登録販売者が正社員になるのは難しい?メリット・デメリットや方法を解説

登録販売者が正社員になるのは難しい?メリット・デメリットや方法を解説

登録販売者として正社員就職を目指したいものの、現実的には難しいのではと感じる方もいるでしょう。アルバイトやパートとしての募集が多いため、不安に感じるのも無理はありません。

本記事では、登録販売者として正社員になるのは難しいのかや、具体的にどのようなステップで目指せばよいのか、また正社員になるメリット・デメリットを解説します。

登録販売者の資格取得を目指している方、これから勤務を開始する方はぜひ参考にしてみてください。

登録販売者が正社員になるのは難しい?

「登録販売者が正社員になるのは難しい」という意見には、以下2つの背景が考えられます。

  • 実務経験を要する求人が多い
  • 正社員への転向のハードルが高い

順番に見ていきましょう。

実務経験を要する求人が多い

正社員としての登録販売者の求人は実務経験を求めるものが多く、応募のハードルが高くなっています。

登録販売者には、店舗管理者や区域管理者になることができる「管理者要件を満たす登録販売者」と、「研修中の登録販売者」に分けられます。

管理者要件を満たす登録販売者は、医薬品を一人で販売することができます。

研修中の登録販売者は、医薬品を一人で販売できず、薬剤師や、管理者要件を満たす登録販売者の管理・指導のもとで勤務しなければなりません。
また、その旨が容易に判別できるように、名札に「研修中」などと表記する必要があります。

管理者になるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 一般従事者または登録販売者として過去5年のうち2年以上勤務※
  • 一般従事者または登録販売者として過去5年のうち1年以上勤務※かつ店舗の管理などの追加的な研修を修了
  • 一般従事者または登録販売者として過去5年のうち1年以上勤務※かつ過去に店舗管理者等の経験がある

※別途、通算の従事時間などに関する規定もあり

正社員として採用するなら、単独で業務を任せたり店舗責任者に任命したりできるよう、管理者要件を満たしている人材を探すのは当然といえます。

実務経験が十分でない人にとっては「正社員になるのは難しい」と感じるでしょう。

関連記事:登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説

正社員への転向のハードルが高い

登録販売者が働く現場では、正社員登用の仕組みがある企業も少なくありません。

アルバイトやパートとして経験を積んだあと、正社員への転向を目指す人も多いでしょう。

しかし、正社員転向を勝ち取るには日頃の業務を通じて信頼を得るのはもちろん、販売ノルマの達成や一定の勤続年数、責任者による推薦などが求められます。

また、正社員試験のタイミングは年に1度のみなど限定されている場合も多く、頻繁にチャンスが巡ってくるわけではありません。

正社員を希望していてもなかなか声がかからず、「登録販売者が正社員になるのは難しい」と感じる人は多いのです。

登録販売者が正社員になることは十分可能

難しいという意見もある登録販売者の正社員就職ですが、以下2つの観点から十分可能であることがわかります。

  • 勤務先が幅広い
  • 社会的に需要が高まっている

こちらも順番に見ていきましょう。

勤務先が幅広い

登録販売者の主な就職先を具体的に挙げると、以下の通りです。

  • 調剤薬局・ドラッグストア
  • 製薬会社
  • コンビニ
  • スーパー
  • 家電量販店
  • ホームセンター
  • 介護施設
  • 漢方薬局
  • 通信販売会社
  • エステサロン

上記はあくまで就職先の一部であり、そのほかにもさまざまな業種が登録販売者の求人を行っています。

店頭での販売業務に就きたい場合は、前述の通り管理者要件を満たす登録販売者になることが重要です。

未経験であれば、まずは薬剤師や登録販売者の人数が多い薬局やドラッグストアで「研修中」扱いで働き始め、経験を積んでいくのがよいでしょう。

関連記事:登録販売者の就職先はドラッグストア以外にもある?多様な働き方を紹介

社会的に需要が高まっている

また、登録販売者に対する社会的な需要が高まっていることも正社員としての就職のしやすさにつながっています。

具体的には、以下のような点が挙げられます。

  • OTC医薬品市場の成長
  • ドラッグストア店舗数の増加
  • 政府によるセルフメディケーションの推進

OTC医薬品は処方せんを必要としない医薬品を指し、登録販売者が扱う第2類・第3類の一般用医薬品を含みます。

OTC医薬品の販売金額やドラッグストアの店舗数は成長を続けていることから、現場で医薬品の販売を担う登録販売者の需要も高まっているといえるのです。

さらに、軽度の体調不良やケガであれば自身で手当てを行う「セルフメディケーション」を政府が推進していることも、一般用医薬品の利用増加につながっているでしょう。

社会的な需要の高まりを背景として登録販売者が果たす役割はますます大きくなっており、正社員として就職できる可能性は十分あるといえます。

関連記事:登録販売者の仕事がなくなるって本当?現状と将来性を解説

登録販売者が正社員になるメリット・デメリット

登録販売者は、正社員のほかにもアルバイトやパートとしての勤務が可能です。

ここでは、登録販売者が正社員になるメリットとデメリットを見ていきましょう。

登録販売者が正社員になるメリット

まず登録販売者が正社員になるメリットとしては、以下の4点が挙げられます。

  • 基本給が上がる
  • ボーナスがもらえる
  • キャリアアップできる
  • 福利厚生が充実する

基本給が上がる

登録販売者の給与相場は雇用形態によって異なります。

正社員として働く場合、年収の目安は300〜400万円程度、月収に換算すると20〜25万円程度になるでしょう。

企業や店舗によっては資格手当がつく場合もあります。

管理者要件を満たし、店舗管理者として雇用されれば月収30〜35万円程度も目指せます。

パートやアルバイトとして働く場合、時給の相場は900~1,200円程度です。

さらに、正社員であれば将来的に店舗責任者になる可能性があり、その場合は月収30~35万円程度が見込めます。

アルバイトやパートとしての勤務で正社員と同じ金額の収入を得るのは簡単ではないでしょう。

関連記事:登録販売者の給料相場は高い?就職先や将来性についてもあわせて解説

ボーナスがもらえる

正社員としての就職であれば、ボーナスも発生します。

通常の月収に加えてボーナスがもらえれば、アルバイトやパートとしての勤務よりも大きな収入が期待できるはずです。

キャリアアップできる

正社員の登録販売者として勤務を継続することで、キャリアアップの可能性も広がります。

店舗責任者として経営に携われば、1人のスタッフとして勤務するよりも大きな収入や貴重な経験が得られるはずです。

また、企業によっては本部に異動できるケースもあります。

より幅広い経験を積んでいきたい方にとっては、アルバイトやパートよりも正社員としての就職がよいといえるでしょう。

福利厚生が充実する

正社員として採用されることで、さまざまな福利厚生を受けられる可能性もあります。

具体的には、商品購入時の割引や産休・育休の付与などが挙げられるでしょう。

アルバイトやパートでも一部の福利厚生は利用できる可能性がありますが、正社員になることで福利厚生の幅が広がることは間違いないといえます。

登録販売者が正社員になるデメリット

一方、登録販売者が正社員になることで以下のようなデメリットも発生します。

  • 責任が大きくなる
  • 自由な働き方がしづらくなる
  • 時給換算で給与がよいとは限らない

こちらも順番に見ていきましょう。

責任が大きくなる

アルバイトやパートであれば医薬品の販売や在庫の補充、商品の陳列だけを担うケースが多いでしょう。

しかし、正社員の登録販売者であればシフトの作成や商品の発注など、より店舗経営に近い仕事を任される可能性が高くなります。

やりがいとともに責任が大きくなるため、プレッシャーを感じる人もいるかもしれません。

自由な働き方がしづらくなる

アルバイトやパートと比べ、正社員の登録販売者は働く曜日や時間の融通が利きにくくなるでしょう。

遅い時間の勤務や土日出勤など、店舗運営を担う一員として働かざるを得ない場合が少なくありません。

家族との時間を優先したい場合や夜間の勤務を避けたい場合は、求人内容をよくチェックすべきだといえます。

時給換算で給料がよいとは限らない

正社員になればアルバイトやパートよりもまとまった収入が得やすい反面、時給換算での給料が必ずしも高くなるとはいえません。

月収が高いのは労働時間が長いだけで、時給換算ではアルバイトやパートより低いというケースもあるでしょう。
しかし、前述の通り管理者要件を満たすことで店舗責任者になれば、給料もアップする可能性が高まります。

実務経験を積み、より大きな役割を担うことで時給も改善するはずです。

登録販売者が正社員になるためのステップ

ここでは、登録販売者が正社員になるためのステップとして以下の3点をご紹介します。

  • 管理者要件を満たす
  • 幅広い業務に携わる
  • ほかの資格と掛け合わせる

順番に見ていきましょう。

管理者要件を満たす

正社員の登録販売者として働きたいなら、まずは管理者要件と呼ばれる実務経験の基準を満たすことが大切です。

前述の通り、以下いずれかの条件を満たすまでは「研修中」との扱いになり、単独での医薬品販売ができません。

  • 直近5年以内に2年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験
  • 直近5年以内に1年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、指定の追加的研修を修了(令和5年4月1日より適用)

管理者要件を満たすことで店舗責任者になることが可能となり、より大きな役割を果たせます。

企業が正社員として登録販売者を雇用する場合、店舗の一スタッフとしてではなく、責任者やそれに近い役割を担ってほしいと考えるのが自然でしょう。

登録販売者試験に合格したら、まずは地道に実務経験を積んで管理者要件を満たすようにしましょう。

なお、試験に合格する前に、上記の決められた時間数の実務経験を積んでいた場合でも、管理者要件を満たすことができます。

幅広い業務に携わる

正社員の登録販売者は、アルバイトやパートと比べて幅広い業務に携わる可能性が高くなります。

シフト作成やアルバイト・パートの採用、商品の発注など、店舗をうまく運営するためのマネジメント力が問われます。

将来的に正社員になりたいのであれば、接客や販売などの定型的な業務以外も積極的に担当し、業務の幅を広げていくことが大切です。

ほかの資格と掛け合わせる

登録販売者試験の合格率は実施年度によって異なりますが、全国平均で40〜50%前後となっています。

難易度が特別に高いわけではないため、ほかの登録販売者との差別化が重要になります。

関連記事:登録販売者試験の合格率・難易度は?都道府県別の合格率も一覧で紹介

ほかの資格と掛け合わせて自身のスキルをアピールできれば、正社員採用の可能性も高まるでしょう。

例えば、医療事務やビューティーアドバイザーなどの資格があれば、より幅広い医薬品の知識や化粧品提案のスキルを証明できます。

人材としての価値を高めることで、正社員採用を勝ち取りやすくなるはずです。

登録販売者が正社員になる方法

登録販売者が正社員になるには、大きく分けて「アルバイト・パートからの転向」と「他社への転職」の2つがあります。

アルバイト・パートからの転向

現在の勤務先において、アルバイト・パートから正社員への転向を申請する方法です。

良好な勤務態度やノルマの達成、責任者からの推薦など、企業ごとに用意されている基準をクリアすることでチャンスをつかみとります。

しかし、前述の通り基準が厳しいことや転向のタイミングが限られていることから、正社員登用の仕組みを利用するのは難しいとの声もあります。

次にご紹介する通り、他社への転職も含めて検討するのがよいでしょう。

他社への転職

他社の正社員採用の求人に応募し、転職することで正社員になる方法です。

実務経験のある登録販売者に対するニーズは特に高いため、現在の勤務先で管理者要件を満たせた場合には転職によって正社員になれる可能性が高まります。

試験合格後には「未経験OK」の現場でアルバイト・パートとして経験を積み、管理者要件をクリアしたら他社の正社員募集に応募するのがよいでしょう。

まとめ

本記事では、登録販売者として正社員になるのは難しいのかや、具体的にどのようなステップで目指せばよいのか、また正社員になるメリット・デメリットを解説しました。

ポイントをおさらいすると、以下の通りです。

  • 登録販売者の正社員就職は難しいという意見もある
  • 実務経験が求められることや転向のハードルが高いことが背景
  • しかし、勤務先が幅広く、社会的にも需要が高まっているため、実際には十分可能
  • 正社員になれば給料が上がるほか、福利厚生を享受できるといったメリットがある
  • 一方、自由な働き方ができない点や責任が大きくなる点はデメリット
  • 正社員を目指すなら、まずは管理者要件を満たすことが重要

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