
ITストラテジスト試験の合格者は、就職・転職市場において一目置かれる存在であることは間違いありません。なぜなら、情報処理技術者試験、ひいてはIT系の試験でも屈指の高難度で、ITのみならず経営戦略への知識も豊富であることが証明されているからです。
実際の職探しでのITストラテジストの市場価値、ITストラテジスト試験の合格者が描くべきキャリアパスなどについて、ここでは詳しく解説していきます。
職種としての「ITストラテジスト」と国家試験「ITストラテジスト試験」
ITストラテジストへの転職を考える際、まず理解しておきたいのが「国家試験のITストラテジスト」と「職種としてのITストラテジスト」の違いです。
転職や就職活動の際に混同しないよう、異なる点をしっかりと把握しておきましょう。
- 情報処理技術者試験の「ITストラテジスト試験」はIT系国家試験最高峰のひとつ
- システム開発工程の最上流に位置する職種としての「ITストラテジスト」
情報処理技術者試験の「ITストラテジスト試験」はIT系国家試験最高峰のひとつ
ITストラテジスト試験は、IPA(情報処理推進機構)が実施・運営する情報処理技術者試験の一区分にあたります。
情報処理技術者試験とは、経済産業省が「情報処理の促進に関する法律」にもとづいて、情報処理技術者としての知識・技能が一定の水準以上であると認定する国家試験です。
この情報処理技術者試験のなかで、ITストラテジスト試験はとくに難しい高度区分に属しています。
試験合格率は例年14〜15%と非常に低く、IT系の試験では最難関といえるでしょう。
ITストラテジスト試験は年1回の春期(4月)に実施され、「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の4科目で構成されています。
4科目の概要は下表のとおりで、試験合格のためには全科目の合格基準点をクリアする必要があります。
試験区分 | 試験時間 | 出題形式 | 出題数・解答数 | 合格基準点/満点 |
午前Ⅰ | 50分 | 多肢選択式 (四肢択一) | 出題数:30問解答数:30問 | 60点/100点満点 |
午前Ⅱ | 40分 | 多肢選択式(四肢択一) | 出題数:25問解答数:25問 | 60点/100点満点 |
午後Ⅰ | 90分 | 記述式 | 出題数:3問 解答数:2問 | 60点/100点満点 |
午後Ⅱ | 120分 | 論述式 | 出題数:2問解答数:1問 | A(A〜Dのランク評価) |
システム開発工程の最上流に位置する職種としての「ITストラテジスト」
IT企業やシステム開発の現場において、ITストラテジストはIT戦略の立案やプロジェクトの企画・推進を担う専門職として認識されています。
ITストラテジストの担当はシステム開発における超上流工程で、一般的なエンジニアが行うプログラミングやテストといった工程は担当しません。
ITストラテジストの主な役割は、企業の経営課題を分析して解決に向けたIT施策を立案し、それを実行可能なプロジェクト計画へと落とし込むことです。
そのため、ITストラテジストにはITに関する専門知識に加えて企業経営や業界動向に関する理解が求められます。
単なる技術者とは異なり、ITストラテジストは経営とITを結びつける戦略家としての役割を果たします。
企業の経営陣でこのようなIT戦略の立案等を行うのは、CIO(最高情報責任者/情報統括役員)やCTO(最高技術責任者)といった役職です。
実務経験なしでITストラテジストの職に就くのは難しい?
結論としては、ITストラテジスト試験合格後、実務経験なしにITストラテジストとしての業務に就くのは難しいといえます。
ここからは、試験合格後の転職・就職について解説します。
- いきなり上流工程を任せられる可能性はほぼ皆無
- ITストラテジストへの転職は、試験の合格と実務経験で有利になる
いきなり上流工程を任せられる可能性はほぼ皆無
ITストラテジスト試験に合格しても、実務経験がない方や、IT業界での経験が浅い方がITストラテジストの職に就くのは非常に難しいと言わざるを得ません。
ITストラテジストは、システム開発の上流工程である「IT戦略の立案」や「経営課題の分析」などを行い、プロジェクト全体の方向性を決定づける重要な役割を果たします。
これらの業務に必要なのは豊富な実務経験や業界動向の理解で、多くのプロジェクトで経験を積んだエンジニアでなければ対応は困難です。
ITストラテジストは技術的な知識だけでなく、ビジネス全体を俯瞰し、経営陣と対等に議論できるレベルの見識が求められます。
さらに、プロジェクトの進行管理を行うためには、関係者間の調整を行うマネジメントスキルも必要です。
このようなスキルは実務経験を通じて身につく部分が大きく、試験勉強だけで習得するのは難しいでしょう。
このような理由から、ITストラテジストの転職・就職市場における「未経験者歓迎」の求人は、皆無だと考えられます。
ITストラテジストへの転職は、試験の合格と実務経験で有利になる
未経験で転職が難しいとなると、どうすればITストラテジストになれるのでしょうか。
まずは、すぐに上流工程を目指さず、エンジニアとしてさまざまなプロジェクトに関わることからはじめましょう。
自身が「上流工程を任せられる人材」だと評価されるようになるまで、多様な現場を経験しながら実績を積み上げます。
遠回りに感じるかもしれませんが、コツコツと経験を重ねることがITストラテジストにステップアップする堅実な方法です。
また、ITストラテジストへの転職を成功させるには、試験合格に向けた勉強や努力も大切です。
学習時間は、前提知識がある場合で100〜150時間、初学者の場合では1,000時間かかるケースもありますが、実務経験があれば効率的に学習を進められます。
試験学習によって体系的な知識を習得できるだけでなく、実務経験と並行して勉強することで、ITストラテジストの業務をより深く理解できます。
急がずじっくりと、自分のペースで試験合格に向けた学習を進めてみてください。
現場経験を重ねて試験に合格する頃には、転職サイトなどに掲載されている「ITストラテジスト」の求人要件を満たすスキルが身についているでしょう。
さらに、試験合格の実績は自身のスキルや知識の証明になるため、転職活動を有利に進められます。
実務経験が伴っていれば、ITストラテジスト試験の市場価値は非常に高いものとなる
これまで述べたように、ITストラテジストは未経験からの転職が難しく、試験に合格しても実務経験がなければ採用に至らないのが現実です。
ITストラテジストの役割は、プロジェクトの全工程を把握し、課題分析や意思決定を行うことです。
このような業務を遂行するには、専門知識だけでなく現場での実務経験が不可欠といえるでしょう。
一方で、IT業界で十分な実務経験を積んだエンジニアにとって、ITストラテジストの試験合格という実績は強力なアピールポイントです。
試験合格の実績は知識レベルの証明になるだけでなく、難関試験に挑戦する向上心や、合格を勝ち取る学習能力の高さをあらわします。
豊富な実務経験に勤勉さを併せもつ人材は、採用側にとって魅力的に映るに違いありません。
このように、実務経験と試験合格の組み合わせは転職市場において大きなアドバンテージとなります。
ITストラテジスト試験の合格を目指し、理想のキャリアアップを実現しましょう。
こんな仕事も目指せる、ITストラテジストのキャリアパス
ITストラテジスト試験に合格し、実務経験も豊富な人材は転職市場において高く評価されます。
ここでは、ITストラテジストが活躍できる代表的な進路を紹介します。
▼IT系のコンサルティングファームへの転職
企業の経営課題をITで解決するコンサルティングファームは、ITストラテジストの専門分野を活かせる職場です。
すでに豊富な実務経験を積んでいる場合は、即戦力として有利な条件で転職できる可能性があります。
他の高度区分試験であるプロジェクトマネージャなどに合格していれば、より多くの選択肢から理想の転職先を選べるでしょう。
▼ITコンサルタントとしての独立開業
ITストラテジストならではの企業経営の知識を活かして、ITコンサルタントとして独立開業する道もあります。
会社員時代よりも高い報酬を得られるケースもありますが、収入には個人差があり、専門知識だけでなく営業力や自己管理能力といったスキルも必要です。
▼システム開発部の責任者、リーダー
IT企業内でキャリアアップを図る場合、システム開発部の責任者やCIO(最高情報責任者)・CTO(最高技術責任者)といった管理職を目指せます。
ITストラテジストの経験があれば、技術と経営の両方を理解する貴重な人材として高く評価されるでしょう。
まとめ
本記事では、ITストラテジストに転職する方法や、試験合格の市場価値について解説しました。
ポイントは次のとおりです。
- ITストラテジストは、システム開発等の現場において超上流工程を担う専門職
- 国家試験であるITストラテジスト試験は、IT系最難関の試験のひとつ
- 未経験でITストラテジストに転職するのは非常に困難で、実務経験は不可欠
- 実務経験とITストラテジスト試験合格の両方を備えれば、市場価値が高まり転職に有利
- ITストラテジストの代表的な進路は、IT系コンサルティングファーム・独立開業・企業内の責任者
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