中小企業診断士試験の「経済学・経済政策」は、1次試験の最初に受験する科目です。
最初の科目の結果が不安になるとその後の試験に影響する可能性があるため、ある程度の自信をつけておきたい科目と言えます。
まず、経済学・経済政策の科目の特徴について解説します。
経済学・経済政策は、数式を使った理論的な内容が多い科目です。そのため、正しく理解していないと解けない問題が多く、苦手意識を持つ受験生が多いようです。
経済学・経済政策は、問題数が少ないことも特徴です。
ここ最近の数年間の試験では、計25問(問題と設問を合計した数)が出題されています。
1問あたりの配点が4点と大きいため、1問の影響が大きくなっています。
前述のとおり、経済学・経済政策は1次試験で最初に挑む科目のため、緊張からケアレスミスが起こりやすいと言えます。
1問4点という配点のため、もしケアレスミスが3問あれば12点の減点です。
例えば、本来なら100点中60点程度を取れる実力の人なら3問のミスで48点となります。
総得点の足を引っ張るだけでなく、科目別の合格基準である「満点の40%未満のないこと」の観点からも危うい点数と言えるでしょう。
1次試験の科目には「財務・会計」のように1次試験と2次試験の関連性が高い科目も存在しますが、経済学・経済政策は2次試験にはほとんど関係しません。
「不合格にならないライン」を目指して、時間をかけすぎることが無いように効率的に勉強したい科目です。
経済学・経済政策の近年の合格率の推移は、下記のとおりです。
年度 | 科目合格率 | ||
令和4(2022) | 10.5% | ||
令和3(2021) | 21.0% | ||
令和2(2020) | 23.4% | ||
令和元(2019) | 25.7% |
また、下記の表は、中小企業診断士試験の科目別の勉強時間の目安や難易度を一覧化したものです。
▼中小企業診断士試験の科目・勉強時間・難易度
勉強順 | 科目 | 勉強時間(目安) | 難易度 |
1 | 企業経営理論 | 150時間 | 普~難 |
2 | 財務・会計 | 180時間 | 難 |
3 | 運営管理 | 150時間 | 普 |
4 | 経営情報システム | 80時間 | 普~難 |
5 | 経済学・経済政策 | 100時間 | 普 |
6 | 経営法務 | 80時間 | 易~普 |
7 | 中小企業経営・政策 | 60時間 | 易~普 |
経済学・経済政策の科目難易度は、「易しい」「普通」「難しい」の3段階で表現する「普通」となります。ただし難易度はあくまで傾向や目安です。
科目別難易度は、個人の学習状況や経験によって個人差が生じやすく、試験年度によっても変化します。
中小企業診断士試験の合格に必要な勉強時間は、1,000時間程度が目安とされています。
このうち経済学・経済政策の勉強時間は、上記の表で示したとおり100時間程度が目安です。
経済学・経済政策という科目は、ミクロ経済学とマクロ経済学で構成されています。勉強方法の解説に入る前に、科目の全体像から理解していきましょう。
そもそも経済学とは、どんな学問でしょうか。ひと言でいえば、さまざまな経済活動を理論的に説明する学問です。
例えば、経済学ではデフレ、インフレなどの経済動向や、商品の価格がどのように決定されるのかなどの経済活動を扱います。
企業経営においては、経済動向を把握して経営戦略を立案する際に経済学的な考え方が必要です。
ミクロ経済学では、消費者や企業の経済活動を扱います。
例えば、私たち消費者がどのように商品の購入を決定するのか、企業がどのように生産の意思決定をするのか、といったことです。
ミクロ経済学の出題範囲は以下のとおりです。
消費者側の行動である「需要」と企業側の行動である「供給」は、すでに多くの人にとってなじみのある概念ではないでしょうか。
この2つを併せて扱うのが「市場均衡」「不完全競争」「市場の失敗」というテーマです。
需要と共有が一致するのが理想的な状態ですが、現実世界ではそのような状態ばかりではなく、なぜそうなるのかといったことを学んでいきます。
一方、マクロ経済学では、景気動向、物価、景気対策など国全体の経済活動を扱います。マクロ経済で出題されるのは次のような内容です。
マクロ経済学で扱うのは「財市場」「貨幣市場」「労働市場」という3つの市場です。
これらの市場は互いに関連していて、まずは各市場を単独で理解し、次に他の市場とどのように関わり合っているのかを学んでいくことで、マクロ経済学の全体像を理解していきます。
中小企業診断士試験の経済学・経済政策の勉強方法としては、まずミクロ経済学を学習し、その後にマクロ経済学へ進むことをおすすめします。
なぜならミクロ経済学で学ぶ需要と供給などの概念が、マクロ経済学の内容を理解するうえでも役立つからです。
効率よく学ぶためには、学習の大きな流れを最初に意識しておきましょう。
では、最初に学んでおきたいミクロ経済学について、出題されやすい分野と試験の傾向と対策を解説します。
ミクロ経済学で出題されやすい分野は、以下のとおりです。
ミクロ経済学の学習を進めるにあたって、まずは需要曲線と供給曲線を理解しましょう。
市場均衡や不完全競争、市場の失敗などは、需要と供給の理解が前提になります。
ミクロ経済学の試験傾向としては、グラフを用いた出題が多いです。主要な理論をグラフで理解しましょう。
グラフに強くなる対策としては、まずグラフを自分の言葉で説明できるようになることが第1段階です。
次に、白紙にグラフを書きながら理論を説明できることを目指します。グラフを書けるようになると、きっとミクロ経済学が得意になるはずです。
そのうえで、過去問でよく出題される箇所を重点的に対策できると理想的です。経済学は基礎から順番に学んでいかないと理解しにくい学問です。まずはグラフで基礎理論をひととおり理解することが大切です。
基礎理論をひととおり理解したら、過去問を解いて練習してください。学習初期の段階では、グラフを書けても正答を導き出せないこともあります。
最初はそれで問題ありません。同じ問題が出たら次は答えられるように、解説を読んで理解を深めておきましょう。
続いてマクロ経済学の勉強法についても、出題されやすい分野と試験の傾向と対策を解説します。
マクロ経済学で出題されやすい分野は、以下のとおりです。
中でも「財市場」と「貨幣市場」は頻出なので、重点的に学習しましょう。
マクロ経済は出題範囲が非常に広いので、すべてを網羅しようとするのは時間的に困難です。
頻出の理論に絞って学習し、得点できるようにしましょう。
マクロ経済学の試験傾向も、基本的にはミクロ経済学と同様です。
グラフを用いた説明を求められる出題が多いため、主要理論をグラフで理解するように心がけましょう。
最初のステップは、試験によく出る主要経済理論を数式だけでなくグラフで理解することです。グラフで理解し理論を説明できるようにしましょう。
次に白紙にグラフを書き出し、理論を説明できるようになれば基礎的な理解としてはOKです。
主要な経済理論を理解出来たら、過去問に挑戦しましょう。どのように問題が出題されるのか、出題パターンなどを自分の目で確かめることが大切です。
大切なのは、これまでインプットしてきた知識を、過去問を通してアウトプットすることです。自分の手で解いてみて、その後、解説を読み込んで理解を深めます。
今回は中小企業診断士の試験科目の1つである経済学・経済政策について解説しました。
1次試験の科目では「企業経営理論」「財務・会計」「運営管理」といった科目により多くの勉強時間を要します。
経済学・経済政策の学習は、上記のようなポイントをおさえて効率的に進めていきましょう。