになり、薬剤師の負担軽減を実現しています。
登録販売者は国家資格である、とは定義されていませんが、趣味や教養の枠には収まらない、具体的な仕事につながる立派な資格です。
資格を取得すると、資格を持っていない人にはできない医薬品販売ができるようになります。そのため、医薬品を扱う店舗、例えばドラッグストアやコンビニ、スーパー、ホームセンター等、様々な場所で必要とされています。
登録販売者は国家資格なの?登録販売者が国家資格かどうかについては、公式の発表はなく、見解が分かれています。その理由は、以下の3つの要素が関係しています。
普段の生活でも自然と使用する国家資格という言葉ですが、実は明確な定義付けがされていません。官公庁のホームページでも国家資格という言葉はほとんど使用されておらず、登録販売者が国家資格なのか判断が難しいのが実情です。 また、一般的な国家資格とは異なり、試験の主体や認定先が都道府県である点も見解が分かれる要因です。薬剤師は国家資格として広く認知されており、資格取得のための試験も国が実施し、合否の認定も国が行います。 一方、登録販売者試験は各都道府県で実施されており、合否の認定も都道府県が行います。試験の主体や認定先が国ではないため、登録販売者は国家資格ではないという声もあります。 ただ、総務省が発表している「国の資格制度一覧」を確認すると、厚生労働省管轄の資格制度のなかに登録販売者が記載されています。国の資格制度と国家資格が同一かについては言及されていませんが、登録販売者が国に認められた公的な資格です。 |
登録販売者は現在別の業種で働いている方や、学生の方など幅広い層におすすめの資格です。こちらでは、登録販売者の資格を取得するメリットをご紹介します。
登録販売者の資格を取得することで、ひとりで一般用医薬品の販売やアドバイスを行えるようになります。担当できる仕事の幅が広がるため、お給料や時給のアップが期待できます。資格手当を支給している会社も少なくありません。
登録販売者の資格は、一度取得すれば全国で資格保有者として仕事ができます。ドラッグストアやスーパー、コンビニなどさまざまな店舗で働けるため、登録販売者のニーズは全国にあります。家族に転勤の多い仕事に就いている方がいる場合でも安心です。
登録販売者は直近5年間で2年以上の実務経験があると、店舗管理者になることができ、開業許可や販売許可をもらうことで独立が可能です。将来的に医薬品を取り扱う店舗を経営したい、と考えている方にも有益な資格です。
登録販売者の求人は正社員だけではありません。パートやアルバイトの募集もあるため、ライフスタイルに応じて働き方を変えられるのが魅力です。実際、育児が忙しいときは休職し、余裕が出てきたタイミングで復職する方も少なくありません。
登録販売者の資格を活かすことができるのは、医薬品を販売する業種だけではありません。医薬品に関する知識を活かして製薬会社の営業として働く、漢方薬を取り扱いながらあん摩マッサージ指圧師として活躍するなど、他業種で仕事をする場合にも役立つ仕事です。
登録販売者が取り扱う医薬品は、一般用医薬品の9割以上にのぼります。登録販売者として仕事をすることで、医薬品に対する横断的な知識が身につき、自分だけでなく家族の健康維持にも寄与できます。
登録販売者は、国に認められた比較的新しい資格ということもあり、医薬品業界を目指す方に人気が高まっています。こちらでは、登録販売者として活躍するまでのプロセスを3つのステップに分けてご紹介します。
登録販売者として活躍するためには、まず登録販売者試験に合格する必要があります。登録販売者試験は、各都道府県で年に1回、例年であれば8月下旬から12月中旬に実施されます。
試験を受けるためには、事前に願書を取り寄せて提出しなければなりません。願書の入手方法には、ホームページからのダウンロードや郵送、現地での受け取りなどがあります。提出期日に間に合うように願書を用意し、受験料を支払ったうえで提出しましょう。
登録販売者として就労するには、試験の合格だけでなく、都道府県に申請書を提出して販売従事登録をする必要があります。
申請書の入手方法は各都道府県によって異なりますが、インターネット上でダウンロードできるケースがほとんどです。申請書に必要事項を記入し、合格通知書や医師による診断書を添付し、登録手数料を支払ったうえで提出しましょう。
申請が許可されると、窓口や郵送により販売従事登録証を受け取ることができます。登録証を受け取ると、晴れて登録販売者として働けるようになります。なお、就職前に試験に合格した場合は、就職先が決まってからでなければ申請できない点に注意しておきましょう。
販売従事登録をした後、登録販売者としてひとりで仕事をするためには、直近5年以内で2年以上かつ月80時間以上の実務経験が必要です。実務経験がない場合は、「登録販売者研修生」として仕事をすることになります。
薬剤師や一定の権限をもった登録販売者のもとで指導を受け、実務経験を2年以上積むと実務従事証明書の申請が可能です。申請が許可されると、登録販売者としてひとりで店舗に立つことができます。実務従事証明書の申請は、従事販売登録と同様に、勤務地の都道府県へ行いましょう。
なお、2年間の実務経験は連続している必要はありません。育休などで現場を離れても、通算で2年以上の実務経験があれば、実務従事証明書の申請が可能です。ただし、直近5年間というルールを忘れないようにしましょう。
登録販売者試験の合格率は、実施年度によっても異なりますが、全国平均で40~50%となっています。一定の難易度はありますが、意欲的に勉強することで十分合格が可能な資格です。
ただ、登録販売者試験は都道府県ごとに試験内容が異なるため、合格率も変わってくるのが特徴です。以下の表では、2021年の試験結果について、関東1都6県の違いをご紹介します。
都道府県名 | 合格率 |
東京都 | 43.2% |
埼玉県 | 40.8% |
神奈川県 | 48.8% |
千葉県 | 41.4% |
茨城県 | 47.8% |
群馬県 | 50.9% |
栃木県 | 42.8% |
参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」
上記の表を見ると、もっとも合格率の低い埼玉県と合格率の高い茨城県では、約10%の違いがあります。受験者にとって、この差は大きいといえるでしょう。
次の表では、2018~2022年の直近5年間の試験について、合格率の高い都道府県と低い都道府県を3つずつご紹介します。
実施年度 | 合格率の高い 都道府県 |
合格率の低い 都道府県 |
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2022年 | 1位:佐賀県(59.3%) 2位:福岡県(58.3%) 3位:大分県(58.1%) |
47位:高知県(29.8%) 46位:福井県(30.6%) 45位:島根県(33.8%) |
2021年 | 1位:山口県(68.8%) 2位:広島県(66.7%) 3位:岡山県(64.9%) |
47位:秋田県(32.7%) 46位:鹿児島県(35.1%) 45位:福島県(35.4%) |
2020年 | 1位:広島県 (58.1%) 2位:愛知県 (56.0%) 3位:山口県 (54.0%) |
47位:埼玉県 (30.1%) 46位:長野県 (31.8%) 45位:山梨県 (32.1%) |
2019年 | 1位:北海道 (64.3%) 2位:宮城県 (61.9%) 3位:青森県 (61.0%) |
47位:埼玉県 (23.3%) 46位:千葉県 (24.8%) 45位:高知県 (25.0%) |
2018年 | 1位:北海道 (58.6%) 2位:熊本県 (57.0%) 3位:宮城県 (56.6%) |
47位:福井県 (19.5%) 46位:岡山県 (28.4%) 45位:鳥取県 (28.5%) |
参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」
実施年度によっても異なりますが、合格率1位と47位の都道府県を比較すると、40%近い違いがある年もあります。受験者数の違いもあるため、「合格率が高い=試験が簡単」ということではありませんが、どの試験地を選ぶかは重要な問題です。
登録販売者試験は一部を除き都道府県単位で行われており、試験日もそれぞれ異なります。過去の合格率や受験者数を確認して、少しでも不安があれば、受験しやすい近隣の都道府県でも申し込んでおくのがおすすめです。どの会場で合格しても、資格取得後は全国で働くことができます。
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年齢、経験、学歴等の受験資格なし!誰でも試験を受けられます。 |
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登録販売者試験は、受験資格がなく、誰でも受けられるのが特徴です。以前は受験資格として「学歴要件」と「実務経験」が定められていましたが、2015年4月以降、これらの要件は撤廃されました。誰でも受けることができ、合格後は全国で登録販売者として就労できるため、コストパフォーマンスに優れた資格として人気を集めています。
ただし、前述の通りひとりで医薬品を販売するためには、直近5年間で2年以上の実務経験が必要です。受験資格としての実務経験は撤廃されましたが、正規の登録販売者として働くには、依然として実務経験が欠かせません。また、店長職のような店舗管理者になる場合も、上記の実務経験が求められます。
こちらでは、受験資格の要件が撤廃された2015年以降の登録販売者試験について、受験者数と平均合格率をご紹介します。
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
2022年 | 55,606人 | 24,707人 | 44.4% |
2021年 | 61,070人 | 30,082人 | 49.3% |
2020年 |
52,960人 |
21,952人 |
41.5% |
2019年 |
65,288人 |
28,328人 |
43.4% |
2018年 |
65,500人 |
27,022人 |
41.3% |
2017年 |
61,126人 |
26,606人 |
43.5% |
2016年 |
53,369人 |
23,330人 |
43.7% |
2015年 |
49,864人 |
22,901人 |
45.9% |
参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」
2020年は新型コロナウイルスの影響もあり受験者数が減りましたが、それまでは受験者数が年々増加傾向にあることがわかります。
受験者数が増えているのは、合格後の就職先が幅広い点に魅力を感じている方が多いためです。「今後のために」「転職の際の選択肢を増やすために」と、試験合格を目指す方もいます。
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登録販売者になるにはどうしたらいいのかという観点から、登録販売者資格の概要をお伝えしました。登録販売者試験は、受験資格がなく誰でも受けることができるという点が特徴です。初めて勉強するという方も、しっかりと勉強し試験に臨めば資格を取得し、全国様々な場所で登録販売者として活躍することができるでしょう。