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登録販売者として就職し仕事をするためには、1年に1回各都道府県で行われる登録販売者試験に合格する必要があります。
登録販売者試験の最大の特徴は、受験資格がない点です。以前は「学歴」と「実務経験」が受験資格として定められていましたが、2015年の法改正によりすべて撤廃され、誰でも受験できるようになりました。今まで薬学の仕事や学校に関わったことのない方にもおすすめの資格です。
以下の表では、受験資格や仕事内容について、同じ医薬品業界に関わる薬剤師や調剤薬局事務と比較しています。
資格名 |
仕事内容 | 受験資格 |
登録販売者 | 医薬品の販売、情報の提供 | なし 誰でも受験可能 ※ひとりで店頭に立つためには直近5年間で2年以上(通算1920時間以上)の実務経験が必要。(資格取得後でも可) |
薬剤師 | 医薬品の調剤・販売 |
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調剤薬局事務 | 薬局での事務仕事全般、薬剤師のサポート | 日本医療事務協会が認定した団体の講座を受講する |
※令和5年4月1日、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令が施行され、これまでの管理者要件に加え、「過去5年間のうち従事期間が通算して1年以上」かつ「就業時間が通算して合計1920時間以上」であり、毎年「継続的研修」と、「店舗又は区域の管理及び法令遵守に関する追加的な研修」を修了した場合にも、管理者要件と認められることとなりました。
参考:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
高齢化が進むなかで、「医薬品の入手しやすさ」は重要性を増しており、ドラッグストアや薬局などの施設は需要が高まりつつあります。こちらでは、ドラッグストアや薬局に就職する際、取っておきたい資格をいくつかご紹介します。
登録販売者は、2009年の薬事法改正により新設された資格です。医薬品販売のプロとして、お客様とコミュニケーションを取りながら医薬品の説明やアドバイスなどを行います。登録販売が常駐している店舗では、大部分の医薬品を販売できるため、ドラッグストアや薬局での需要が高まっています。
仕事の一部は薬剤師と重なっていますが、両者の違いは主に以下の2つです。
医薬品の販売には、「調剤業務」と「販売業務」の2つのプロセスが存在します。このうち、登録販売者は販売業務のみを専門に扱う資格です。登録販売者の登場により、薬剤師は調剤業務に専念できるようになり、薬剤師の負担の軽減にもつながっています。
また、登録販売者と薬剤師は販売できる医薬品の種類にも違いがあります。登録販売者が扱えるのは、一般用医薬品のなかでも第2類医薬品と第3類医薬品のみです。第1類医薬品は、薬剤師以外が販売することはできません。ただ、第2類医薬品と第3類医薬品を合わせると、一般用医薬品の9割を占めるといわれており、登録販売者はほとんどの医薬品を販売できるといえるでしょう。
調剤薬局事務は、調剤薬局事務検定試験に合格することで取得できる民間資格です。調剤報酬の請求やお客様の受付、会計など事務に関する業務全般を取り扱います。薬剤師のサポートを行うこともあり、全国の病院やクリニック、薬局などで需要があります。
調剤薬局事務の資格をもっていなければできない仕事は、基本的にありません。実際、無資格者を募集している求人も存在します。ただ、専門知識が必要となる業務もあるため、資格取得者のほうが需要は高い傾向にあります。転職する場合にも有利になる可能性は高いでしょう。
調剤事務管理士は、調剤事務管理士技能認定試験に合格することで取得できる民間資格です。ドラッグストアや薬局などで、処方せんの受付や入力、会計、請求業務など事務作業をメインに行います。薬剤師や登録販売者とは異なり、直接薬に関する説明を行うことはできません。
調剤報酬請求事務専門士は、調剤報酬請求事務専門士検定試験に合格することで取得できる民間資格です。ドラッグストアや薬局などで行う事務作業のなかでも、調剤報酬の請求業務をメインに扱う資格。毎年のように変化する調剤報酬に関するルールに迅速に対応し、薬剤師のサポートを行います。
医療保険調剤報酬事務士とは、事務作業全般のなかでも、調剤報酬明細書の作成をメインに行う民間資格です。医師の作成した処方せんをもとに、正確に調剤報酬明細書を作成する能力が求められます。そのほかの事務作業も行うことがあります。
近年の登録販売者試験の受験者数、合格者数、合格率は、以下の表のようになっています。
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
2022年 | 55,606人 | 24,707人 | 44.4% |
2021年 | 61,070人 | 30,082人 | 49.3% |
2020年 |
52,960人 |
21,952人 |
41.5% |
2019年 |
65,288人 |
28,328人 |
43.4% |
2018年 |
65,500人 |
27,022人 |
41.3% |
2017年 |
61,126人 |
26,606人 |
43.5% |
2016年 |
53,369人 |
23,330人 |
43.7% |
2015年 |
49,864人 |
22,901人 |
45.9% |
※参考:厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」
2020年は新型コロナウイルスの影響もあり受験者数が減りましたが、それまでは受験者数が年々増加傾向にあったことがわかります。
受験者数がここまで増えているのは、合格後の就職先が幅広い点に魅力を感じている方が多いためです。「今後のために」「転職の際の選択肢を増やすために」と、試験合格を目指す方もいます。登録販売者の代表的な就職先を下記に列挙します。
上記はあくまで就職先の一部であり、そのほかにもさまざまな企業が登録販売者の求人を行っています。登録販売者は、なぜ多くの企業に求められる資格となっているのでしょうか。
現代では、「体の不調=病院」ではなく、軽度の症状であれば自分で手当てを行う「セルフメディケーション」が求められています。そのため、ドラッグストアや薬局など、「薬の購入やアドバイスを受けられる場所」の需要は年々高まっています。誰もが自分の健康や体について興味をもたなければいけない時代です。
そして、薬事法の改正により登録販売者が常駐していれば、ドラッグストアや薬局以外でも医薬品の販売が認められるようになりました。これにより、多くの企業が医薬品を取り扱うようになり、販売のプロである登録販売者の需要も高まっています。
つまり、セルフメディケーション時代の到来と薬事法の改正により、登録販売者はドラッグストアや薬局だけでなく、さまざまな企業に求められる資格となったのです。
登録販売者を目指す際、気になるのが就労後のお給料ではないでしょうか。こちらでは、正社員として働く場合とパートやアルバイトとして働く場合に分けて、お給料の目安をご紹介します。
登録販売者の正社員として働く場合、お給料の目安は年300万〜400万円です。月収に換算すると、20万〜25万円ほどになるでしょう。なかには、資格手当が支給されるケースもあるようです。
前述の通り、常駐の登録販売者がいる場合は、ドラッグストアや薬局以外でも医薬品の一部が販売できるようになったため、登録販売者を店舗責任者として採用する企業も増えています。その場合は、もう少しお給料が上がり、月30万〜35万円前後が目安となります。
登録販売者の資格をもちながら、パートやアルバイトとして働く場合、地域によってお給料に差が出る傾向にあります。目安としては、時給900〜1,200円前後です。場合によっては資格手当がプラスされるケースもあるようです。
下記の記事で詳しく紹介しています。
登録販売者の資格を取る際、調剤薬局事務とどちらを選ぶべき迷っている方も多いでしょう。その際の判断基準のひとつが「需要の高さ」です。
登録販売者は、医薬品の販売や効能の説明、アドバイスなどを行うことができます。常駐の従業員がひとりいれば、一般医薬品の9割以上を販売することができるため、さまざまな業界からの需要が高いのが特徴です。
一方、調剤薬局事務はあくまで事務作業がメインであり、医薬品に関する説明や販売を行うことはできません。店舗に薬剤師や登録販売者がいる場合に、そのサポートとして雇用するケースが多いため、登録販売者と比べると需要が少ないといえます。
もちろん両方取ることもできる資格ですが、どちらを取るか迷っている場合は、登録販売者がおすすめです。
登録販売者の募集は全国各地にあり、インターネットの求人サイトなどで比較的簡単に見つけられます。働き方もさまざまで、正社員だけでなくパートやアルバイトなどの雇用形態もあります。就職や転職には有利な資格といえるでしょう。
また、調剤報酬に関するルールは年々変化しますが、薬の効能について大きく変化するケースは少ないため、一度退職した主婦(主夫)の再就職にもおすすめです。登録販売者の資格は、一度取得すれば喪失することはありません。
登録販売者として就職、転職する場合は、以下の2点に注意しましょう。
登録販売者として就労するためには、販売従事登録申請を行う必要があります。申請先は勤務地の都道府県であり、東京都の試験に合格した場合でも、勤務地が埼玉県であれば埼玉県に申請を行います。居住地や試験の合格地は関係ないため注意しましょう。
また、登録販売者としてひとりで店舗に立つためには、直近5年以内で2年以上、かつ、通算1920時間以上勤務経験※が求められます。一度退職し再就職する場合などは、この要件を満たしていないと「研修中の登録販売者」として採用され、お給料や待遇面で差が生じる可能性があります。そもそも採用されないケースも考えられるため、どの程度ブランクがあるのか事前に把握しておきましょう。実務経験については、連続して2年間積む必要はなく、直近5年間の間に、合計して2年以上勤務した期間があれば問題ありません。
※令和5年4月1日、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令が施行され、これまでの管理者要件に加え、「過去5年間のうち従事期間が通算して1年以上」かつ「就業時間が通算して合計1920時間以上」であり、毎年「継続的研修」と、「店舗又は区域の管理及び法令遵守に関する追加的な研修」を修了した場合にも、管理者要件と認められることとなりました。
参考:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について
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登録販売者資格取得後の活躍の場について、関連資格とあわせてお伝えしました。登録販売者と聞くとイメージとして薬剤師を思い浮かべ、資格取得も敷居が高く感じてしまいそうですが、決してそうではないことがわかります。登録販売士の資格試験は特別な制限なく受けることができるため、資格取得を目指すことで、だれでも活躍の場を広げるチャンスがあるといえます。