登録販売者の人数が増えるにつれ、近年では就職先の幅も広がりを見せています。
過去の登録販売者試験の受験者数・合格者数・合格率は、以下表の通りです。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率
(全国平均) |
2023年 | 52,214人 | 22,814人 | 43.7% |
2022年 | 55,606人 | 24,707人 | 44.4% |
2021年 | 61,070人 | 30,082人 | 49.3% |
2020年 | 52,959人 | 21,953人 | 41.5% |
2019年 | 65,288人 | 28,328人 | 43.4% |
2018年 | 65,500人 | 27,022人 | 41.3% |
2017年 | 61,126人 | 26,606人 | 43.5% |
2016年 | 53,369人 | 23,330人 | 43.7% |
2015年 | 49,864人 | 22,901人 | 45.9% |
参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり受験者数が減りましたが、それまでは年々増加傾向にあったことがわかります。
受験者数がここまで増えているのは、合格後の就職先が幅広く、魅力的であることも理由の1つだといえるでしょう。
「今後のため」や「転職の際の選択肢を増やすため」、試験合格を目指す方がいます。
登録販売者の主な就職先を具体的に挙げると、以下の通りです。
上記はあくまで就職先の一部であり、そのほかにもさまざまな業種が登録販売者の求人を行っています。
登録販売者は、なぜ多くの企業に求められる資格となっているのでしょうか。
現代では、「体の不調=病院で診察」ではなく、軽度の症状であれば自分で手当てを行う「セルフメディケーション」が求められています。
そのため、ドラッグストアや薬局など「薬の購入や相談ができる場所」の需要は年々高まっています。
誰もが自分の健康や身体について興味をもたなければいけない時代なのです。
そして薬事法の改正により、登録販売者が常駐していればドラッグストアや薬局以外でも医薬品の販売が認められるようになりました。
これにより、多くの企業が医薬品を取り扱うようになり、販売のプロである登録販売者の需要も高まっています。
つまり、セルフメディケーション時代の到来や薬事法の改正により、登録販売者はドラッグストアや薬局だけでなく、さまざまな企業に求められる資格となったのです。
以下、登録販売者の主な就職先を順番にご紹介します。
登録販売者の就職・転職先として、もっとも一般的なのは調剤薬局やドラッグストアです。
登録販売者は第2類・第3類医薬品などの販売を担当できるため、薬剤師と役割分担して仕事を行います。
医薬品をメインに扱う薬局やドラッグストアでは、複数の薬剤師・登録販売者が同時に勤務する場合がほとんどです。
試験に合格したばかりで実務経験が十分でない登録販売者は「研修中」扱いになるため、単独での医薬品販売ができません。
薬局やドラッグストアなら、薬剤師やほかの登録販売者による指導・管理を受けながら経験を積む場としても適しているでしょう。
関連記事:登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説
調剤薬局・ドラッグストアどちらも勤務する従業員の数が多いため、周囲とうまく連携するためのコミュニケーション力が求められます。
なお、調剤薬局であればドラッグストアよりも閉店時間が早い傾向にあり、プライベートの時間を確保しやすいといったメリットがあります。
登録販売者の知識を活かし、製薬会社の営業職に就く方もいます。
登録販売者として一般用医薬品に関する幅広い知識を備えているからこそ、自社製品のよさや他社製品との違いを説明できるのです。
製薬会社の営業であれば、成果次第で年収アップに期待できるケースも多いでしょう。
ただし、取引先との関係づくりや自社商品の売り込みなど、コミュニケーション力や積極性が問われる仕事です。
医薬品を販売しているコンビニの場合、薬剤師または登録販売者を雇用しています。
業務内容としては、医薬品の取り扱いはもちろん、一般商品の販売対応や在庫管理、店内の清掃など通常業務もあわせて行うのが特徴です。
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の資料によると、医薬品を取り扱っているコンビニは2023年2月末時点で全体の0.7%にとどまるとのことです。
また、24時間営業であっても医薬品の販売時間はその一部としている店舗が多いでしょう。
参考:一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会「医薬品の販売制度に関する検討会 説明資料」
コンビニで登録販売者として勤務を希望する場合は、まず近隣で医薬品を扱っている店舗があるか探す必要があります。
また、医薬品を求めて来店するお客様自体が少ないため、医薬品の知識を活かす機会があまりない点には注意しましょう。
一般用医薬品を取り扱うスーパーも増えており、登録販売者にとって有力な選択肢の1つです。
医薬品コーナーが設けられている店舗が多く、業務内容はドラッグストアなどと大きく変わりません。
ただし、医薬品コーナーを担当する従業員の数が少ないため、より管理責任が問われる仕事だといえるでしょう。
大型店であれば、駐車場が広かったり駅から近かったりと通勤しやすい店舗が多い傾向にあります。
一方、勤務する薬剤師・登録販売者の人数が少ないことから、土日や祝日の出勤が必要になるケースがある点はデメリットだといえます。
家電量販店も一般用医薬品の取り扱いが増えている業態の1つです。
スーパーと同様に医薬品コーナーが設けられており、そこでの医薬品の販売・相談がメインの仕事となります。
大手の家電量販店で働く場合、給料や福利厚生、手当などが充実している傾向にあります。
家電製品を買うついでに立ち寄るお客様が多いため、医薬品に関する知識を問われる場面は比較的少ないでしょう。
ホームセンターでも医薬品を取り扱うケースが増えており、登録販売者に対する需要が高まっています。
車での来店客をメインとしている店舗が多いため、自宅から近い店舗を選んだり車通勤をしたりしないと不便に感じるかもしれません。
混雑する時間帯には、一般商品のコーナーからヘルプを依頼される場合もあります。
介護施設では、医薬品を服用している高齢者が多くいます。
登録販売者の資格をもっていれば、医薬品に関する相談やアドバイスなどができ、お客様の満足度を高められるでしょう。
高齢化の進行によって利用者が増え、介護施設では人手不足が顕著になっています。
医薬品の知識を備える人材であれば、就職・転職の際にも有利に働くはずです。
ただし、一般的には介護士やケアマネージャーなどの資格保有者を優遇しているケースが多いでしょう。
登録販売者の資格はあくまでプラスアルファと捉え、介護に必要なスキルを身につけておくことが大切です。
通常の薬局だけでなく、登録販売者は漢方薬局で働くことも可能です。
調合はできないものの、お客様の状態に合わせて適切な漢方を案内するなどの業務を担当できます。
一般的な調剤薬局やドラッグストアと異なり、カウンセリングなども含めてじっくりお客様に向き合うのが漢方薬局の特徴です。
ただし、一般的な医薬品に関する知識は身につけづらいでしょう。
インターネットで医薬品の販売を行う通信販売会社でも、登録販売者が活躍する機会があります。
電話で相談や問い合わせを受け、医薬品販売のプロとして回答するといった業務になります。
対面ではないためコミュニケーションが苦手な方にも続けやすい業務ですが、言葉だけで的確に伝える必要があるため、説明の難しさも感じるでしょう。
登録販売者の知識があれば、エステサロンで美容アドバイザーとして働く際にも役立ちます。
美容や健康に強い興味がある方にとっては、魅力的な選択肢になるでしょう。
ただし、医薬品に関する知識はあくまでプラスアルファであるため、まずはサロンスタッフとして美容・健康の面でお客様の期待に応えていくことが重要です。
登録販売者には、ドラッグストア以外にもさまざまな勤務先の選択肢があります。
しかし、ドラッグストア以外の多くの求人では、単独で業務にあたれるよう以下の「管理者要件」のいずれかを満たしておくことが求められます。
要件を満たせていない場合は「研修中」の扱いになるため、単独での医薬品販売ができず、店舗責任者にもなれません。
コンビニやスーパーで複数の薬剤師・登録販売者が同時に勤務するケースは少ないため、管理者要件を満たしておくことは必須ともいえます。
実務経験がない場合は、まず調剤薬局やドラッグストアで経験を積み、管理者要件を満たしたうえでその他の勤務先を検討するとよいでしょう。
関連記事:登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説
医薬品を取り扱う業種は多様化していますが、それでもやはりメインになるのはドラッグストアや薬局です。
ここでは、ドラッグストアや薬局に就職する際に取っておきたい資格をいくつかご紹介します。
まず挙げるのは、本記事でもこれまでご紹介してきた登録販売者です。
登録販売者は、2009年の薬事法改正により新設された資格です。
すでにご紹介している通り、医薬品販売のプロとしてお客様とコミュニケーションを取りながら医薬品の説明やアドバイスなどを行います。
登録販売者が常駐している店舗では大部分の医薬品を販売できるため、ドラッグストアや薬局での需要が高まっています。
仕事の一部は薬剤師と重なっていますが、両者の違いは主に以下の2つです。
医薬品の販売には、「調剤業務」と「販売業務」という2つのプロセスが存在します。
このうち、登録販売者は販売業務のみを専門に扱う資格です。
登録販売者の登場により、薬剤師は調剤業務に専念できるようになり、負担の軽減につながっています。
また、登録販売者と薬剤師は販売できる医薬品の種類にも違いがあります。
登録販売者が扱えるのは、一般用医薬品のなかでも第2類医薬品と第3類医薬品のみです。
第1類医薬品は、薬剤師以外では販売できません。
ただ、第2類医薬品と第3類医薬品を合わせると一般用医薬品の9割を占めるといわれており、登録販売者はほとんどの医薬品を販売できるといえるでしょう。
関連記事:登録販売者資格とは?仕事内容や取得のメリット、難易度を解説
調剤薬局事務は、調剤薬局事務検定試験に合格することで取得できる民間資格です。
調剤報酬の請求やお客様の受付、会計など事務に関する業務全般を取り扱います。
薬剤師のサポートを行うこともあり、全国の病院やクリニック、薬局などで需要があります。
仕事のうち、調剤薬局事務の資格をもっていなければできない仕事は、基本的にありません。
実際のところ、無資格者を募集している求人も存在します。
ただ、専門知識が必要となる業務もあるため、資格取得者のほうが就職・転職で有利になる可能性は高いでしょう。
調剤事務管理士は、調剤事務管理士技能認定試験に合格することで取得できる民間資格です。
ドラッグストアや薬局などで、処方せんの受付や入力、会計、請求業務など事務作業をメインに行います。
薬剤師や登録販売者とは異なり、直接薬に関する説明を行うことはできません。
調剤報酬請求事務専門士は、調剤報酬請求事務専門士検定試験に合格することで取得できる民間資格です。
ドラッグストアや薬局などで行う事務作業のなかでも、調剤報酬の請求業務をメインに扱う資格となっています。
毎年のように変化する調剤報酬に関するルールに的確に対応し、薬剤師のサポートを行います。
医療保険調剤報酬事務士は、事務作業全般のなかでも調剤報酬明細書の作成をメインに行う民間資格です。
医師の作成した処方せんをもとに、正確に調剤報酬明細書を作成する能力が求められます。
そのほかの事務作業を行うこともあります。
登録販売者の資格取得を検討している方のなかには、調剤薬局事務と迷っている方も多いでしょう。
その際の判断基準のひとつが「需要の大きさ」です。
登録販売者は、医薬品の販売や効能の説明、アドバイスなどを行うことができます。
常駐の従業員がひとりいれば一般医薬品の9割以上を販売できるため、さまざまな業界において需要の大きい資格です。
一方、調剤薬局事務はあくまで事務作業がメインであり、医薬品に関する説明や販売を行うことはできません。
店舗に薬剤師や登録販売者がいる場合に、そのサポートとして雇用されるケースが多いため、登録販売者と比べると需要は小さいといえます。
もちろん両方取ることも可能ですが、どちらを取るか迷っている場合は登録販売者の取得がおすすめです。
登録販売者として仕事をするためには、まず年に1度各都道府県で行われる登録販売者試験に合格する必要があります。
登録販売者試験には受験資格がありません。
以前は「学歴」と「実務経験」が受験資格として定められていましたが、2015年の法改正によりすべて撤廃され、誰でも受験できるようになりました。
今まで薬に関連する仕事や勉強をしたことがない方にもおすすめの資格です。
以下の表では、受験資格や仕事内容について、医薬品に関連する資格として薬剤師や調剤薬局事務と比較しています。
資格名 | 仕事内容 | 受験資格 |
登録販売者 | 医薬品の販売、情報の提供 | なし(誰でも受験可能) |
薬剤師 | 医薬品の調剤・販売 | 6年制大学の薬学部を卒業、または2006年度から2017年度までに4年制大学の薬学部に入学し、卒業後に大学院で薬学の修士もしくは博士号を取得 |
調剤薬局事務 | 薬局での事務仕事全般、薬剤師のサポート | 日本医療事務協会が認定した団体の講座を受講 |
受験資格が撤廃された登録販売者ですが、実務経験がないうちは「研修中」との扱いになります。
管理者要件と呼ばれる以下いずれかを満たすことで初めて、正規の登録販売者となります。
後者の要件は、令和5年の改正によって新たに追加されたものです。
条件が緩和されており、資格合格から最短1年で管理者要件を満たせるようになっています。
関連記事:登録販売者の管理者要件が緩和?実務期間1年でも満たせるってホント?
登録販売者の募集は全国各地にあり、インターネットの求人サイトなどで比較的簡単に見つけられます。
働き方もさまざまで、正社員だけでなくパートやアルバイトなどの雇用形態もあります。
就職や転職には有利な資格といえるでしょう。
また、調剤報酬に関するルールは年々変化しますが、薬の効能について大きく変化することは少ないため、一度退職した主婦(主夫)の再就職にもおすすめです。
登録販売者の資格は、一度取得すれば喪失することはありません。
登録販売者として就職・転職する場合は、以下の2点に注意しましょう。
登録販売者として就労するためには、販売従事登録申請を行う必要があります。
申請先は勤務地の都道府県であり、東京都の試験に合格した場合でも、勤務地が埼玉県であれば埼玉県に申請を行います。
居住地や試験の合格地は関係ないため注意しましょう。
また、登録販売者としてひとりで店舗に立つためには、前述の通り以下の管理者要件のうちいずれかを満たす必要があります。
一度退職して再就職する場合などにこの要件から外れてしまうと、「研修中の登録販売者」として採用され、給料や待遇が以前より下がる可能性があります。
「研修中」扱いではそもそも採用されないケースも考えられるため、計画的に実績を積んでいきましょう。
実務経験については連続している必要はなく、直近5年間の合計で満たせていれば問題ありません。
登録販売者を目指す際、気になるのが実際の給料相場でしょう。
ここでは、正社員とパート・アルバイトに分けて給料の目安をご紹介します。
登録販売者の正社員として働く場合、給料の目安は年300〜400万円です。
月収に換算すると、20〜25万円ほどになります。
ただし、前述の管理者要件を満たし、店舗責任者として勤務する場合は給料も高くなる傾向にあり、月30〜35万円前後が目安となります。
登録販売者の資格を活用してパートやアルバイトとして働く場合、地域によって給料相場には差がありますが、時給900〜1,200円前後が目安になるでしょう。
資格手当がプラスされる場合もあるため、求人情報をよくチェックしましょう。
関連記事:登録販売者の給料相場は高い?就職先や将来性についてもあわせて解説
本記事では、登録販売者にとっての就職先の選択肢やキャリアを築くうえでのポイントをご紹介しました。
内容をおさらいすると、以下の通りです。
オンラインで学べる「スタディング 登録販売者講座」では、スマホを使って効率的に登録販売者試験の対策ができます。
スキマ時間で効率よく学びたい方は、無料登録をぜひお試しください。