
保育施設には、子どもの年齢や施設の種類によって保育士の配置基準が設定されています。
2024年度からは、保育士の配置基準の見直しが行われました。
この記事では、保育士の配置基準を施設の種類や地域ごとに解説します。
緩和措置や違反した場合の対応も紹介しているので、これから保育士を目指す方も、すでに保育士として働いている方も参考にしていただけたら幸いです。
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こども家庭庁の定める保育士の配置基準とは?
保育士の配置基準は、保育施設における適切な保育環境と子どもたちの安全を確保するために、こども家庭庁が定めた重要な規則です。
認可保育園では保育士の配置基準を満たしていなければ、保育施設を運営できません。
配置基準は、保育施設で働く保育士の必要人数を子どもの年齢ごとに細かく規定しています。具体的な基準は下記のとおりです。
年齢 | こどもの人数 | 必要な保育士数 | |
---|---|---|---|
〜2023年3月 | 2024年4月〜 | ||
0歳児 | 3人 | 3人 | 1人 |
0・1歳児 | 6人 | 6人 | 1人 |
3歳児 | 20人 | 15人 | 1人 |
4歳児以上 | 30人 | 25人 | 1人 |
2024年度から制度の見直しが行われ、3歳児クラスは20人→15人に、4歳児以上は20人→25人に保育士の配置基準が変更されました。
2025年度以降は、1歳児クラスも保育士の配置基準が見直されます。
具体的には、1歳児につき保育士1人が担当する子どもの人数が6人→5人に改善されます。
保育士の配置基準は、各年齢の子どもの発達段階や必要とされるケアの度合いを考慮して設定されています。
特に乳児期の子どもたちはおむつ替えや食事の介助など細やかな配慮と注意を必要とするため、より手厚い人員を配置しなければいけません。
そして子どもたちの自立性や社会性の発達により、年齢が上がるにつれて1人の保育士が担当できる子どもの数が増えていきます。
施設別|保育士の適切な配置基準
保育施設にはさまざまな種類があり、それぞれの特性に応じて保育士の配置基準が定められています。
ここでは、主な施設タイプごとの基準を詳しく見ていきましょう。
認可保育園の保育士の配置基準
認可保育園の保育士の配置基準は下記のとおりです。
0歳児 | 子ども3人につき保育士1人 |
1・2歳児 | 子ども6人につき保育士1人 |
3歳児 | 子ども15人につき保育士1人 |
4歳児以上 | 子ども25人につき保育士1人 |
上記の数値は国の定める最低基準であり、多くの自治体ではより手厚い配置を行っています。
また、保育士の数は、年齢別に必要な保育士数を合計した数以上となるよう定められています。
幼保連携型認定こども園の保育士の配置基準
幼保連携型認定こども園の長時間保育の子どもに対する保育士の配置基準は、基本的に認可保育園と同様です。
一方で、短時間保育を利用する3〜5歳児の子どもには幼稚園の基準が適用され、概ね35人に1人の保育者となります。
また、3〜5歳児クラスの長時間保育と短時間保育の共通利用時間は、学級編制の基準として1学級の園児数の上限が35人です。
さらに学級に少なくとも専任の保育教諭1人を置くことが求められています。
教育及び保育に直接従事する職員の数は、学級数に応じて1人以上追加で配置しなければいけません。
認可外保育施設の保育士の配置基準
認可外保育施設の配置基準は、保育時間が11時間以内の場合は、認可保育所の基準と同様です。
一方で、11時間を超える時間帯は、延長保育の基準と同じになり、常時複数の保育従事者が配置する必要があります。
さらに、保育従事者の概ね3分の1以上は、保育士や看護師の資格所有者でなければなりません。
小規模保育事業の保育士の配置基準
小規模保育事業は、0〜2歳児を対象とした定員6〜19人の小規模な保育施設です。
下記の3種類に分かれています。
A型 | 定員6〜19人以下 |
B型 | 定員6〜19人以下 |
C型 | 定員6〜10人以下 |
A型の配置基準は、認可保育所の配置基準+1人の保育士を配置し、尚且つ保育士資格を全員が所有していなければなりません。
B型の配置基準は、保育士資格を所有するのは半数でよく、A型同様に認可保育所の配置基準+1人を配置する必要があります。
またC型の配置基準は、0〜2歳の子ども3人につき1人、補助者がいる場合は5人に対して2人です。
C型の場合は、保育従事者の資格は家庭的保育者であれば問題ありません。
小規模ならではのきめ細かな保育を提供するため、手厚い人員配置が特徴です。
家庭的保育事業の保育士の配置基準
家庭的保育事業は、保育者の居宅で少人数(定員5人以下)の乳幼児を保育する事業です。
配置基準は、0〜2歳児3人につき家庭的保育者1人となっています。
家庭的保育者は、保育士資格や一定の研修を受けた者が務めます。
また、保育補助者を置く場合(家庭的保育者+家庭的保育補助者)は、5人まで保育提供が可能です。
家庭的な雰囲気の中で、よりきめ細かな保育を行うことが可能な体制となっています。
事業所内保育事業の保育士の配置基準
事業所内保育事業の配置基準は、従業員の子どもと地域の子どもの受け入れ人数によって異なります。
定員が20名以上であれば認可保育所に準じた配置が求められ、0歳児3人につき1人、1・2歳児6人につき1人の保育士が必要です。
定員が19人以下の場合は、小規模保育事業A・B型と同じ配置基準です。
居宅訪問型の保育士の配置基準
居宅訪問型保育事業は、保育を必要とする子どもの自宅に訪問して1対1の保育を行う事業です。
配置基準としては、訪問先の乳幼児1人につき保育者1人となっています。
保育者は、保育士、保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者、またはこれらの者と同等の知識及び経験を有すると市町村長が認める者である必要があります。
地域別|保育士の適切な配置基準
保育士の配置基準は全国一律ではありません。
各自治体が地域の実情に応じて独自の基準を設けていることがあります。
ここでは、地域による配置基準の違いを見ていきましょう。
約10%の地域は国と同じ保育士の配置基準
全国の約10%の自治体では、国が定めた最低基準と同じ保育士配置基準を採用しています。
具体的には下記のとおりです。
0歳児 | 3人に1人 |
1・2歳児 | 6人に1人 |
3歳児 | 15人に1人 |
4歳児以上 | 25人に1人 |
この基準は、保育の質を確保するための最低限の要件とされています。
東京都を例に挙げると東村山市と稲城市は国の基準と同じですが、それ以外の地域は
多くの自治体ではより手厚い配置を行っています。
80%以上の地域は国よりも保育士の配置基準を多く設定
多くの自治体では、国が定める保育士の配置基準よりも多い配置基準を、独自に設定しているのが現状です。
例えば東京都八王子市の保育士の配置基準は下記のとおりです。
0歳児 | 3人に1人 |
1・2歳児 | 5人に1人 |
3歳児 | 15人に1人 |
4歳児以上 | 20人に1人 |
1・2歳児クラスと4歳以上のクラスで独自の配置基準を設けており、国の基準よりも手厚くなっています。
各自治体はパートタイムの非常勤保育士の雇用を増やすなどして、手厚い保育を提供できるように工夫しているようです。
保育士の配置基準の計算方法
保育士の必要数を正確に把握するためには、適切な計算方法を知ることが重要です。
ここでは、保育士の配置基準を計算する具体的な方法を説明します。
保育施設に在籍している園児の数を年齢ごとに書き出す
まずは、保育施設に在籍している園児の数を年齢ごとに集計します。
0歳から5歳までの各年齢層における在籍児童数を、正確に把握することが重要です。
例えば、以下のように整理します。
0歳児クラス | 6人 |
1歳児クラス | 14人 |
2歳児クラス | 16人 |
3歳児クラス | 22人 |
4歳児クラス | 28人 |
5歳児クラス | 32人 |
そうすると、施設全体の年齢構成と各年齢層の人数が明確になり、次の計算ステップの基礎となります。
在園児の数を配置基準の数で割る
次に、各年齢層の在籍園児数を、その年齢に対応する配置基準で割ります。
2024年度から適用される新しい配置基準を使用すると、計算式は下記のとおりです。
年齢層 | 計算式 | 配置基準(人) |
---|---|---|
0歳児 | 6人÷3 | 2 |
1・2歳児 | (14人+16人) ÷5 | 6 |
3歳児 | 22人÷15 | 1.47 |
4・5歳児 | (28人+32人)÷25 | 2.4 |
これらの結果を合計すると、約11.87人となります。一般的に小数点以下は切り上げるため、この施設では最低12人の保育士を配置しなければなりません。
ただし、計算方法の詳細(端数の処理など)は自治体によって異なる場合があるため、所属する地域の具体的な規則を確認することが重要です。
また、多くの自治体が国の基準を上回る独自の基準を設けているため、それらも考慮に入れる必要があります。
この計算方法を正しく理解することで、適切な数の保育士を配置し、質の高い保育環境を提供できるようになります。
保育士の配置基準の緩和措置について
保育士不足に対応するため2016年以降、保育士の配置基準に関する緩和措置が導入されました。
ここでは、その内容を詳しく見ていきます。
朝夕の園児数が少ない時間帯などの職員配置
朝夕の園児数が少ない時間帯は、子どもの人数が少なくても保育士が2人は必要とされていました。
ところが、2016年の緩和措置により、2人のうち1人は子育て支援員研修を修了した方で代替えできるようになり、保育士の負担軽減と効率的な人員配置が可能になりました。
保育士と近接する職種を保育士として活用
保育士資格を持たない幼稚園教諭や小学校教諭などを、一定の条件下で保育士として認める措置が講じられました。
具体的には幼稚園教諭は3歳児以上、小学校教諭は5歳児以上を中心に保育するのが望ましいとされています。
これにより、保育現場の人材確保の幅が広がりました。
開所時間などによる保育士配置数
保育施設を8時間以上開所している場合、認可の際に最低基準以上の保育士が必要でした。
そこで、規定の人数以上の保育士は、子育て支援員研修を修了した者で代替えできるようになりました。
これにより、保育士の労働環境改善・保育現場の人材確保につながっています。
看護師・准看護師・保健師の採用
2023年には、0歳児が3人以上いる保育所では、看護師等を1人に限り保育士とみなすことが可能になりました。
医療的ケアを必要とする子どもへの対応も期待されています。
保育士の配置基準が見直しへ
2024年以降、保育士の配置基準が見直される予定です。
この見直しは、保育の質の向上と保育士の負担軽減を目指しています。
ここでは、見直しの内容や経過措置について詳しく説明します。
保育士の配置基準の見直しはいつから?
保育士の配置基準の見直しは、2024年4月から段階的に実施されます。
ただし、自治体や保育施設の準備状況に応じて、当面の間は経過措置が設けられています。
保育士の配置基準見直しの内容
見直しの主な内容は以下の通りです:
- 3歳児の保育士配置基準:子ども20人につき1人以上→子ども15人につき1人以上
- 4・5歳児の保育士配置基準:子ども30人につき1人以上→子ども25人につき1人以上
2025年以降は、1歳児の保育士配置基準も、子ども6人につき1人→子ども5人につき1人への見直しが進められています。
配置基準見直しの経過措置について
配置基準は見直されましたが、急激な変更による混乱を避けるため、政府は経過措置を設けています。
この経過措置により、保育園は当面の間、従来の基準で運営を続けることが認められています。
これは人材確保の困難さや、持ち上がり園児への配慮など、現場の実情を考慮したものです。
その一方で、新基準を満たさなくてもペナルティがないため、改善を先送りする園が出る可能性も懸念されています。
政府は新基準に対応するための経費の差額を加算すると表明していますが、実際の運用には課題が残されています。
保育士の配置基準はおかしい?
保育士の配置基準に対しては、「おかしい」という意見も存在するようです。
その主な理由として、年齢による格差が挙げられます。
0歳児に比べ4・5歳児の配置基準が大きく異なることへの疑問の声が多いのです。
また、地域によって保育の質に差が生じる可能性も指摘されています。
さらに、保育士の負担が大きいことも問題視されています。
特に、複数の年齢を同時に担当したり、特別なケアが必要な子どもがいたりする場合に顕著です。
これは保育の質にも影響を及ぼし、十分な個別対応や教育的活動の時間確保が難しくなっています。
安全面においても、現行の配置基準では十分な管理が困難だという意見があります。
2024年からの配置基準見直しが進められていますが、さらなる改善を求める声は依然として強いのが現状です。
保育士の配置基準に違反するとどうなる?
保育士の配置基準は、子どもたちの安全と適切な保育環境を確保するために定められた重要な規則です。
違反した場合、施設の種類によって異なる措置が取られます。
認可保育園が違反した場合
認可保育園が配置基準に違反した場合、まず改善勧告が行われます。
改善が見られない場合、事業の停止命令や認可の取り消しなどの厳しい処分を受けるでしょう。
また、補助金の減額や返還を求められることもあります。
違反が継続的で重大な場合、施設の閉鎖に追い込まれかねません。
認可外保育園が違反した場合
認可外保育施設が配置基準に違反した場合、まず改善勧告が行われます。
改善が見られない場合、事業停止命令や施設閉鎖命令などの処分を受けるでしょう。
また、違反内容が公表されると、利用者の信頼を失い、収益が激減する恐れもあります。
そのため、法令を遵守して、適切な保育施設の運営を行わなければなりません。
まとめ
保育士の配置基準についてお伝えしました。
- 保育士の配置基準は、子どもの年齢や施設の種類によって異なる
- 2024年から配置基準の見直しが段階的に実施される予定
- 多くの自治体ではより手厚い配置を行っている
- 2016年からの緩和措置により、柔軟な人員配置が可能になった
- 配置基準違反には、改善勧告や事業停止命令などの処分がある
保育現場での適切な人員配置は、子どもたちの健やかな成長を支える基盤となります。
保育士試験で出題されやすい分野なので、これから保育士の資格取得を目指している方も頭に入れておきましょう。