保育士になるには?資格の取り方
保育士になるには、国家資格を取得する必要があります。
保育士の国家資格を取得する方法は、学校に通う方法と試験に合格する方法の2通りです。
ここでは、保育士資格の取り方を紹介します。
保育士養成学校に通う
専門学校や短期大学、大学などの厚生労働省が指定する保育士養成学校に進学して卒業すれば、卒業と同時に保育士資格を取得できます。
ただし、学校の種類によって、保育士資格取得までにかかる期間は異なります。
なるべく早く保育士資格を取得して働きたい方は、約2年で取得できる専門学校や短期大学を選ぶと良いでしょう。
一方で保育士の仕事をより深く学びたい方は、大学への進学がおすすめです。
保育士養成学校は就職サポートも行っているところが多いので、卒業後の進路も見つかりやすいでしょう。
保育士試験に合格する
保育資格を取得するには、保育士試験に合格する手段もあります。
受験資格の条件を満たしていれば誰でも受験でき、早ければ試験勉強を始めてから半年以内で資格を取得することも可能です。
そのため、最短で保育士になりたい方や保育士への転職を目指す社会人に適した方法です。
ただし、保育士試験の筆記試験で合格した科目はその後3年間有効になるため、短期間で合格できるか不安な場合は、数科目ずつ地道に合格を目指す方法もあります。
また、保有している資格によっては科目免除の対象になるので、幼稚園教諭免許や社会福祉士などの資格保有者は、全国保育士養成協議会のホームページを確認しましょう。
保育士になる流れをパターン別に紹介
保育士試験には学歴や経歴に応じた受験資格があるため、誰でも取れる資格ではありません。
ここでは学歴・経歴別に保育士になる流れを紹介します。
これから保育士の資格取得を目指す方は、ご自身に当てはまるパターンをご確認ください。
中学校を卒業した方
最終学歴が中学卒業で高校に進学していない場合は、児童福祉施設で5年以上かつ7,200時間以上の勤務経験があれば保育士試験を受験できます。
この流れで保育士資格取得を目指す場合は、保育所や児童養護施設などの児童福祉施設の求人に応募して働き、所定の実務経験を積んでから試験を受験します。
高校を卒業した方
最終学歴が高校卒業の場合は、卒業した学科や卒業年月日が要件を満たしていれば試験を受験して資格を取得できます。
また、上記を満たしていない場合でも児童福祉施設に2年以上かつ2,880時間以上勤務した経験があれば、試験を受験可能です。
もしくは保育士養成学校に入学して、卒業と同時に保育士資格取得を目指す方法もあります。
専門学校や短大なら最短2年で卒業できるため、児童福祉施設で働くよりも早く保育士資格を取得できるでしょう。
専門学校に在学中もしくは卒業した方
専門学校に在籍中の方や卒業した方は、下記2点を満たした学校であれば保育士試験を受験して資格を取得できます。
- 学校教育法に基づいた専修学校である
- 卒業した課程が修業年限2年以上の専門課程である
上記を満たしていない場合でも、卒業年月日次第で試験を受験できる可能性があります。
また、保育関連の専門学校に在学中の方は、試験を受験しなくても卒業と同時に保育士資格を取得可能です。
短大・大学に在学中もしくは卒業した方
短大や大学に在学中もしくは卒業した方は、保育士と関連のない学科を卒業していたとしても受験資格があります。
そのため、試験を受験して資格取得を目指せます。
ただし、保育関連の短大や大学に在籍中の場合は、卒業と同時に資格を取得できるため、在学中は授業を通して専門知識を深めておきましょう。
主婦・社会人の方
現在主婦や社会人の方は、まずはご自身の学歴や経歴を確認して保育士試験の受験資格があるかどうかを確認する必要があります。
もし受験資格がある場合は、試験に合格して受験する流れが最も最短で保育士資格取得を目指せる方法です。
一方で受験資格がない場合は、実務経験を積むもしくは保育士養成学校に進学して保育士資格取得を目指しましょう。
保育士の資格を取得する難易度
保育士試験は筆記試験が全部で9科目もあり、全ての科目で60%以上の点数を獲得しなければならないため、難易度は高いと言われています。
ここでは、保育士資格を取得する難易度や試験合格に必要な勉強時間を紹介します。
保育士試験の合格率
保育士試験の合格率は下記の表のとおりです。
合格率 |
受験申請者数 |
合格者数 | |
2023年度 | 26.9% | 66,635人 | 17,955人 |
2022年度 | 29.9% | 79,378人 | 23,758人 |
2021年度 | 20.0% | 83,175人 | 16,600人 |
2020年度 | 24.3% | 44,914人 | 10,890人 |
保育士試験の合格率は例年20%程度です。
2022年度の試験は合格率が29.9%と例年よりも高く、合格者数も多い結果となりました。
過去3年間の合格率の推移を見るとその年によって差はあるものの、約20%に留まっていることがわかります。
保育士試験合格に必要な勉強時間
次は、合格に必要な勉強時間から保育士試験の難易度を見ていきましょう。
保育士試験に合格するには、100〜150時間以上勉強する必要があると言われています。
1日1時間毎日勉強を続けた場合、3〜5カ月以上は勉強期間として設ける必要があります。
ただし、それまでの経歴や得意・不得意は人それぞれなので、上記の勉強時間はあくまでも目安です。
では、その他の国家資格と比較した場合、保育士試験はどのぐらい難しいのでしょうか。
資格 | 合格に必要な勉強時間の目安 |
保育士 | 100〜150時間程度 |
社会福祉士 | 300時間程度 |
介護福祉士 | 250時間程度 |
保育士の合格率は約20%であり、決して簡単に取得できる資格とは言えません。
しかし、上記のように共通する試験科目のある社会福祉士や介護福祉士と比較すると、少ない勉強時間で取得できることがわかります。
保育士試験に合格するための勉強方法
保育士試験に合格するには、どのようにして勉強をすればいいのでしょうか。
保育士試験合格に向けて勉強する方法は、下記の3つです。
- 通信講座を受講する
- 資格予備校に通学する
- 独学で合格を目指す
それぞれどのように勉強して合格を目指すのかを見ていきましょう。
通信講座を受講する
通信講座を受講する場合は、その講座オリジナルの教材や講義を活用して、ご自身のペースで勉強を進めていきます。
保育士試験の出題範囲に絞って効率よく学習できる教材が用意されているため、保育士試験の勉強が初めての方も迷わずに勉強を開始できるでしょう。
場所や時間を問わず勉強を進められるので、仕事や学校、家事などで忙しい方も問題なく受講できます。
法改正などの情報も随時更新されるので、最新情報を見逃す心配もありません。
資格予備校に通学する
保育士試験に向けて勉強するには、資格予備校に通学するのも1つの方法です。
資格予備校に通えば、講師から直接講義を受けて、わからないことがあればその場で質問できます。
同じ目標を持った仲間と一緒に勉強したい方には、おすすめの方法です。
ただし、授業のスケジュールは決められているため、その日程に合わせてご自身のスケジュールを調整しなければいけません。
また、通学のための交通費がかかったり、体調不良などで休むと勉強が遅れたりするデメリットもあります。
独学で合格を目指す
保育士試験には、独学で合格を目指す方もいます。
保育士試験対策の参考書や問題集は市販のものも多くあり、最近はインターネットで検索すると講義動画も視聴できます。
そのため、資格取得のための勉強のコツを掴んでいる方は、独学でも合格を目指せるでしょう。
独学すれば講座受講費用がかからないため、費用を安く抑えられるものの、通信講座や通学講座のようなサポートは受けられません。
また、法改正などの最新情報は、ご自身で調べる必要があります。
保育士試験合格を独学で目指すコツ
独学で保育士試験合格を目指すのは、決して簡単なことではありません。
合格するための知識を身につけるのはもちろんのこと、モチベーションを維持し続けることも必要になります。
ここでは、独学で保育士試験合格を目指すコツを紹介します。
試験日から逆算して学習スケジュールを立てる
独学に限った話ではありませんが、保育士試験合格を目指すと決めたら、試験日から逆算して学習スケジュールを立てることが大切です。
先ほどもお伝えしたように、保育士試験合格には100〜150時間程度の勉強時間を確保しなければいけません。
もし4月の前期試験を受験する場合は、遅くても1月頃には勉強を開始しておく必要があります。
ただし勉強時間はあくまでも目安のため、ご自身の得意・不得意を考慮したうえで余裕を持った学習スケジュールを組みましょう。
市販の参考書や問題集を活用する
独学で勉強をするなら、ご自身に合った市販の参考書や問題集を探すことが重要です。
参考書や問題集との相性が悪ければ、合格したい気持ちがあってもモチベーションが続かず、途中で挫折してしまうかもしれません。
参考書にはフルカラーでイラストが多いものや一色刷りのもの、参考書と問題集が1つになったものなど、さまざまな種類があります。
自分にどんなテキストが合うかわからない方は、書店に足を運び実際に手にとって選ぶと良いでしょう。
インターネット上で公開された講義動画を活用する
最近は、YouTubeに保育士試験対策の講義動画が公開されています。
そのため独学を選択した方は、YouTubeを活用して勉強を進めるのも1つの方法です。
ただしYouTubeの動画は不特定多数の人が公開しており、通信講座の講義動画のように試験範囲を体系的に網羅しているとは言えません。
ご自身で情報を精査しながら活用しましょう。
筆記試験の科目免除制度を活用する
保育士試験を受験して合格した科目は、その後3年間もしくは5年間有効です。
そのため、毎年3科目ずつ受験して3年間かけて合格を目指すことも可能なのです。
保育士試験は全9科目あり、独学で勉強を続けるのは決して簡単ではないため、時間をかけて合格を目指すのも良いでしょう。
保育士資格を取得してから働くまでの流れ
保育士資格を取得したからといって、保育士として仕事ができるわけではありません。
保育士として仕事するには、保育士登録をする必要があります。
保育士登録をするには、試験合格後に都道府県知事委託 保育士登録機関「登録事務処理センター」で保育士登録手続きを行います。
保育士登録をする前に「保育士登録の手引き」を取り寄せて、必要書類を揃えたうえで手続きを済ませましょう。
審査にとおり保育士証が交付されてはじめて、保育士として働けます。
保育士の資格を活かせる仕事5選
保育士の資格が活かせる場所は、保育園だけではありません。
他にもさまざまな場所で保育士は活躍しています。
ここでは、保育士の資格を活かせる仕事を紹介します。
保育園やこども園
保育士が働く場所としてイメージされやすいのは保育園ですが、その他にこども園でも保育士は活躍しています。
こども園とは、保育園と幼稚園の両方の要素を併せ持った施設です。
そのため、保育と教育のどちらにも携わりたい方に向いています。
また、保育園と一口に言っても、認可保育園や認可外保育園、インターナショナルスクールなど特色は保育施設によってさまざまです。
数多くある施設の中から比較検討すれば、ご自身の経験やスキルに合う保育施設を見つけられるでしょう。
ベビーシッター
ベビーシッターとは、利用者の自宅や指定の場所で保護者に代わって子どものお世話をする仕事です。
預かる子どもの年齢は0〜15歳と幅広く、利用目的も「0歳児のお世話をしてほしい」という方や「小学生の子どもの習い事の送迎をしてほしい」という方などさまざまです。
ベビーシッターの仕事自体に保育士資格は必要ありませんが、保育士資格を取得していると、利用者から信頼されやすくなるのがメリットといえます。
保育施設で働くよりも勤務時間に融通がきくため、副業にもおすすめの仕事です。
児童養護施設や乳児院
児童養護施設や乳児院などの福祉施設でも、保育士は活躍しています。
児童養護施設や乳児院はさまざまな家庭の事情で、保護者と一緒に暮らせなくなった子どもたちが生活する施設です。
保育士を含む職員は、保護者のように近い距離で子どもたちと接し、買い物や病院の付き添い、学校の行事など生活全般に関わります。
児童発達支援施設
児童発達支援施設とは、発達支援が必要な子どもが基本的生活習慣や集団生活への適応力などを習得できるように、サポート・指導する場所です。
児童発達支援施設で保育士は、発達支援が必要な子どもたちのサポートだけでなく、その保護者の相談にも乗ります。
保育士の知識だけでは難しい仕事ではありますが、児童指導員や栄養士、医師などの専門家と協力しながら業務に当たります。
幼児教室
幼児教室は未就学の子どもたちを対象としたスクールで、保育士の働ける場所の1つです。
幼児教室によって特色はさまざまですが、基本的に楽しく学びながら脳を鍛えることを目的としています。
保育施設のように1日中子どもたちと接するわけではなく、1日1〜2回のレッスン中のみ子どもたちと接するケースがほとんどです。
そのためメリハリをつけて働けて、パート勤務を希望する方にも適した職場環境です。
駅前やショッピングモール内にあって交通の便が良い幼児教室が多い点も、メリットの1つといえます。
保育士の資格取得を目指すメリット
保育士の資格取得を目指すメリットは、下記の3つです。
- 就職・転職の求人が全国各地にある
- 働き方の選択肢がある
- 資格取得後更新の必要がない
3つのメリットを詳しく見ていきましょう。
就職・転職の求人が全国各地にある
近年は全国的に保育人材が不足している状況であり、常に求人がある状態です。
待機児童などの社会問題に伴い、保育士の需要はますます高まっています。
各地で保育士向けの転職フェアや就職イベントが開催されるなど、保育関連施設は積極的に採用活動をしています。
全国各地に保育士が勤務できる場所があるので、家庭の事情で引越しが必要になった場合も、就職先は見つかりやすいでしょう。
働き方の選択肢がある
勤務先によって差はありますが、保育士向けの求人にはパートや正社員、契約社員、時短勤務などさまざまな雇用形態があります。
フルタイムで働きたい方は正社員や契約社員を、週3日間だけ働きたい方はパートなど、ご自身の状況に合わせて最適な雇用形態を選んで就職することも可能です。
なかにはフリーのベビーシッターとして、自身の都合に合わせて時間を設定して働く方もいます。
資格取得後更新の必要がない
保育士の資格取得後に得られる保育士証には、有効期限がありません。
そのため一度資格を取得して保育士登録をすれば、更新手続きをしなくても生涯保育士として働けます。
そのため保育士証を取得すれば、一度保育の仕事から離れたとしてもまた好きなタイミングで復帰することも可能です。
保育士の資格取得を目指すデメリット
次は、保育士の資格を取得するデメリットを見ていきましょう。
主に保育士として働いたときにデメリットとして挙げられる点です。
- 勤務時間が長い
- 給料が低い
- 責任が重い
3つのデメリットを詳しく解説します。
勤務時間が長い
勤務先によって異なりますが、場合によっては残業時間が長いケースがあります。
働き方改革によって勤務時間が見直されてきているものの、保育園やこども園によっては持ち帰り仕事があるところもあるようです。
とはいえ近年は保育施設でもICT化が行われており、連絡帳や出席簿などがオンライン上で行われるようになってきています。
ICTによって業務効率化が行われれば、業務量が改善されて勤務時間が長いというデメリットが改善されていく可能性は高いです。
給料が低い
保育士は業務量が多いわりに給料が低い点も、近年問題視されています。
実際のところ「令和4年度 東京都保育士実態調査」によると、保育士退職意向の理由として最も多いのは「給料が低い」です。
また「現在の職場で働き続けるために充実を希望する項目」に関しても「給与」を回答した方が最も多い結果となっています。
このような問題を受けて、自治体によっては独自の制度を設けているところがあります。
例えば大田区や杉並区、江戸川区、世田谷区などの地域では、保育士に月1万円の手当が支給されます。
地域によっては、借り上げ社宅制度や奨学金の補助金制度などを利用できるところも。
保育士向けの補助制度を実施している地域で働けば、給料が低いというデメリットも解消されるでしょう。
責任が重い
保育士は子どもの命を預かる仕事なので、その責任は重大です。
保育園やこども園などに通う子どもたちはまだ小さいので、ケガや事故とは切っても切り離せません。
保育士は常に子どもたちが安全に遊べるように気を配っていると思いますが、それでもケガや事故をゼロにするのは難しいものです。
そのため、同じ職場で働く職員や保護者としっかり連携を取って保育に取り組むことが、重要になります。
保育士試験の概要
保育士試験は1年に2回実施されており、その時期は下記の表のとおりです。
筆記試験は2日間にわたって行われます。
▼前期試験日程
筆記試験日時 | 4月中旬 |
実技試験日 | 6月末〜7月上旬 |
受験申請期間 | 1月~2月 |
▼後期試験日程
筆記試験日時 | 10月中旬 |
実技試験日 | 12月上旬 |
受験申請期間 | 7月中 |
上記の試験日以外にも、地域限定保育士試験が実施されている地域では、1年に3回受験するチャンスがあります。
試験では筆記試験と実技試験が行われ、両方に合格してやっと保育士の資格を取得可能です。
受験会場は47都道府県に設置されるため、自宅から近い会場で受験できます。
【あわせて読みたい】保育士試験とは?2024年度(令和6年度)の日程や申し込み方法
まとめ
保育士の資格について詳しくお伝えしました。
- 保育士の資格取得方法は保育士養成学校卒業と保育士試験の2通り
- 最短で保育士資格を取得する方法は保育士試験に受験して合格すること
- 保育士試験には受験資格があるので事前に要チェック
- 保育士として働くには試験合格後に保育士登録が必須
- 保育士として働ける場所は保育園やこども園、ベビーシッターなどさまざま
保育士は一度取得すると更新の必要がなく、一生有効な資格です。
「保育士の仕事をしてみたい」という気持ちが少しでもある方は、資格を取得しておくと就職や転職を真剣に考え始めたときに役立つでしょう。
保育士試験は決して簡単な試験ではないため、試験を受験して資格取得を目指す方は、しっかりと対策したうえで試験本番に挑みましょう。