ITストラテジストとは、高度なITの知見を活用して企業の課題の明確化や業務効率化、IT戦略の立案などを行う専門職を指します。システムやソフトウェアの開発プロセスにおける、超上流工程でその役割を発揮します。ストラテジストは、英語で「strategist」と表記し、日本語で「戦略家」を意味する単語です。 また、必ずしも職種のみを指す言葉ではなく、組織内のIT分野の統括を行う立場の人材を指してITストラテジストと呼ぶケースもあります。
ITストラテジストの仕事内容は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
IT戦略の策定
ITストラテジストのもっとも中心的な役割は、企業の経営戦略の実現に必要なIT戦略の策定です。自身が保有するITの知識や視点を生かして企業の課題を洗い出し、業務効率化やコスト削減につながる施策を検討します。その際、現場の職員や経営陣にヒアリングを行い、「最適化できる部分がどこにあるのか」「必要なシステムは何か」を見極める必要があります。
システム開発・運用の統括
IT戦略がまとまったら企業に対してプレゼンを行い、計画を実行に移します。具体的には、今回の計画を統括する立場として必要なシステム開発やITツールの導入に関する指示を出します。 自らシステム開発を行うケースは少ないため、プログラミング能力は必須ではありません。企業の経営をサポートするコンサルティング能力や、問題解決に最適なシステムを見定める能力、IT技術への知見などが必要です。
モニタリングとコントロール
計画を実行に移した後は、開発したシステム全体のモニタリングやコントロールを行います。トラブル発生時の対処はもちろん、リスク分析や管理、計画全体の評価なども業務のひとつです。進捗や効果によっては計画を見直し、改善案を検討するケースもあります。
経済産業省は、情報処理に関する知識や技能を問う目的で、国家試験である「情報処理技術者試験」を管轄しています。12ある試験のうち、ITストラテジスト試験はもっとも高度な専門知識を要求する「スキルレベル4」に属し、「高度情報処理技術者試験」に該当する試験です。
ITストラテジスト試験は2009年からスタートした試験で、以前の情報処理試験区分でもっとも難しいとされていた「上級システムアドミニストレータ試験」と「システムアナリスト試験」を統合して作られました。情報処理やITに関する基礎的な知識だけでなく、それを活用したプロジェクトの策定能力や実行力が問われます。
ITストラテジスト試験は、「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の4つの試験で構成されており、すべてのテストで基準点以上を獲得すると合格となります。
なお、過去2年のうちに応用情報技術者試験に合格している方や、別の高度情報処理技術者試験に合格している方などは、午前Ⅰ試験が免除されます。
試験制度について詳しく知りたい方は、下記のページをご覧ください。
ITストラテジスト試験は、高度情報処理技術者試験の一種であり、数ある国家試験の中でも難易度が高めに設定されているのが特徴です。その合格率は、令和3年度が15.3%、令和4年度が14.8%と、おおむね15%前後で推移しています。ただし、合格者数に関する定めはなく、すべての試験で基準点を獲得できれば必ず合格と扱われます。
受験申込方法 | 【個人申込みのみ】原則インターネットでの申込み |
試験日程・試験会場 | 春期(4月)の第3日曜日に開催。全国62主要都市で実施。 |
受験資格 | 受験資格は無し。誰でも受験が可能。 |
出題形式 | 午前Ⅰ試験 :問題30問(四肢択一)テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系から出題。 午前Ⅱ試験:問題25問(四肢択一)テクノロジ系(セキュリティ)、ストラテジ系から出題。 午後Ⅰ試験 :3問のうち、2問について回答。(記述式) 午後Ⅱ試験:2問のうち、1問について解答。(論述式) |
試験形式 | ペーパー式試験 |
受験料(税込み) |
7,500円 |
試験時間 | 午前Ⅰ試験 9:30~10:20(50分) 午前Ⅱ試験 10:50~11:30(40分) 午後Ⅰ試験 12:30~14:00(90分) 午後Ⅱ試験 14:30~16:30(120分) |
合格基準 | 午前Ⅰ・Ⅱ・午後Ⅰ試験では、それぞれ100点満点中、60点以上が合格基準。 午後Ⅱ試験では、評価ランクA以上のみが合格基準。 |
|
業界、業種問わず、ITストラテジストの資格取得にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
就職や転職で評価を得やすくなるITストラテジストは、情報処理技術者に関する資格の中でも取得難易度の高い資格です。特にITストラテジストは、以前の試験区分でもっともレベルの高い試験を組み合わせて創設された資格であり、「実務経験5年分のスキルに相当する」と表現されることもあります。 そのため、就職や転職市場では高い評価を得やすく、自らが望むキャリアパスを描きやすくなるでしょう。 |
|
仕事の幅が広がるITストラテジストは、システム開発やコンサルティングなど、幅広い分野に精通した知識を持つことを証明する資格です。そのため、資格を取得することで研究職やシステム部門からコンサルティングやマネジメント部門への異動なども可能になり、仕事の幅が広がる点もメリットといえます。 企業に所属するだけでなく、フリーのITストラテジストとして活躍する方も少なくありません。 |
|
外部の人材と交流しやすくなるITストラテジストの資格を取得すると、年会費を支払うことで「日本ITストラテジスト協会(JISTA)」に入会できるようになります。外部の知識者やエンジニアとの交流の場を持つことができ、より多角的な視点を身につけられるでしょう。 |