実務経験の豊富さには自信があります。クライアントの相談に乗るなど、すぐにでもコンサルティングができるのではないかと思っているのですが、実際にはどの程度のレベルであれば、コンサルタントになることが可能でしょうか? |
コンサルタントには実務経験だけでは不十分です。明確な商品とコンサルタントとしての見識とスキルが必要です。自身の専門分野において「あるべき姿」を描けるかどうかが基準です。 |
「あるべき姿」を描くこと
実務のベテランであれば、特に「あるべき姿」を意識しなくても、日常業務として仕事に取り組めば済むでしょう。ですが、コンサルタントとなれば、常に「あるべき姿」を意識した上で、「あるべき姿」の実現へ向けてクライアントを導いていくことが必要です。
豊富な実務経験をお持ちでしたら、ご自身の専門分野における「あるべき姿」を描き、どうすればそれを実現できるかについて、理論や方法論を体系的に構築するところまで取り組みましょう。
コンサルタントに求められるのは、場当たり的な相談対応ではなく、クライアントの抱える問題や課題の本質を掘り下げた上で、論理的かつ根本的に解決することだということを肝に銘じておいてください。
他のビジネスと同様に、明確な「商品」が必要
クライアントの相談に対応することは、コンサルタントの仕事の一側面でしかありません。
コンサルタントとして独立して食べていくには、ノウハウを体系的に提供・指導し、クライアントと長期的な関係を築いていく(=長期契約を結ぶなど)必要があります。
そのように長期的に提供するサービスが、いわゆるコンサルタントの「商品」です。
コンサルタントは占い師ではないのですから、1時間当たりいくらといった相談料のみで生計を立てるというケースは、ほとんどあり得ません。
コンサルタントを目指す方は、どのようなクライアントをターゲットするかは思いついても、どのようなコンサルティング商品を提供すればよいかについて十分にアイデアを持っていないことが多いです。コンサルタントになるには、コンサルティングの商品作りをしっかりとやる必要があります。
「自分がやればできる」では、コンサルタント失格
コンサルタントの仕事で特徴的なのは、クライアントを介して成果を実現するということです。
基本的に、コンサルタントは「クライアントの作業の代行」を請負いません。ビジネスモデルに「代行業」を加えることは可能ですが、少なくともそれはコンサルティングではありません。
実務経験が豊富な方は、コンサルティングの現場で「自分がやれば簡単にできるのになぁ」と思うことが多いようですが、手本を示すという目的がある場合は別として、自分で作業を代行してしまっては、コンサルタントとして失格です。
豊富な実務経験を踏まえた上で、クライアントが自分たちでできるようにしてあげるような指導力・説明力などのスキルが求められます。
すべて「見える化」し、合意を得ながら進める
実務家として現場にいるのであれば、やるべきことを頭の中に描き、実際に自分で作業に取り組めばいろいろな成果を上げることができるでしょう。ですが、「自分が作業を代行しない」のがコンサルタントです。クライアントに行動させる必要があります。
そのために大切なのは、クライアントがどのような行動をすべきなのかを示すツールです。具体的には、計画書やマニュアル等の文書により「見える化」をし、クライアントの納得・合意を得ながらコンサルティングを進めていくことです。実務でやるのと、コンサルタントとして関わるのでは、これも大きく異なる点となります。
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コンサルティングの「物差し」を持つ
コンサルタントが描く「あるべき姿」は、コンサルティングをしていく上での「物差し」の役目を果たします。
例えば、コンサルティングの標準的な商品として「診断」がありますが、「あるべき姿」すなわち「物差し」があるからこそ、「診断」が可能になるわけです。コンサルティングを医療に例えた場合、標準血圧値を知らなければ、血圧が180だと聞いても正常なのか異常なのかがわからないのと同じです。
以上のように、コンサルタントを目指すレベルの実務経験を有しているかは、クライアントを指導するにあたっての「物差し」となる「あるべき姿」を描けるかどうか、が基本だと考えてください。