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職場で重要なメンタルヘルス対策とは

職場で重要なメンタルヘルス対策とは

人間関係や仕事内容に対する不満など、職場でストレスを抱えている方は少なくありません。自分自身で解消できれば問題ありませんが、そのまま自分を追い詰めてしまい、長期療養や退職してしまうケースもあります。

そんなときに重要なのが、職場のメンタルヘルス対策です。事前に従業員の異変を察知する仕組みや、長期療養中のサポート体制が整っていれば、労働者は安心して働くことができます。

今回は、メンタルヘルスやそのケアの概要について解説し、職場で実践できる具体策やメンタルヘルスに関する資格をご紹介します。

メンタルヘルスとは何か

メンタルヘルスは、直訳すると「心の健康状態」を意味する言葉です。メンタルヘルスの好不調を考える際は、単に「病気かどうか」だけで判断するのではなく、身体的・心理的に良好な状態かを考えることが大切です。

厚生労働省の調査によると、2010年度から3年連続で、精神障害の労災認定件数が過去最高を更新しています。これを受けて、2015年12月に労働安全衛生法が改正され、職場で年に1回のストレスチェックが義務付けられるなど、メンタルヘルスケアの重要性が高まっています。

メンタルの不調によって生じる代表的な精神疾患

心の健康が損なわれた状態で放置していると、重篤な精神疾患を引き起こす可能性があります。代表的な疾患が以下の5つです。

  • うつ病
  • パニック障害、不安障害
  • 適応障害
  • 各種依存症
  • 睡眠障害

上記のような精神疾患は、継続的な医療を提供すべき5大疾病のひとつとして、厚生労働省に認定されています。その他には、「がん」や「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」があります。

厚生労働省の令和2年度「労働安全衛生調査」によると、ビジネスパーソンの54.2%が仕事や職場でストレス・不安を感じているようです。心の不調や精神疾患については、気持ちの問題として片付けてしまうケースもありますが、がんや脳卒中などの病気と同様に、社会全体で対策していくべき課題といえるでしょう。

メンタルヘルスの不調を表すサイン

メンタルヘルスの不調は、いつでも誰にでも起こり得る問題です。しかし、どんな症状が心の不調の入口なのかわからず、無理に仕事を続けた結果、精神疾患などを発症する方も少なくありません。

メンタルの不調にできるだけ早く気づき、重篤な症状を引き起こさないためには、身体や心のサインを理解しておくことが大切です。日常生活や仕事における不調のサインには、以下のようなものがあります。

  • 遅刻や欠勤が増える
  • 簡単な作業でのミスが増える
  • 不眠や食欲不振の症状がある
  • お酒の量が増える
  • イライラしていることが増えた
  • 突然口数が減った
  • 身だしなみが乱れている
  • 落ち着きがなくなる
  • 落ち込みやすくなる

心の不調には、上記以外にもさまざまなサインがあり、一概にはいえません。精神的な症状だけでなく、身体的な不調を訴える方もいます。自分では不調に気づいていない可能性もあるため、周囲の方の協力が欠かせません。自分自身はもちろん、周囲に上記のような症状が見られる方がいる場合は、すぐに対策を講じましょう。

メンタル不調時の症状は、大きく4つに分類できます。こちらでは、それぞれの特徴についてご紹介します。

感情や気分の障害

「落ち込みやすくなる」「寂しさや虚しさを感じる」などの症状は、「抑うつ気分」と呼ばれ、メンタル不調のもっとも代表的な症状です。似た症状に、新しい環境に慣れないことで生じる「5月病」がありますが、5月病は時間の経過で改善されます。

しかし、うつ病をはじめとしたメンタル不調は、時間が経っても解消されることはありません。「楽しい」や「うれしい」などの感情を抱くことができず、漠然とした不安を感じることもあります。

意欲障害

やる気の喪失や気力の減退などの症状は、「意欲障害」と呼ばれます。精力的にこなしていた仕事や、プライベートの趣味に興味を持てなくなった場合は、意欲障害を引き起こしている可能性があります。

思考障害

「アイデアが思い浮かばない」「集中が続かない」「決断できない」などの症状は、思考障害と呼ばれ、メンタル不調の症状のひとつです。心の不調を引き起こすと、簡単な作業でもミスが増えるのは、思考障害が原因とされています。

思考障害には2つのパターンがあり、思考が鈍くなる「思考抑制」と、マイナス思考になる「悲観的思考」です。なかでも、悲観的思考に支配されると、すべての物事を自責的に考えてしまい、会社を辞めるなどの具体的な行動に移す方もいます。

身体症状

メンタル不調は心理的な症状だけでなく、身体症状を引き起こすこともあります。具体的には、「不眠や食欲不振」「常に身体が気だるい」などの症状です。身体的な症状は気づきやすいため、精神科や心療内科ではなく、内科を受診する方もいます。

内科の処置や処方された薬で症状が改善しない場合は、メンタルの不調を疑いましょう。

メンタルヘルスケアとは?職場で実践する意義

メンタルヘルスケアとは、「心を健康な状態に保つための施策」のことを指し、近年では企業でもさまざまな形で実践されています。メンタルヘルスケアは、以下の3つの段階に分けて対処するのが基本です。

段階

内容

1次予防

【未然防止・健康増進】

メンタルの不調を予防する段階。従業員によるセルフケアや、企業側による労働環境の改善なども含まれる。

ストレスマネジメント研修やストレスチェック制度を導入している企業もある。

2次予防

【早期発見】

メンタルの不調が見られる従業員を、早期発見し、適切に対処する段階。

相談窓口の設置や産業医との面談などの施策が代表的。外部サービスと連携を行うケースも多い。

また、職場内で気軽に相談できる雰囲気作りも大切。

3次予防

【職場復帰支援・再発予防】

メンタルの不調が原因で休職した従業員の職場復帰を支援し、再発を予防する段階。

時短出勤の支援や精神面でのフォローが基本。専門医や産業医の協力が不可欠。

上記のように、従業員のメンタルヘルスケアは企業が積極的に取り組むことが大切です。以下では、職場でメンタルヘルスケアを行う意義を3つご紹介します。

生産性の低下を防止できる

メンタルの不調を抱えた従業員は、遅刻や欠勤が多くなったり、基本的な作業でもミスが増えたりします。今まで通りのペースで業務を処理するのが難しくなり、休職や離職につながるケースも少なくありません。また、生産性が低下した分を他の従業員でカバーしようとした結果、メンタルの不調が伝播してしまうこともあります。

企業側がメンタルヘルスケアに積極的に取り組むことで、従業員は心の健康を保ったまま仕事を続けられます。不調による生産性の低下予防につながるでしょう。

また、ストレスチェック制度の導入や相談窓口の設置などの施策は、「働きやすい職場作り」の一環としても効果的です。従業員が快適に働くことができ、生産性の向上も期待できるでしょう。

リスクマネジメントができる

メンタルの不調を抱えると、集中力や注意力が低下し、事故やトラブルにつながる可能性が高まります。仕事内容によっては、一般の方や他の従業員を巻き込んでしまうケースも少なくありません。

メンタルヘルスケアを行い、従業員の不調をいち早く察知することで、上記のようなリスクを最小限に抑えられます。本人はもちろん、他の従業員や顧客の安全を守るためにも、メンタルヘルス対策に積極的に取り組むことが大切です。

企業価値の向上が期待できる

メンタルヘルス対策を行い、より働きやすい職場環境を作ることは、CSRの観点からも必要とされています。企業側が積極的に取り組むことで、企業イメージの向上につながり、社会からの信頼も獲得できるでしょう。

メンタルヘルスの4つのケアとは?

厚生労働省では、メンタルヘルスについて4つのケアを推奨しています。こちらでは、それぞれの特徴をご紹介します。

セルフケア

まずは、従業員自身がセルフケアを行うことが重要とされています。自身の心や身体の健康状態は自分が一番理解できるため、気分の落ち込みや集中力の欠如といったサインを見逃さないことが大切です。

また、従業員が50人以上いる事務所では、年に1回のストレスチェックが義務付けられています。この機会を活用して自分の心の健康状態を確認するのも効果的です。

ラインによるケア

ラインによるケアとは、従業員を管理監督する上司が行うケアのことです。管理監督者には業務の円滑な遂行だけでなく、部下である従業員の異変の早期発見や対応、職場環境の改善、休職者の職場復帰の支援などの役割が求められます。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、セルフケアやラインケアが機能しているかどうか、チェックし適切な策を講じる仕組みのことです。

従業員が50人以上いる事業所には、産業医の選任義務があります。さらに規模が大きくなると、保健師や看護師、心理士が在籍していること少なくありません。これらの専門家が連携し、セルフケアやラインケアのサポートを行っています。

事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアとは、外部の専門機関と協力してメンタルヘルスケアを行うことを指します。産業医の在籍していないオフィスや、メンタルヘルスを専門に扱っていない産業医の場合は、外部の専門機関との連携で、より実効性のある施策を展開できます。

職場で実行できるメンタルヘルスケアの具体策

メンタルヘルスケアの体制を整えたら、実際に対応する必要があります。こちらでは、職場で実行できるメンタルヘルスケアの具体策をご紹介します。

就業管理を徹底して体調管理を行う

職場のメンタルヘルスケアは、就業管理の徹底からスタートします。労働時間と健康リスクには相関関係があるといわれており、長時間労働が続いているとメンタルの不調を引き起こす可能性が高まります。

メンタルヘルスケアを考える際、まずは「誰かひとりに業務が集中していないか」「従業員が過度な残業を強いられていないか」など、就業管理の徹底からはじめましょう。

また、「遅刻や欠勤が増えた」「些細なミスが増えた」などの異変を感じ取ったら、できるだけ早くコミュニケーションを取ることも大切です。その後の対応についてもあらかじめ検討しておきましょう。

働き方を見直す

従業員のメンタルヘルスの不調は、働き方が原因かもしれません。近年は新型コロナウイルスの流行もあり、テレワークや時差出勤を導入する企業も増えています。しかし、なかにはテレワークで仕事が思うように進まなくなり、ストレスを抱えている方もいるようです。

そういった原因に気づくためにも、従業員と面談やミーティングなどを行い、仕事の進捗や働き方について確認することが大切です。出勤が難しい場合は、レンタルオフィスやコワーキングスペースなどを活用する方法もあります。

メンタルヘルスに関する研修や情報の提供を行う

メンタルヘルスケアは、企業全体で理解を深め、従業員も含めて全員で取り組むことが欠かせません。そのためには、定期的に教育研修や情報の提供を行い、積極的に対応していく姿勢を見せることが大切です。

その際に役立つのが、前述の「4つのケア」です。専門医なども含めて対応していることを周知できれば、従業員の安心にもつながるでしょう。

また、メンタルヘルスケアに関する教育研修や情報提供を行っていることは、企業の外部的なアピールにもつながります。より優秀な人材が会社に集まってくるでしょう。

長期療養中の従業員のサポートを行う

どれだけメンタルヘルスケアの対策を行っても、メンタルの不調をきたし、長期療養に入る従業員が出る可能性があります。長期療養中のサポートについては、従業員が職場復帰する場合の手順や勤務体制について考えることが大切です。

職場復帰をする場合は、適切なプログラムに則って行う必要があり、企業はそれをサポートしていく役割が求められます。メンタルの不調をきたした従業員が、無理なく職場に定着できるまでをサポートしていくことになります。

メンタルヘルスケアには資格がある?

メンタルヘルスケアについては、活躍するシーンや業務内容に応じて、さまざまな資格があります。以下の表では、代表的なメンタルヘルスケアに関する資格をご紹介します。

資格名

概要

メンタルヘルス・マネジメント®検定試験

大阪商工会議所と施工商工会議所が実施している、メンタルヘルスケアについて学ぶ試験。

働きやすい職場作りや従業員の異変にいち早く気づき、適切なサポートをすることが求められる。

産業医

50人以上の従業員がいる事業場に選任義務がある資格。

産業保健スタッフのリーダとして、産業保健・労働衛生の知見に基づき、従業員が快適に働くことのできる環境を整備する仕事。

衛生管理者

50人以上の従業員がいる事業場で選任義務がある資格。

従業員の作業環境の管理や健康管理、労働衛生教育の実施、健康の保持増進措置などを担う。

公認心理師

心理的なサポートが必要な労働者に対して、心理状態に関するアドバイスや分析などを行う仕事。

メンタルヘルスケアに関する教育や情報の提供なども行う。

産業カウンセラー

従業員全員を対象とした、メンタルヘルスケアに関する研修やカウンセリングなどを行う。心理学・医学的な専門知識を活用し、問題の解決にあたる。

臨床心理士

メンタルヘルスケア専門家のひとりとして、従業員との面談や職場へのコンサルティングなどを行う。

仕事のどんな場面で役立つか

上記のようなメンタルヘルスケアに関する資格の取得は、仕事でも大いに役立ちます。メンタルヘルスについての専門知識を深めることで、自分自身はもちろん、同僚のメンタルの異変にも気づきやすくなります。早い段階で声をかけることができれば、長期療養などの事態へ発展するのを防ぐことができるでしょう。

また、有資格者として役職がつく可能性もあります。特定の産業保健スタッフについては、事業場の規模が一定以上の場合、設置が義務付けられています。そのため、有資格者は従業員数の多い企業で需要があるのです。現在より規模の大きい企業に転職する際にも役立つでしょう。

日常生活への活かし方

ストレス社会と呼ばれる現代では、日常生活でもメンタルヘルスケアが欠かせません。メンタルヘルスケアに関する資格を取得していれば、周囲の方の心のケアも行えるでしょう。

仕事に対して不安を抱いている友人へのアドバイスや、傷つき落ち込んでいる家族へのケアなど、資格取得の仮定で習得した知識を活かすことのできるシーンは少なくありません。

また、自分自身が抱えているストレスや不安についても適切に対処でき、毎日を心穏やかに生活できます。

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従業員のメンタルヘルスが良好ということは、仕事におけるパフォーマンスが十分に発揮できる状況であることです。一方で、ストレス過多などによってメンタルヘルスが低下している状況は、企業の成長・発展を阻害する要因にもなり得ます。

「心の問題は個人の問題」と片付けるのではなく、なぜそのような状況に陥ってしまったのか、会社としてどのようなサポートができるのかを考えることは、企業にとってすでに当たり前の施策ともいえます。今回の記事を参考に、ぜひ職場でのメンタルヘルス対策について振り返ってください。