午前Ⅰ試験の免除制度とは?
応用情報技術者の資格を持っていると免除になるって本当?

高度情報処理技術者試験を受験する場合、最初に実施されるのが午前Ⅰ試験です。
情報処理に関する基礎的な内容を問われる試験で、免除制度なども用意されています。

そこで今回は、高度情報処理技術者試験の概要や午前Ⅰ試験の特徴、免除制度の内容などを解説します。
これから高度情報処理技術者試験の合格を目指す場合は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 高度情報処理技術者試験とは?
  2. 高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験
  3. 午前Ⅰ試験の免除制度について
  4. まとめ


高度情報処理技術者試験とは?

情報処理技術者試験とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき情報処理に関する一定の技能や知識を有することを認定する国家試験です。経済産業省が管轄し、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が試験を実施しています。

情報処理技術者試験は、難易度や専門性、対外的評価に応じて4段階にランク分けされており、最難関のスキルレベル4に属するのが高度情報処理技術者試験です。具体的には、以下の8つの試験区分が高度情報処理技術者試験に該当します。

レベル

試験名

レベル4

ITストラテジスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
システムアーキテクト試験
ネットワークスペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験
プロジェクトマネージャ試験
ITサービスマネージャ試験
システム監査技術者試験


高度情報処理技術者試験のいずれかに合格することで、情報処理に関する高い技能を有していることが客観的に証明され、就職や転職などで高い評価を得やすくなります。以下で、8つの試験について簡単にご紹介します。


ITストラテジスト試験

ITストラテジスト試験は、事業戦略に基づいて経営課題を抽出し、ITを活用した解決策を提示する専門家を認定する試験です。ITストラテジストは、IT戦略の立案からシステム化計画の作成、プロジェクトの実行とモニタリングなどを主な業務としています。

社会のITニーズの高まりを受け、あらゆる業界・業種の企業でIT戦略の必要性が増しています。ITストラテジストは、企業のIT戦略を統括する立場として重宝される人材です。


システムアーキテクト試験

システムアーキテクト試験は、システム開発において設計の土台部分を作る人材を選抜する試験です。システムアーキテクトは、ITストラテジストの提案内容を受け、実現に必要な要件定義や実際の開発業務を主導する役割を担います。また、システムアーキテクトが作成した基本設計をもとに、細かな機能を設計していく人材をシステムエンジニアと呼びます。


プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトマネージャ試験は、IT分野における開発プロジェクトの責任者として十分な知識やスキルを持つ人材を認定する試験です。プロジェクトマネージャは、顧客へのヒアリングからプロジェクトチームの編成、進捗管理、完了後のフィードバックなどを主な業務としています。実際の開発業務はシステムアーキテクトなどが行いますが、他部門や経営層との橋渡し役を担うため、高い調整力やコミュニケーション能力が求められます。


ネットワークスペシャリスト試験

ネットワークスペシャリスト試験は、最新のネットワークサービスやIT技術に精通した専門家を認定する試験です。ネットワークスペシャリストは、クライアントからの要望を確認したうえで、ネットワークに関する設計や企画、構築を行います。また、上級エンジニア職として下位者の指導などに従事するケースもあり、企業では幅広い役割を期待される人材です。


データベーススペシャリスト試験

データベーススペシャリスト試験は、データベースに関する専門知識を有する人材を選抜する試験です。現代の情報化社会では、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータ群が企業活動を支えています。データベーススペシャリストは、膨大な量のデータを適切に管理し、顧客のビジネスに生かすことのできるデータベースシステムの構築を担います。情報の高度化やIT化はさらに進むと予想されており、データベーススペシャリストの需要は今後も高まり続けるでしょう。


エンベデッドシステムスペシャリスト試験

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組み込みシステム(エンベデッドシステム)に関する専門知識を有する人材を認定する試験です。組み込みシステムとは、自動車や家電、ロボットなどに特定の機能を持たせるために搭載されているコンピューターシステムを指します。

エンベデッドシステムスペシャリストは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによる組み込みシステムの構築や開発、実装などの業務に従事します。IoTエンジニアを目指す方に人気の資格です。


ITサービスマネージャ試験

ITサービスマネージャ試験は、ITサービスの提供に関する幅広い知識や技能を持つ人材を選抜する試験です。ITサービスマネージャは、顧客からのヒアリングをもとに安全で信頼性のあるITサービスを提供する役割を担います。提供後は、安定稼働や障害対応、品質管理などに従事し、クライアントのIT投資効果を最大化するために全力を尽くします。


システム監査技術者試験

システム監査技術者試験は、情報システムの安全性確保に関する技能や知識を有する専門家を認定する試験です。社会のIT化が進むにつれて、情報システムの脆弱性や運用ミスを利用した犯罪やトラブルが増えています。システム監査技術者には、情報システムに関するリスクを分析し、点検や検証などを主導することで安全な企業運営の実現に尽力する役割が求められます。




高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験

高度情報処理技術者試験は、すべて「午前Ⅰ試験」「午前Ⅱ試験」「午後Ⅰ試験」「午後Ⅱ試験」の4つで構成されており、試験区分ごとに内容や出題形式が異なります。例えばITストラテジスト試験の場合、午前Ⅰ試験と午前Ⅱ試験は四肢択一、午後Ⅰ試験は記述式、午後Ⅱ試験は論述式の問題が出題されます。

ただし、同日に開催される高度情報処理技術者試験では、午前Ⅰ試験の内容は共通です。以下では、この点も含めて午前Ⅰ試験の特徴をご紹介します。


同日開催の応用情報技術者試験の問題が使用される

午前Ⅰ試験の最大の特徴は、同日開催の「応用情報技術者試験」の午前問題(80問)から、30問がそのままの形で流用される点です。高度情報処理技術者試験は、試験区分ごとに春期もしくは秋期に実施されます。そして、同日にはスキルレベル3に位置付けられる応用情報技術者試験も行われており、その午前問題が高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験に利用されています。

そのため、午前Ⅰ試験の対策を行うには、高度情報処理技術者試験の過去問を確認するだけでは不十分です。その年にピックアップされなかった50問も含めて理解するために、応用情報技術者試験の午前問題の過去問を積極的に解きましょう。

午前Ⅰ試験は足切り試験であり、過去問と同じ知識を問う問題も多く出題されます。実務経験や一定の知識がある方であれば、数年間の過去問を丁寧に解くだけで基準点を獲得できるでしょう。

なお、試験区分ごとの実施時期に関しては、以下の表をご確認ください。

実施時期

試験区分

春期(4月の第3日曜日)

ITストラテジスト試験
システムアーキテクト試験
ネットワークスペシャリスト試験
ITサービスマネージャ試験

秋期(10月の第2日曜日)

プロジェクトマネージャ試験
データベーススペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
システム監査技術者試験

基本知識や技能について30問出題される

午前Ⅰ試験では、高度情報処理技術者試験を受験するにあたり、基本となる知識や技能が問われます。スキルレベル3の応用情報技術者試験と同様の内容であり、午前Ⅱ以降の試験に比べると難易度はそれほど高くありません。試験時間や問題数などの詳細については、以下の表をご確認ください。

試験時間

出題形式

出題数/解答数

問題別配点

合計点/基準点

午前Ⅰ

9:30~10:20
(50分)

四肢択一

30問/30問

各3もしくは4点/1問

100点/60点


基準点とは、合格のボーダーラインとなる点数のことです。午前Ⅰ試験は絶対評価のため、100点満点中60点を獲得できれば必ず合格となります。ただし、基準点を獲得できなかった場合、その後に受けた午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ試験はすべて採点されず、自動的に不合格と扱われます。これは「多段階選抜方式」と呼ばれる採点システムです。

本格的な知識が問われる午前Ⅱ試験以降の結果を確認するには、まず午前Ⅰ試験に合格しなければなりません。




午前Ⅰ試験の免除制度について

先に説明した通り、午前Ⅰ試験はすべての高度情報処理技術者に求められる基礎的な知識を確認する試験です。そのため、すでに一定の知識を有していると証明できる方は受ける必要がなく、そのような方に向けて免除制度が用意されています。具体的には、以下の条件のうち、いずれかを満たすと以降2年間にわたって午前Ⅰ試験が免除されます。

午前Ⅰ試験の免除条件

  • 応用情報技術者試験の合格者
  • 高度情報処理技術者試験または情報処理安全確保支援士試験の合格者
  • 高度情報処理技術者試験または情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点を獲得した人

免除制度を利用するために、まずは午前Ⅰ試験の合格を目指すという方も少なくありません。以降2年間は専門的な知識が問われる午前Ⅱ以降の試験対策に集中でき、難易度の高い試験も効率良く合格を狙えます。

また、2年間継続する午前Ⅰ試験の免除の仕組みを活用して、2年ごとに高度情報処理技術者試験の合格を目指す方もいます。継続して勉強を続ける必要があり、肉体的にも精神的にもハードですが、各試験は共通した知識を問われるケースもあるため、効率的な手法といえるでしょう。



まとめ

今回は、高度情報処理技術者試験の概要や午前Ⅰ試験の特徴、免除制度についてお伝えしました。高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験は、応用情報技術者試験で出題されている、同分野で基本となる知識が問われます。高度な技能を有するIT人材として活躍するためにも、応用情報技術者試験の過去問演習を中心に対策し、基準点の獲得を目指しましょう。

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