意匠とは、物品あるいは物品の部分における形状・模様・色彩に関するデザインを言います。見た目の美しさの他、使い心地や利便性を担保する機能性も重視されます。
意匠は、その模様・デザイン・配置について誰でも識別することができると同時に、簡単に模倣も可能です。独自に編み出されたデザインも、健全な市場原理や競争環境が整備されていなければ、発案者の利益を損ねるばかりか、産業の発展を阻害してしまうことになりかねません。意匠を財産として保護し、適切に利用されるための環境を整えることで、発案者の利益を守り、意匠創作を奨励する狙いがあります。
意匠法では、以下の四つの要件を満たすものを意匠として認定することにしています。
意匠は、市場に流通する物品でなければなりません。一定期間、その形態を維持できる定形性の確保も必要です。液体洗剤のような流動性のある物品は、定形性を欠くため意匠としての要件を満たしません。また、土地や建物などの不動産も除外対象で、動産であることが要件です。
意匠は、外から見てはっきりとかたちが分かる「形状」、形状の表面にあしらわれた「模様」、着色によってデザインされた「色彩」といった要素の結合で形成されています。これら三つのうち、形状を有しない物品は存在することができないため、形状は必須要素です。模様や色彩を有しない物品は存在することができるため、模様や色彩は任意の要素とされています。
出願された意匠は、肉眼で認識されるものでなければなりません。粒子や粉状のもの、また機械製品の内部に隠されたシステムや構造物は、視覚性が確保できないため、意匠に該当しません。
意匠は、多くの人々がそれを見て美しいと感じる、美感を起こさせるものであることが条件です。意匠法では、それを美感性があるものとしています。何も絵画や彫刻などの高尚な芸術品である必要はなく、美感を喚起させることができれば意匠と見なされます。
登録意匠は、すでに公表されている形状・色彩・模様と同一もしくは類似するものであってはいけません。意匠法では、意匠の同一性・類似性・非類似性を見極めるための判断基準を設けています。新規に登録される意匠には独自性が求められるだけに、非類似性の強い意匠ほど審査に通りやすくなります。
また、いくら新しくて過去に類似品がなかったとしても、簡単に創作できるものは対象外です。ただの星形の石けんや、太陽のかたちを模したボールなどは意匠として認められません。
意匠には、「工業的に簡単に生産・利用できる要素」も備える必要があります。工業的技術が条件であることから、農業的な手段や自然現象によって生み出されるものは対象外です。壺や茶碗など、職人の手で作り上げられた作品などは、工業的手段によって同一作品を大量に生産することはできないため、これも意匠として登録するには不適格です。
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