マンション管理士は不動産業界で重宝される国家資格です。しかし、実は資格保有者だけができる独占業務はないため、役に立たないと言われることもあります。
また、同じくマンション管理の専門家である「管理業務主任者」と比較して、どちらの資格が有利なのかが気になる方も多いでしょう。
この記事では、マンション管理士の仕事内容と将来性、管理業務主任者との違いについて解説します。
マンション管理士とは?
マンション管理士について、次の2つのトピックに沿って解説します。
- マンション管理に関する専門家
- 難易度の高い国家資格
1つずつ見ていきましょう。
マンション管理に関する専門家
マンション管理士はマンションの適切な管理を支援する専門家で、主な役割は管理組合やマンションの区分所有者の相談に応じてアドバイスや指導を行うことです。
具体的には「管理規約の策定や改定」「長期修繕計画の作成」「区分所有者間のトラブル解決に向けた予備交渉」など、マンション管理に関する幅広い業務をサポートします。
マンション管理の需要の増加に伴い、マンション管理士の重要性はますます高まっているといえるでしょう。
難易度の高い国家資格
マンション管理士は、平成13年に施行されたマンション管理適正化法に基づく国家資格で、例年の試験合格率は7〜11%程度です。
宅地建物取引士や賃貸不動産経営管理士といった他の不動産関連の資格試験と比べて合格率は低いため、マンション管理士は大変難しい試験だといわれています。
試験内容は、マンション管理に関する法令や、マンションの設備・構造、実務管理に必要な会計業務など多岐にわたります。
試験範囲が幅広いため、受験生はさまざまな知識をインプットしなければなりません。幅広い知識が求められている点が高難易度の要因のひとつだと考えられます。
マンション管理士の仕事内容と独占業務
ここからは、マンション管理士の具体的な仕事内容と、独占業務の有無を解説します。
仕事内容はマンション管理組合のサポート
マンション管理士の主な仕事はマンション管理組合の運営サポートです。管理規約の策定から区分所有者間のトラブル解決まで、幅広い業務を支援します。
なかでも重要な役割は、マンションの大規模修繕計画の策定と実施です。
大規模修繕を行うには、修繕計画の立案や施行業者の選定、工事説明会の実施といった対応に加え、修繕積立金の確保といった資金計画も必要です。
これらの業務を管理組合だけで実施するのは難しいケースが多いため、マンション管理士がサポートに入り、円滑に運営します。
管理組合の負担を軽減できるように支援を行い、適切な運営・管理を実現するのがマンション管理士の役割だといえるでしょう。
特別な独占業務はない
マンション管理士は「名称独占資格」であり、独占業務はありません。
名称独占資格とは資格保有者だけがその肩書きを名乗れる資格のことで、「マンション管理士」という肩書きは正式に登録された方だけが使用できます。
独占業務はないため資格がなくてもマンション管理業務は行えますが、実務においては資格保有者の専門知識と能力が評価され、重用されるケースも多いでしょう。
信頼性や専門性の観点から、資格保有者のほうが優位に立つ場合は多いと考えられます。
マンション管理士の将来性とは?使えない、仕事がないって本当?
マンション管理士について「役に立たない」という意見もありますが、実際はマンション管理士の需要は高ると考えられます。
マンション管理士が役に立たないといわれる理由
マンション管理士は「役に立たない」といわれることがあり、その理由には次の4つが考えられます。
- 独占業務がない
- 資格だけではなく実務経験も重要である
- 高難易度の資格だが平均年収は高くない
- 廃止されるという噂がある
マンション管理士に独占業務はありません。
さらに、マンション管理は実務経験が重要で、未経験者が資格を取得しただけで即実践するのは難しいでしょう。
マンション管理のノウハウは、学習で得た知識だけでなく実務でも身につける必要があります。
また、マンション管理士の平均年収は400万円前後といわれており、高水準とはいえません。
ただし、この統計には業務量を抑えている年金受給者も含まれており、全体の平均年収は押し下げられていると考えられます。働き方によっては、平均年収を上回ることも十分に可能でしょう。
資格廃止の噂に関しては、現在そのような公表はありません。
マンション管理士は役に立たないといわれることがありますが、その専門知識は現場では重宝され、需要のある資格だと考えられます。
マンション管理士の仕事の内容・年収・将来性は?
マンション管理士の資格取得を目指す中で、気になるのが年収と将来性でしょう。一般的にマンション管理士の平均年収は飛び抜けて高いとは言えないものの、ダブルライセ…
マンション管理士の資格取得を目指す中で、気になるのが年収と将…
マンションと居住者の高齢化によってマンション管理士需要は増加!
日本では現在10人に1人が集合住宅に居住しているといわれており、分譲マンションのストック数は増加傾向にあります。
そのような状況下で「マンションの老朽化」と「居住者の高齢化」が進んでおり、マンション管理士の需要は増加すると考えられます。
老朽化したマンションの中でも、とくに築年数30〜40年のマンションは大規模修繕の必要があり、修繕計画の策定には専門知識をもつマンション管理士の支援が不可欠です。
また、分譲マンション居住者の高齢化も進行しており、管理組合の人手不足といった問題が顕在化しています。
このような状況から、マンション管理士の役割はますます重要になると予想されます。マンションの適切な管理を支援する専門家として、需要は今後さらに拡大していくでしょう。
「マンション管理計画認定制度」によってマンション管理士への依頼は増える!
また、2022年に開始した「マンション管理計画認定制度」によって、マンション管理士への業務依頼はますます増加すると予想されます。
マンション管理計画認定制度とは「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」によって創設された認定制度です。
認定されれば適正に管理されている証明となり、リフォーム融資の金利引下げや、固定資産税の減額といったメリットを享受できます。
認定の判断基準に含まれているのは、長期修繕計画の作成や修繕積立金の積立状況、管理組合の運営状況といったさまざまな項目です。
これらの基準を満たしているかを判定するのがマンション管理士で、事実上の独占業務ともいわれています。
マンション管理計画認定制度によって多くのマンションが認定取得を目指すようになれば、それに伴ってマンション管理士への相談や依頼は増加するでしょう。
管理業務主任者とは?マンション管理士とは何が違う?
マンション管理に関わる国家資格には、マンション管理士の他に「管理業務主任者」があります。両者の違いを3つの項目に沿って解説します。
- 管理業務主任者の仕事内容
- マンション管理士との業務内容の違い
- 資格取得の難易度の違い
1つずつ見ていきましょう。
管理業務主任者の仕事内容
管理業務主任者は、マンション管理会社に所属して管理組合などに「管理委託契約に関する重要事項の説明」や「管理事務報告」を行います。
マンション管理会社は、事務所ごとに30管理組合に1人以上の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければなりません。
管理業務主任者の主な業務内容は、次のとおりです。
- 管理委託契約に関する重要事項の説明
- 重要事項説明書への記名押印
- 管理委託契約書への記名押印
- 管理事務の処理状況の報告
これらの4つの業務は、管理業務主任者の独占業務として認められています。
マンション管理士との業務内容の違い
マンション管理士と管理業務主任者はともにマンション管理に関わる専門家ですが、立場と業務内容は異なります。
管理業務主任者は不動産管理会社に所属し、会社側の立場でマンション管理をサポートします。独占業務があることも、管理業務主任者の大きな特徴といえるでしょう。
一方、マンション管理士は管理組合の立場から運営を直接サポートし、相談に応じて管理組合への助言や指導を行います。
管理規約の作成・改正、長期修繕計画の策定、運営に関するアドバイスが主な業務です。
両者はマンション管理という同じ分野で業務を行いますが、管理業務主任者は不動産管理会社側、マンション管理士はマンション管理組合側と、立場は明確に異なっているといえます。
資格取得の難易度の違い
マンション管理士と管理業務主任者は、試験内容が似ているためセットで扱われることが多いものの、両資格の取得難易度は異なります。
試験の難易度は、マンション管理士のほうが管理業務主任者よりも高いといえるでしょう。
マンション管理士試験の合格率は約7〜11%と厳しく、試験では専門的な知識が幅広く求められます。
一方、管理業務主任者試験の合格率は約20%台で、比較的取得しやすいといえます。
合格に必要な勉強時間も異なり、マンション管理士は500時間が目安であるため、長期的かつ計画的な学習が必要です。
一方の管理業務主任者は300時間といわれており、必要な学習時間の違いからも両資格の難易度に差があることがわかります。
まとめ
当記事では、マンション管理士の仕事内容や独占業務の有無、管理業務主任者との違いなどを紹介しました。
ポイントをおさらいしましょう。
- マンション管理士は名称独占資格で、独占業務はない
- 主な業務は管理規約の策定や長期修繕計画の作成、区分所有者間のトラブル解決など多岐にわたる
- マンションの老朽化と居住者の高齢化によりマンション管理士の需要は増加すると予想される
- 「マンション管理計画認定制度」の創設により、マンション管理士への依頼は増える見込みである
- 管理業務主任者とマンション管理士は業務を行う立場が異なり、取得難易度はマンション管理士試験のほうが高い
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