午前Ⅰ試験の概要
午前Ⅰ試験とは、高度情報処理技術者試験で最初に実施される試験のことです。情報処理技術者試験は、情報処理に関する専門知識や技術を問う試験で、12種類の試験で構成されています。各試験には求められる専門性やスキルの高さに応じて「スキルレベル」が設定されており、もっとも高いスキルレベル4に位置付けられているのが高度情報処理技術者試験です。
高度情報処理技術者試験は、「午前Ⅰ試験」「午前Ⅱ試験」「午後Ⅰ試験」「午後Ⅱ試験」の4つで構成されています。1日でそれぞれの試験を受験し、すべての科目で基準点を獲得できれば合格となります。IT系の国家試験のなかでも難易度が高く、精神的にも肉体的にもハードな試験です。
12種類の情報処理技術者試験と高度情報技術者試験については、以下の表をご確認ください。
レベル | 試験名 |
レベル1 | ITパスポート試験 |
レベル2 | 基本情報技術者試験 情報セキュリティマネジメント試験 |
レベル3 | 応用情報技術者試験 |
レベル4 | ITストラテジスト試験 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 システムアーキテクト試験 ネットワークスペシャリスト試験 データベーススペシャリスト試験 プロジェクトマネージャ試験 ITサービスマネージャ試験 システム監査技術者試験 |
午前Ⅰ試験の特徴
午前Ⅰ試験は、高度情報処理技術者試験を受験するにあたり、最初に突破しなければならない重要な試験です。こちらでは、午前Ⅰ試験の特徴をご紹介します。
同日に開催される応用情報技術者試験の午前問題が使用される
午前Ⅰ試験で出題される問題は、同日に行われている「応用情報技術者試験」の午前問題がそのまま利用されています。応用情報技術者試験の午前問題は全80問で、そのうち30問をピックアップして高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験に流用している形です。
高度情報処理技術者試験は、試験の種類ごとに春期(4月の第3日曜日)もしくは秋期(10月の第2日曜日)に実施されます。例えば、ITストラテジスト試験は春期、プロジェクトマネージャ試験は秋期開催です。そして、応用情報技術者試験は年2回開催であり、その日程は高度情報処理技術者試験と同日となっています。
このような仕組みを採用しているのは、午前Ⅰ試験が足切り試験であるためです。難易度の劣る応用情報技術者試験の問題を利用することで、受験者が高度情報処理技術者試験に挑戦するうえで、最低限の知識を保有しているかどうかを確認しています。難易度が高くなる午前Ⅱ以降の試験に合格するには、余裕を持って午前Ⅰ試験の問題に解答できる知識を身に付けておく必要があるでしょう。
試験区分ごとのスケジュールは、以下の表の通りです。
実施時期 | 試験区分 |
春期(4月の第3日曜日) | ITストラテジスト試験 システムアーキテクト試験 ネットワークスペシャリスト試験 ITサービスマネージャ試験 |
秋期(10月の第2日曜日) | プロジェクトマネージャ試験 データベーススペシャリスト試験 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 システム監査技術者試験 |
出題数が少なく1問の配点が大きい
午前Ⅰ試験の出題数や配点は、以下の表の通りです。
試験時間 | 出題形式 | 出題数/解答数 | 問題別配点 | 合計点/基準点 | 採点方式 | |
午前Ⅰ | 9:30~10:20 (50分) |
四肢択一 | 30問/30問 | 各3もしくは4点/1問 | 100点/60点 | 多段階選別方式 |
ここで注目すべきは、出題数・配点・基準点の3つです。午前Ⅰ試験の出題数は、30問と国家試験のなかではそれほど多くありません。例えば、同じ国家試験である司法試験の場合、短答式試験の出題数は最低70問となっています。
午前Ⅰ試験では出題数が少ないため、時間に余裕を持って解きやすいメリットがある一方、1問あたりの配点が大きい点がデメリットです。なかには1問あたり4点の問題もあり、基準点の60点を獲得するには30問中18問以上正解する必要があります。後述するように午前Ⅰ試験は出題範囲が広いため、対策漏れがあるといつの間にか基準点を下回ってしまう可能性もあります。
また、午前Ⅰ試験は採点方法も特徴的です。基準点を獲得しないと次の試験が採点されない、いわゆる「多段階選抜方式」が採用されています。つまり、必死に勉強して1日で4つの科目を受験した場合でも、午前Ⅰ試験で基準点を獲得できなければ午前Ⅱ以降の科目はすべて採点されません。こちらの採点方法は、午前Ⅰ試験だけでなく午前Ⅱ・午後Ⅰ試験でも採用されています。
出題範囲が幅広い
午前Ⅰ試験は、出題範囲が幅広いのも特徴です。テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野から出題され、基礎理論やプロジェクトマネジメントなど、さまざまな知識が問われます。応用情報技術者試験と同じ内容のため、午前Ⅱ以降の科目に比べると難易度はそれほど高くありませんが、配点が大きいためしっかりと対策する必要があります。
免除制度が用意されている
午前Ⅰ試験には、すでに一定の技能を有する方に向けた免除制度が用意されています。具体的には、次の条件のいずれかを満たす場合、以後2年間は午前Ⅰ試験が免除され、午前Ⅱ試験から受験が可能です。
午前Ⅰ試験の免除条件 |
|
午前Ⅰ試験の勉強方法
午前Ⅰ試験は、難易度はそれほど高くないものの、試験範囲が広く出題数が少ないことからつまずきやすい傾向にあります。そこで続いては、午前Ⅰ試験対策におすすめの勉強方法をご紹介します。
応用情報技術者試験の過去問演習を徹底的に行う
午前Ⅰ試験対策でもっとも重要なのは、応用情報技術者試験の過去問演習を行うことです。資格試験対策において、過去問演習は基本中の基本といわれています。どの試験でも過去問と類似した問題や同じ知識を確認する問題が出題されやすく、過去問演習によって出題者が重視しているポイントを理解できるためです。
そのため、高度情報処理技術者試験に挑戦する場合も、受験を予定している試験の過去問演習を行うという方が多いのではないでしょうか。しかし、先に説明した通り、高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験は、応用情報技術者試験の問題が流用されています。80問から30問がピックアップされて午前Ⅰ試験で出題されるため、選ばれなかった50問も含めて勉強するには、応用情報技術者試験の過去問演習を行うのが最適です。
過去問の入手先は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のホームページがおすすめです。問題や解答例、採点講評(採点講評の対象は、応用情報技術者の午後問題、その他の試験区分の午後Ⅰ試験及び午後Ⅱ試験のみ)などをまとめて確認できます。ただし、詳細な解説は載っていないため、「なぜその解答なのか」を知るには自分で調べる必要があります。
初めて情報処理技術者試験に挑戦する場合など、しっかりとした解説が欲しい方は、市販の過去問題集を活用するのが良いでしょう。1問ごとに必要な知識や合格へのポイントを学ぶことができます。ただし、市販の問題集は1年分で1冊となっているものも多いため、できるだけ問題数の多い参考書を選ぶことが重要です。
また、午前Ⅰ試験の過去問演習を行う際は、以下の3つのポイントを意識して勉強を進めましょう。
- 同じ問題が出題されたときに必ず正解できるようにする
- 正解以外の3つの選択肢に関する問題が出題されても正解できるようにする
- 問題をアレンジされも正解できるようにする
各分野の出題比率に応じて勉強時間を配分する
前述の通り、午前Ⅰ試験の出題分野はテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3つに大別されます。しかし、それぞれの分野が均等に出題されるわけではありません。目安ではあるものの、テクノロジ系の出題がおよそ半数を占めるケースが多く、残りをマネジメント系とストラテジ系で按分するイメージです。
そのため、テクノロジ系の問題を全問正解できれば、かなり合格に近づくことができます。午前Ⅰ試験の対策を行う場合は、まずテクノロジ系の問題をピックアップするのが良いでしょう。その後は、自分の苦手分野を中心に勉強を進めると午前Ⅰ試験の合格が見えてくるはずです。
選択肢を「削る」意識を持ちながら勉強する
前述の通り、午前Ⅰ試験は4つの選択肢から解答を1つ選択する形で出題されます。すべての問題に自信を持って解答するのが理想ですが、なかには答えに迷ってしまうケースもあるでしょう。
そのような場合に備えて、過去問演習を行う際は「正解を見つける」のではなく、「絶対に正解ではない選択肢を削る」意識を持ちながら勉強するのが効果的です。正解ではない選択肢を1つもしくは2つ見つけることができれば、択一問題の正答率をグッと引き上げられます。
まとめ
今回は、高度情報処理技術者試験における午前Ⅰ試験の概要や問題の特徴、具体的な対策方法をお伝えしました。午前Ⅰ試験の対策は、過去問演習を徹底的に行うことが基本です。難易度は応用情報技術者試験レベルであり、高度情報処理技術者試験の合格を目指している方でしたら、対策方法を間違えなければ十分合格点を獲得できます。
また、午前Ⅰ試験に挑む際の心構えとしては、まず午前Ⅰ試験のみの合格を目指すのも効果的です。本記事で解説したように、午前Ⅰ試験には免除制度が用意されています。そのため、1年目は午前Ⅰ試験の合格を目指し、2年目は午前Ⅱ以降の試験対策に集中するのも良いでしょう。
仕事をしながら高度情報処理技術者試験の合格を目指す場合は、スタディングのオンライン講座をご活用ください。専用テキストを使った効率的な学習が可能なだけでなく、過去問や問題集でも担当の講師が図解を多く用いた解説を行っています。