資格によっては一度取得・登録すれば生涯にわたって有効なものがある一方で、更新が必要となる資格もあります。
経営コンサルティングに関する唯一の国家資格である中小企業診断士は、更新が必要な資格のひとつです。
中小企業診断士の資格は登録日を起点として5年間有効であり、その後も資格を保有し続けるには更新手続きが必要となります。
前述のとおり、中小企業診断士の資格の有効期間は5年間です。
更新登録申請が行える期間は、有効期限満了日の約1ヶ月前から満了日までとなっています。
満了日を過ぎると更新登録できなくなるため注意が必要です。
中小企業診断士資格を保有している人は、年度末〜年度初めに有効期間の満了日となる人が多いです。
資格を所管する中小企業庁は、一定期間に申請が集中することが予想されるため、早期受付を実施して対応しています。
該当する人は期間に余裕を持って手続きを行いましょう。
中小企業診断士の更新登録をするためには申請日までに専門知識補充要件と実務要件の両方を満たす必要があります。
それぞれの要件は、下記のとおりです。
(1) 専門知識補充要件以下のいずれかを合計して5回以上の実績を有すること。1) 理論政策更新(理論政策)研修を修了したこと。2) 論文審査に合格したこと。3) 理論政策更新(理論政策)研修講師を務め指導したこと。(2)実務要件以下のいずれかを合計して30日以上行ったこと。1) 診断助言業務等に従事したこと。2) 実務補習を受講したこと。3) 実習、実務補習を指導したこと。【出典】中小企業庁「中小企業診断士関連情報」>「申請・届出の手引き」
それぞれについて、一般的には下記の項目で要件を満たすことが多いといえます。
(1)専門知識補充要件
1)理論政策更新(理論政策)研修を修了したこと。
(2)実務要件
1)診断助言業務等に従事したこと。
中小企業診断士の「更新研修」と呼ばれるものは、前述の「(1)専門知識補充要件」における「1)理論政策更新(理論政策)研修」を指します。
この研修を、資格の登録日から5年間に5回修了すれば、専門知識補充要件を満たすことができます。
中小企業診断協会は毎年1回ずつ受講することを推奨していますが、受講できなかった場合は1年に2回受講することも可能です。
それでは、理論政策更新(理論政策)研修」について詳しくご紹介します。
研修の内容には、「全国共通テーマ」と「地区ごとのテーマ」の2種類があります。たとえば令和4年度(2022年度)のテーマは下記のようなものでした。
▼全国共通テーマ
▼地区ごとのテーマ(いずれか)
【参考】中小企業診断協会「令和4年度理論政策更新研修の概要」
研修は、令和4年度の場合は5月〜翌年2月にかけての週末に全国各地の会場で実施されています。
中小企業診断協会のWebサイトから地域を選択して検索できるため、参加しやすい会場を見つけることができるでしょう。
中小企業診断士として登録している都道府県ではなくても受講可能で、地区によってテーマが異なっているため、立地だけでなく学びたいテーマから選ぶこともできます。
また、全国各地の会場のほかにオンラインでの研修も開催されていて、国内はもちろんのこと海外からも受講可能です。
理論政策更新研修の時間は、経済産業省令によって4時間以上と決められています。
遅刻や早退、リモートの場合はカメラオフや離席などによって受講時間が4時間を下回る場合、修了とは認められないので注意しましょう。
理論政策更新研修の受講料は、全国共通で6,300円(税込)で、支払い方法は口座振込です。
一度申し込みをして支払いを行うと、研修に不参加だった場合も返金はされません。
研修の申し込みは、中小企業診断協会のWebサイトで行います。
「(1)専門知識補充要件」は、理論政策更新研修の修了以外に「2)論文審査に合格したこと」で満たすこともできます。
論文審査は、与えられたテーマについて論文を作成するという形式で行われます。令和4年度の論文審査のテーマは以下のものでした。
▼必修テーマ
新しい中小企業政策の動向
▼選択テーマ
・中小企業のデジタル化支援
・中小企業の伴走型支援
論文審査は、令和4年度の場合は年に2回行われました(1回目が8月〆切、2回目は2月〆切)。
論文を提出して合格すると理論政策更新研修修了1回分としてカウントされます。
受講料は研修と同様に6,300円(税込)です。
中小企業診断士の資格を維持するには一定のコストがかかります。具体的には以下の2点です。
それぞれについて詳しくご紹介します。
中小企業診断協会は、都道府県ごとに組織があります。
資格取得後の入会は任意ですが、入会すると自己研鑽や人脈形成の機会を得やすいでしょう。
入会金や年会費は都道府県ごとに異なり、東京都の場合は下記のとおりです。
▼東京都中小企業診断士協会
→資格の登録から期間満了までの5年間所属した場合、28万円が必要。
所属のためにかかる費用は安くはありませんが、メリットをしっかり活用していけば割高感は薄れるでしょう。
たとえば東京都の場合は、会員が資格更新要件を満たせるように実務従事を支援する事業を行っていて、コンサルティングを本業としない会員にとってはたいへん便利なサポートとして利用できます。
【参考】東京都中小企業診断士協会「資格更新」>「 東京協会実務従事事業の紹介」
専門知識補充要件を満たすもっとも簡単な方法は、理論政策更新研修を年に1回、計5回受けるというものです。
この研修の受講料は6,300円なので、5回分で31,500円です(いずれも税込)。
実務要件は「1)診断助言業務等に従事したこと。(実務従事)」などで満たすことができます。
実務従事で要件を満たす場合、普段から中小企業診断士として企業のコンサルティングなどを行っていれば、費用をかけるどころか報酬を得ながら満たすことができます。
一方、普段は中小企業診断士として業務を行っていない場合や、副業で実務の経験が少ない場合は、前述のように中小企業診断協会の各都道府県の組織に入会すると機会を得られます。
この場合、入会金や年会費などの費用が発生するほか、参加費も必要になります(東京都の場合は3万6,000円)。
実務従事についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】中小企業診断士の実務従事とは?登録・更新の要件を満たす業務を解説
最後に、中小企業診断士の更新に関するよくある質問にお答えします。
中小企業診断士の更新登録の際に必要な書類は以下のとおりです。いずれもコピーではなく原本が必要です。
資格の有効期間の満了日までに更新を行わなかった場合、登録が削除され、有資格者と名乗れなくなります。
ただし、更新に必要な専門知識補充要件と実務要件を有効期間満了日までの5年間で満たしている場合、登録を削除された日から1年を超えなければ、再登録申請を行うことが可能です。
この申請を行うことによって再度中小企業診断士を名乗ることができます。
今回の記事では中小企業診断士の更新登録について詳しくご紹介しました。それでは、重要なポイントを改めておさらいします。
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監修 市岡 久典
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