無料お試し

ITストラテジスト試験は難関試験? 合格率と難易度を徹底解説!

ITストラテジストの資格について

ITストラテジストは、システムやソフトウェア開発の超上流工程において、経営者の視点で戦略立案やプロジェクトの実行を主導する専門職です。ストラテジストは「戦略家」を意味する単語で、英語では「strategist」と表記します。

ITストラテジストとして活躍するには、特に資格は必要ありません。一定のスキルや実績があればITストラテジストを名乗ることができます。実際、企業によってはCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)、コンサルタント職の方がITストラテジストの仕事を担っているケースも少なくありません。

しかし、ITストラテジストとしてのスキルを客観的に証明するためには、国家試験であるITストラテジスト試験を受験するのがおすすめです。資格を取得することで、実績がない場合でも一定の能力を保有していることを外部にアピールできます。また、ITストラテジストの資格には「実務経験5年分のスキルに相当する価値がある」ともいわれます。


ITストラテジスト試験の難易度はどれくらい?

ITストラテジスト試験は、「高度情報処理技術者試験」に分類され、12ある「情報処理技術者試験」の中でも最難関の資格です。情報処理に関する知識や技能を問う目的で、経済産業省が管轄、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施しています。高度情報処理技術者試験には、ITストラテジストを含めて以下の試験があります。

レベル 試験名
レベル4 ITストラテジスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
システムアーキテクト試験
ネットワークスペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験
プロジェクトマネージャ試験
ITサービスマネージャ試験
システム監査技術者試験

ここでは、ITストラテジスト試験の難易度に関連するデータや、難しいと感じる方が多い理由をご紹介します。

ITストラテジスト試験の合格率

上記の通り、ITストラテジスト試験は、情報処理に関する資格の中でも難易度が高いとされる試験です。どの程度の難易度なのか、過去の試験の合格率から確認しましょう。

ITストラテジスト試験結果

応募者数(人) 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
平成27年度秋期 6,663 4,487 656 14.6
平成28年度秋期 6,676 4,594 645 14.0
平成29年度秋期 6,984 4,747 700 14.7
平成30年度秋期 7,449 4,975 711 14.3
令和元年度春期 7,527 4,938 758 15.4
令和3年度春期 5,669 3,783 579 15.3
令和4年度春期 6,378 4,450 660 14.8
令和5年度春期 7,040 4,972 769 15.5

(注)令和2年度春期試験は、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になりました。

【出典】「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 推移表(平成21年度春期以降)」(IPA 情報処理推進機構)
https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/hjuojm000000ll0f-att/suii_hyo.pdf

上記の表を確認すると、ITストラテジスト試験の合格率は14〜15%程度で推移しています。一般的に難しいとされる司法試験の合格率は30〜40%前後、公認会計士の合格率が10%前後であることを考えると、ITストラテジストが難関試験であることがわかります。合格を目指すには、十分な学習時間を確保したうえで過去問研究などを徹底する必要があるでしょう。

ITストラテジスト試験の難易度が高い理由

ITストラテジスト試験の難易度が高いのは、試験範囲の広さと深さ、そして試験形式が関係していると考えられます。ITストラテジスト試験は、共通の午前Ⅰ試験では、テクノロジ系からマネジメント系、ストラテジ系まで幅広く出題されるため、知識の網羅性が求められます。更に、午前Ⅱ試験~午後Ⅱ試験まではストラテジ系に関する難易度の高い問題が出題され、深い知識と柔軟な思考が問われます。

また、試験形式は、「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の4つで構成されているのが特徴です。各試験には基準点が設定されており、1つでも下回ると不合格となります。すべての試験を1日で受ける必要もあるため、体力的にも精神的にもハードな試験といえるでしょう。以下では、4つの試験の特徴を解説します。

午前Ⅰ試験

午前Ⅰ試験の概要については、以下の表をご確認ください。

試験時間 出題形式 出題数/解答数 問題別配点 合計点/基準点
午前Ⅰ 9:30~10:20
(50分)
四肢択一 30問/30問 各3もしくは4点/1問 100点/60点

午前Ⅰ試験は、高度情報処理技術者試験共通の問題で、出題範囲が広いのが特徴です。テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系のすべての範囲から出題されます。

問題は、同日に開催される応用情報技術者試験の午前問題(80問)から30問がピックアップされる形です。難易度は、午前Ⅱ試験以降と比較するとそれほど高くないものの、出題範囲が広いため、応用情報技術者試験の過去問も含めて勉強する必要があるでしょう。

また、午前Ⅰ試験には免除制度も用意されています。具体的には、以下のいずれかの条件を満たしている方は、その後2年間午前Ⅰ試験をパスすることが可能です。

午前Ⅰ試験の免除条件
  • 応用情報技術者試験の合格者
  • 高度情報処理技術者試験または情報処理安全確保支援士試験の合格者
  • 高度情報処理技術者試験または情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点を獲得した人

ITストラテジスト試験はIT資格の中でも難易度が高いため、2年間での合格を目標に「今年は午前Ⅰ試験の合格だけを目指す」という方もいます。

午前Ⅱ試験

午前Ⅱ試験の概要については、以下の表をご確認ください。

試験時間 出題形式 出題数/解答数 問題別配点 合計点/基準点
午前Ⅱ 10:50~11:30
(40分)
四肢択一 25問/25問 各4点 100点/60点

午前Ⅱ試験からがITストラテジスト試験の本番です。出題範囲は、以下の8つの分野に分けられます。

  • セキュリティ
  • システム戦略
  • システム企画
  • 経営戦略マネジメント
  • 技術戦略マネジメント
  • ビジネスインダストリ
  • 企業活動
  • 法務

午前Ⅰ試験と範囲が重なるものの、設問の内容が高度になっており、受験者にもよりレベルの高い知識が求められます。また、近年では最新の用語や時事ネタに触れる問題も登場しているため、過去問研究だけでは対応できないケースも少なくありません。経済誌や情報戦略に関する雑誌などにも目を通し、業界全体に対する関心を深めることが需要です。

午後Ⅰ試験

午後Ⅰ試験の概要については、以下の表をご確認ください。

試験時間 出題形式 出題数/解答数 問題別配点 合計点/基準点
午後Ⅰ 12:30~14:00
(90分)
記述式 3問/2問 各50点 100点/60点

午後Ⅰ試験は、記述式の問題が出題されます。具体的には、問題文にある企業の概要や現在の取り組み、サービスの課題などが記載されており、それらの情報をもとに指定の文字数で設問に解答する形です。

午前試験より難易度は高くなる傾向にあり、問題文から正確に情報を読み取る能力や自身の知識を解答に反映させる能力なども求められます。近年はAIやIoTに関する出題が増えるなど、問題の傾向は多少変化しているものの、問題文には解答に使えるヒントが散りばめられており、出題者の意図に沿うことの重要性は変わっていません。

午後Ⅱ試験

午後Ⅱ試験の概要については、以下の表をご確認ください。

試験時間 出題形式 出題数/解答数 問題別配点 合計点/基準点
午後Ⅱ 14:30~16:30
(120分)
論述式 2問/1問 なし A〜Dランクで評価される
(Aランクのみ合格)

午後Ⅱ試験では、論述式の問題が出題されます。問題文には現在の業界の状況やある企業の事例、ITストラテジストが果たす役割などが記載されており、受験者は自身の経験や考えに基づいて設問に解答する形です。

午後Ⅰ試験と比較して指定文字数が多いのが特徴で、合格には文章構成能力や論述の具体性・妥当性、主張の独創性・先見性なども求められます。単に「知識を保有している」だけでは足りず、「その知識を活用して何ができるのか」について問われているといえるでしょう。


ITストラテジスト試験の合格に必要な学習期間

ITストラテジスト試験は、「上級システムアドミニストレータ試験」と「システムアナリスト試験」という試験を組み合わせて創設されました。両者は過去の試験区分で最高難度の資格とされており、それらをベースにしたITストラテジストも同様に高い難易度を誇ります。

そのため、合格に必要な勉強時間も一般的な資格試験と比較して長いのが特徴です。個人が持つ知識や経験によって違いが出るため、目安ではあるものの、実務経験者でも合格するまでに150〜200時間程度の勉強が必要とされます。ITストラテジスト試験合格を目指す場合は、長期スパンで学習計画を立て、効率良く勉強を進めることが大切です。


ITストラテジスト試験とほかのIT系資格の難易度を比較

最後に、ITストラテジスト試験の難易度をわかりやすく伝えるために、ほかのIT系資格との比較を行います。

応用情報技術者試験

IT分野の資格の中では、応用情報技術者試験とよく比較されます。ITストラテジスト試験が情報処理技術者試験で最高難度のレベル4に分類されるのに対して、応用情報技術者試験はレベル3に属します。

実際、合格率も応用情報技術者試験は20%を超えており、ITストラテジスト試験と比べると難易度は易しいといえるでしょう。ただし、出題範囲が一部重なっていることから、ITストラテジスト試験の前提として応用情報技術者試験を受験する方も少なくありません。

ネットワークスペシャリスト試験/システムアーキテクト試験

ITストラテジスト試験と同等の難易度といわれるのが、ネットワークスペシャリスト試験やシステムアーキテクト試験です。どちらも高度情報技術者試験に該当する試験で、難易度もレベル4に設定されています。合格率を確認すると、どの試験も例年10〜15%で推移しており、難しさに大きな違いはありません。

キャリア選択の幅を広げるために、複数ライセンスを目指す方もいます。


まとめ

今回は、ITストラテジスト試験の難易度に焦点を当てて解説しました。ITストラテジストは、IT系資格の中でも取得難易度が高いものの、適切な方法で勉強すれば十分に合格が狙えます。

独学での勉強に行き詰まった場合は、ぜひオンライン講座をご利用ください。スタディングであれば、資格合格のノウハウを吸収し、最短での合格を目指せます。