そもそもIT系の資格を取得する意味はある?
そもそも、IT企業に勤める方のなかには、「資格よりも実務経験を積むべき」という考えの方も少なくありません。確かに、ITの現場で働くには実務経験も重要なポイントであり、就職や転職の際に評価される項目です。
しかし、資格を取得していればそれに関連する技能や知識があることの裏付けになり、実務経験と同じく評価の対象となります。自身が保有するITスキルを資格によって見える化できるため、「IT系の資格は取得しても意味がない」というのは間違いです。
IT系の資格には、大きく分けて「国家試験」「ベンダー資格」「ベンダーニュートラル資格」の3種類があります。以下では、それぞれの特徴を簡単に解説します。
国家試験
国家試験は、国の法律に基づいて個人の技能や能力が証明される資格のことです。国家試験の合格者は、国から一定のスキルを認められたということであり、特にIT化が進む現代ではIT系の国家試験の需要が高まっています。
ITストラテジストは、IT系の国家試験です。そのほかには、「プロジェクトマネージャ」や「システムアーキテクト」「応用情報技術者」などの資格があり、どれもIT業界でニーズがあります。
ベンダー資格
ベンダー資格とは、特定のIT企業が自社製品に関する技能や知識を証明する資格です。「マイクロオフィススペシャリスト(MOS)」や「シスコ技術者認定」などがあります。実務に生かしやすいのはもちろん、国家試験とは異なり世界で認知されている資格も多いのが特徴です。世界で活躍するためには、国家試験と併せてベンダー資格の取得が必要になるケースもあります。
ベンダーニュートラル資格
ベンダーニュートラル資格は、特定の企業に依存しない技術や知識に関する能力を証明する資格です。例えば、マークアップに関する技能を証明する「HTML5プロフェッショナル認定」やLinuxに関する知識を問う「Linux技術者認定(LinuC)」などがあります。実務で広く利用されている技術に関するものが多く、ベンダーニュートラル資格を取得することで、現場で高い評価を得やすくなります。
ITストラテジストの資格を取得するメリット
ITストラテジストは、IT企業だけでなくIT戦略の見直しを迫られている一般企業でもニーズの高い資格です。続いては、ITストラテジストの資格を取得するメリットをご紹介します。
周囲からの評価が高まりやすくなる
ITストラテジストの資格を取得する最大のメリットは、自身が保有するスキルを外部にわかりやすく伝えることができ、周囲からの評価が高まりやすくなる点にあります。証明が難しいIT関連の能力を、誰もがわかる形でアピールするには資格の取得が最適です。市場価値の向上につながり、就職や転職でより良い条件を獲得しやすくなるのはもちろん、企業によっては昇進・昇給できるケースもあるでしょう。
IT系の資格のなかでも、ITストラテジストの評価が特に高いのは、国家試験であるという点だけでなく試験の難易度が影響しています。ITストラテジスト試験は、以前の試験区分で最難関とされた「上級システムアドミニストレータ試験」と「システムアナリスト試験」を組み合わせて創設されました。そのため、ITストラテジストも難易度の高い試験となっており、自然と合格者の評価は向上します。
また、合格者の数が少ないのも高い評価の要因です。ITストラテジストは2009年にスタートした試験であり、例年の合格者数が数百名であることを踏まえると、その数は十分とはいえません。需要に対して供給が不足しているため、その分評価も高まりやすくなるでしょう。
将来性が十分に見込める
ITストラテジストの資格取得は、将来性の面から見てもおすすめできます。現代のビジネスシーンでは企業のIT化やDXが進んでおり、同分野に精通するITストラテジストは、さまざまな業界・業種で需要があります。
また、IT企業への就職やIT系のコンサルティングファームへの所属、フリーランスでの活躍など働き方が幅広いのも魅力です。資格を生かすことで、自身が描くキャリアパスやライフプランに応じて活躍の場を移すことができます。
仕事の幅が広がる
ITストラテジストは、「戦略家」を意味する「Strategist」という単語からもわかる通り、IT戦略の立案が業務の中心です。しかし、資格を取得することでコンサルティング力やプロジェクトマネジメント力、アプリ開発などに関する基礎知識も身につけられ、仕事の幅が広がります。IT企業に就職してさまざまな部門や部署で活躍したい方にもおすすめの資格といえます。
人脈が広がる
ITストラテジスト試験に合格し資格を取得すると、日本ITストラテジスト協会(JISTA)に入会できるようになります。日本ITストラテジスト協会では、支部ごとに勉強会が開催されており、グループディスカッションやプレゼンを通して最新技術や知識のインプット・アウトプットが可能です。
また、普段の業務では関わることの少ない、社外の優秀なコンサルタントやエンジニアと交流でき、人脈を広げられるのも魅力です。一定の年会費はかかるものの、知識の共有と人脈の拡大に活用できるのは大きなメリットといえるでしょう。
有効期限がない
ITストラテジストの資格は有効期限がないため、数年ごとの更新手続きは必要ありません。一度試験に合格すれば、半永久的に高い評価を受けることができ、うっかりミスによって失効してしまう心配もない点はメリットです。
ITストラテジストの資格が役に立たないと勘違いされる理由
上記の通り、ITストラテジストの資格には、取得のメリットが数多くあります。それにもかかわらず、「役に立たない」「必要ない」と勘違いされるはなぜなのでしょうか。次は、そのような勘違いが生まれる理由をご紹介します。
資格を持っていなくてもITストラテジストとして働けるため
ITストラテジストは、資格が必須の職種ではありません。資格を保有していなくても一定のスキルや実務経験があれば、ITストラテジストとして活躍できます。実際、企業によってはITコンサルタントの資格を持つ方やCIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)などの立場の方が同職務に従事しているケースもあります。
しかし、自身の持つスキルを客観的に証明するためには、資格を保有するのがもっとも効率的です。例えば転職活動をする際、自分の実績や経験は言葉や文章にしても完璧に伝えるのが難しいですが、資格を持っていれば誰もがわかりやすい形で能力をアピールできます。
このように、資格を取得していなくてもITストラテジストとして働けるものの、それを理由に「資格は必要ない」とするのは早計といえるでしょう。
現場での経験を重視しているため
企業のIT化は日々進んでいるものの、旧体制の残っている現場では「実務による経験のみを重視する」という考えの方もいます。そのような場合、まずは実務経験を積むことが重視され、資格の取得が軽視されるケースも少なくありません。
しかし、実務経験も資格もない新人にIT戦略の立案をすべて任せる企業はそれほど多くないでしょう。その結果、戦略の立案やプロジェクトのモニタリングなど中心業務は引き続き先輩社員が行い、新人は周辺業務や雑用に回される可能性も考えられます。これでは十分な実務経験を積むことができません。
また、ITストラテジストの資格は「5年分の実務経験に相当する」と表現される場合もあります。そのため、現場での経験を重視する企業でも決して無駄にならない資格といえるでしょう。
ITストラテジストの資格取得をおすすめする方の特徴
最後に、ITストラテジストの資格を取得すべき方の特徴をご紹介します。
IT企業への転職を検討している方
一般企業からIT企業への転職を検討している場合は、ITストラテジストの資格があると有利に働く可能性があります。ITストラテジストは、高度なITの知見を活用して企業課題を解決するスペシャリストであり、IT企業でも資格を持っている方はそれほど多くありません。超上流工程で役割を発揮する人材として評価を得やすくなるでしょう。
コンサルタント業務に興味のある方
ITストラテジストの資格は、ITコンサルタントを目指す方からも人気があります。ITコンサルタントとは、ヒアリングなどをもとにクライアント企業の課題を分析し、ITを活用した解決策を提示する職種です。
ITコンサルタントとして活躍するには、IT戦略の策定力やリーダーシップ力、マネジメントスキルなどが求められるため、ITストラテジストの資格が適しています。
現場職からマネジメント職へのキャリアチェンジを検討している方
そのほかには、現在エンジニアなどの現場職でバリバリ働いている方が、マネジメント職へのキャリアチェンジを検討している場合にもITストラテジストはおすすめです。ITストラテジストは、自分でシステム開発などを行うケースは少ないものの、現場で培ったスキルや知識はマネジメント職でも重宝されるでしょう。