メンタルヘルス・マネジメント®検定は、精神の状態を適切に見極め、必要に応じたケアを行うときに役立つ検定です。マネジメントの対象は自分自身、部下、会社全体など多岐にわたります。サポートする領域が広がると、その分だけ必要とされる知識も多くなっていきます。メンタルヘルス・マネジメント®検定で専門知識を学び、さまざまな場面でのケアに活かしましょう。ただし、検定に合格するためには、相応の学習時間の確保が重要です。今回は、メンタルヘルス・マネジメント®検定のコース別に、合格に必要とされる勉強時間の目安や、コースごとの難易度、主な勉強方法などをご紹介します。
メンタルヘルス・マネジメント®検定の難易度はどれくらい?
メンタルヘルス・マネジメント®検定には3つのコースがあります。試験の内容はコースによって異なり、難易度も変化します。まずは、それぞれの詳細について、一通り把握しておきましょう。
Ⅲ種(セルフケアコース)
セルフケアコースとも呼ばれるメンタルヘルス・マネジメント®検定試験Ⅲ種は、もっとも難易度の低い試験です。2020年度の試験では、実際に受験した人が5,046人、合格者が4,361人でした。合格率は86.4%と、検定試験のなかでは高い部類に入ります。メンタルヘルスに関する勉強が初めてという方は、取り組みやすいセルフケアコースの受験から始めると良いかもしれません。
セルフケアコースの目的は、メンタルヘルスに関する基礎知識をつけ、自身をケアすることです。試験問題には、セルフケアに関する項目も出題されます。無意識に自信へかかっている負荷への気づき方や対処法、助けの求め方などを確かめられるのが試験のメリットです。ストレス社会のなかで健康的に生き抜くための基本を身につけられるため、学習しておいて損はありません。
問題はすべて選択式で、用意された回答のなかから正しいものを選んで答えます。2時間の試験時間の間に100点満点の問題を解き、70点以上を獲得すれば合格です。
Ⅱ種(ラインケアコース)
ラインケアコースと呼ばれるメンタルヘルス・マネジメント®検定2種では、他者のケアに関する問題が出されます。職場において管理者となり、部下のケアを行う人が身につけておきたい知識が多く見られます。検定試験の勉強で習得した知識を活用すれば、部下への具体的なアドバイスや職場環境改善が実施できるようになるでしょう。
2020年度の試験では、実際に受験した人が10,343人、合格者は5,840人、合格率は56.5%でした。難易度が上がったことにより合格率も低くなっています。ただ、約5割の合格率は、決して低すぎるものではありません。しっかりと試験対策をすれば、十分に合格を狙えます。中間の難易度になるため、セルフケアコースでは物足りず、マスターコースではハードルが高いと感じた人にもおすすめです。
出題形式は、セルフケアコースと同じく選択式です。試験時間2時間の間に、100点満点中70点以上を獲得すれば合格となります。出題範囲はセルフケアコースと重なる部分もありますが、他者へのケアに関する内容や、職場におけるマネジメントについての深い理解が求められます。
Ⅰ種(マスターコース)
マスターコースと呼ばれるメンタルヘルス・マネジメント®検定1種では、ほかの2コースと比べて専門的な知識を問われる問題が多数出題されます。ご自分や部下だけでなく、組織全体のメンタルヘルス対策を行う、企業の幹部や人事スタッフなどにおすすめの試験です。マスターコースの修得で、企業の方針に沿いながら従業員のストレスをケアし、必要に応じて専門機関を適切に活用する方法も知ることができます。
2020年度では、1,276人が1種を受験し、272人が合格しました。合格率は21.3%で、3つのコースのなかでもっとも難易度が高いといえます。約2割の合格ラインに入るためには、しっかりと勉強時間を確保した試験対策が大切です。
試験では、100点満点の選択問題と50点満点の論述問題の2種類が出されます。ふたつの試験の合計点が105点を超え、かつ論述問題で25点以上獲得すれば合格です。選択形式の問題は2時間、論述問題は1時間の試験時間が設けられています。
マスターコースの試験で注意したいのが、試験が開催される頻度です。例年、セルフケアコースとラインケアコースは11月と3月の2回実施されます。マスターコースの試験は11月のみの開催となるのが通例です。加えて、セルフケアコースとラインケアコースは団体特別試験の対象となり受験機会を増やせますが、マスターコースにはそのチャンスがありません。基本的に1年に1回の試験にて、合格をつかむ心づもりが大切です。受験に際しては、万全の対策を行いましょう。
3コースの共通事項
メンタルヘルス・マネジメント®検定の出題内容は、すべて厚生労働省が策定する「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を参考につくられています。その年の4月1日に成立している法令が試験に反映されるため、法改正があると出題内容にも変化があります。
試験では、協会から発行されている公式テキストの内容に準拠した問題が出題されます。テキストの内容も法令に応じて変わるため、最新版を購入するように気をつけましょう。受験を申し込む前に公式ホームページをチェックし、どの版のテキストから問題が出されるか確かめておくのがおすすめです。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の
勉強時間はどのくらい必要?
合格に必要な勉強時間は、受験者が元から持つ知識の内容によって異なります。メンタルヘルスケアについて学ぶのが初めてという場合は、受験内容の習得までにある程度の時間がかかるはずです。心理学系の資格を持っている人や、メンタルヘルスについて専門的に学んだことのある人などは、勉強時間が少なく済むかもしれません。
セルフケアコースの勉強時間は?
セルフケアコースの公式テキストは約160ページです。ほかの2コースよりも内容が少ないため、短期間で合格を目指すこともできます。個人差はありますが、30時間を目安に勉強時間を確保すると良いでしょう。
一般常識があれば大体の問題は解けると考える人もいらっしゃるかもしれませんが、まったく試験対策をせずに検定を受けるのはおすすめできません。試験には法律関連やメンタルヘルスケア関連の専門知識が出てきます。ある程度の対策をしなければ正答を選べないため、合格率の高いセルフケアコースであっても事前勉強をしておくことが重要です。
ラインケアコースの勉強時間は?
ラインケアコースの公式テキストは約350ページあります。セルフケアコースのテキストよりもページ数が多くなる分、必要な勉強時間も長くなるはずです。個人差はあるものの、テキストの完了まで50時間程度かかると考えておくと良いでしょう。
また、ラインケアコースは、セルフケアコースと併願受験する人も多く見られます。その場合、ラインケアコースの勉強をメインに進めていくのが一般的です。出題内容は重複する部分があるため、ラインケアコースの試験対策をしていればセルフケアコースの勉強時間を減らすことができます。同日受験も可能なため、興味がある人は検討してみましょう。
マスターコースの勉強時間は?
合格率が約2割のマスターコースは、出題範囲がもっとも広く、専門的な知識が多数登場します。十分に試験対策を行ったうえでの受験が求められるため、勉強時間も長めに確保しておきましょう。
大阪商工会議所が発行しているマスターコースの公式テキストのページ数は、約430ページです。内容を一通り習得するまでには、120時間かかるのが目安といわれています。習熟度によってはさらに時間が必要となるため、余裕を持った勉強スケジュールを立てておくのがおすすめです。
メンタルヘルス・マネジメント®検定の勉強を開始する時期は?
マスターコースの合格に必要とされている120時間を例にして、試験対策を開始する時期を計算してみましょう。平日の5日間は1日1時間、土日の2日間は1日3時間の勉強時間を確保するとします。そうなると、約11週間で120時間に到達します。試験日から逆算して、2カ月~3カ月前までには対策を始めておくと良いでしょう。
ただし、誰もがコンスタントに勉強に取り組めるわけではありません。仕事や家事などが忙しく、日によっては試験のための時間がとれないこともあるでしょう。受験を決めたら、はやめに試験対策を始めておくのがおすすめです。
メンタルヘルス・マネジメント®検定にはどんな勉強方法がある?
基本となる勉強方法は、一般的な検定試験と同様です。出題範囲を確認し、知識の習得に努めることで正答率も上がります。それぞれの方法について、詳しく確認していきましょう。
テキストを読み込む
メンタルヘルス・マネジメント®検定には、メンタルヘルスケアの意義をはじめ、さまざまな内容の問題が出されます。まずはテキストをよく読み、どういった知識が必要とされているのか確かめましょう。いったんすべてを通して読んだうえで、改めて細かい部分を確認しながら読み込むことがおすすめです。
暗記する
出題内容を把握したら、一つひとつ暗記していく作業が必要です。テキストにラインを引く、単語帳を活用するなどの方法で、大事なポイントを押さえていきましょう。
模擬問題や過去問題を解く
試験範囲が暗記できていても、実際に問題文を読んで回答するのには慣れが必要です。模擬問題や過去問題を解く実践方式の勉強方法で、試験に慣れていきましょう。
人によっては、テキストの暗記より先に問題を解きながら覚えていく方法が向いていることがあります。ご自分の取り組みやすい方法で勉強を進めていきましょう。
試験時間内に全部解けるように練習する
各コースとも、試験には2時間~3時間の制限時間が設けられています。時間内にすべての問題を解き終え、見直しまで済ませられるように訓練しておきましょう。模擬問題を解く際に時間を計測し、ご自分がどのくらいのスピードで回答できるか確かめておくのがおすすめです。
自分専用のまとめノートをつくる
試験対策を進めていくと、よく間違えてしまうところや、なかなか覚えられないところがはっきりとわかってくるはずです。内容を整理しながらノートにまとめ、すぐに見返せるようにしてみましょう。ご自分の間違えやすい箇所をすぐに確認できるため、暗記の効率がアップします。
マスターコースの論述問題の勉強方法
セルフケアコースとラインケアコースは選択問題のみですが、マスターコースには論述試験があります。用意された回答を選ぶのではなく、自身のことばで答えを書かなくてはいけません。
論述問題は選択問題と異なり、正誤の判断をつけにくいのが特徴です。独学での対策では厳しいと感じたらセミナーやオンライン講座を受講し、添削指導を受けてみましょう。
忙しい人はオンライン講座を活用しよう
検定に合格したいと思っていても、日々の生活のなかで勉強時間を確保できない人は少なくありません。できる限り無駄を省き、効率的な方法での勉強が大切です。忙しい人は、ぜひオンライン講座を活用してみましょう。最後に、オンライン講座の特徴や、利用するメリットをご紹介します。
オンライン講座とは
オンライン講座とは、インターネットを通じて利用できるWebサービスのひとつです。授業内容はWeb上に配信され、パソコンやスマートフォンなどを使って見ることができます。
オンライン講座には、主に2種類の形式が採用されています。ひとつはリアルタイムで講師の説明を聞き、双方向のやり取りができるライブ方式です。すぐに質問ができる点はメリットですが、決まった時間にアクセスしなければいけないため、忙しい人には向かないかもしれません。
もうひとつが、あらかじめ撮影された講座のビデオを見ながら学ぶオンデマンド方式です。隙間時間を活用して検定試験の勉強を進めたい人は、こちらがおすすめです。
オンライン講座のメリット1:インターネット環境があればどこでも受講できる
オンライン講座は、インターネットにつながっていればどこでも動画を見ることができます。受講のためにスクールへ通う必要はありません。通学に必要な時間や交通費などはかからず、節約につながる点もメリットです。教室へ立ち寄る時間がない人、近くにメンタルヘルス・マネジメント®検定のスクールがない人などにも便利なサービスといえます。
オンライン講座のメリット2:時間を問わずに受講できる
オンデマンド方式の場合は、好きな時間に講座の動画を視聴できます。深夜や早朝などでも、時間を気にせず受講できるのがメリットです。ただ、講座によってはWebページにアクセスできる時間が決まっていることもあるため、事前に確認しておきましょう。
また、オンデマンド方式であれば、気になる部分を巻き戻しての視聴が可能です。説明を繰り返して聴けるため、ご自分のペースでゆっくりと授業を受けたい人にもおすすめできます。
オンライン講座のメリット3:独学よりも効率良く学べる
メンタルヘルス・マネジメント®検定を受験するにあたって、独学にするか講座を受けるか迷っている人も多いかもしれません。オンライン講座の最大のメリットともいえるのが、効率の良い学習が可能な点です。
オンライン講座なら、決まったカリキュラムに従って勉強を進められます。ご自分でスケジュールを立てて、進捗を管理する必要はありません。テキストの文章だけではわかりにくい部分も、講師による説明を聞くことで理解がはやまるはずです。結果的に、独学よりも短期間で合格を目指せるかもしれません。
***
メンタルヘルス・マネジメント®検定には、異なる難易度のコースが3種類あります。難易度が上がるほど必要な勉強時間も増えるため、受験申し込みの前にどの程度の時間を確保できるか確かめておきましょう。初学者の場合は難易度の低いセルフケアコースから始める、もしくはセルフケアコースとラインケアコースを併願するのがおすすめです。より上を目指す場合は、もっとも難易度の高いマスターコースに挑戦してみましょう。