中小企業診断士試験の免除制度を解説!資格保有・対象科目は?

中小企業診断士の1次試験には、所定の資格を保有している人や科目合格した人に対して、一部の科目を免除する制度があります。

また、2次試験や資格の登録に必要な実務補習が免除される方法もあり、上手く活用すれば負担を軽減しながら中小企業診断士の資格を取得できるでしょう。

今回は中小企業診断士試験に関連する免除制度について情報をまとめました。
目次 Contents

中小企業診断士試験の免除制度を解説!資格保有・対象科目は?


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中小企業診断士の科目免除とは

科目免除とは特定の資格を保有していたり、科目合格をしていることで、科目試験の一部が免除される制度です。


1次試験が免除される方法

1次試験(筆記試験)では、全7科目がまるごと免除される方法はありませんが、他資格を保有していることで一部科目が免除されます。

また、免除に必要な資格は各科目ごとに異なります。

さらにこれとは別に科目合格による免除もあります。こちらは記事の後半で詳しく解説していきます。


2次試験と実務補習が免除される方法

一方、2次試験(筆記試験+口述試験)には試験がまるごと免除される方法があります。

それは、1次試験合格後に「養成課程」を受講・修了することです。

養成課程は、中小企業大学校や大学院などに通学し、主に演習や実習を通して中小企業診断士の実務に必要な実践力を身につけていきます。

修了後は2次試験だけでなく、中小企業診断士の登録に必要な実務補習も免除されるため、そのまま登録手続きへと進める制度です。


また、大学院などの民間教育機関で開催される養成課程には「MBAを取得できる」「平日の夜間や土日に学べる」といった特色もあり、試験の免除だけにとどまらない魅力もあります。

養成課程については下記記事で詳しく解説しています。


【参考】中小企業診断士の養成課程一覧!働きながら夜間・土日の通学で資格取得へ



1次試験の科目免除対象者にならない資格

公認会計士や税理士などの試験合格者は科目免除を受けることができますが、中には保有していても免除対象にならない資格もあります。


簿記

簿記資格保有者は1次試験の科目免除対象にはなりません。

しかし1次試験の「財務・会計」と2次試験の「事例Ⅳ」は日商簿記2級~1級レベルの問題が出題されるため、資格で得た知識を活かせます。

1次試験・2次試験の数ある科目の中で、一番時間を掛ける必要がある科目は、1次試験が「財務・会計」2次試験が「事例Ⅳ」です。

そのため、簿記の知識があることで、重要科目への理解が早く、勉強時間も少なくすむ可能性があります。


行政書士

行政書士に合格していても、科目免除の対象とはなりません。

行政書士とは、官公署に提出する許認可に関する書類や権利義務や事実証明に関する書類作成を行う仕事です。

一方で、中小企業診断士は、中小企業の経営相談に乗るなど、コンサルティング業務がメインになります。

そのため、行政書士と中小企業診断士では、勉強する内容も異なります。


公務員

かつては公務員であれば1次試験免除という優遇措置がありましたが、現在では1次試験の科目免除対象ではありません。

免除対象の資格を保有していれば、数科目は免除できるものの、残りの科目は自力で勉強して合格を勝ち取る必要があるのです。

そのため、かつてあった公務員の1次試験免除は現在の免除よりも有利な状況であったと考えられます。



他資格等保有による科目免除の対象資格と科目

他資格等保有による科目免除で免除申請ができる科目は、「経済学・経済政策」「財務・会計」「経営法務」「経営情報システム」の4つです。

2次試験との関連度、合格に必要な勉強時間、難易度は下記のとおりです。


科目 2次試験との関連度 勉強時間 難易度
経済学・経済政策 100時間
財務・会計 180時間
経営法務 80時間 易~普
経営情報システム 80時間 普~難

※難易度はあくまで傾向や目安です。学習状況、ご経験によって個人差が生じやすく、試験年度によっても変化します。


ここからは、科目免除の対象となる主な資格を紹介していきます。


【税理士】財務・会計が免除

税理士資格保有者のほか、下記に該当する人は「財務・会計」の科目免除対象者となります。

  • 税理士試験合格者
  • 税理士試験免除者
  • 弁護士または弁護士となる資格を有する者


【公認会計士】財務・会計が免除

公認会計士資格保有者のほか、下記に該当する人は「財務・会計」の科目免除対象者となります。

  • 公認会計士試験合格者
  • 会計士補
  • 会計士補となる有資格者

また、公認会計士試験または旧公認会計士試験第2次試験において経済学を受験して合格した者は、「経済学・経済政策」の科目免除対象者となります。


【情報処理技術者試験合格者】経営情報システムが免除

下記の区分の情報処理技術者試験合格者は、「経営情報システム」の科目免除対象者となります。

  • ITストラテジスト
  • システムアーキテクト
  • 応用情報技術者
  • システムアナリスト
  • アプリケーションエンジニア
  • システム監査
  • プロジェクトマネージャ
  • ソフトウェア開発
  • 第1種
  • 情報処理システム監査
  • 特種


【弁護士】経営法務が免除

弁護士資格保有者のほか、下記に該当する人は「経営法務」の科目免除対象者となります。

  • 司法試験合格者
  • 旧司法試験第2次試験合格者


その他の対象資格と科目

上記のほか、大学等の経済学の教授、経済学博士、不動産鑑定士などは「経済学・経済政策」、技術士などは「経営情報システム」の科目免除対象者となります。

より詳しく知りたい場合は、試験実施機関のWebサイトを参照してください。


【参考】中小企業診断協会「中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除



科目合格による免除

ここまで述べてきた「科目免除」は、他の資格を保有していることで一部科目が免除になる制度でした。

一方、中小企業診断士試験には「科目合格による免除」もあります。


科目合格の仕組み

科目合格は、1次試験の全7科目の総合点で合格基準を満たせず不合格になっても、科目別の合格が翌年、翌々年の試験で反映されるという制度です。

つまり、個別の合格基準を一度満たすことができれば、翌年、翌々年は免除を受けることができるため、他の科目の勉強に集中できるのです。


各科目の合格基準は満点の60%とされていますが、最終的には試験委員会が相当と認めた得点比率を獲得することで科目合格が認められます。

科目合格をしていても、翌年、翌々年の試験で自動的に免除になるわけではありません。

申請が必要となるので、制度を利用する予定の方は注意してください。


科目合格の免除期間

科目合格は一度合格すればずっと有効というわけではありません。

有効期限が設けられており、その期間は2年間です。つまり、科目合格をすると翌年と翌々年の試験では免除を受けることができます。

たとえば3年連続で中小企業診断士の試験を受験する場合、3年目は1年目と2年目の科目合格の適用を受けることができます。

具体例を知りたい方は、試験実施機関のWebサイトで詳しく確認できます。


【参考】一般社団法人 中小企業診断協会「第1次試験科目合格パターン例」



あえて「免除を利用しない」戦略もある

科目免除の条件を満たしているのならば、免除を受けたほうが他科目の勉強に時間を充てることができ、メリットが多いように見えます。

しかし、免除制度にはメリットだけではなくデメリットもあります。


免除制度を利用するデメリットは、1次試験の合格基準を達成しづらくなってしまうことです。

合格基準は「受験科目の総得点の60%、かつ全ての科目で満点の40%未満のないこと」と決まっています。

そのため、得意科目を免除してしまうことで、「総得点の60%」という基準を超えにくくなってしまいます。


特に他資格等保有による免除ではその傾向が強く、例えば、公認会計士の資格を保有している体で考えていきます。

公認会計士の資格があると「財務・会計」の免除を受けることができ、他6科目を受験することになります。

しかし、公認会計士の資格を持っているということは、「財務・会計」の試験を受けた場合は高得点が期待できます。

そのような状況の中で、得意分野の免除制度を使用してしまうことで、得意でない6科目で総得点の60%を取る必要が出てくるため、逆に難易度が上がってしまうことがあるのです。

そのため、あえて免除を利用せずに受験をすることで、合格へ一歩近づけるという戦略も考えられます。


科目免除の申請方法

他資格を保有している場合や、科目合格をしている場合で科目免除を受ける場合には、申請が必要になります。

それぞれ申請方法は異なるため、詳しく見ていきましょう。


他資格等保有による免除

受験申込書の「免除申請」欄の該当科目欄にコード番号を記入し、必要書類を簡易書留郵便にて期日までに郵送する必要があります。

提出が必要な書類は「他資格等保有による科目免除申請書」と「他資格等保有を証明する書類のコピー」の2点です。


科目合格による免除

受験申込書の「免除申請」欄の該当科目欄にコード番号の記入と、科目合格した年度の受験番号の記入が必要です。

上記2点の欄への記入が「科目合格による免除」の申請となるため、添付書類の提出の必要はありません。


【Q&A】中小企業診断士試験のよくある質問

最後に、中小企業診断士試験に関するよくあるご質問にお答えします。


試験日は?

中小企業診断士試験は年1回で、例年の試験日程は下記のとおりです。


試験内容 試験時期
1次試験(筆記試験) 8月上旬の土・日曜日の2日間
2次試験(筆記試験) 10月下旬の日曜日
2次試験(口述試験) 翌年1月下旬の日曜日

スタディングでは下記記事で試験の最新スケジュールを紹介しています。


【あわせて読みたい】令和4年度(2022年度) 中小企業診断士試験の試験日程


難易度・合格率は?

中小企業診断士は国家資格の中でも難関のひとつに分類されるものです。

1次試験の合格率は20〜35%、2次試験の合格率は20%前後、最終的な合格率は4〜6%となっています。

ただし1次試験には科目合格といった制度もあるため、複数年をかけて合格を目指すことが可能な資格でもあります。


【あわせて読みたい】中小企業診断士試験の難易度は?合格率・科目・学習スタイルから分析


勉強時間は?

中小企業診断士合格のために必要な勉強時間は一般的に1,000時間ほどと言われています。

1年間でストレート合格を目指すのであれば1週間に20時間、1日に3時間ほどの勉強時間の確保が必要です。


【あわせて読みたい】中小企業診断士の勉強時間は1,000時間!1次・2次・科目別の時間は?


受験資格は?

中小企業診断士試験を受けるにあたって、満たすべき受験資格は特にありません。

学歴・年齢・実務経験にかかわらず、だれでも受験が可能です。

ただし、2次試験を受けられるのは1次試験の合格者のみとなっています。

また、1次試験合格の有効期間はその年度を含む2年間です。


【あわせて読みたい】中小企業診断士は受験資格に学歴などの制限なし 2次は有効期間に注意


まとめ

中小企業診断士試験科目の免除制度についておさらいしていきます。


  • 免除制度には「科目合格による免除」「他資格等保有による免除」の2種類がある
  • 保有している資格によって免除できる試験科目が変わる
  • 科目合格には有効期限がある
  • 免除制度は使わないほうが良い場合もある
  • 科目免除制度を受けるには申請が必要


免除制度は自分が保有している資格によって、一部の試験科目を免除することができます。

難関資格に挑むには、勉強時間が多く必要なため、必要に応じて通信講座を利用して合格を目指しましょう。


>>【記事一覧】中小企業診断士についてもっと知る

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監修 市岡 久典

中小企業診断士
ITコンサルタントとして働きながら、中小企業診断士試験に合格。 その後、ベンチャー企業の経営企画部門の責任者を経て独立。現在は独立診断士として、中小企業診断士講座講師、創業支援、事業計画策定、資金調達、 経営管理、事業再生など、幅広い分野で中小企業のコンサルティングを行う。

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