将来性のある国家資格として注目を集めている「マンション管理士」。
とくに中高年からの人気が高く、副業やセカンドキャリアを見据えて資格取得を目指す方も多いようです。
しかし、求人数や年収、働き方などが気になるという方もいるでしょう。
この記事では、マンション管理士の副業について、資格保有者の働き方や注意すべきことを解説します。
マンション管理士とは?
マンション管理士はその名の通り、マンション管理の専門家で、マンション管理適正化法に基づく国家資格です。
マンションの管理組合や購入者である区分所有者に対し、専門的な知識と経験を生かしてアドバイスや指導などコンサルティング業務を行います。
マンション管理士は国家資格
マンション管理士は、試験に合格後、指定機関に申請し登録を受けることで取得できる国家資格です。
試験は年に1度、例年11月第4日曜日に行われ、2時間・50四肢択一形式で実施されます。
マンションに関する法令や管理組合の運営・会計、大規模修繕などの建築・設備関連など試験範囲は幅広く、総合的な知識が求められる試験です。
近年の合格率は10%前後と他の不動産関連資格と比較しても低い水準で、試験の難易度は高いといえます。
試験合格後に登録を済ませると、マンション管理士の名称で業務を行うことができるようになります。
5年に1度法定講習を受けることが義務付けられており、違反すると免許の停止・取り消し処分になるので注意が必要です。
マンション管理の専門家
マンション管理士は適切なマンション管理に向けて、住民側の立場でアドバイスや指導を行うなどしてサポートをします。
その業務内容は法令関連からトラブル仲裁まで多岐にわたります。
主な仕事内容は次の通りです。
- 管理組合や区分所有者に対する相談業務
- 管理組合が担う組合の会計処理や管理委託契約など、専門知識を必要とする業務へのアドバイス
- 管理規約(マンションの共用部やその使用方法、禁止事項、管理組合役員の選定についてなど、マンション管理のルールを定めるもの)の策定や改訂時の精査
- マンションの安全を守り資産価値を保つうえで重要な修繕計画の策定や業者選定のサポート
- 住民トラブル発生時における、第三者の立場からの仲裁・交渉
マンション管理士の働き方とは?副業はできる?
マンション管理士の働き方をイメージしようとしても、いつどこでどのように、誰と一緒に働くのか、あまりピンと来ない方も多いかもしれません。
そこで、マンション管理士の働き方全般や副業の選択肢、セカンドキャリアについてもご紹介します。
資格取得者のうち76%はマンション管理士としての仕事をしていない
実は資格取得者のうち76%は、マンション管理士としての仕事をしていないというデータがあります。
これはマンション管理士を目指した動機が「自宅マンションの管理組合で役員になったこと」という方が一定数いるからです。
マンション管理センターの調査によると、自宅のマンション管理組合や不動産業の仕事をきっかけに知識を深めるためにマンション管理士資格を取得したという人が多数含まれています。
結果として、マンション管理士として収入を得ている人は資格取得者全体で見ると少数で、かつ本業でマンション管理士として活動している人も5%程度しかいません。
【参考】公益財団法人マンション管理センター「マンション管理士の業務についてのアンケート調査結果の概要」
マンション管理士として副業している人の割合
前述の通り、マンション管理士として報酬を得て業務を行っている人の数はあまり多くありません。
その中で副業でマンション管理士の業務を行っている人の割合をみると、資格取得者全体のうちの8%ほどです。
以前活動していたが今はしていない層8%を合わせても最大で16%と、マンション専門士の資格を得ても副業を始める人は決して多数派ではないようです。
副業で得ている年収
マンション管理士として副業している人の年収については、副業している人の59%が年収100万円未満で、年収100万円以上400万円未満が13%です。
活動をしていても報酬を得たことがない人も24%いるため、合わせると95%が年収400万円未満、さらに83%が年収100万円未満の分類に含まれます。
一方本業の場合は、年収400万円以上の層も2割いて、平均年収も高くなります。
定年後のセカンドキャリアに資格を生かしている人も多い
マンション管理士試験の受験者は40代〜50代が約半数で、60代以上も25%以上と平均年齢が高めの傾向です。
また、試験合格・登録後、実際にマンション管理士として本業または副業を行っている人を年齢別に見ると、7割が60~79歳というアンケート結果も発表されています。
定年後のセカンドキャリアに資格を活用し、年金を受給する年齢になっても活動している人が多いのでしょう。
特別に体力を使う業務もないため、シニアになっても長く続けられる仕事であることが魅力となっているようです。
マンション管理士の仕事の探し方とは?アルバイト求人はある?
副業として、また定年後のセカンドキャリアとしてマンション管理士の活動を始めるとき、最初はどこでどうやって仕事を探すのか、その方法も気になるポイントです。
マンション管理士の仕事の探し方、アルバイト求人について見ていきましょう。
アルバイトの求人はほとんどない
求人サイトなどで「マンション管理士」を実際に検索してみると、出てくる求人はほとんど「マンションの管理人業務」であり、マンション管理士としてのアルバイト求人はほぼ出てきません。
求人は管理会社や不動産会社が物件の管理業務を行う人材を求めていることがほとんどで、住民側の立場でサポートするマンション管理士の業務ではありません。
マンション管理士の仕事は管理組合や区分所有者など住民と信頼関係を構築し、長期間責任をもって行う必要があるため、アルバイトの求人では出てこないと考えられます。
紹介によって受注することが多い
ではどうやって仕事を受注するかというと、まず筆頭に挙げられるのが所属する団体や関係者から紹介してもらうパターンです。
他にはマンション管理に関する相談会やセミナーの講師を引き受けて各管理組合との縁が生まれ、それがきっかけとなって管理業務の受注につながった、というケースも多くあります。
マンション管理士を本業としている人の場合は、自身のホームページなどでの宣伝に力を入れたり、管理組合へ直接訪問して営業を行うなどしたりして受注獲得を目指すこともできます。
いずれにせよじっと待っていても顧客は増えないので、自分から動くことが重要で、人脈や営業力などを駆使して積極的に顧客開拓に取り組まなければなりません。
マンション管理士の副業について注意すべきこと
ここまで、マンション管理士として副業をする場合の働き方や年収、仕事の探し方などについてご紹介してきました。
その他にもマンション管理士の副業について、事前に確認した方がいいポイントがいくつかあります。
- 社会人の勉強は効率を重視しよう
- 受注は実務経験がないと難しい
- 働く時間や曜日を確認しよう
1つずつ見ていきましょう。
社会人が資格取得するなら効率重視で勉強しよう
マンション管理士の資格試験は、試験範囲がマンション関連の法令から管理組合の運営・会計、建築・設備など幅広い分野が対象となっているため難易度が高いという特徴があります。
まったく関連知識や経験のない初学者の場合は、合格するために500時間程度の勉強時間が必要とされています。
しかし時間がない社会人の場合、まとまった勉強時間を確保することが難しい人も多いでしょう。そのような環境で合格を目指すには、効率重視で勉強を進めることが必須です。
具体的な方法は2つあります。
- 区分所有法、標準管理規約など配点の高い・出題数の多い分野に注力する
- 場所を選ばないスマートフォンなどのデジタル機器を駆使して、スキマ時間を徹底的に活用する
ある程度知識をインプットしたあとは、ひたすら過去問でアウトプットしつつ理解を深めます。
実務経験がないと受注が難しい職種
実務経験がないとなかなか受注が難しい職種であることにも注意が必要です。
大切な資産であるマンションについて相談したいと考えたとき、実務経験豊富な人に頼みたいと考えるのが自然だからです。
未経験の場合、まずは自分が住むマンションの管理組合役員を引き受けてみるのも良いでしょう。
専門家としての知見を生かして管理業務の経験を重ねたり、管理組合向けの無料相談会に参加したりと、まずは収入にならなくても実績を積むところから始める工夫が求められます。
働く時間や曜日を確認しよう
マンション管理組合の会合は、平日働いている人の都合に合わせて土曜日・日曜日に行われることが多くなります。
本業が不動産業界の場合、平日が休みで土日は出勤日という勤務パターンで土日に時間を確保するのが難しいケースもあります。
副業でマンション管理士として活動する場合は、あくまで本業に支障が出ない範囲で行うことが重要ですので、働く時間や曜日を確認し、自分のスケジュールに合ったものを選択しましょう。
顧客との契約は年単位で行われるパターンが多く、契約更新月は業務が集中しやすくなるため、本業の繁忙期との調整も必要です。
まとめ
この記事では、マンション管理の専門家、国家資格・マンション管理士の仕事内容をご紹介し、副業やシニアのセカンドキャリアとの相性についてみてきました。
- マンション管理士の副業で得ている年収は約6割が100万円未満
- 資格取得者の年齢層が高く、定年退職後のセカンドキャリアとして、年金を受給しながら活動する人も
- 仕事は紹介や、管理組合向けの相談会・セミナーを通じて受注するパターンが多い
長期的に責任を持って関わる仕事ゆえにアルバイトの求人がほとんどないのが現状ですが、裏を返せば、クライアントと信頼関係を築けば長く活動することが可能です。
まずは無料相談などで着実に実績を作って、副業につなげていきましょう。