登録販売者の資格を取得するとどのようなメリット・デメリットがあるのか気になる方は多いでしょう。無事に仕事が見つかるのか、今より収入が上がるのかがわかれば、不安なく勉強に臨めるはずです。
登録販売者とはどんな資格?
登録販売者はそもそもどんな資格なのか、以下3つのポイントでご紹介します。
- 登録販売者とは?
- 登録販売者が販売できるものは?
- 働く場所はどんなところがある?
順番に見ていきましょう。
登録販売者とは?
登録販売者とは、薬局やドラッグストアで薬を販売できる資格です。
私たちの生活に欠かせないものである市販薬は、誰でも販売できるわけではなく、販売上のルールがあります。
登録販売者は、市販薬を販売できる資格の1つです。
登録販売者として働くようになれば、ドラッグストアなどにお薬を買いにきたお客様にお薬の説明を行ったり、一緒に選んであげたり、時にはアドバイスをしたりします。
品出しやレジ打ちなども行いながら、薬の専門家として働くことができるようになります。
関連記事:登録販売者資格とは?仕事内容や取得のメリット、難易度を解説
登録販売者が販売できるものは?
登録販売者は、第2類・第3類の一般用医薬品を販売できます。
医薬品の「第2類」「第3類」ってなに?
ドラッグストアやコンビニで市販されている医薬品は、副作用の強さ等によって第1類・第2類・第3類医薬品に分類されています。
そのうち、一番副作用等の弱い第3類と、その次に副作用等の弱い第2類が、登録販売者が販売できるお薬です。
第2類・第3類だけといっても、日本で扱われている医薬品の9割以上が、第2類・第3類の医薬品といわれています。
登録販売者の資格があれば、医薬品のほとんどを取り扱えるわけです。
ちなみに、一番副作用等の強い第1類医薬品は薬剤師しか販売ができません。
働く場所はどんなところがある?
登録販売者の働く場所は多岐にわたります。
もっともポピュラーなのは薬局やドラッグストアです。
他にもスーパーやコンビニ、大型家電量販店など、薬を販売している店舗であれば、そのすべてが職場の候補になります。
登録販売者の資格を取得する7つのメリット
登録販売者の資格を取得するメリットは、以下の7つが挙げられます。
- 時給・給料アップが期待できる
- 転職しやすくなる
- お客様の役に立てる
- さまざまな職場で働ける
- 働き方を自由に選べる
- 独立開業につながる
- 私生活で知識が役立つ
順番に詳しく解説します。
時給・給料アップが期待できる
登録販売者になれば、多くの店舗で有資格者に手当が出るなど、時給アップが期待できます。
地域や店舗によって異なりますが、時給100~200円ほどアップを見込めます。
登録販売者資格を持った正社員として働く場合の年収の目安は300万〜400万円です。
月収に換算すると、20万〜25万円ほどになるでしょう。
なかには、資格手当が支給されるケースもあるようです。
前述の通り、常駐の登録販売者がいる場合は、ドラッグストアや薬局以外でも医薬品の一部が販売できるようになったため、登録販売者を店舗責任者として採用する企業も増えています。
その場合はもう少し給与が上がり、月30万〜35万円前後が目安となります。
登録販売者の正社員の目安の給与を、ほかの医療系の仕事と比較しました。
医療事務・調剤薬局事務・歯科助手ともに人気のお仕事になりますが、登録販売者のお給料が比較的高いことがわかります。
登録販売者 | 医療事務 | 調剤薬局事務 | 歯科助手 | |
---|---|---|---|---|
平均収入(目安) | 300万円~400万円 | 250万円~350万円 | 270万円~320万円 | 約300万円 |
登録販売者の資格をもちながらパートやアルバイトとして働く場合、地域によって給与に差が出る傾向にあります。
目安としては、時給900〜1,200円前後です。
場合によっては資格手当がプラスされるケースもあるようです。
関連記事:登録販売者の給料相場は高い?就職先や将来性についてもあわせて解説
転職しやすくなる
登録販売者の募集は全国各地にあり、インターネットの求人サイトなどで比較的簡単に見つけられます。
登録販売者として働くには、職場のある都道府県に届出をして登録する必要がありますが(販売従事登録と呼びます)、逆にいえば登録さえすれば全国どこの地域でも働くことができます。
関連記事:登録販売者の販売従事登録とは|必要な手続きや期限、登録料について解説
例えば、「家族の都合で引っ越しがあり、次の職場を探さなければいけない」といったことになっても、登録販売者の資格があれば比較的速やかに転職できるでしょう。
働き方もさまざまで、正社員だけでなくパートやアルバイトなどの雇用形態もあります。
就職や転職には有利な資格といえるでしょう。
お客様の役に立てる
「セルフメディケーション」という言葉を聞いたことはありますか?
身体に不調を感じた際に、軽度であれば病院に行かずに、自分で対処を行うことをセルフメディケーションと呼びます。
しかし、症状やお薬について素人の状態だと、自分の状態にあったお薬を選ぶだけでも一苦労です。
風邪薬1つにしてもさまざまな種類のお薬が店頭に並んでいるので、「どれを買えばいいんだろう」と悩むことは少なくありません。
そこで、セルフメディケーションの考え方が広まるにつれ、ドラッグストアや薬局などで「薬の購入のアドバイスがほしい!」という需要も年々高まってきているというわけです。
身体の不調でドラッグストアなどを訪れているお客様にとって、お薬の専門家に相談ができるというのはとても頼もしいことです。
そういった頼られる存在になることは、登録販売者の大きなやりがいの1つといえるでしょう。
セルフメディケーション時代の到来と薬事法(現在の薬機法)上の規制緩和により、登録販売者はドラッグストアや薬局だけでなく、さまざまな企業に求められる資格となりました。
さまざまな職場で働ける
登録販売者の勤務先といえば、薬局やドラッグストアをイメージする方が多いでしょう。
しかし最近では、コンビニエンスストアやホームセンター、家電量販店などお薬を扱う店舗は多岐にわたっており、そのすべてが勤務先の候補となります。
また、医薬品の知識を活かして製薬会社の営業として働くといった選択肢もあります。
さまざまな職場で働ける登録販売者の資格は、キャリアの幅を広げてくれるでしょう。
関連記事:登録販売者の就職先はドラッグストア以外にもある?多様な働き方を紹介
働き方を自由に選べる
登録販売者は、パートやアルバイト、正社員などライフスタイルの変化に合わせて働き方を選べるのも魅力です。
資格には有効期限がないため、結婚や出産など家庭の事情によって仕事を休む期間があっても、数年後に勤務を再開することが可能です。
パートやアルバイトとして経験を積んだあと、正社員として就職を目指すといったキャリアも選べます。
独立開業につながる
登録販売者には「管理者要件」と呼ばれる実務経験の基準があり、満たすことで店舗管理者等になることが可能です。
将来的に医薬品を販売する店舗を自分で経営したいと考えている場合、登録販売者の管理者要件を満たすことは独立開業への一歩になるでしょう。
私生活で知識が役立つ
登録販売者の試験や業務を通じて身につけた知識は、日常生活でも役に立ちます。
前述のセルフメディケーションが政府によって推進されるなか、一般用医薬品を使って自分や家族のケアを行う機会は増えるでしょう。
一般用医薬品の9割を占める第2類・第3類医薬品の知識があれば、効果や副作用をしっかり理解したうえでお薬を使用できます。
登録販売者の資格を取得する3つのデメリット
一方で、登録販売者の資格には以下のようにデメリットといえるポイントもあります。
- 研修期間がある
- 一般従事者と変わらない業務もある
- 毎年外部研修を受ける必要がある
メリット・デメリットの両方を理解したうえで、資格取得を検討しましょう。
研修期間がある
登録販売者は、試験に合格したからといってすぐに1人で業務に従事できるものではありません。
研修期間を終え、正規の登録販売者になるためには一定の実務経験が求められます。
具体的には、以下いずれかの条件(管理者要件)を満たす必要があります。
- 直近5年以内に2年以上かつ通算1,920時間以上の実務経験
- 直近5年以内に1年以上2年未満かつ通算1,920時間以上の実務経験に加え、指定の追加的研修を修了(令和5年4月1日より適用)
研修中の間は、薬剤師や管理者要件を満たす登録販売者による管理・指導がなければお薬の販売ができません。
登録販売者として活躍の場を広げていきたいなら、早めに実務経験を積むのがよいでしょう。
関連記事:登録販売者に必要な実務経験とは?期間や時間などの条件、証明書について解説
一般従事者と変わらない業務もある
登録販売者は医薬品のプロですが、勤務先がドラッグストアなどであれば資格を持たない「一般従事者」と変わらない業務も担当する必要があります。
具体的には、商品の陳列や補充、一般商品の販売業務など資格を必要としない仕事が挙げられます。
職場によっては、「せっかく資格を取得したのに、なかなか活かす機会がない」と感じることがあるかもしれません。
業務内容をよく確認したうえで求人に応募することが大切だといえるでしょう。
毎年外部研修を受ける必要がある
登録販売者を雇用する店舗には、所属する登録販売者に毎年外部研修を受けさせることが義務づけられています。
毎年受ける必要があるため、手間に感じる人もいるでしょう。
しかし、お薬に関する知識を維持・アップデートできる貴重な機会であるほか、研修時間は最低計12時間とそこまで長期にわたるものではありません。
資格のメリットの大きさを考えれば、年間2日ほどの研修は許容範囲とも考えられます。
関連記事:登録販売者の外部研修とは?受けなかったらどうなる?
登録販売者が向いているのはどんな人?
登録販売者の資格取得に向いているのは、以下のような人です。
- はじめて資格に挑戦する人
- 薬の知識をつけたい人
- 誰かの役に立ちたい人
はじめて資格に挑戦する人
登録販売者試験には受験資格がありません。
学歴も経験も年齢もすべて不問で、誰でも挑戦できる資格です。
勉強を頑張って、試験にさえ合格すれば前述のようなメリットを得られるということです。
さらに、はじめて資格に挑戦する人にオススメしたい理由の2つ目が、比較的受かりやすい難易度の試験だということです。
今まで、理系の勉強が苦手だった方や、薬の勉強をしたことがない方でも、合格した人がたくさんいます。
合格率は地域により異なりますが、平均すると約40~50%です。
これまで資格の勉強をしたことがない人や、勉強自体が久しぶり、という方にも挑戦しやすい試験となっています。
関連記事:登録販売者試験の合格率・難易度は?都道府県別の合格率も一覧で紹介
薬の知識をつけたい人
現在は、さまざまな種類の医薬品が店舗で買える時代です。
例えば具合が悪くなった際に、症状が軽ければ病院に行かずに市販薬で済ませるという方も多いと思います。
薬の知識を持っておくことで、自分が病気になったときはもちろん、家族の健康を守るためにも役立てられるのが登録販売者の知識です。
誰かの役に立ちたい人
誰かの役に立てる仕事をしたいと考えている方にも、登録販売者はオススメです。
お薬を買いに来たお客様から話を聞いたり様子を見たりすることで、よりよい対処につなげることができます。
しかし、もちろんお医者さんのような診断はできないため、ご相談に来店したお客様によっては、市販薬の購入ではなく、医療機関の受診を勧めた方がいいケースもあります。
このように、登録販売者としての業務は、直接お客様のお役に立つことができます。
誰かの役に立つ仕事にやりがいを感じる方に向いているお仕事といえるでしょう。
登録販売者の「メリット」に関するその他の質問
ここでは、登録販売者の資格を取得するメリットについて、以下2つの質問にお答えします。
- 登録販売者と看護師はどちらのほうがメリットある?
- 登録販売者と薬剤師はどちらがおすすめ?
- 薬学生が登録販売者の資格を取得するメリットは?
登録販売者と看護師はどちらのほうがメリットある?
お薬に関連する資格として、登録販売者は看護師と比較されることもあります。
しかし、両者の仕事内容には大きな違いがあります。
登録販売者は薬を販売する仕事であり、勤務先はドラッグストアなどの店舗です。
一方、看護師はお薬を処方するお医者さんの補助や患者さんの看護を行う仕事であり、「病院」が主な職場となります。
どちらの資格がメリットが大きいかは目的によって異なりますが、取得のしやすさや働きやすさを重視したい方には登録販売者がオススメだといえるでしょう。
看護師資格を取得するには、看護大学などで3年以上の教育を受けたうえで、国家試験に合格する必要があります。
また、病院での勤務はドラッグストアや薬局より融通が効きづらいでしょう。
そのぶん、研修中の登録販売者と比較すれば看護師の給料は多少高い傾向にあります。
ただし、管理者要件を満たすことで店舗責任者になれば、登録販売者でも給与アップが見込めます。
それぞれメリット・デメリットがあるため、なぜ資格を取るのか、どのような働き方をしたいのかによって選ぶとよいでしょう。
登録販売者と薬剤師はどちらがおすすめ?
また、同じく登録販売者と比較される資格として薬剤師があります。
薬剤師のほうが調剤ができたり第1類薬品を扱えたりと業務の幅は広いものの、受験には6年制薬学課程の修了が必要となっており、ハードルの高い資格です。
取得にかかる手間と専門性の高さを比較し、今後のキャリアにおいてメリットの大きいほうを選ぶとよいでしょう。
関連記事:登録販売者と薬剤師の違いは?働き方や資格の取得難易度、年収を比較
薬学生が登録販売者の資格を取得するメリットは?
薬剤師の資格取得を目指す薬学生にとっても、登録販売者の資格はメリットがあります。
薬剤師と比較して調剤ができないことや第1類医薬品を扱えないことから業務の幅は少し狭まりますが、パートやアルバイトとして給料をもらいながら実務経験を積むことが可能です。
薬剤師になるための勉強で身につけた知識も活かせるでしょう。
まとめ
本記事では、登録販売者資格のメリット・デメリットについて、具体的な仕事内容やキャリアとあわせてご紹介しました。
ポイントをおさらいすると、以下の通りです。
- 登録販売者は一般用医薬品のうち、第2類と第3類の販売ができる
- ドラッグストアだけでなく、さまざまな職場で勤務が可能
- 医薬品販売のプロとして、給料アップが期待できる
- セルフメディケーションが推進されるなか、お客様の役に立つ機会は増えている
- 研修が必要な点や一般従事者と変わらない仕事がある点はデメリットに感じる可能性も
- はじめて資格に挑戦する人や誰かの役に立ちたい人にオススメの資格
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