ビジネス実務法務検定の過去問は入手できない
資格試験の学習を進める際は、過去問を使った対策が欠かせません。
なぜなら、過去問を解くと試験本番の出題形式や傾向を把握でき、効率よく実力を身につけられるからです。
しかし、現在はビジネス実務法務検定の過去問を入手できません。
以前までは過去問が公開されていましたが、試験方式がIBT方式に変わり、入手できなくなりました。
そのため、試験対策としては、過去問を研究して本番に近い内容・形式で作成された実践問題に取り組む必要があります。
ただし、1級の試験はビジネス実務法務検定のホームページで過去問が公表されています。
模範解答の公表はありませんが、どのような問題が出題されるのか確認したい方は、チェックすると良いでしょう。
過去問形式のビジネス実務法務検定実践問題にチャレンジ
オンライン講座の「スタディングビジネス実務法務検定試験®講座」の試験形式問題集の一部を、実践問題として紹介します。
どのような問題が出題されているのかを確認し、試験本番のイメージをつかみましょう。
なお、本記事で紹介している実践問題以外にも、スタディングの講座ではテーマ別試験形式問題集や合格模試などを活用して、本番を想定した対策が行えます。
【3級】第1問
【問題】
民法上の連帯債務に関する次の1および2の記述のうち、その内容が適切なものを選びなさい。
1.債権者は、連帯債務者の1人に対し、または同時にもしくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができる。
2.連帯債務者のうち1人が債権者に債務の全部を弁済しても、他の連帯債務者の債務は消滅しない。
【解答】
1
【解説】
1.適切。連帯債務における債権者は、連帯債務者の1人に対し、又は同時にもしくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができます。
2.不適切。連帯債務において、複数の連帯債務者のうち1人が債権者に債務の全部を弁済すれば、他の連帯債務者の債務も消滅します。なお、弁済をした連帯債務者は、他の連帯債務者に負担部分(原則として平等)に応じて求償権を行使することができます。
【3級】第2問
【問題】
非典型担保に関する次のアおよびイの記述についての1~4の記述のうち、その内容が適切なものを1つだけ選びなさい。
ア.「倉庫内のテレビ1000台」など、変動する集合動産であっても譲渡担保の目的とすることができる。
イ.譲渡担保または仮登記担保を実行する場合には、裁判所の競売手続によらなければならない。
1.アおよびイのいずれも適切である
2.アのみが適切である。
3.イのみが適切である。
4.アおよびイのいずれも適切でない
【解答】
2
【解説】
ア.適切。譲渡可能な財産であれば、動産、不動産、債権を問わず譲渡担保の目的とすることができます。また、「倉庫内のテレビ1000台」など集合動産(一定の範囲に属する動産の集合体)を譲渡担保の目的とすることもでき、範囲や数量を特定できるものであれば、設定後、個々の動産に変動があっても構いません。
イ.不適切。譲渡担保や仮登記担保など非典型担保を実行する場合には、債権者から債務者への清算金の支払を要するものの競売手続は不要であり、裁判所は手続に関与しません。
【2級】第1問
【問題】
株式会社の設立における発起人に関する次の1~4の記述のうち、その内容が最も適切なものを1つだけ選びなさい。
- 募集設立においては、発起人は、設立時発行株式を引き受けることができない。
- 発起設立においては、発起人は2人以上いなければならない。
- 法人も、発起人となることができる。
- 発起人が2人以上いる場合でも、原始定款には代表発起人のみが署名又は記名押印すれば足りる。
【解答】
3
【解説】
- 不適切。募集設立の場合でも、発起人は、必ず1株以上の設立時発行株式を引き受けて、株式会社成立後の株主とならなくてはなりません。
- 不適切。発起設立と募集設立のいずれの場合も、発起人は1人以上いれば足ります。
- 適切。個人など「自然人」に限らず、会社など「法人」も、発起人となることができます。
- 不適切。定款は、発起人全員の同意により作成し、発起人全員が、これに「署名又は記名押印」しなければなりません。
【2級】第2問
【問題】
株式に関する次のア~エの記述のうち、その内容が適切なものを〇、適切でないものを×とした場合の組み合わせを1~8の中から1つだけ選びなさい。
ア.株式会社は、その定款に定めることにより、株主総会における議決権行使を制限する内容の種類株式(議決権制限株式)を発行することができるが、公開会社において、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えるに至ったときは、直ちに、これを2分の1以下にするための必要な措置をとらなければならない。
イ.株式会社は、その定款により、その発行する株式について一定の数の株式をもって株主総会における1議決権とする旨の単元株式数を定めることができるが、当該単元株式数は、所定の上限を超えることはできない。
ウ.株式会社は、その定款等により一定の日を「基準日」として定め、当該基準日において株主名簿に記載又は記録された者が、株主としてその権利を行使することができる者と定めることができる。
エ.株式会社は、定款に不発行とする旨を定めた場合を除き、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない。
- ア -〇 イ-〇 ウ-〇 エ-〇
- ア-〇 イ-〇 ウ-〇 エ-×
- ア-〇 イ-〇 ウ-× エ-×
- ア-〇 イ-× ウ-× エ-×
- ア-× イ-〇 ウ-〇 エ-〇
- ア-× イ-× ウ-〇 エ-〇
- ア-× イ-× ウ-× エ-〇
- ア-× イ-× ウ-× エ-×
【解答】
2
【解説】
ア.適切。株式会社は、その定款に定めることにより、株主総会における議決権行使を制限する内容の種類株式(議決権制限株式)を発行することができます。ただし、公開会社においては、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えるに至ったときは、直ちに、これを2分の1以下にするための必要な措置(例:議決権制限のない普通株式の発行等)をとらなければなりません。
イ.適切。株式会社は、その定款により、その発行する株式について一定の数の株式をもって株主総会における1議決権とする旨の単元株式数を定めることができます。ただし、当該単元株式数は、所定の上限(1,000株及び発行済株式総数の200分の1に当たる数)を超えることはできません。
ウ.適切。株式会社は、その定款等(取締役会決議でも可)により一定の日を「基準日」として定め、当該基準日において株主名簿に記載又は記録された者が、株主としてその権利を行使することができる者と定めることができます。
エ.不適切。株式会社は、株券を発行しないこと、つまり「株券不発行」が原則であり、定款に「発行する旨」を定めた場合にのみ、株券を発行すれば足ります。
以上により、ア-〇 イ-〇 ウ-〇 エ-×であり、2が正解となります。
過去問から見るビジネス実務法務検定の出題傾向
ビジネス実務法務検定の出題範囲は多岐にわたり、3級・2級ともに民法や商法・会社法を中心に実務に必要な幅広い法律知識が問われます。
ここでは、3級・2級の出題範囲や出題傾向を見ていきましょう。
ビジネス実務法務検定3級
ビジネス実務法務検定3級の出題範囲は、以下のとおりです。
出題範囲 |
出題される法律 |
民法グループ | 民法・借地借家法・破産法・民事再生法・仮登記担保法など |
商法グループ | 商法・会社法・手形法・小切手法・会社更生法など |
労働法グループ | 労働基準法・労働組合法・男女雇用機会均等法・労働者派遣法など |
特例法グループ | 独占禁止法・不正競争防止法・大店立地法・消費者契約法・割賦販売法・特定商取引法・個人情報保護法・特許法・著作権法・商標法・実用新案法・意匠法など |
3級の試験では民法や商法、会社法の問題を中心に出題されます。そのなかでも最も重要なのが民法で、全100点のうち50点を占めます。
まずは民法をしっかりと学習しないと、合格点の70点には届かないでしょう。
商法の出題数は全体の10%程度ですが、2級になると3級のときよりも重要視されるため、しっかりと学習することをおすすめします。
ビジネス実務法務検定2級
ビジネス実務法務検定2級では、3級の出題範囲からさらに、出題される法律が追加されます。
2級の試験で追加される法律は、以下のとおりです。
- 民事保全法
- 金融商品取引法
- 労災保険・雇用保険・年金・医療保険
- 下請法
- 景品表示法
- 医薬品医療機器等法
- 条例や行政、公害関連法による規制
- 行政手続法 など
2級の試験では3級で学習した内容も多く出題されるため、それまでに習得した知識も活かせます。
ただし、2級になると同じ分野の問題だったとしても、難易度は高くなります。
3級で問題の半分ほど出題される民法は、2級では全体の4分の1程度の出題数です。
また商法も、全体の4分の1程度出題されるため、2級の合格点である70点を獲得できるかどうかは、民法と商法にかかっているといっても過言ではありません。
その他の科目は1問から全体の2割程度の割合で、幅広く様々な法律知識が問われます。
ビジネス実務法務検定試験問題の解き方
ビジネス実務法務検定の試験問題では、先ほど紹介した実践問題の3級の第2問・2級の第2問のような組み合わせ問題が出題されます。
組み合わせ問題とは、ア~オで問題文が与えられており、その中で正解の肢(または誤りの肢)の組み合わせを選ぶ問題です。
組合せ問題の選択肢の選び方を、2級で出題されている5肢択一式の問題を例に確認していきましょう。
5肢択一式の組合せ問題は、5肢全ての正誤がわかれば、もちろん正解できます。
ただし実際の試験では、知らない知識やあいまいな知識が出題されることも少なくありません。
例えば、正しいものを選ぶ選択肢が以下のような組合せで、「ウ」が正しいことはわかっているとします。
この場合、1か3から正答を選ぶことになります。
1.アウ
2.アエ
3.イウ
4.イエ
5.ウエ
さらに、「ア」も正しいとわかれば1が正解になり、「ア」ではなく「イ」が正しいと分かれば3が正解になります。
「ア」が誤りと分かっている場合も、3が正解です。
このように組合せ問題は、選択肢の全ての正誤がわからなくても、正解できる場合があります。
明らかに正しい肢又は誤っている肢を複数見つけて、容易に正解できることがわかると、
一見難しいと思われる問題でも、あわてずに正解を導き出せるようになるでしょう。
また、組合せ問題の中には、以下のような形式の問題もあります。
ア~オの記述のうち、その内容が適切なものを〇、適切でないものを✖とした場合の組み合わせを1~5の中から1つだけ選びなさい。
- ア-〇 イ-〇 ウ-〇 エ-〇 オ-✖
- ア-〇 イ-〇 ウ-✖ エ-〇 オ-〇
- ア-〇 イ-✖ ウ-〇 エ-〇 オ-〇
- ア-✖ イ-〇 ウ-〇 エ-✖ オ-✖
- ア-✖ イ-✖ ウ-✖ エ-✖ オ-✖
この形式の問題も、ア~オの全ての選択肢について正誤が判断できなくても、正解を導けます。
その他に、正誤が明確にわかるものから判断して、不適切な選択肢から消していくという方法もあります。
例えば、エが〇とわかれば、4と5は消す。ウが✖とわかれば2が正解となります。
ビジネス実務法務検定試験IBT試験対策
従来の紙媒体(マークシート形式)の試験では、問題の余白にメモができましたが、2021年から実施されているIBT試験では、メモが禁止されています。
例えば、上記の組み合わせ問題の場合、各選択肢に1番目は×、2番目は▲、3番目は○のように印をつけることができません。
したがって、組み合わせ問題では各選択肢の○×を記憶して、メモを取らないで問題を解く訓練が必要です。
訓練するには、慣れるしかありません。
慣れるためにおすすめしたい訓練法は、オンライン上で問題演習ができる教材を使うことです。
これまでメモを取りながら問題を解いていた方は、慣れるまで問題文を数回読みかえさなければならない場合もあるでしょう。
はじめは時間がかかるかもしれませんが、繰り返し解きながら慣れていけば問題ありません。
ビジネス実務法務検定の概要
ビジネス実務法務検定試験に合格するには、過去の出題傾向を把握して、出題形式に慣れるだけでなく、試験の概要も確認することが大切です。
ビジネス実務法務検定の試験方式には、IBT方式とCBT方式の2種類があります。
受験場所や受験料などが異なるため、それぞれの特徴を把握しておきましょう。
IBT方式(2級・3級)
IBT方式で受験できるのはビジネス実務法務検定の2級と3級です。
IBT方式の試験概要は、以下のとおりです。
試験内容 |
2級・3級 |
受験方法 | 受験者自身のインターネットに接続されたパソコンで受験する試験方式 |
申込期間 | 第55回:5月17日〜5月28日
第56回:9月20日〜10月1日 |
試験期間 | 第55回:6月21日〜7月8日
第56回:10月25日〜11月11日 |
試験時間 | 90分 |
試験形式 | 多肢選択式 |
受験場所 | 自宅や会社など |
受験料 | 2級:7,700円(税込)
3級:5,500円(税込) |
受験資格 | 学歴・年齢・性別・国籍による制限なし
※2級からの受験、2・3級併願受験も可能 |
試験日は一定期間の間で、好きな日を自分で選択できます。
また、IBT方式は自分のパソコンから受験できて便利ですが、受験環境を自身で用意しなければいけません。
推奨ブラウザのGoogle ChromeやMicrosoft Edge、カメラやマイクの使用、画面共有、サウンド出力のできる環境を用意する必要があります。
CBT方式(1級・2級・3級)
CBT方式は1級と2級、3級の試験で取り入れられている方式です。
IBT方式と異なる部分は、受験方法や受験場所、受験料です。
2級・3級のビジネス実務法務検定の試験概要の、IBT方式と異なる3つの項目を表で確認しましょう。
▼2級・3級のビジネス実務法務検定試験概要
受験方法 | 各地のテストセンターに備え付けのパソコンで受験する方式 |
受験場所 | 全国各地のテストセンター |
受験料 | 2級:7,700円+CBT利用料2,200円(税込)
3級:5,500円+CBT利用料2,200円(税込) |
なお、試験開始時間は、会場ごとに設定されています。
次はビジネス実務法務検定1級の試験概要を表にまとめました。
▼ビジネス実務法務検定1級の試験概要
試験内容 | 1級 |
受験方法 | 各地のテストセンターに備え付けのパソコンで受験する方式 |
申込期間 | 第54回:12月10日 |
試験期間 | 第54回:11月7日〜11月14日 |
試験時間 | 前半・共通問題:90分(10時集合)
後半・選択問題:90分(13時集合) |
試験形式 | 論述形式 |
受験場所 | 全国各地のテストセンター |
受験料 | 9,900円+CBT利用料2,200円(税込) |
受験資格 | 学歴・年齢・性別・国籍による制限なし
※2級試験の合否実績に関わらず誰でも受験可能 |
2級と3級はIBT方式と同じように一定期間の間から好きな日を選択できますが、1級の試験日は全国共通の統一試験のため、日時は選択できません。
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まとめ
資格試験対策には、試験本番を想定した対策が欠かせません。
本記事では、ビジネス実務法務検定の過去問についてお伝えしました。
- ビジネス実務法務検定2級・3級は過去問が公表されていない
- 1級は過去問が公表されているが、模範解答は確認できない
- 過去問はないが、合格には試験問題さながらな問題で練習することが大切
- ビジネス実務法務検定では民法や商法・会社法の出題数が多い
- 試験対策として、オンライン上で問題を解くことに慣れた方が良い
ビジネス実務法務検定の過去問は、試験のIBT化に伴って公表されなくなったため、本番を想定した実践問題で練習することが大切です。
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