「マンション管理士」で検索すると「やめとけ」というキーワードが第二検索ワードとして出てきます。
マンション管理士に興味を持ち、これから目指そうと考えている方にとって、不安になる言葉でしょう。
マンション管理士資格取得を諦めたほうがよいという意見には、一定の理由があります。
この記事では、マンション管理士をやめたほうがよいとされる理由や実際の仕事内容、将来性を解説します。
「マンション管理士はやめとけ」と言われる理由とは?
マンション管理士がやめとけと言われている理由は、以下の通りです。
- 難易度が高すぎるから
- 独占業務・設置義務がないから
- 廃止されるという噂があるから
まずは、資格取得を諦めたほうがいう意見にどういったものがあるか把握しましょう。理由を踏まえて、自分に適しているかを判断してみてください。
ここからは、それぞれの理由について詳しく解説します。
難易度が高すぎるから
マンション管理士は難易度の高さから「取得をやめとけ」といわれています。
以下の表は、過去5年間のマンション管理士の実施データをまとめたものです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|---|---|
令和元年度 | 12,021人 | 991人 | 8.2% | 37点 |
令和2年度 | 12,198人 | 1,045人 | 8.6% | 36点 |
令和3年度 | 12,520人 | 1,238人 | 9.9% | 38点 |
令和4年度 | 12,209人 | 1,402人 | 11.5% | 40点 |
令和5年度 | 11,158人 | 1,125人 | 10.1% | 36点 |
表をみると、マンション管理士の合格率は例年8〜11%程度で推移していることがわかります。
マンション管理士試験は50点満点の試験ですが、合格基準点は全体の7割以上が目安となっており、非常に難易度の高い試験といえます。
また、マンション管理士は他の不動産関連の資格と比較しても合格率は低い試験です。
令和5年度におけるマンション管理士と他の不動産資格の合格率について、以下の表をご覧ください。
資格 | 受験者数 | 合格率 | 合格率 |
---|---|---|---|
マンション管理士 | 11,158人 | 1,125人 | 10.1% |
宅建(宅地建物取引士) | 233,276人 | 40,025人 | 17.2% |
管理業務主任者 | 14,652人 | 3,208人 | 21.9% |
賃貸不動産経営管理士 | 28,299人 | 7,972人 | 28.2% |
表をみると、10%前後の合格率の違いが生じていることがわかります。
マンション管理士を受験する方は、難易度の高さを把握した上で臨むことが大切です。
独占業務・設置義務がないから
マンション管理士の資格には、マンション管理に関する独占業務がありません。
「マンション管理組合や住民へのアドバイスは資格を持っていなくてもできる」といった考えから「マンション管理士は役に立たない」という意見が生まれるのでしょう。
宅建や管理業務主任者など他の不動産資格のほとんどは、独占業務・設置義務があります。
資格の保有者以外が従事することは禁じられているため、資格保有者の付加価値は自然と高まるのが特徴です。
また、独占業務や設置義務がある場合、付加価値の高さから就職・転職でも有利に働きます。
マンション管理士が需要のない資格というわけではありませんが、「誰でもできる仕事」と言い換えてしまえる点が「取得をやめとけ」という考えにつながっているといえます。
廃止されるという噂があるから
「マンション管理士は廃止になる」という噂がありますが、これは本当なのでしょうか。
結論から申し上げますと、マンション管理士の資格が廃止される予定・根拠はありません。
マンション管理士は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律において存在が確立されている国家資格です。
独占業務・設置義務はないものの、資格を保有することで、マンション管理に関する非常に高度な知識を有していることを証明できます。
マンション管理士が廃止されるというのは、あくまで噂でしかありません。
マンション管理士の仕事内容とは?きついって本当?
マンション管理の仕事はきついのか、仕事内容が気になる方もいるのではないでしょうか。ここからは、マンション管理士の仕事内容について詳しく解説していきます。
マンション管理士の仕事内容
マンション管理士は、管理組合の管理者またはマンションの区分所有者などの相談に応じ、助言・指導・援助を行うことを業務とする仕事です。
マンション管理士の具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- 管理規約や使用細則などの建物の管理または使用に関する区分所有者相互間のルールの策定および改定
- 長期修繕計画の策定および見直し
- 区分所有者間のトラブルへの対処
マンション管理士は、管理組合の管理者またはマンションの区分所有者などからの相談に応じ、管理規約や使用細則、長期修繕計画などの素案の作成、区分所有者間のトラブル解決に向けた予備的交渉などさまざまな仕事を担います。
ほかにも、大規模修繕工事の計画・実施、居住者の義務違反、管理費の滞納へのアドバイスなどもマンション管理士の仕事内容です。
マンション管理に関する業務を通して、管理組合の運営をさまざまな形で支援することが期待されています。
マンション管理士は住み込みの管理人とは違う
マンション管理士はよく「マンション管理人」と間違えられることがあります。
マンション管理人は中高年に人気の仕事で、マンションを管理して住民の快適な生活をサポートするのが仕事内容となります。
マンション管理人の仕事の例は、以下の通りです。
- 設備点検
- 巡回業務
- 敷地内の清掃
- 入退去時の立会
- 受付業務
- 管理会社への報告
マンション管理人の業務内容は、マンションの種類や勤務形態によっても異なります。
来訪者のための窓口があるマンションでは窓口対応もありますし、騒音や違法駐車に対しての苦情対応なども請け負うことがあるでしょう。
一方でマンション管理士は、マンション管理組合のサポート業務を行う仕事なので、日常的にマンションの住民の生活サポートを行う管理人とは異なります。
専門知識を含め、交渉力・コミュニケーション能力などのスキルも求められるのがマンション管理士の特徴といえるでしょう。
マンション管理士がきついと言われる理由
マンション管理士は、マンション住民のトラブル解決も業務に含まれます。人間関係のトラブル解決の難しさや複雑さなどから、仕事がきついと感じることもあるでしょう。
トラブルとしては次のようなものが挙げられます。
- 住民同士のケンカ
- 騒音トラブル
- 違法駐車
- 喫煙マナー
- 不適切なゴミ出し
場合によっては、住民同士のけんかを仲裁したりクレーム対応したりすることもあるでしょう。
また、マンションの管理組合との打ち合わせが夜間や土日などに入ることもあります。休日出勤、夜に仕事が入ることもあるため、体力的な面でも仕事がきついといえるでしょう。
マンション管理士の将来性とは?役に立たない?仕事がない?
先ほど、マンション管理士の仕事内容からきついとされている理由をご紹介しました。
では、マンション管理士は将来性がなく、役に立たないのでしょうか。結論から申し上げますと、マンション管理士の需要は今後も高くなります。
ここからは、マンション管理士の将来性やメリットについて詳しく解説します。
- マンション管理士は今後求められる仕事
- マンション管理士は高齢になっても生かせる資格
1つずつ見ていきましょう。
マンション管理士は今後求められる仕事
マンション管理士はますます活躍が期待される職業です。
厚生労働省の調査によると、総数は2022年末時点で日本における分譲マンションのストック総数は約694.3万戸に達しました。
2020年末は674.5万戸、2021年末は685.0万戸だったので、毎年約10万戸ずつ増加していることを示しています。
少子高齢化が進む日本では、都市部に暮らす単身者が増えています。単身者は戸建て住宅よりも集合住宅を好む傾向があるため、マンションの需要は今後も増していくでしょう。
また、マンション管理士が活躍する場となるのはマンションの大規模修繕工事です。
マンションの大規模修繕工事は12年に一度実施されるのが一般的ですが、施工会社の選定や諸手続きなどやるべきことが多く煩雑なので、専門知識を持ったマンション管理士のサポートが不可欠です。
さらに、昨今マンションにおいては、空き家問題や住民の高齢化など新たな課題も出てきています。マンションの管理をめぐる相談業務も今後増えていく可能性があるでしょう。
このように独占業務や設置義務はないものの、マンション管理士の重要性はますます増していくと考えられます。
マンション管理士は高齢になっても生かせる資格
マンション管理士は長く働ける仕事です。
マンション管理士はマンションの維持・管理に関する専門家であり、マンション管理組合のサポートを行います。基本的にはデスクワーク中心なので、体力に自信がない方でも問題なく働けるでしょう。
また、マンション管理組合は定年退職後の方が多く参加しているため、マンション管理士も人生経験がある方のほうがスムーズに業務を進められるでしょう。
特に、人とのコミュニケーションが得意で、場合によっては相手を説得したりけんかの仲裁をしたりできる方はマンション管理士に非常に適しています。
このため、60代で資格取得をする方も多く、定年後のセカンドキャリアとして選ばれる職業です。
また、年金を受給しながら活躍できる仕事を探しているなら、マンション管理士の資格は役立つでしょう。
マンション管理士よりも取得しやすい!管理業務主任者もおすすめ!
マンション管理士とは別におすすめの不動産関連の資格が管理業務主任者です。
ここからは、管理業務主任者がどういった資格なのか、難易度と合わせてご紹介します。
- 独占業務のある国家資格
- マンション管理士よりも難易度は低い
- 先に取得するなら管理業務主任者がおすすめ!
1つずつ見ていきましょう。
管理業務主任者は独占業務のある国家資格
管理業務主任者は独占業務がある国家資格です。マンション管理士と同様マンションの管理業務が主な仕事内容ですが、両者には明確な違いがあります。
マンション管理士がマンションの管理組合をサポートする役割を持つのに対し、管理業務主任者は管理会社側の担当者として管理業務を行います。
管理組合ではカバーしきれないマンション管理のマネージメントを専門的な知識を駆使してサポートするのが、管理業務主任者の仕事です。
マンション管理会社は、管理事務の委託を受けた管理組合30組合に対して1名以上の管理業務主任者を設置する義務があります。
また、管理業務主任者には4つの独占業務があります。
- 管理受託契約に関する重要事項説明
- 重要事項説明書への記名・押印
- 管理受託契約書への記名・押印
- 管理事務に関する報告
このように設置義務と独占業務があるため、管理業務主任者はマンション管理会社には欠かせない存在です。
このため、不動産業界のなかでも特にマンション管理会社への就職や転職、キャリアアップに役立つ資格といえるでしょう。
マンション管理士よりも難易度は低い
ここまでご紹介したマンション管理士と管理業務主任者は、どのくらい難易度が違うのでしょうか。
以下の表は、過去5年間の受験者数・合格者数・合格率を比較したものです。
実施年度 | 資格 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和元年度 | マンション管理士 | 12,021人 | 991人 | 8.2% |
管理業務主任者 | 15,591人 | 3,617人 | 23.2% | |
令和2年度 | マンション管理士 | 12,198人 | 1,045人 | 8.6% |
管理業務主任者 | 15,667人 | 3,739人 | 23.9% | |
令和3年度 | マンション管理士 | 12,520人 | 1,238人 | 9.9% |
管理業務主任者 | 16,538人 | 3,203人 | 19.4% | |
令和4年度 | マンション管理士 | 12,209人 | 1,402人 | 11.5% |
管理業務主任者 | 16,217人 | 3,065人 | 18.9% | |
令和5年度 | マンション管理士 | 11,158人 | 1,125人 | 10.1% |
管理業務主任者 | 14,652人 | 3,208人 | 21.9% |
表をみると、管理業務主任者の合格率のほうが、約10〜15%ほど高いことがわかります。合格者数でみても、毎年約2,000〜2,500人の差が生じているのが特徴です。
このことからも、管理業務主任者のほうが取得しやすいといえるでしょう。
ただし、管理業務主任者も難易度が簡単というわけではないため、合格するために計画的な対策が必要です。
先に取得するなら管理業務主任者がおすすめ!
マンション管理士と管理業務主任者はともにマンションの管理を扱う仕事であり、試験範囲にも多くの重複部分があります。
このため、効率よくダブル取得を目指せる資格です。
所属する会社や希望する仕事内容によってダブルライセンスの順番は異なりますが、一般的には管理業務主任者を先に取得するのがおすすめです。
マンション管理士は管理業務主任者に比べると、試験範囲が広く深い知識が問われます。
管理業務主任者は合格までに約300時間の勉強が必要ですが、マンション管理士では約500時間~700時間が必要といわれています。
効率的に学習を進めるためには、まずは試験範囲の狭い管理業務主任者の試験勉強を始めるとよいでしょう。
管理業務主任者の勉強で得た基本的な知識は、マンション管理士の勉強にも役立ちます。
また、マンション管理士と管理業務主任者の試験ではどちらかの資格を取得している場合、あとから受ける試験で5問の免除が適用とされる点も見逃せません。
難易度の高いマンション管理士試験において、5問免除は大きなメリットとなるはずです。
こういったところからも、ダブルライセンスを目指すなら管理業務主任者を先に取得することをおすすめします。
まとめ
この記事では、マンション管理士が取得をやめとけとされている原因について詳しく解説しました。
改めて、この記事でご紹介した内容をおさらいしましょう。
- 難易度の高さや独占業務のない点がやめとけとされている原因につながっている
- マンション管理士は、マンション管理組合のサポート業務を行う仕事
- 土日などの休日、夜間での仕事がある点も仕事のきつさにつながっている
- マンション管理士の需要は今後増えることが予想される
- マンション管理士よりも取得しやすい資格には管理業務主任者がある
マンション管理士を目指すなら、スタディング マンション管理士/管理業務主任者講座がおすすめです。
受験者がモチベーションを維持しながら、効率よく合格するための力を身につけられる内容になっておりますので、ぜひ受講をご検討ください。