「人間関係」は働きやすい職場に関係する大きな要素
職場やパート先で気持ちよく働くための大きな要素として「人間関係」が挙げられます。企業には様々な立場の人が所属しています。「人間関係」と一言で表せば簡単ですが、その実際は複雑に絡み合っていて、改善に頭を悩ましている管理職や従業員の方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の「こころの耳」ポータルサイトでは、人間関係の改善検討における重要視点として、以下の4つを挙げています。
ア 管理者のマネジメントスタイル、マネジメント行動、メンバーへのかかわり方
イ 上下・左右間のコミュニケーションの総量
ウ 他メンバーの仕事内容、仕事状況の理解・共有による相互支援意識、協働意識の醸成
エ 対面コミュニケーションの増加
何か問題を解決したい場合には、具体的に分析していくことが必要です。「人間関係」の分析においては、この4つの視点を持って分析してみると問題の原因・解決法のヒントが見つかるかもしれません。
どんな対策があるか
「人間関係」が原因でメンタルヘルス不調に陥ってしまった社員や従業員をケアする方法についてご紹介します。
メンタルヘルス対策を推進する厚生労働省ですが、2006年に“労働者の心の健康の保持増進のための指針”を策定しました。いわば、“4つの心のケア”です。
セルフケア
まずは、従業員自身がセルフケアを行うことが重要とされています。自身の心や身体の健康状態は自分が一番理解できるため、気分の落ち込みや集中力の欠如といったサインを見逃さないことが大切です。
また、従業員が50人以上いる事務所では、年に1回のストレスチェックが義務付けられています。この機会を活用して自分の心の健康状態を確認するのも効果的です。
ラインによるケア
ラインによるケアとは、従業員を管理監督する上司が行うケアのことです。管理監督者には業務の円滑な遂行だけでなく、部下である従業員の異変の早期発見や対応、職場環境の改善、休職者の職場復帰の支援などの役割が求められます。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、セルフケアやラインケアが機能しているかどうか、チェックし適切な策を講じる仕組みのことです。
従業員が50人以上いる事業所には、産業医の選任義務があります。さらに規模が大きくなると、保健師や看護師、心理士が在籍していること少なくありません。これらの専門家が連携し、セルフケアやラインケアのサポートを行っています。
事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアとは、外部の専門機関と協力してメンタルヘルスケアを行うことを指します。産業医の在籍していないオフィスや、メンタルヘルスを専門に扱っていない産業医の場合は、外部の専門機関との連携で、より実効性のある施策を展開できます。
資格取得を通して知識を得るのがおすすめ
職場のメンタルヘルス対策が重要視される中、この取り組みを熟知している従業員は、そう多くありません。職場で働くすべての人が心身ともに健康的に活動でき、活気溢れる職場づくりを実現するためにも、「メンタルヘルス・マネジメント®検定試験」の取得をおすすめします。
ここでは、メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の特徴や取得するメリット、コースの種類や合格基準についてお話します。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験とは?
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験とは、職場におけるメンタルヘルス対策の基礎知識や対処法を学ぶ検定試験です。同試験には「I種(マスターコース)」「II種(ラインケアコース)」「III種(セルフケアコース)」といった3つのコースがあり、それぞれ学べる内容や対象が異なります。
I種…メンタルヘルスケア計画などを学びたい経営幹部向け
Ⅱ種…安全配慮義務の観点からラインケアを学びたい管理監督者(管理職)向け
Ⅲ種…セルフケアの基礎知識を学びたい一般社員向け
本試験は、職場のメンタルヘルス対策における「一次予防」に重きを置いています。管理職の場合、II種以上のコースで部下のメンタル不調の未然防止、健康増進を学ぶのがおすすめです。なお、メンタル不調の早期発見・対処にフォーカスした「二次予防」、医療機関による治療や職場復帰、再発防止策を図る「三次予防」も対応領域に含まれます。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験「II種」の出題内容と合格率
管理職の方や、周囲への支援・アドバイスを行いたいと考える場合は、メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の「II種」の取得を目指すのがおすすめです。その出題内容は、以下の通りです。
- メンタルヘルス対策の意義
- メンタルヘルスおよびストレスに対する基礎知識
- 職場環境の評価方法および改善方法
- 労働者(部下)への配慮
- 部下からの相談への対応(傾聴方法および適切な助言方法)
- 事業場外資源との連携
- 復職者への支援方法/復職しやすい職場環境の構築
基本的には、ラインケアの基礎を包括した内容です。配点は100点満点で、合格基準は70点以上となります。試験は原則、毎年3月と11月の年2回実施されます。
同試験を主催する「大阪商工会議所」および「施行商工会議所」によると、2023年11月5日に実施された試験の合格率は、「III種セルフケアコース」が71.9%、「II種ラインケアコース」は56.5%で、いずれも例年通りの合格率となりました。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験を受講するメリット
もしあなたが管理職や、パートを仕切る立場であった場合、部下のメンタルヘルス対策を深く理解できるメリットがあります。2000年以降、一般企業における従業員のメンタルヘルス対策が推進されるようになりました。一方で先述した通り、メンタルヘルス対策そのものを適切に理解している人は少ない現状にあります。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験は、「知っているようで意外と知らないメンタルヘルス」に触れる、良いきっかけとなるでしょう。キャリアアップを目指す上でも、メンタルヘルス対策の知識は有効に働きます。