ITストラテジスト試験に合格するには、4つの科目で基準点以上を獲得する必要があります。基準点とは、合格のボーダーラインとなる点数のことです。午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ試験では60点に設定されています。午後Ⅱ試験ではA評価を獲得する必要があります。
各試験は出題形式や試験時間などが異なるため、一概には比較できないものの、もっとも難易度が高いとされるのが午後Ⅱ試験です。ITストラテジスト試験合格を目指す受験者にとって、最大の山場となるでしょう。午後Ⅱ試験の概要は以下の通りです。
試験時間 |
出題形式 |
出題数/解答数 |
問題別配点 |
合計点/基準点 |
|
午後Ⅱ |
14:30~16:30 |
論述式 |
2問/1問 |
なし |
A〜Dランクで評価される |
論述式の問題が出題され、120分で1問に解答する形です。受験者は2問から1問を選択できるため、自分にとって解きやすい問題を素早く判断する必要があります。
午後Ⅱ試験の合否は、点数ではなくA〜Dのランクによって決められ、Aランクのみが合格となります。評価ランクと合否の関係は、以下の表の通りです。
評価ランク |
内容 |
合否 |
A |
合格水準にある |
合格 |
B |
合格水準まであと一歩である |
不合格 |
C |
内容が不十分である |
不合格 |
D |
内容が著しく不十分である |
不合格 |
午後Ⅱ試験では細かな採点基準が定められており、Aランクの評価を獲得するには、できる限り多くの項目を満たした論文を作成する必要があります。具体的には、以下のような要素が採点基準として挙げられています。
どれだけすばらしい文章でも上記の要素を満たしていないと評価されないため、過去問や問題集を使って論文を作成する際も評価基準を意識することが大切です。
【出典】「情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱」(IPA 独立行政法人情報処理推進機構)
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/youkou_ver5_0.pdf
午後Ⅱ試験にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは代表的なものを3つご紹介します。
午後Ⅰ・午後Ⅱ試験は、どちらも問題文をもとに指定された文字数で解答を記述・論述する問題が出題されます。両者の違いは、問題文の長さや指定文字数にあります。具体的には、以下の表をご確認ください。
午後Ⅰ試験 |
午後Ⅱ試験 |
|
問題文 |
問題用紙3〜4枚 |
問題用紙1枚 |
指定文字数 |
10〜50文字 |
1,000文字前後 |
午後Ⅱ試験の場合、問題文が用紙1枚分と短く、設問1つあたりの指定文字数が1,000文字前後と多いのが特徴です。1つの問題に対して3つの設問が用意されているため、受験者は120分間で2,000〜3,000字程度の答案を書き上げなければなりません。
なかには時間が足りず、答案を完成させられない方もいます。試験勉強の段階から手書きの答案に慣れておき、余裕を持って解答できるよう対策しておく必要があるでしょう。
午後Ⅱ試験では、各設問について受験者の経験や考えに沿って解答することが求められます。例えば、2022年(令和4年)度の午後Ⅱ試験では、以下のような問題が出題されています。
問1 設問ア あなたが携わったITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画において、事業概要、顧客満足度を向上させることが必要となった背景を、事業特性とともに800字以内で述べよ。 [2022年(令和4年)度春期ITストラテジスト試験] |
このように、午後Ⅱ試験では自身の経験を踏まえた論述が求められるため、実務経験が豊富な方ほど解答しやすいといえるでしょう。
しかし、ITストラテジスト試験は、ほかの高度情報処理技術者試験と同様、受験資格などは定められていません。そのため、実務経験のない方でも受験することができ、その場合は架空の立場や経験に基づいて論述することになります。どこかの企業が行っている事業や施策を参考にしても問題ありません。
午後Ⅱ試験では、3つの問題から1つを選んで解答します。そして、3つの問題にはそれぞれア・イ・ウの3つの設問が用意されおり、設問の内容はある程度決められているのが特徴です。設問ごとの詳細な内容に関しては、以下の表で解説します。
設問 | 内容 |
ア |
|
イ |
|
ウ |
|
このように午後Ⅱ試験は、3つの設問に解答すると1つのテーマに関するプロジェクトの立ち上げから実施、評価までを完結できる仕組みです。問題ごとにテーマは変わるものの、基本的な解答の流れは同様です。そのため、未経験者の方でもある程度ストーリーを立てたうえで試験に挑むことができます。
午後Ⅱ試験は、ITストラテジストの本質である「ITに関する知見をシステム計画に落とし込む」ことが要求される試験です。そのため、ほかの科目と比べて難易度が高く、特に実務経験のない方にとっては山場となりやすい傾向にあります。こちらでは、合格に向けた具体的な対策方法をお伝えします。
午後Ⅱ試験対策では、最初から論文を書き始めるのはおすすめしません。特に、実務経験やほかの高度情報処理技術者試験の経験がない方は、何から書き始めたら良いのかわからなくなってしまうでしょう。
そこで、まずは論文作成に使えるネタ作りから始めるのがおすすめです。具体的には、過去問や問題集を参考に特定のテーマを決め、設問ア・イ・ウの内容に合わせてどのような内容を論述するか大まかに決めておく作業です。
例えば「ERPの導入」をテーマに取り上げた場合、設問アではERPの導入が必要となる背景や企業が抱える課題を説明します。次に、設問イではERPの導入にあたって検討した内容を解説し、設問ウでは導入結果を論述する流れです。それぞれの内容は、実際の経験を踏まえたものでも架空のものでも問題ありません。
120分の試験時間内に3,000字前後の論文を書くと考えると、テーマを確認して一からアイデアを検討し、解答に落とし込むのは現実的ではありません。頻出のテーマについて事前にネタを準備しておけば、用意した文章を組み込むだけで論文の方向性をある程度決めることができ、論理の破綻も防ぎやすくなります。
インターネットで公開されている企業のIT導入事例などを参考に、できるだけ多くのテーマについてネタをストックしておきましょう。午後Ⅱ試験では、定番問題と最新のIT技術に関する問題の両方が出題されるため、時事ニュースなどのチェックも欠かせません。
ネタ作りがある程度進んだら、過去問や問題集を使って実際に論文を書き始めましょう。事前に用意したネタをうまく解答に反映させるだけでなく、先に挙げた採点基準に沿った論文を作成することが大切です。
過去問の入手先は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のホームページがおすすめです。午前試験から午後試験までのすべての過去問をPDF形式でダウンロードできます。ただし、論述問題については解答例がなく、出題趣旨の掲載のみとなっています。論文の方向性やどのような内容が求められているのかを確認しましょう。
具体的な解答例まで確認したい場合は、市販の過去問題集を活用するのがおすすめです。自分が作成した論文と見比べることで、足りない部分や修正点を把握できます。
デジタル化が進む現代では、短時間で3,000字を書く機会はほとんどありません。最初は論文を書くこと自体が苦痛に感じてしまい、納得のいく文章を書き上げられないケースも多いでしょう。
そのため、午後Ⅱ試験対策では、論文を書くことに慣れることも大切です。毎日1本や週に5本など本数を決めて取り組み、手書きの抵抗感を早い段階で取り除きましょう。
最後に、午後Ⅱ試験においてより良い論文を仕上げるためのコツを解説します。
午後Ⅱ試験は指定文字数が多いため、設問ごとの所要時間を決めて取りかかることが大切です。事前に時間を決めておかないと、設問アに時間をかけすぎてしまい、設問イ・ウで時間が足りなくなる可能性があります。特に、文字数の多い設問イ・ウに十分な時間を残せるよう工夫すると安心です。
時間配分に関する感覚は、過去問演習の際に養いましょう。テーマと指定文字数を踏まえて設問ごとの所要時間を決めるのが理想です。
論述問題は、長く書けば良いわけではありません。解答の核となる部分は長く、説明部分や掘り下げる必要のない部分は簡潔にまとめるのが基本です。文章のメリハリを意識することで、自分の主張や考えが伝わりやすい答案に仕上げましょう。
論文の質を向上させるには、終了間際まで丁寧に見直しを行うことも大切です。午後Ⅱ試験では途中退室も認められていますが、最後まで誤字・脱字や採点基準のチェックも含めて答案のブラッシュアップを行いましょう。
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