
保育士は、一定の条件を満たし保育士試験に合格することで、誰でも取得を目指せる資格です。
しかし、その合格率は20%程度と決して高くありません。
この記事では、保育士試験の合格率や難易度、合格にかかる年数を詳しく解説します。
保育士試験合格を目指す方々の役に立つ情報をお届けするので、ぜひご覧ください。
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保育士試験の合格率
保育士試験の合格率は、例年20%程度で推移しています。
まず、近年の保育士試験の合格率の推移や、前期・後期と年に2回実施される保育士試験のそれぞれの難易度の違いを解説します。
保育士試験の合格率の推移
近年の保育士試験の合格率は、次のとおりです。
| 実施年度 | 受験申請者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和5(2023) | 66,625人 | 17,955人 | 26.9% |
| 令和4(2022) | 79,378人 | 23,758人 | 29.9% |
| 令和3(2021) | 83,175人 | 16,600人 | 20.0% |
| 令和2(2020) | 44,914人 | 10,890人 | 24.3% |
| 2019 | 77,076人 | 18,330人 | 23.8% |
表をみると、保育士試験の合格率は約20〜30%の間で推移していることがわかります。
合格できるのは受験者5人のうち2〜3人と、誰でも簡単に受かるわけでもないため、試験に向けて計画的に対策することが大切です。
保育士試験は前期と後期どっちが難しい?
保育士試験は、前期と後期の年2回実施されますが、どちらのほうが難しいのでしょうか。
以下の表は、令和5年度(2023年度)における保育士試験の実施データをまとめたものです。
| 前期試験 | 後期試験 | |
|---|---|---|
| 受験者数 | 34,380人 | 28,683人 |
| 合格者数 | 9,612人 | 7,553人 |
| 合格率 | 28.0% | 26.3% |
表をみると、前期試験と後期試験ではそれほど差がないことがわかります。
合格率はあくまで参考程度にとどめ、自分が合格するために何が必要か見極めて、合格する力を身につけてください。
最終学歴からみる保育士試験の難易度
保育士試験に合格し保育士となった人の最終学歴をみると、半数以上の人が4年制大学を卒業した人でした。
以下の表は、合格者の最終学歴の割合を示したものです。
| 最終卒業学校 | 割合 |
|---|---|
| 4年制大学 | 54.1% |
| 短期大学 | 15.6% |
| 高等学校 | 14.5% |
| 専修学校 | 7.9% |
| 大学院 | 4.7% |
| その他 | 2.2% |
| 無回答 | 0.8% |
ただし、これは保育士試験の難しさを表すものではありません。
保育士試験は、学ぶ内容には関係なく、大学、短期大学、修業年限2年以上の専門学校を卒業していれば受験することができます。
合格者の中で4年制大学の卒業者が占める割合が高いのは、学習習慣や基礎学力が影響している可能性もありますが、しっかりと対策をすれば誰にでも合格のチャンスがある試験です。
保育士試験合格に必要な勉強時間
保育士試験を対策する場合、勉強時間は130〜150時間程度が目安とされています。
1日1時間であれば約3〜5カ月、1日2時間の勉強であれば約1カ月半〜3カ月ほどで到達できる計算です。
ここでは、保育士試験の科目ごとに必要な勉強時間もみていきましょう。
科目別|保育士試験合格に必要な勉強時間
以下の表は、勉強時間を130時間とした場合の目安をまとめたものです。
| 筆記試験科目 | 勉強時間の目安 |
|---|---|
| 保育の心理学 | 16時間 |
| 保育原理 | 20時間 |
| 子ども家庭福祉 | 13時間 |
| 社会福祉 | 10時間 |
| 教育原理 | 14時間 |
| 社会的養護 | 13時間 |
| 子どもの保健 | 16時間 |
| 子どもの食と栄養 | 16時間 |
| 保育実習理論 | 12時間 |
| 合計 | 130時間 |
ただし、必要な勉強時間は受験者の実力や環境によって異なります。
保育士試験に合格するために必要なのは、効率のよい勉強を継続することです。
毎日少しずつでも勉強する時間を確保して、必要な対策をおこないましょう。
保育士試験の難易度が高い理由
ここまで保育士試験の合格率などを解説してきましたが、難易度は低くないことがわかります。
難易度が比較的高い理由として挙げられるのは、試験科目の多さと合格基準です。
保育士試験では、科目が以下の9つ設けられています。
- 保育の心理学
- 保育原理
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 教育原理
- 社会的養護
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
科目が多く、それぞれの知識を幅広く身につけなければならないことが難易度の高さにつながっているといえます。
保育士試験では、全ての科目で60%以上の点数を取らないと合格になりません。
上記の科目の中でも教育原理・社会的養護は「ニコイチ科目」とも呼ばれており、合格するために2科目とも30点以上(60%以上)得点する必要があります。
どれか1科目で60%を下回ると総合点が高くても不合格となるため、合格率の低さに影響していると考えられるでしょう。
保育士試験では、全科目で60%を上回れるようバランスよく勉強することが大切です。
保育士試験は平均何年で合格できる?一発合格はすごい?
保育士試験が平均何年くらいで合格できるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
平成30年度に実施された厚生労働省の調査によると、2回目で合格した方が「32.9%」と最も多いです。
次いで3回目で合格した方が「22.1%」、一発合格の方が「15.0%」となっています。
| 受験回数 | 割合 |
|---|---|
| 初めて | 15.0% |
| 2回目 | 32.9% |
| 3回目 | 22.1% |
| 4回目 | 13.0% |
| 5回目 | 6.6% |
| 6回目以上 | 10.1% |
| 無回答 | 0.3% |
保育士試験は8つの科目すべてで60%以上の得点が必要なため、一発合格は難易度が高く、受験者の中でも少数です。
しかし、合格した科目は3年間有効で、合格した科目の受験が免除されます。
この制度を活用して数科目ずつ合格を目指す人も多く、自分のペースで無理なく合格を目指せます。
一発合格できるか不安な方は、数年かけて保育士試験合格を目指すことも十分可能です。
保育士試験の合格率を高めるためにできること
保育士試験の合格率を少しでも高めるためにできることは、主に以下の3つです。
- 試験日から逆算して学習計画を立てる
- インプット・アウトプットを繰り返す学習をする
- 必要に応じてオンライン講座の受講を検討する
まずは、試験日から逆算して学習計画を立てましょう。
試験日までどのくらい勉強時間を確保すればよいのかイメージすることで、学習効率を高められます。
試験対策ではインプットとアウトプットのバランスがカギになります。
どちらか片方のみでは知識が定着しにくいため、下記のように工夫して学習することが大切です。
- 参考書でインプットしたら問題を解いてアウトプットする
- 間違えた問題は再度参考書でインプットする
このほか、独学が苦手な方や専門講師の解説が聞きたい方などはオンライン講座の受講もおすすめです。
自分がモチベーションを維持しながら対策できるように勉強環境を整えてみてください。
保育士資格取得にはどんな方法がおすすめ?
保育士になるには、大きく分けて3つの方法があります。
- 指定保育士施設
- 通信講座
- 独学
それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
指定保育士養成施設
指定保育士養成施設には、主に以下の施設があります。
- 大学(4年制)
- 短期大学(2年制)
- 専門学校(2年制/3年制)など
全国で合わせて667か所(令和6年4月1日時点)があり、指定保育士養成施設を卒業すれば、試験を受けずに保育士資格を取得できます。
学校では実際の保育現場で学ぶ保育実習もあり、実践的なスキルが身につけられます。
しかし、2〜4年間学校に通う必要があるため、時間と費用がかかることがデメリットです。
高校卒業後の進路として指定保育士養成施設に進学することは、保育士資格を確実に取得できる方法です。
通信講座
指定保育士養成施設に進学せずに保育士資格を取得したい場合は、保育士試験を受験して合格しなければなりません。
通信講座は、保育士試験の合格を目指すための勉強方法の一つです。
仕事をしながらでも自分のペースで学習を進めることができ、プロが作成した教材で効率よく学べます。
分からないところは質問サポートも受けられるため、一人で勉強する不安を解消できます。
独学よりも費用はかかりますが、合格に必要な知識を体系的に学べるため、仕事や子育てをしながら保育士資格の取得を目指す方には特におすすめの方法です。
独学
独学は、参考書や問題集を購入して自分ひとりで勉強する方法です。
通信講座と比べて費用を最も安く抑えられることがメリットですが、実際にはいくつかの課題があります。
保育士試験の筆記試験は9つの科目で行われ、学習範囲がとても広いです。
また、法改正などの最新情報を自分で収集し、学習計画も自分で立てる必要があります。
質問できる相手もいないため、分からない部分でつまずきやすくなるでしょう。
合格率は例年20%程度で推移しており、難易度は低くないため、独学での合格は決して簡単ではありません。
保育士試験の概要
保育士試験は、保育士資格を取得するための国家試験です。
年に2回(前期・後期)実施される全国統一の試験で、受験料は12,700円となっています。
筆記試験はマークシート形式で行われ、全国47都道府県で同時に実施されます。
申し込みはインターネットまたは郵送で行うことができ、例年5〜8万人前後の人が挑戦する人気の高い資格試験です。
合格すれば、保育所だけでなく児童福祉施設などさまざまな場所で働くことができる一生ものの国家資格を取得できます。
試験科目
以下の表は、保育士試験の筆記・実技における出題範囲をまとめたものです。
| 区分 | 試験科目 |
|---|---|
| 筆記試験 | 保育の心理学 保育原理 子ども家庭福祉 社会福祉 教育原理 社会的養護 子どもの保健 子どもの食と栄養 保育実習理論 |
| 実技試験 | 音楽に関する技術 造形に関する技術 言語に関する技術 ※2分野を選択して受験する |
筆記試験は、すべての科目において満点の60%以上得点した方が合格対象者です。
実技試験は、筆記試験の全科目合格者のみが受験できる試験です。
科目数は3科目から選択した2科目で、合格基準は筆記試験同様、満点の60%以上です。
試験日程
保育士の試験日程に関して、令和7年度実施分のスケジュールをご紹介します。
▼令和7年度
| 区分 | 試験 | 日程 |
|---|---|---|
| 前期 | 筆記試験(1日目) | 4月19日(土) |
| 筆記試験(2日目) | 4月20日(日) | |
| 実技試験 | 6月29日(日) | |
| 後期 | 筆記試験(1日目) | 10月18日(土) |
| 筆記試験(2日目) | 10月19日(日) | |
| 実技試験 | 12月7日(日) |
▼令和8年度
| 区分 | 試験 | 日程 |
|---|---|---|
| 前期 | 筆記試験(1日目) | 4月18日(土) |
| 筆記試験(2日目) | 4月19日(日) | |
| 実技試験 | 6月28日(日) | |
| 後期 | 筆記試験(1日目) | 10月24日(土) |
| 筆記試験(2日目) | 10月25日(日) | |
| 実技試験 | 12月13日(日) |
筆記試験は、1日目と2日目にわけて実施されます。
試験時間は、教育原理・社会的養護が各30分、それ以外の科目が各1時間です。
また、実技試験は筆記試験から1カ月半〜2カ月後に実施されます。
ただし、筆記試験の合格発表時期は前期試験が6月上旬から中旬、後期試験が11月下旬から12月上旬と、実技試験の日まで期間に余裕があるというわけではありません。
そのため、筆記試験が終わって手ごたえを感じているのであれば、すぐに実技試験の対策に取り掛かりましょう。
受験資格
大学に2年以上在学して62単位以上修得した者または短期大学、修業年限2年以上の専門学校を卒業した場合は受験資格があります。
高等学校卒業者であっても、児童福祉施設において2年以上の勤務で、総勤務時間数が2,880時間以上、児童の保護に従事した場合も受験可能です。
また、児童福祉施設において5年以上・7,200時間以上児童の保護に従事した場合にも受験資格が認められており、さまざまな学歴や経験を持つ人にチャンスが開かれています。
受験資格について詳しくは、公式サイトで確認することをおすすめします。
【参考】受験資格詳細
保育士試験の中でも難しい科目は?
保育士試験の中で難しいとされている科目は、「教育原理」「社会的養護」「社会福祉」です。
教育原理・社会的養護
「ニコイチ科目」とも呼ばれる教育原理・社会的養護は、合格するためには両科目とも30点以上(60%以上)得点する必要があります。
また、通常の科目は全20問出題されるのに対し、教育原理・社会的養護の出題数はその半分で、10問中4問までしか間違えられない緊張感が、科目の難しさにもつながっています。
社会福祉
社会福祉は、福祉関係の事業名・機関名・社会福祉六法を幅広く理解しなくてはなりません。
暗記だけでは対応できない問題が出題されるのも難易度の高さにつながっています。
勉強する際は、参考書・過去問を通して問題の傾向を掴みながら知識をつけましょう。
間違えた問題は解説を読み込み、参考書とも併用しながら少しずつ解ける問題を増やすことが大切です。
まとめ
この記事では、保育士試験の合格率について詳しく解説しました。
改めて、この記事でご紹介した内容をおさらいしましょう。
- 保育士試験の合格率は例年約20%
- 保育士試験の難易度の高さは科目の多さと合格基準が考えられる
- 合格基準を満たすために各科目をまんべんなく勉強することが大切
- 「教育原理」「社会的養護」「社会福祉」が難しいとされている科目
- 勉強スケジュールの確立やインプット・アウトプットの繰り返しがポイント
独学が苦手な方や詳しい解説を聞きながら勉強したい方などは、保育士試験のオンライン講座の受講もおすすめします。
自分に適した勉強方法でモチベーションを維持しながら、効率よく知識を身につけて保育士試験の合格を狙ってみましょう。
