まず、情報セキュリティマネジメント試験(SG)とはどのような試験であるか解説します。
情報セキュリティマネジメント試験の試験そのものの概要や試験の実施形式、出題形式や配点・合格点といった基本的な情報を見ていきましょう。
試験実施団体のIPAによれば、情報セキュリティマネジメント試験は「情報セキュリティマネジメントの計画・運用・評価・改善を通して組織の情報セキュリティ確保に貢献し、脅威から継続的に組織を守るための基本的なスキルを認定する試験」とされています。
つまり、資格というよりも、合格者のスキル・知識を証明する試験と考えるのがイメージと近いでしょう。
情報処理技術者試験の合格により証明できるスキルは就職・転職の市場において価値を持ちます。
高いレベルに位置する希少性・専門性の高い資格は特定の分野のスペシャリストとしてのキャリアアップに活用できます。
その一方、基本的なレベルに位置する資格は、一定レベルの知識、スキルを持っていることを証明するとともに、今後より専門性を高めていくための土台を持っていることを証明できます。
スキルレベル2に相当する情報セキュリティマネジメント試験の場合、後者に該当すると考えるのが一般的です。
情報セキュリティマネジメント試験は「CBT方式」と呼ばれる形式で受験する試験です。
試験会場に向かい、会場に設置されているコンピュータに座り、画面に出題される問題に対して回答を行っていく形式で実施されます。
令和2年の試験より、CBT方式で上期(6月)と下期(12月)に試験が実施されていましたが、令和5年4月から、通年で受験できるようになりました。
試験の内容は多肢選択式(四肢択一)の科目A試験と、多肢選択式の科目B試験で構成され、制限時間120分の中でA試験、B試験両方、合計60問を回答します。
以前の形式では「午前試験」「午後試験」が実施されていましたが、試験制度変更で受験にかかる時間も短縮されました。
正式な合格発表は後日となるものの、解答終了時点で即時採点が行われ、総合点はその場で確認することが可能です。
合格基準も600点 / 1000点と公表されているため、試験の合否そのものは受験終了時点でおおよそ確認することができます。
ただし、他の受験者の得点などから試験の難易度が従来の想定と著しく異なっていると判断された場合、調整が行われることもあります(過去2019年秋期の午後試験で一度だけ調整が行われたことがあります)。そのため、後日行われる正式な合格発表を必ず確認しましょう。
実務経験や年齢など受験資格の制限がない情報セキュリティマネジメント試験ですが、実際どのくらいの難易度なのでしょうか。
他のIT系の資格との比較や合格に必要と言われている学習時間の目安から解説します。
情報セキュリティマネジメント試験は「情報処理技術者試験」の中のカテゴリの中の一つです。
情報処理技術者試験は経済産業省が認定する国家試験であり、合格者の受験番号は政府が発行する機関誌である官報に記載されます。
難易度によって4つのスキルレベル(CCSFレベル)に分類され、情報セキュリティマネジメント試験はスキルレベル(CCSFレベル)2に位置します。
スキルレベル(CCSFレベル)2は基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験の2つであり、スキルレベル(CCSFレベル)1に位置するのはITパスポートのみ。
数ある情報処理技術者試験の中でもどちらかといえば基礎的なレベルにあると言えます。
スキルレベル(CCSFレベル)1のITパスポートは「IT資格の登竜門」と呼ばれており、社会人だけでなく大学生や高校生も受験するような位置づけの試験です。
ITの基礎的なスキルの証明にはなりますが、年間で十万人単位の資格取得者が輩出されるため、合格者に希少性がある試験ではありません。
情報セキュリティマネジメント試験は、出題範囲は若干異なりますが、ITパスポート試験よりスキルレベルが1つ上の難易度であり、情報セキュリティマネジメントに関する知識やスキルの証明が可能です。
初心者や若手社会人、学生が今後のキャリアアップを目指すにあたっては、合格を目指す価値が十分にある試験と言えるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験は初心者からでも合格を目指せる難易度でありながら、一定の能力の証明ができ、他者との差別化を図れる試験なのです。
情報セキュリティマネジメント試験に合格するために必要な学習時間は、一般的には200時間程度と言われています。
仮に平日2時間土日に5時間ずつ程度の学習時間を作れる場合、3カ月前後の期間で合格できる計算です。
ゼロから3カ月程度で合格を目指せることから、IT知識のない初学者にとっても比較的取り組みやすい難易度と言えるでしょう。
なお、200時間というのは知識のない場合を前提としており、業務の中で一定の知識がある場合や大学の講義などで学習している場合は、必要な学習時間は短縮できる傾向にあります(一般には150~180時間程度といわれています)。
とはいえ、もちろんただ漫然と200時間学習すれば必ず合格できるといったものではありません。
しっかり教材を揃えて学習計画を立てること、知識や解答を丸暗記するのではなく、応用的な出題がされても解答できるよう、ひいては合格後に現場で活用できるよう出題される内容を理解する必要があります。
逆に言えば、集中して学習に向き合い、効率的に知識を積み重ねて行くことにより200時間未満の学習時間であっても合格ラインに到達できる可能性も十分にあるのです。
時間を絶対的な基準として考え、学習時間を確保することを目的とするのではなく、「200時間」をあくまで目安とした効率的かつ本質的な学習を重ねていくことが最も重要です。
情報セキュリティマネジメント試験の合格率は、年度によっては大きく変動することもありますが、近年では概ね50%~60%程度の水準にあります。
情報処理技術者試験のカテゴリの中で見ても、合格率は最も基礎的なCCSFレベル1に属するITパスポート試験に近い水準です。
情報セキュリティマネジメント試験と同じくスキルレベル(CCSFレベル)2に属する基本情報技術者試験の合格率は平均的に30%弱程度。
同レベルの試験に分類される試験と比較した場合に、合格率の高い試験であることがわかります。
情報セキュリティマネジメント試験は国家試験に分類され、その資格取得は保有している知識・スキルの証明として有効にアピール可能です。
ITパスポートは毎年数十万人単位の新規資格取得者が輩出されるのに対し、情報セキュリティマネジメント試験の新規合格者は直近で例年15,000人程度(※コロナ禍で試験が1回しか開催されなかった2020年度を除く)であり、ITパスポートと比較すると証明できるスキルのレベルが高いだけでなく、資格取得者としての希少性も高いと言えます。
情報セキュリティマネジメントは資格の取得難易度と比較して相対的に市場価値の高い資格であることから、費用対効果を考えても取得する魅力が十分にある資格と言えるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験は資格としてどのくらい認知されているのでしょうか?結論としては情報セキュリティマネジメント試験は歴史が浅く、誰もが知るような試験であるとまでは言い難いです。
情報セキュリティマネジメント試験の対象者や、まだ知名度が十分でない中で有効活用する方法を解説します。
情報処理技術者試験を管轄するIPAによると、情報セキュリティマネジメント試験の受験対象者は以下のように記載されています。
この記載から見るとITパスポートからステップアップしたい方や、非IT分野の業種の中で情報セキュリティを取り扱う担当者(情報システム部署など)の方、もしくはそういったキャリアアップ・キャリアチェンジを考えている方が目指すべき資格であることがわかります。
情報化社会の中で、業界業種問わず個人情報をはじめとする情報管理は全ての企業にとって必須と言っても過言ではありません。
情報セキュリティマネジメント試験に合格していることは企業において守りの要でもある情報の扱いについて一定の知識・スキルを有している証明となり、あらゆる業種の企業にとって重宝することが考えられるのです。
非IT業界においては情報セキュリティに関する一定の知識・スキルを有していることは他の人材と比較して付加価値になりやすく、キャリアアップのための武器として活用できることが期待されます。
情報セキュリティマネジメント試験はIT業界における更なるステップアップとしても、非IT業界における業界知識以外の付加価値としても活用できると言えるでしょう。
上記の対象者像を想定した情報セキュリティマネジメント試験ですが、まだ歴史も浅く十分に認知が広がっているとは言い難いのが現状です。
取得していることがマイナスに扱われることはまずないですが、業界や企業によっては思っていたよりも評価されないといったことはあるかもしれません。
そのような中で情報セキュリティマネジメント試験を活用する2つの方向があります。
1つは、より上位の資格や関連する資格の取得を見据え、情報セキュリティマネジメントでセキュリティ分野の基礎を固める方法です。
情報セキュリティマネジメント試験に合格することは、より上位の情報処理技術者試験に合格する足掛かりになります。
また、より実務に密接なベンダー系の資格を取るにあたっても基礎となる部分は共通するため、基礎固めとしては十分に活用できるでしょう。
もう1つはIT以外の業種に対して打ち出す方法です。
情報セキュリティマネジメント試験で求められる知識・スキルはIT以外の業種でもビジネスを展開するにあたって必須のものと言えます。
情報セキュリティマネジメントの資格取得は「ITに強い現場担当者」もしくは「情報システム担当者」と言った立ち位置での付加価値をアピールできます。
そのような形での活用を目指す場合、情報セキュリティマネジメント単体で資格を活用するというよりは、業種で求められる資格をメインに取得しつつ、情報セキュリティマネジメントを付加価値としてアピールすることが有効です。
情報セキュリティマネジメント試験はIT系の試験の中では比較的基礎的なレベルに位置し、初心者が独学で合格を目指すことも十分に可能な試験です。
情報セキュリティマネジメント試験に独学で合格できるためのおすすめの効果的・効率的な勉強法について解説します。
初心者が独学する場合、まずは参考書などのテキストを一冊最初から最後までしっかり理解するまで読み込むことが重要です。
テキストを一通り読み込むことで、得点するために必要な知識を一通り得られるだけでなく、出題範囲の全体像を把握することもできます。
テキストをしっかりと読み込んだ後、付属の問題やIPAが公開している過去問、サンプル問題などの問題演習に取り組んでいきましょう。
問題を解いてみると最初にテキストを読み込んだ中で覚えきれていなかったり、理解が不十分だった部分が浮き彫りになります。
問題の正解を丸暗記するのではなく、問題文の内容を解説を読み込んで理解するとともに、もう一度テキストに戻って改めてインプットし直すことで、さらに理解が深まります。
このように「知識をつける」→「問題演習する」→「間違えたところ、理解が不十分なところを再び学習する」→「本当に理解できたか問題演習する」といった流れを繰り返すことで理解が深まり、試験の得点に結びつくだけでなく、実際の業務にも生かせるようになるのです。
なお、「科目B試験」については旧試験の「午後試験」と出題範囲は同一であるものの、出題形式や時間配分(新試験では科目A試験、科目B試験を一度の試験で回答します)が大きく異なります。
そのため、サンプル問題を解いて新しい出題形式に慣れることに加えて、解答時間のペース配分についても意識しながら問題を解くことが重要と言えるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験の学習の順番としては科目A試験の試験対策を固めた上で科目B試験の対策をするのが効果的、かつ効率的です。
科目B試験の試験は科目A試験に対していわば応用的な位置づけと言えますが、解答の前提となる基礎知識や用語については、科目A試験の学習の中でほぼ全ての範囲がカバーできます。
そのため、科目A試験の対策でしっかりと基礎を固めることは、科目A試験の得点に直接結びつくだけでなく、科目B試験の得点に結びつく前提知識を理解する学習にもなるのです。
逆に、科目A試験の学習が不十分な段階で科目B試験の対策を行ったとしても、そもそも書いてある内容が理解できなかったり、登場する用語が理解できない可能性があります。
その段階で学習を進めようとしても、逐一単語を調べたり、内容を理解することに時間を使ってしまったりする可能性が高いため、効率的な学習とはなりません。
また、科目A試験の対策の中で単に「科目A試験の得点を取る」ことを目的とするのであれば、いわゆる回答の丸暗記でも一定の成果はでるかもしれません。
しかし、そのような学習では、応用問題である科目B試験で得点することは難しいですし、なにより資格を取得した後、実務の世界で活かすことができないかもしれません。
科目A試験の学習を単に試験に合格するためだけの学習ととらえず、その先にある実務での活用、更なるキャリアアップへの土台ととらえ、しっかりと理解しながら進めていくことが大切です。
情報セキュリティマネジメント試験は難易度や求められる学習時間から考えても初心者が独学で学習しても合格を目指すことは十分に可能です。
しかし、日々忙しい中でしっかりと学習時間を確保し、着々と学習を積み重ねて行くのは簡単なことではありません。
独学で理解できない部分でつまずいてしまったり、モチベーション管理が難しいことも考えられます。
全て独学で対応するのが難しいと思いつつも、資格のために予備校にまでは通えない方には、通信講座がおすすめです。
通信講座であれば、webブラウザやスマホから体系的に整理された講義動画を視聴することにより、効率的なインプットができます。
特にスマホは持ち運びが可能なため、通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を活用した学習も可能であり、まとまった時間の確保が難しくとも小さな時間の積み重ねで学習を進めることが可能です。
一つの教材の中で分析しつくされた演習問題に取り組むアウトプットが可能であり、弱点分野の重点的な見直しがしやすい点もメリットと言えるでしょう。
さらに、わからない部分は質問できたり、専用サイトを通じて他の受講生と交流する中でモチベーション維持がしやすいといったメリットも挙げられます。
予備校に通うのに比べ時間や予算面でのコストがかからない上に効率的に学習が進められるため、効率的かつ経済的な方法であると言えるでしょう。
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