ITストラテジスト試験とは?
ITストラテジストは、経営戦略に基づいて企業が抱える課題を抽出し、その解決に役立つIT戦略の策定から提案、推進までを担う高度IT人材です。企業のグローバル化が進んでおり、業界・業種を問わずITへの順応が求められています。ITストラテジストは、ITに関する豊富な知見を持ち、経営者に近い視点から戦略を立案できる人材として重宝されています。
本来、ITストラテジストとして職務に従事するには、特別な資格は必要ありません。しかし、自分が持っているスキルや技術を客観的に証明するために、国家試験であるITストラテジスト試験に挑む方も多くいます。
実際、2023年(令和5年)度試験では、4,972名の方が受験し、769名の合格者が誕生しています。合格率は、例年14〜15%で推移しており、IT系の国家試験のなかでも難関の試験です。
【出典】「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 推移表(平成21年度春期以降)」(IPA 情報処理推進機構)
https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/hjuojm000000ll0f-att/suii_hyo.pdf
ITストラテジスト試験の受験資格
IT職は理系のイメージが強いかもしれませんが、ITストラテジスト試験に受験資格はなく、誰でも受験が可能です。文系・理系、学生・社会人、実務経験の有無などは関係ありません。
ITストラテジストは、策定したIT戦略を経営層に向けてプレゼンしたり、エンジニアとプロジェクトマネージャの橋渡し役を担ったりします。そのため、文系学部で培ったプレゼン能力やコミュニケーション能力を生かせる仕事として、文系出身者の方にも人気です。
ほかの高度情報処理技術者試験の受験資格
ITストラテジスト試験は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する試験のうち、「高度情報処理技術者試験」に分類されます。12ある情報処理技術者試験のなかでもより高度な知識を問う資格のことで、ITストラテジストを含めて以下の試験があります。
レベル | 試験名 |
レベル4 | ITストラテジスト試験 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 システムアーキテクト試験 ネットワークスペシャリスト試験 データベーススペシャリスト試験 プロジェクトマネージャ試験 ITサービスマネージャ試験 システム監査技術者試験 |
ITストラテジスト試験に限らず、高度情報処理技術者試験には受験者に関する制限が定められていません。文系出身者でも複数資格の取得を目指せるため、IT業界への転職やキャリアアップを狙っている場合は、挑戦してみてはいかがでしょうか。
ITストラテジスト試験における文系出身者の強み
ITストラテジストは、数あるIT系の資格のなかでも文系出身者におすすめの資格です。それは、試験内容が文系出身にとって能力を発揮しやすい形式となっているのが理由です。
ITストラテジスト試験に合格するには、4つの試験で基準点を獲得する必要があります。このうち午後Ⅰ・午後Ⅱ試験では記述式・論述式の問題が出題され、特に午後Ⅱ試験では120分で3,000文字前後の論文を完成させなければなりません。
理系出身者は、文章を書くことに慣れていない方も多く、知識を文章に落とし込むのに苦労するケースも見られます。その点、文系出身者は学生時代や別の資格試験で論文の作成に慣れている方もいるため、難関とされる午後Ⅰ・午後Ⅱ試験の勉強に抵抗なく取り組めます。また、論述の具体性や内容の妥当性、論理の一貫性など論文作成に必要な基礎知識が身に付いているのも強みです。文系出身者でも十分合格可能な試験といえるでしょう。
以下では、ITストラテジスト以外の高度情報処理技術者試験について、論述試験の有無をご紹介します。
システムアーキテクト試験
システムアーキテクト試験では、午後Ⅱ試験で論述式の問題が出題されます。出題形式や文字数、解答システムがほぼITストラテジスト試験と同様のため、勉強の進め方について困ることはないでしょう。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験も、午後試験で論述式の問題が出題されます。受験者のITに関する知識やスキルだけでなく、文章力や国語力も試される試験です。
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験では、論述式の問題は出題されません。問題文をもとに数十字程度で解答する記述式の問題が出題されるため、長文から情報を正確に読み取る能力が求められます。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験では、論述は必要ありません。択一式と記述式の問題のみが出題されます。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験に論述試験はありません。午前は四肢択一の問題、午後は記述式の問題が出題されます。
ITサービスマネージャ試験
ITサービスマネージャ試験では、サービスマネジメントシステムの計画や運用などに関する論述問題が出題されます。運用・保守担当者向け唯一の高度試験のため、文系・理系を問わず多くの方が受験します。
システム監査技術者試験
システム監査技術者試験の午後Ⅱ試験は、2問から1問を選んで解答する論述試験です。情報システムや組み込みシステムに関する実践的な能力が問われます。
文系出身者におすすめするITストラテジスト試験の勉強方法
ITストラテジスト試験は、論文試験など文系出身者に有利な側面もあるものの、初めて高度情報処理技術者の資格にチャレンジする方など苦戦しているケースもあるでしょう。そこで続いては、文系出身者におすすめの勉強方法をご紹介します。
オンライン講座を活用して知識をインプットする
文系出身者がITストラテジスト試験に挑戦する場合は、ネックとなりやすいのがITに関する知識のインプットです。実務経験者であれば問題ありませんが、ITと関わりの少ない仕事をしている場合、基本的な知識が不足しやすい傾向にあります。
そこで、知識のインプット方法としておすすめするのがオンライン講座です。オンライン講座とは、お手持ちのスマホやタブレット、パソコンなどを使用してインターネット上で授業を受けられる仕組みを指します。
ITストラテジスト試験対策では、予備校なども授業も行っていますが、日々忙しく働いている社会人の場合、毎日通うのは難しいのが現状です。その点、オンライン講座であれば、時間や場所を問わずに自分のタイミングで授業を受けられるため、予備校に通う時間のない方でも安心です。
オンライン講座には、そのほかにも以下のようなメリットがあります。
- 自分でスケジュールを自由に決められる
- わからない部分は繰り返し受講できる
- 移動にかかるコストを節約できる
- スキマ時間を有効活用できる
初学者や独学者にとって特に大きいのは、わからない部分を繰り返し受講できる点です。予備校などの講義では、一度聞き逃してしまうとその後の内容も頭に入りにくくなってしまいますが、オンライン講座であればすぐに巻き戻すことが可能です。また、問題演習で理解できていない部分が見つかった場合は、該当箇所の授業を聞き直すこともできます。オンライン講座を活用して効率的に知識をインプットし、試験対策に取り組みましょう。
問題演習を繰り返す
ITストラテジストに限らず、試験対策はインプットとアウトプットを繰り返すことが大切です。オンライン講座や参考書の読み込みなどで知識を習得したら、それを確認する目的で問題演習に取り組みましょう。
問題演習は過去問を使用するのが効果的です。特に午前Ⅰ・Ⅱ試験は、過去問と類似した問題も多く出題されるため、最低でも5〜10年分の問題には目を通しておきましょう。
論文対策では合格論文を確認する
文系出身で論文の作成に自信がある方も、試験対策をする際は合格論文を確認しましょう。論文試験は、出題者の意図を読み取り、文章に反映させる能力が求められます。合格論文を確認することで、好まれる文章の流れや表現などを把握でき、自分の持っている論文の作成手法をITストラテジスト試験向けに調整しやすくなります。合格論文の事例集などを活用し、答案を模写するのも良いでしょう。
また、公式ホームページで公開されている「採点講評」を確認するのも効果的です。午後Ⅱ試験に関しては、問題ごとに論述してほしいポイントが説明されており、論文作成を行う際の指針として役立ちます。
まずは応用情報技術者試験に取り組むのもあり
ITストラテジスト試験は、文系出身者や実務経験のない方でも、適切な方法で対策すれば十分合格を狙えます。しかし、情報処理に関する基礎知識の理解や整理が難しいと感じる場合は、まず応用情報技術者試験から挑戦する方法もあります。
応用情報技術者試験は、高度情報処理技術者試験の下位に位置付けられる試験です。情報技術戦略の中核を担う人材に必要な知識が問われ、数多くの現役プログラマーやエンジニアも取得を目指しています。
応用情報技術者試験では、基礎的なITの知識からそれを活用して実践的な内容までが問われます。決して簡単な試験ではありませんが、ITストラテジスト試験に向けた練習と考えてチャレンジするのも良いでしょう。また、応用情報技術者試験の合格者は、その後2年間にわたって、高度情報処理技術者試験の午前Ⅰ試験が免除されるというメリットもあります。
まとめ
今回は、ITストラテジスト試験の概要や文系出身者の強み、おすすめの勉強方法などをお伝えしました。IT系の資格は理系のイメージが強いですが、ITストラテジスト試験は文系出身者でも十分合格を狙えます。今回の情報を参考に対策を行い、最短スケジュールでの合格を目指しましょう。
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