中小企業診断士の副業としてまず挙げられるのは、この資格の本分である経営コンサルタント業務です。
具体的には下記のようなトピックについてアドバイスをおこないます。
副業で経営コンサルタントをする場合は、自分で案件を探さなくてはなりません。
稼働のスタイルとしては「土日のみ時間を決めて働く」や「スポットコンサルとして案件単位で関わる」などの形があり、自分で自由に決めることができます。
副業で経営コンサルタントを行う場合のメリットは以下の4つです。
最大のメリットは資格をダイレクトに活かして、自身のレベルアップにつなげられることでしょう。
また、資格の維持においてもメリットは大きいです。
中小企業診断士の資格を保有し続けるには5年ごとの更新が必要で、次の更新までに「30日以上の実務」を行うことが定められています。経営コンサルタントの副業を行うことで、必要な実務日数を稼げます。
【参考】中小企業庁「中小企業診断士関連情報」>「申請・届出の手引き」
副業で経営コンサルタント業務を行う場合のデメリットとしては、「公的業務」を引き受けにくいことが挙げられます。
公的業務とは、公的機関から委託されて行う窓口相談や専門家派遣などのことです。
資格を取得したばかりの中小企業診断士にとっては貴重な実践の場となっていて、実績や人脈が作れるためステップアップのきっかけにもなります。
しかし公的業務は平日昼間の稼働を求められることが多いので、一般的なサラリーマンの場合は本業を休んで稼働する必要が出てくるでしょう。
企業から直接依頼を受ける「民間業務」のほうが、交渉次第で稼働スケジュールを調整しやすいです。
経営コンサルタント業務の副業収入を、以下の表にまとめました。
契約・雇用形態 | 目安収入 |
週末のみ(スポット型) | 約1万円/1回(1時間程度) |
月額契約または案件ごとの契約 | 約10~30万円 |
上記はあくまで目安です。実際は契約内容や雇用形態によって収入額は大きく異なります。
経営コンサルタント業務の副業の仕事を獲得するには、以下の5つの方法がおすすめです。
中小企業診断士の資格を取得しても、待っているだけでは仕事は来ません。自ら行動して、自分にあう案件を獲得しましょう。
中小企業診断士の副業の1つに、公的機関の「専門家派遣」があります。公的機関の具体例は以下のような企業・団体です。
これらの施設に来る相談者に対して、経営コンサルティングや財務相談、人事の相談などに乗るのが主な仕事内容です。
雇用形態としては、公的機関と業務委託契約を結んで稼働するケースが多いでしょう。
施設には常駐せず、依頼があったときだけ出勤するパターンもあります。
専門家派遣の副業を行うと、さまざまな案件に携われるようになります。
国や地域が行っている、中小企業向けの支援内容について詳しく把握できるようになる点もメリットです。
中小企業診断士の専門家派遣として働くデメリットは、時間の確保が難しい点です。
公的機関での業務委託は年単位で募集されているケースが多く、長期的な案件になります。
専業でないと厳しいケースもあるでしょう。
専門家派遣に限った報酬を示すデータはありませんが、公的業務を中心に稼働する中小企業診断士に報酬額について聞いたアンケート調査結果があります。
業務内容 | 平均 |
診断業務 | 3万7,700円/日 |
経営支援業務 | 3万7,500円/日 |
※回答者はコンサルティング業務日数の合計が100日以上の人
※副業に限ったデータではない
【参考】中小企業診断協会「『中小企業診断士活動状況アンケート調査』結果について(令和3年5月)」
専門家派遣の副業で仕事を獲得するには、公的団体のWebサイトなどで専門家の登録受付をしていないか探してみましょう。
ただし、登録したからといって必ず依頼がくるわけではありません。
企業とのマッチングの確率を高める方法の1つは、得意な業界・業種、経験が豊富な分野など、自分の強みを明確にして登録することです。
どんな支援ができる人材なのか、企業や公的機関のコーディネーターにわかりやすく示しましょう。
国や自治体の「補助金」や「助成金」の申請を手伝うのも、中小企業診断士が副業として行える業務のひとつです。
具体的には、申請書の書き方を教えたり、採択後のレポート作成を手伝ったりします。
案件ごとに契約する形が多いでしょう。
補助金・助成金申請業務の副業のメリットは、事業計画書や申請書の書き方に詳しくなれることです。
これらの知識を持っていることは大きな強みであり、自社で本業に活用できたり、転職時に有利になったりします。
補助金・助成金申請業務の副業のデメリットは成功報酬型である点です。
申請書の作成をサポートし、その補助金や助成金が採択されれば成功報酬が得られます。
つまり、失敗してしまうと成功報酬は得られず、着手金のみとなってしまいます。
補助金・助成金申請業務の副業収入は主に2つのカテゴリーにわけて計算されます。
報酬のイメージは以下のとおりです。
基本報酬(手付金) | 約3~10万円 |
成功報酬 | 補助された金額の1~2割程度 |
たとえば300万円の補助金が採択されれば、約30万円が成功報酬となります。
補助金・助成金申請業務の副業の仕事を獲得する方法は以下がおすすめです。
「補助金・助成金申請業務 求人」で検索すれば多くの案件が見つかります。
中小企業診断士の副業には「記事執筆」「ブログ運営」といった文章を書く仕事もあります。
具体的には、中小企業診断士としてメディアに記事を寄稿したり、自分のブログを更新したりするのが業務内容です。
働く時間や場所は自由で、自分のブログの場合は好きなタイミングで執筆をします。
依頼のあったメディアや企業あてに寄稿する場合は、都度決められた期日に納品します。
ブログの場合、記事に広告を掲載し、多くのアクセスを集めることで収入を得ることができます。
記事執筆やブログ運営業務を副業として行うメリットは、時間や場所を問わず働けるので、始めやすく続けやすいことです。
また、記事執筆のための取材ができるようになるとコミュニケーション能力がアップし、経営コンサルティング業務にも役立つでしょう。
記事執筆・ブログ運営業務を副業として行うデメリットは、経営コンサルティング業務そのもののスキルアップにはつながりにくいことです。
また、資格の更新に必要な実務従事ポイントの獲得にもつながらない点も、人によってはデメリットとなるでしょう。
中小企業診断士へのアンケートによると、執筆業務の報酬は下記のとおりです。
稼働スタイル | 報酬(平均) |
公的業務が中心の診断士 | 7,800円/400文字 |
民間業務が中心の診断士 | 6,400円/400文字 |
【参考】中小企業診断協会「『中小企業診断士活動状況アンケート調査』結果について(令和3年5月)」
たとえば2,000文字の原稿を依頼された場合、3〜4万円程度の収入になります。
ブログ運営の場合は、広告収入やアフィリエイト収入を狙うことが多いでしょう。
ただしこれらは成果型のため、報酬額が一定ではないケースがほとんどです。
ブログ運営のスキルを磨けば月に数十万円やそれ以上の収入を得られる可能性はありますが、いくら記事を書いても0円というケースも十分あり得ます。
記事執筆・ブログ運営業務の副業の仕事を獲得する方法は、クラウドサービスを使うのが簡単です。
「中小企業診断士」と検索すれば、関連した募集案件が多数見つかります。
そのほかには、SNSで募集していることもあるのでチェックしてみてください。
中小企業診断士の副業として研修やセミナー講師をする人もいます。
講演のテーマは依頼主によって異なりますが、一例としては「補助金の申請についてのノウハウ」や「事業計画の考え方や書類の書き方」などを話します。
単発の案件が多く、「1講演あたり○○円」といった依頼が多いでしょう。
研修・セミナー講師業務の副業のメリットは「講師」として人前に立ち知名度が上がることです。
セミナーをきっかけにして、コンサルティング業務や補助金作成のサポートなど、ほかの仕事につながりやすい利点もあります。
研修・セミナー講師業務のデメリットは、資格取得後に誰でもすぐにできる副業ではないという点です。
講師の依頼にはスキル、実績、ネームバリューといった要素が関係するので、すでに経営やコンサルに携わってきた人以外は、まずは経験を積むのが適切な順番でしょう。
また、講師業には話し方やわかりやすい資料の準備など、伝え方に関するスキルを磨かなければなりません。
中小企業診断士へのアンケートによると、調査・教育訓練業務の報酬は下記のとおりです。
稼働スタイル | 報酬(平均) |
公的業務が中心の診断士 | 4万8,100円/日 |
民間業務が中心の診断士 | 11万9,000円/日 |
【参考】中小企業診断協会「『中小企業診断士活動状況アンケート調査』結果について(令和3年5月)」
報酬額の差は、講師のスキル、ネームバリューなどで変動します。
研修・セミナー講師業務の副業の仕事を獲得する方法は、「紹介」や「講師紹介サイトに登録する」方法があります。
そのほか、求人サイトで募集しているケースもあるので、ぜひ検索してみてください。
中小企業診断協会が2018年度に発表した資料に、会社員が中小企業診断士として有償の副業に取り組んだ事例が紹介されています。
兵庫県中小企業診断士協会に所属する青山雄一郎氏の報告です。
報告書によると、青山氏が副業として取り組んだ仕事内容は、顧問型支援、スポット型支援、専門家派遣、セミナー講師でした。
このうち顧問型支援では下記のような業務を行っています。
青山氏の勤める会社では、副業は禁止ではなく「許可制」となっていました。
中小企業診断士としての活動を始める前に、規定の申請を行い、許可を得た上で業務を開始したそうです。
なぜ会社が副業を認めたかというと、下記のような理由がありました。
副業を開始する際は、勤務先の規定に反していないこと、場合によっては勤務先に相談して理解を得ることで、トラブルを予防できます。
青山氏はコンサルティング業務を成功報酬型で請け負っていたそうです。
診断士側は本業で収入を得ているほか、自己研鑽や資格維持の条件を満たすという目的もあるので、即金性にこだわっていない人もいるようです。
コストをあまりかけられない創業者や小規模事業者によって、成果の出た分に比例した支払い額に抑えられるのは大きなメリットです。
青山氏の例では、以下のようなきっかけで顧問契約を結んだそうです。
中小企業診断士として活動の幅を広げるためには、同業者同士の横の繋がりも大切といえるでしょう。
会社が副業禁止の場合でも、スキルを活かす機会を作って自己研鑽したい中小企業診断士は多くいます。
また、資格の維持には実務従事ポイントをためる必要もあり、こうしたニーズを満たすためにはプロボノという道もおすすめです。
プロボノとは、ラテン語の「公共善のために」という言葉に由来していて、ボランティアと同じような意味合いです。
自身のスキルや資格を活かして社会貢献する取り組みのことを指します。
プロボノのメリットは、人脈が広がることや、自身のスキルアップにつながることです。
また、本業では実務従事ポイントを獲得できず、副業も禁止されている場合、プロボノが実務従事ポイントを積み上げていく貴重な機会になるでしょう。
プロボノのデメリットは時間的、体力的な負担がかかる点です。
安易に大量の案件を請け負うとキャパオーバーしてしまう可能性があるので注意しましょう。
中小企業診断士がプロボノの案件を獲得するには、案件を紹介している団体に所属することがおすすめです。
一例として「神奈川県中小企業診断協会」では中小企業診断士が社会貢献をするための自助グループを立ち上げています。
興味のある方は、お住まいの近くの中小企業診断士の団体を探してみてください。
【参考】神奈川県中小企業診断協会「診断士プロボノネットワーク」
今回は、中小企業診断士の5種類の副業やプロボノ(ボランティア)について紹介してきました。
ダブルワークは決して簡単ではありませんが、副業でスキルを磨き経験を積めば独立への道も開けます。
自分に合いそうな副業のスタイルを見つけて、少しずつ経験値を上げていきましょう。
監修 市岡 久典
中小企業診断士 |
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