情報処理技術者試験とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が管轄、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する国家試験です。受験者が保有する知識や技能が、情報処理技術者/情報処理安全確保支援士として一定以上の水準にあるかどうかを認定しています。
12の情報処理技術者試験と情報処理安全確保支援士試験の計13種類の区分があり、要求される知識や技能の高さに応じて「スキルレベル」が割り振られています。そして、もっとも高度なスキルが必要となるレベル4に位置付けられるのが高度情報処理技術者試験と情報処理安全確保支援士試験です。
高度情報処理技術者試験は、情報処理安全確保支援士も含めると以下の9つの区分で構成されています。
レベル |
試験名 |
レベル4 |
<高度情報処理技術者試験> ITストラテジスト試験 システム監査技術者試験 プロジェクトマネージャ試験 ITサービスマネージャ試験 システムアーキテクト試験 ネットワークスペシャリスト試験 データベーススペシャリスト試験 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 <情報処理安全確保支援士試験> 情報処理安全確保支援士 |
どれも簡単な試験ではありませんが、自分の持つITスキルを客観的に証明する方法として、毎年多くの方が受験しています。
IT業界への転職やキャリアアップを検討している場合は、自身の専門領域に合った高度情報処理技術者試験/情報処理安全確保支援士試験の受験を検討してみてはいかがでしょうか。
以下では試験区分ごとの特徴を解説します。
プロジェクトマネージャは、システム開発を行うプロジェクトの責任者として、計画の策定から予算配分、人員選定、進捗管理などを担う人材です。PMやプロマネと省略されることもあります。
クライアントやシステムエンジニア、プログラマーなどに意見の相違がある場合は、プロジェクトマネージャが間に入り調整を行い、プロジェクトを推進していきます。メンバー間のバランサー的役割も果たす必要があり、大規模なプロジェクトほどマネージャの手腕が問われるといえるでしょう。
プロジェクトマネージャ試験では、プロジェクトマネジメント業務を円滑に遂行するために必要な実践的な能力が要求されます。組織戦略やITシステム全般に関する広範な知識はもちろん、プロジェクト計画の作成力や適切な目標設定、実行後の評価・分析能力などを確認する問題が出題されます。
ITサービスマネージャは、顧客のニーズを調査したうえで、最適なITサービスを提供する職種です。品質面だけでなくコスト面も考慮してITサービスを選定することで、クライアントのIT投資効果を高める役割も求められます。
ITサービスマネージャ試験では、コンピュータ構成要素やシステム構成要素、データベース、ネットワークなど幅広い分野から問題が出題されます。なかでもサービスマネジメント分野の出題が多く、半数以上を占めるのが特徴です。試験対策に取り組む際は、同分野の勉強が中心となるでしょう。
また、午後試験ではITサービスマネージャの視点から架空の事例に対する自身の考えを展開する必要があり、論理的思考力や文章構成能力なども要求されます。IT業界の経験者が多く受験することから、レベルの高い試験となりやすいのが特徴です。
システムアーキテクトは、システム開発における設計や構築を行う人材です。システムエンジニアやプログラマーの上級職に位置付けられる職種で、開発業務に必要な要件定義や設計などの工程を主導していく役割を担います。
システムアーキテクト試験は、システムエンジニアがキャリアアップを目的として受験するケースが多い試験です。システム開発の上流工程で必要となる、要件定義や開発、運用、保守に関する問題が出題されます。
システムアーキテクト試験における最大の関門となりやすいのが、1日の最後に行われる論文試験です。システムアーキテクト試験の受験者は、初めて高度情報処理技術者試験に挑戦する方が多く、論文を書き慣れていないケースも見られます。そのため、試験対策は論文を中心に行い、インプットした知識を適切な形でアウトプットする能力を養いましょう。
ネットワークスペシャリストは、ネットワークや情報セキュリティに関する広範な知識を持ち、大規模ネットワークの構築や運用を専門に行う人材です。あらゆる物がネットワークに接続されている現代に欠かせない職種であり、インフラ系のエンジニアやネットワークエンジニアを目指す方に人気の資格です。
ネットワークスペシャリスト試験では、ネットワークやセキュリティに関する問題が多く出題されます。特に午後試験では、ネットワークシステムの企画から要件定義、運用、保守、技術に関する内容が重点的に問われます。
テクニカルな問題が多く、知識の量が合否に直結しやすいのが特徴です。論述や長文の記述は求められないため、スキマ時間などを活用して積極的にインプットに取り組むのが基本的な対策となります。
データベーススペシャリストは、企業活動におけるビッグデータの管理やデータベースシステムの構築などを主な業務とする人材です。ビジネスシーンではビッグデータを活用する重要性が高まっており、資格取得者は膨大なデータを適切に管理・運用できる存在として重宝されます。
データベーススペシャリスト試験では、データベースに関する広範な知識が要求されます。具体的には、データベースの全体計画や要件定義、設計、実装、運用・管理などが出題範囲です。
問題の出題形式は午前が選択式、午後が記述式と分かれており、特に午後試験でつまずく方が多い傾向にあります。午後の記述試験では販売管理や生産管理の細かな知識を問う問題も出題されるため、異なる業界に所属するエンジニアの場合、聞いたことのない用語に苦戦する可能性があります。試験対策の段階でしっかりと知識を身に付けておくことが重要です。
エンベデッドシステムスペシャリストは、組み込みシステム(エンベデッドシステム)の設計から構築までを担う職種です。システムエンジニアの一種ですが、組み込みシステムに特化していることからIoT系のエンジニアを目指す方に人気がある資格です。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験では、組み込みシステムの設計、構築、運用・保守などに関する内容が問われます。取り上げられる開発システムの種類が多岐にわたるのが特徴で、過去には自動運転やスマート工場、観光案内用ロボット、スマートグリッドなどの問題が出題されています。経験者でも自身が関わっているシステムが問われるケースは少ないため、広範な知識が必要です。
また、エンベデッドシステムスペシャリスト試験では計算問題も出題されます。計算問題は、1つ間違えると連鎖的に続く問題も落としてしまう可能性があるため、注意して解く必要があります。
情報処理安全確保支援士は、企業におけるサイバーセキュリティ対策を主導する役割を担う人材です。登録情報セキュリティスペシャリストとも呼ばれ、情報化が進むとともにサイバー攻撃のリスクが増大している現代では、あらゆる業界で活躍が期待されています。支援士試験と呼ばれることもあります。
情報処理安全確保支援士試験は、高度情報処理技術者試験と異なり、春期と秋期の年2回開催である点が特徴です。レベル3に該当する応用情報技術者試験からのステップアップにも適した難易度で、多くの方が受験しています。
試験内容は、情報セキュリティの管理や運用はもちろん、技術面を問う問題も出題されます。午後の記述式試験では、設問に対する答えを短くまとめて解答する必要があり、国語力も試される試験です。
今回は、情報処理技術者試験の概要や高度情報処理技術者試験/情報処理安全確保支援士試験の区分ごとの特徴をお伝えしました。あらゆる業界でIT化やDXが進んでおり、高度情報処理技術者/情報処理安全確保支援士の重要度が増しています。資格を取得することでスキルをわかりやすくアピールでき、自分の市場価値を高められます。得意とする業務領域や専門分野に合わせて、高度情報処理技術者試験や情報処理安全確保支援士試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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