中小企業診断士として登録を行うことができる条件は、2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することです。
合格者の多くは実務補習の受講を選択します。実務補習は、国の登録実務補習機関である一般社団法人中小企業診断協会が実施しています。
【参考】中小企業診断協会「実務補習」
実務補習は、中小企業診断士が行う経営コンサルティングの実務の経験を積むために、実際の中小企業を対象に経営コンサルティングのグループワークを行うものです。
通常は、5人ぐらいのグループに分かれ、グループの指導員であるベテランの中小企業診断士の指導を元に、経営コンサルティングの実務を行います。
経営コンサルティングの対象となる中小企業は、指導員の方から紹介されます。(指導員の業界の会社であることが多いようです)。
5日間で1社の経営コンサルティングを行う形になります。そのため、これを3社行うと、計15日になり、中小企業診断士の登録要件を満たすことができます。
実務補習を行う日程はあらかじめ決められていますので、参加が可能な日程で申し込むことになります。
ちなみに、連続して5日ではなく、2週間以内の期間で日程が組まれていることが多いようです。
結論から言えば、実務補習は中小企業診断士の2次試験と口述試験に合格したあとに行われるので、基本的に落ちることはありません。
目的は落とすことではなく、学んだ知識を使って実務経験を積むことです。
ただし合格後3年以内に定められた日数分の受講が必須となるので、欠かさず受講するために仕事のスケジュールを調整する必要があります。
1日でも受講できないと修了はできません。確実に参加可能な日程で申し込んだ上で、体調管理を万全にして望みましょう。
実務補習には「15日間コース」と「5日間コース」があります。
2次試験合格者の多くは2〜3月に開催される「15日間コース」を受講しますが、実務補習は「合格後3年以内」に「15日以上」でいいため、7〜9月開催の「5日間コース」を複数年に分けて受講するケースもあります。
ここからは実務補習の日程や費用、そして「働きながら受講できるのか?」ということについて解説していきます。
多くの人が受講する「15日間コース」は1企業あたり5日間、それが3企業分あり合計すると15日間というスケジュールになっています。1企業あたりの日程は下記の表のとおりです。
日程 | 主な内容 |
実施の約1週間前 | 指導員からメールで連絡(企業概要の提示、事前準備作業の指示など) |
1日目(金曜日) | グループ別の打ち合わせ
企業等の訪問・調査、資料分析など |
2日目(土曜日) | 企業等の訪問・調査、資料分析など |
自主学習 | 受講者・指導員間のメールでの打ち合わせ(経営課題の抽出や診断報告書の作成準備等) |
3日目(土曜日) | 全体調整・診断報告書の作成 |
4日目(日曜日) | |
5日目(月曜日) | 企業等への報告会等 |
※ 曜日は若干前後する場合もあります。
※ 実施期間中の研修時間は原則として9~17時だが、異なる場合もあります。
上記の表をさらに詳しくご説明します。
▼準備(約1週間前)
▼1日目(金曜日)
▼2日目(土曜日)
▼自主学習
▼3日目(土曜日)
▼4日目(日曜日)
▼5日目(月曜日)
中小企業診断士の実務補習の費用は、下記のとおりです。令和4年度(2022年度)に料金改定が行われたものを反映しています。
コース | 金額(税込) |
15日間コース | 18万円 |
5日間コース | 6万円 |
【参考】中小企業診断協会「令和4年度中小企業診断士実務補習の日程について」
中小企業診断士の実務補習は、働きながら受講できるのでしょうか。結論から述べると、仕事と実務補習は両立できます。
実務補習の15日間コース、5日間コースのどちらも、土日祝日を中心にスケジュールが組まれています。
そもそも中小企業診断士の資格取得は、実務で活かしてキャリアアップしたいという理由で目指す人が少なくありません。
そのため働きながら受講できるように配慮されているのです。土日祝が休みの企業に勤めていれば、会社を休むべき日は少ないでしょう。
なお、個別に希望して土日祝だけで受講するようなことはできません。5日間の日程をすべて受講できない場合や途中で受講できなくなった場合には、修了は認められないので注意しましょう。
中小企業診断士の実務補習は、中小企業診断士資格の取得にあたって、多くの人が経験するステップです。
しかしこの実務補習は必ず受けないといけないものではなく、免除される方法もあります。それは「中小企業診断士養成課程」を受講するという方法です。
中小企業診断士の養成課程は、事例に基づく「演習」と企業診断の「実習」を通じて、実務能力の高い中小企業診断士を要請する目的で設けられた制度です。
1次試験合格後に養成課程を受講すれば、2次試験と実務補習を経ずに中小企業診断士の資格を取得することができます。
養成課程の実施は、中小企業大学校東京校のほかに、カリキュラムが認可された各種機関で行われます。費用は150~350万円近くまでと高額です。
期間は開校している各種機関によって異なります。働きながら平日夜間や週末に通うコース、平日しっかり通う全日制のコースなどがあり、多くは半年から2年間のカリキュラムとなっています。
また、中小企業診断士の登録の条件は実務補習だけではなく、「実務従事(診断実務に15日以上従事する)」という方法もあります。
実務従事とは、中小企業診断士が行っている経営診断と同じような業務に従事することです。
懸念点として、コンサルティング会社などに勤務していないと、実務従事の案件を自分で探すのが難しいという点が挙げられます。
このほか、実務補習のような横のつながりを作る機会が減るということや、診断士登録の手続きを全て自分でやらなければならないというデメリットもあります。
中小企業診断士の実務補習は、養成課程や実務従事に比べて受講するメリットが大きいことが分かりました。次に実務補習について、よくある疑問3つにお答えします。
実務補習に関するインターネット上の体験談には、「実務補習がきつい」というコメントが多く見られます。どのような点をきついと感じたのでしょうか。
1企業5日間コースとはいえ、準備期間や自主学習期間を含めると2週間以上もの間、実務補習に携わる必要があります。
企業診断のための情報収集や資料作成は、仕事が終わったあとの時間を使わざるを得ないため、肉体的にも精神的にも負担が大きく「きつい」と感じるようです。
中小企業診断士は仕事をしながら取得するため、日程を合わせられるかどうか不安に感じる人も多いでしょう。
もし実務補習の5日間の日程のうち、1日だけ受講できない場合はどうなるのでしょうか。
5日間すべて受講できなかった場合、実務補習の修了は認められません。受講途中に受講できなくなった場合も修了は認められません。
あらかじめ受講できない日が分かっている場合は、5日間すべて受講できるコースを選んで受講しましょう。
中小企業診断士の資格を取得した人の中には、海外赴任などの理由で登録を一時的に休止する人もいます。
登録休止中の診断士が登録再開したい場合、再開の要件のひとつに「実務ポイント15点」があり、これを満たすには実務補習を受ける必要があります。
注意したいのは、受講申込受付は「2次試験合格者」が優先となる点です。募集定員に空きがあれば申し込めることになっています。
再開の要件は「再開申請をする日までの3年以内」に満たすことになっているので、計画的に準備しておきたいところです。
【参考】中小企業診断協会「令和4年7月・8月・9月実施中小企業診断士実務補習について」>「1.受講資格」
今回は中小企業診断士の実務補習について、働きながら受講できるのか、日程や内容、免除制度、よくある質問についてご紹介しました。
中小企業診断士は、企業の経営課題を解決する知識が身につけられるので、資格取得ができればさまざまな企業から必要とされる人材となるでしょう。そのためにも、まずはすきま時間を活かした勉強で、2次試験合格までを着実にめざしましょう。
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