
保育士の給料は安い、見合わないという声を聞いたことはありませんか。
保育士は社会的に需要の高い仕事の割に、給料が低いのが問題視されていましたが、近年はその状況が改善されつつあります。
この記事では保育士の給料や年収をさまざまな角度で解説します。
保育士の資格取得や就職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
筆記・実技試験の対策も
スマホひとつで
スタディング 保育士講座
保育士の給料・平均年収
令和5年賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は388万5,000円です。内訳は下記のとおりです。
きまって支給する現金給与額(≒給料) | 26万4,400円 |
年間賞与その他の特別給与額 | 71万2,200円 |
一方で、一般労働者の平均賃金は31万8,300円なので、比較すると保育士の給料はやや低い水準であることがわかります。
なお上記の平均年収は、12カ月分の給料に賞与などの給与額を足した数値になります。
【経験年数別】保育士の給料・平均年収
経験年数別の保育士の給料や平均年収は、下記の表のとおりです。
▼経験年数別の保育士の給料・平均年収
経験年収 | 1カ月の給料の平均 | 賞与などの平均 | 平均年収 |
---|---|---|---|
0年 | 21万8,400円 | 4万1,000円 | 266万1,800円 |
1〜4年 | 23万7,200円 | 61万1,600円 | 345万8,000円 |
5〜9年 | 25万4,800円 | 66万1,100円 | 371万8,700円 |
10〜14年 | 26万4,400円 | 73万4,400円 | 390万7,200円 |
15年以上 | 30万4,000円 | 98万9,300円 | 463万7,300円 |
経験年数が長くなると保育士の給料や平均年収も高くなる傾向があります。
経験年数が15年以上になると、1カ月あたりの給料は30万円を超え、平均年収も400万円台後半と最も高くなります。
【役職別】保育士の給料・平均年収
役職別の保育士の給料は下記の表のとおりです。
▼役職別の保育士の給料
役職 | 私立園の平均給与月額 | 公立園の平均給与月額 | ||
---|---|---|---|---|
常勤 | 非常勤 | 常勤 | 非常勤 | |
施設長 | 56万5,895円 | 53万6,146円 | 63万2,982円 | 58万7,963円 |
主任保育士 | 42万2,966円 | 34万4,103円 | 56万1,725円 | 25万7,531円 |
保育士 | 30万1,823円 | 18万7,816円 | 30万3,113円 | 16万2,859円 |
保育補助者(無資格) | 22万3,584円 | 16万8,561円 | 14万8,720円 | 14万9,238円 |
※給与月額は賞与込の金額
保育士の給料は経験年数が長く、役職が上がっていくほど高くなっていきます。
また、上記の月給をもとに年収換算すると、下記の表のとおりです。
▼役職別の保育士の平均年収
役職 | 私立保育園の平均年収 | 公立保育園の平均年収 | ||
---|---|---|---|---|
常勤 | 非常勤 | 常勤 | 非常勤 | |
施設長 | 679万740円 | 643万3,752円 | 759万5,784円 | 705万5,556円 |
主任保育士 | 507万5,592円 | 412万9,236円 | 674万700円 | 309万372円 |
保育士 | 362万1,876円 | 225万3,792円 | 363万7,356円 | 195万4,308円 |
保育補助者(無資格) | 268万3,008円 | 202万2,732円 | 178万4,640円 | 179万856円 |
令和4年分民間給与実態統計調によると給与所得者の平均年収は458万円のため、常勤の主任保育士以上の役職になると、国内の平均年収を超える傾向があります。
【地域別】保育士の給料・平均年収
都道府県別の保育士の給料や平均年収は、下記の表のとおりです。
▼都道府県別保育士の給料・平均年収
地域 | 1カ月あたりの給料 | 平均年収 |
---|---|---|
北海道 | 19.1~22.5万円 | 360.8万円 |
青森県 | 17.5~21万円 | 317.7万円 |
岩手県 | 16.9~20.2万円 | 361.9万円 |
宮城県 | 18.7~22.7万円 | 391.9万円 |
秋田県 | 16.7~21.6万円 | 334万円 |
山形県 | 17.5~22.4万円 | 310.3万円 |
福島県 | 17.8~21.1万円 | 366.5万円 |
茨城県 | 19.9~23.7万円 | 372.4万円 |
栃木県 | 21.7~26.7万円 | 367.6万円 |
群馬県 | 18.4~22.6万円 | 415.1万円 |
埼玉県 | 21.3~25.5万円 | 377.9万円 |
千葉県 | 22.2~27.1万円 | 388.2万円 |
東京都 | 22.2~26.1万円 | 453.5万円 |
神奈川県 | 21.6~26.4万円 | 416.7万円 |
新潟県 | 17.9~21.7万円 | 344.3万円 |
富山県 | 18.3~21.9万円 | 370.5万円 |
石川県 | 18.2~22.8万円 | 346.7万円 |
福井県 | 18~22.4万円 | 380.9万円 |
山梨県 | 18.9~23.1万円 | 339.5万円 |
長野県 | 18.2~23万円 | 390.1万円 |
岐阜県 | 19.2~23.7万円 | 324.6万円 |
静岡県 | 19~23.6万円 | 397.3万円 |
愛知県 | 20.6~26.7万円 | 395.1万円 |
三重県 | 18.9~23.2万円 | 339.8万円 |
滋賀県 | 19.3~24.1万円 | 369.1万円 |
京都府 | 19.6~23.1万円 | 452.8万円 |
大阪府 | 20.5~24.3万円 | 428万円 |
兵庫県 | 20.2~23.9万円 | 410.6万円 |
奈良県 | 19.8~23.3万円 | 383.6万円 |
和歌山県 | 18.9~22万円 | 449.9万円 |
鳥取県 | 18.8~23万円 | 358.1万円 |
島根県 | 17.5~20.7万円 | 352.7万円 |
岡山県 | 19~22.4万円 | 350.9万円 |
広島県 | 19.7~21.6万円 | 452.8万円 |
山口県 | 18.2~21.3万円 | 395.1万円 |
徳島県 | 18.4~22万円 | 357.4万円 |
香川県 | 18.3~22.2万円 | 358.9万円 |
愛媛県 | 18.1~22.8万円 | 373.9万円 |
高知県 | 17.2~21.4万円 | 370.6万円 |
福岡県 | 19.6~24万円 | 391.4万円 |
佐賀県 | 18~21万円 | 380万円 |
長崎県 | 18.6~21.7万円 | 370.8万円 |
熊本県 | 18.4~22万円 | 379.9万円 |
大分県 | 18.7~22.6万円 | 341.3万円 |
宮崎県 | 18.1~21.1万円 | 386.4万円 |
鹿児島県 | 18.1~22.2万円 | 326.8万円 |
沖縄県 | 18.9~22.7万円 | 340.3万円 |
都道府県別に比較すると、都心部ほど保育士の給料や平均年収が高くなる傾向があります。
なかでも東京都や京都府、広島県は保育士の平均年収が450万円越えと高水準です。
【男女別】保育士の給料・平均年収
保育士の給料や平均年収を男女別に見ると、下記の表のようになります。
▼男女別の保育士の給料・平均年収
給料の平均 | 賞与などの平均 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
男性 | 30万6,600円 | 80万6,000円 | 448万5,200円 |
女性 | 26万8,900円 | 70万5,500円 | 393万2,300円 |
男女別の給料や平均年収を比較すると、男性の方がやや高い傾向があります。
その理由は男性保育士の数がそもそも少なく、役職についている方が多いことが考えられるでしょう。
実際のところ、令和5年賃金構造基本統計調査で調査の対象になった男性保育士の数は1,816人なのに対し、女性保育士の数は25,599人とかなりの差があります。
【職場の規模別】保育士の給料・平均年収
職場の規模別(保育園の乳幼児の定員区分別)の保育士の給料・平均年収は下記の表のとおりです。
▼職場の規模別の保育士の給料・平均年収
定員区分 | 私立・常勤保育士 | 公立・常勤保育士 | ||
---|---|---|---|---|
平均給与月額 | 平均年収 | 平均給与月額 | 平均年収 | |
40名以下 | 28万5,430円 | 324万5,160円 | 27万6,647円 | 331万9,764円 |
41〜90名 | 29万6,006円 | 355万2,072円 | 29万972円 | 349万1,664円 |
91〜120名 | 30万6,249円 | 367万5,528円 | 32万8,507円 | 394万2,084円 |
121〜150名 | 30万4,175円 | 365万100円 | 30万4,012円 | 364万8,144円 |
151名以上 | 31万5,430円 | 378万5,160円 | 29万5,173円 | 354万2,076円 |
※給与月額は賞与込の金額
※年収は給与月額×12カ月の数値
私立保育園に務める保育士の給料は、園の規模が大きくなるにつれて高くなる傾向があります。
一方で公立の保育園は、園の規模は保育士の給料に影響していないようです。
保育園と幼稚園の給料・平均年収
ここでは、保育園で働く保育士と幼稚園で働く教諭の給料を比較します。
私立・常勤 | 公立・常勤 | |||
---|---|---|---|---|
平均給与月額 | 平均年収 | 平均給与月額 | 平均年収 | |
保育士 | 30万1,823円 | 362万1,876円 | 30万3,113円 | 363万7,356円 |
幼稚園教諭 | 28万7,492円 | 344万9,904円 | 37万8,356円 | 454万272円 |
※給与月額は賞与込み
比較すると私立園に勤務する場合は保育士の方が、給料が高く、公立園に勤務する場合は幼稚園教諭の方が、給料が高い傾向があるとわかります。
いずれも役職に就くと、給料や年収は上がっていきます。
保育士の給料が安いのは当たり前?低い理由とは
先ほどもお伝えしましたが、給与所得者の平均年収が458万円なのに対して、保育士の平均年収は388万5,000円です。
国は保育士の状況を鑑みて処遇改善に取り組んでいますが、依然として国内の給与所得者の平均値よりも低いのが現状です。
その理由を見ていきましょう。
保育園の財源に限りがある
公務員の保育士の給料は、地方公務員として給与が査定される一方で、民間の保育園に勤める保育士の給料は運営会社が決定します。
民間保育園の収入源は大きく分けて、公費と保護者が支払う保育料の2つです。
そこから運営費用を差し引いた金額が保育士の給料に充てられますが、公費や保護者が支払う保育料は保育園側が自由に決められるわけではありません。
公費は子供の人数に応じて決められており、税金で賄う以上十分に利益が出るほどの金額は与えられていません。
また、保育料は自治体のルールに則って決定します。
このような制度上、保育園の財源には限りがあり、保育士に十分な人件費を割けるほど潤っていないのです。
保育士の重要性が理解されていない
保育士の重要性があまり理解されていなかったことも、保育士の給料が低い理由の1つに考えられます。
子どものお世話をするという仕事内容により、子育ての延長のように捉えられ、かつてはその専門性が重要視されていませんでした。
しかし、最近は保育士の社会貢献度の高さから、処遇改善の取り組みが国をあげて行われており、給料は引き上げられつつあります。
2022年2月から収入を3%程度引き上げる措置が実施された他、自治体によっては保育士に助成金を支給する地域もあります。
公立保育園と私立保育園はどっちが給料が高い?
公立保育園と私立保育園の保育士の給与月額は、下記のように大きな差はありません。
公立保育園 | 30万3,113円 |
私立保育園 | 30万1,823円 |
保育内容自体も大きく差があるわけではありませんが、ここでは公立保育園と私立保育園のそれぞれの特徴を解説します。
公立保育園の特徴
公立保育園は地方自治体が運営している施設で、正規雇用で働く保育士は地方公務員です。
そのため、公務員特有の安定した職場環境や福利厚生、手当などが魅力です。
また、年功序列の風潮が今も残っており、勤務年数を重ねると給料が上がる傾向があります。
退職金制度もあるため、長く働けば働くほど公立保育園で働くメリットは大きくなるでしょう。
私立保育園の特徴
私立保育園は、社会福祉法人や学校法人が運営する施設です。
園によって運営方針が異なり、教育を重視する保育園もあれば、のびのびと過ごすことを重要視する保育園もあり、保育士に求められる方針も異なります。
また、保育園によって給料や待遇にも差があるのが特徴です。
ボーナスや退職金、その他手当などの福利厚生は、働く前に各施設に確認する必要があります。
以上から私立保育園で勤務する場合は給料や待遇はもちろんのこと、園の雰囲気や運営方針なども事前にチェックしておいた方がいいでしょう。
今後、保育士の給料・年収は上がる?
保育士の給料は、年々増加傾向にあります。
保育士の待遇改善に向けた取り組みとして実施されている処遇改善加算制度が、大きな要因です。
この制度により、保育士の基本給が引き上げられ、手当も充実しています。
また、政府は保育士の重要性を認識し、さらなる給与アップを目指した施策を進めています。
具体的にはキャリアアップ支援が強化され、キャリアアップ研修を受講して技能を習得すれば、月額5,000円や4万円の処遇改善が行われます。
このような取り組みにより、今後も保育士の給料・年収は向上することが期待されます。
今後の保育業界の発展と保育士の需要の高まりと共に、保育士の待遇もますます改善されるでしょう。
保育士の給料を上げる4つの方法
保育士の給料を上げるためには、さまざまな方法があります。
保育士は社会にとって重要な役割を果たしており、その待遇向上が求められています。
ここでは、保育士の給料を上げるための4つの具体的な方法について解説します。
- 職場での昇進・昇格を目指す
- 公立保育所への転職を目指す
- キャリアアップ研修を受ける
- 手当が支給される自治体で働く
1つずつ解説します。
職場での昇進・昇格を目指す
保育士としてのキャリアアップを目指す1つの方法は、職場での昇進や昇格を目指すことです。
先ほども紹介したように、主任保育士や施設長といった役職に就くと、月々の給料が数万円単位で上がることがあります。
また、役職に就くと管理職手当や役職手当といった各種手当が支給されるケースも多く、トータルの収入が増える要因となります。
保育士としての収入を上げていきたい方は職場での信頼を積み重ね、必要な資格やスキルの取得を目指しましょう。
公立保育所への転職を目指す
保育士の給料を上げるもう1つの方法は、公立保育所への転職を目指すことです。
公立保育所の保育士は自治体の職員として雇用されるため、給料が安定しており、福利厚生も充実しています。
年功序列の風潮も残っているため、経験年数とともに給料も高くなっていくでしょう。
特に地方自治体によっては、初任給が高めに設定されている場合があり、経験を積んだ保育士にとっても有利な転職先となります。
公立保育所への転職を考える際は、自治体ごとの募集要項や条件をしっかりと確認し、準備を進めることが重要です。
キャリアアップ研修を受ける
保育士等キャリアアップ研修を受講すると、月額最大で4万円の手当が支給されます。
令和5年度以降に段階的に研修修了が必須化されるため、キャリアアップしたい保育士にとって避けては通れないものです。
保育士等キャリアアップ研修では、保育の専門知識やリーダーシップスキルを学び、実践的な能力を高められます。
また、これまで経験年数だけで昇進や昇給を判断してきた施設に対して、是正を求める手立てになるでしょう。
手当が支給される自治体で働く
自治体によっては、保育士に対して特別な手当を支給している地域があります。
手当を受けると、基本給に上乗せして収入を増やすことが可能です。
例えば東京都江戸川区では条件を満たせば、下記のような補助を受けられます。
- 月額8万2,000円の家賃補助
- 月額最大5万円の支給
- 5年ごとの節目に10万円の報奨金
このような手当を利用して生活費を軽減すれば、実質的な収入を増やせます。
手当が充実している自治体を選んで働くと、保育士としての収入を増やせるでしょう。
まとめ
保育士の給料や年収についてさまざまな角度でお伝えしました。
- 保育士の給料平均は26万4,400円
- 保育士の平均年収は388万5,000円
- 経験年数や役職に応じて給料が高くなる傾向がある
- 保育士の給料は地域によって差がある
- 私立と公立の保育士の給料に大きな差はない
保育士の給料は低いという声もありますが、最近は国が保育士の処遇改善に取り組み、状況が改善されつつあります。
保育士は社会的に需要の高く、今後も高い需要が見込める職業です。
保育士の資格は保育士試験に合格する、もしくは学校に通うことで取得可能です。
スタディングの保育士講座なら時間を有効に使いながら、試験に合格するための学習を効率よく進められます。
保育士資格取得を目指している方は、ぜひご検討ください。