そもそも情報セキュリティマネジメント試験ってどんな試験?
情報セキュリティマネジメント試験は、国家試験「情報処理技術者試験」の新たな試験区分として、平成28年度(2016年度)春期から開始されることになった国家試験です。
以下の2つを軸にして、情報セキュリティマネジメントについて解説します。
- 日々進化する脅威から継続的に組織を守り、組織のセキュリティの確保に貢献できる能力を認定する試験
- 企業や官公庁、教育機関の仕事で活用事例がある
機密情報を守り、セキュリティの確保に貢献できる能力を認定する試験
情報セキュリティマネジメント試験は、企業の機密情報を守り、セキュリティの確保に貢献できる能力を認定する国家試験です。
主催団体であるIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の試験区分では、情報セキュリティマネジメント試験は、「スキルレベル2」に該当します。
スキルレベルとは、IPAが公表している共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)という区分で、IT関連の各資格を以下のようにレベル分けしています。
試験名 |
スキルレベル |
ITパスポート試験(IP) | スキルレベル1 |
情報セキュリティマネジメント試験(SG) | スキルレベル2 |
基本情報技術者試験(FE) | スキルレベル2 |
応用情報技術者試験(AP) | スキルレベル3 |
情報処理安全確保支援士試験(SC) | スキルレベル4 |
情報セキュリティマネジメント試験は、開発者や技術者向けというよりも、主にエンドユーザー(IT利用者)向けの試験といえます。
参考までに以下の図で、情報セキュリティマネジメント試験やITに関連するその他の国家試験・国家資格の試験区分を把握しておきましょう。
【引用】IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「午前Ⅰ試験免除 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験」
情報セキュリティマネジメント試験は、受験資格がなく、誰もが挑戦できる国家試験です。
コンピュータを使って受験するCBT(Computer Based Testing)方式で、受験者が都合の良い日時を選択して受験できる通年受験となっています。
試験では「科目A試験・科目B試験」という多肢選択式の問題を60問解いていき、1,000点満点で600点を取れれば合格となります。
情報漏えいや企業に対するサイバー攻撃といった問題が広がりを見せることから、情報セキュリティマネジメント試験の需要は、今後ますます高まっていくことが予想されます。
企業や官公庁、教育機関の仕事で活用事例がある
情報セキュリティマネジメント試験は、企業や官公庁、教育機関の仕事で活用事例があることから、現場で役立つ有用な試験であるともいえます。
たとえば、ある大手企業のIT部門ではセキュリティの確保は事業や企業にとって最重要課題の一つであると捉え、情報セキュリティマネジメント試験の受験を推奨し、サポートも行っています。
情報セキュリティマネジメント試験を従業員のスキルアップや実力診断の一つとして活用することで、セキュリティへの意識や知識向上に役立てることが可能です。
また、多くの顧客情報を取り扱うこととなる金融機関のなかには、情報漏えい対策や職員の意識向上の一環として、情報セキュリティマネジメント試験の受験を奨励し、合格者には奨励金を支給するというところもあります。
このように、情報セキュリティマネジメント試験の資格取得が、企業のセキュリティ強化やITリテラシーの向上に果たす役割は大きいといえるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験の合格者が仕事でできることって?
ここでは、情報セキュリティマネジメント試験の合格者が、実際の仕事でできることについて紹介していきます。
会社・組織の情報セキュリティを確保し、脅威から守る
情報セキュリティマネジメント試験の合格者が仕事でできることは、大きく言えば、会社・組織の情報セキュリティを確保し、脅威から守るということです。
より詳細にいうならば、以下の3つになります。
- 情報セキュリティ意識を高め、情報漏えいのリスクを低減する
- トラブルが発生しても、適切な事後対応で被害を最小限に食い止める
- 情報セキュリティを確保することで、安全かつ積極的なIT利活用を実現する
インターネットが普及し、あらゆる業界でIT化が進んだ結果、企業へのサイバー攻撃や情報漏えいといった問題が広がりを見せています。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、リモートワークを導入する企業も増加しました。そのため、これまで以上に情報セキュリティマネジメント人材は、業種や職種を問わず多くの現場で強く必要とされています。
情報セキュリティマネジメント試験に合格するとメリットがあるのはどんな人?
情報セキュリティマネジメント試験に合格するとメリットがあるのはどんな人なのか、以下の2項目で紹介していきます。
- 職種・業種を問わず、個人情報や情報管理を扱う人は特に価値を感じられる試験
- ITパスポートからのステップアップを目指す人にもおすすめ
それぞれについて、詳細を見ていきましょう。
職種・業種を問わず、個人情報や情報管理を扱う人は特に価値を感じられる試験
まず情報セキュリティマネジメント試験は、職種・業種を問わず、個人情報や情報管理を扱う人なら特に価値を感じられる試験だといえます。
具体的に価値を感じられるのは、次のような方です。
- 業務で個人情報を取り扱うの方
- 業務部門・管理部門で情報管理を担当するの方
- 外部委託先に対する情報セキュリティ評価・確認を行う方
- 情報セキュリティ管理の知識・スキルを身に付けたい方
情報セキュリティマネジメント試験はIT業界でしか使えないように思う方がいるかもしれませんが、一般企業でも業種や職種に関わらず、十分有用です。
また、情報管理における基本的知識や技能を習得できるため、営業・総務・人事・経理・企画・製造などの部門を問わず、あらゆる場面で役立つことでしょう。
ITパスポートからのステップアップを目指す人にもおすすめ
情報セキュリティマネジメント試験は、ITパスポートからのステップアップを目指す人にもおすすめです。
IPA(情報処理推進機構)の以下の試験区分をおさらいすると、その理由が分かるでしょう。
試験名 |
スキルレベル |
ITパスポート試験(IP) | スキルレベル1 |
情報セキュリティマネジメント試験(SG) | スキルレベル2 |
基本情報技術者試験(FE) | スキルレベル2 |
応用情報技術者試験(AP) | スキルレベル3 |
情報処理安全確保支援士試験(SC) | スキルレベル4 |
IT利用者側の「スキルレベル2」に相当する情報セキュリティマネジメント試験は、「スキルレベル1」のITパスポート試験の上位資格となっています。
それゆえ、ITパスポート試験で学んだ知識や情報が、情報セキュリティマネジメント試験にも生かせるため、ITパスポート試験からステップアップしようと考えている人にもおすすめというわけです。
また、情報セキュリティマネジメント試験の合格を目指す人が、まず基礎的な知識を身につけるためにITパスポート試験から取り組むというのも一つの手でしょう。
情報セキュリティマネジメント試験は就職・転職にどれだけ役立つの?
情報セキュリティマネジメント試験は就職・転職にどれだけ役立つのか、以下の2点から考察していきます。
- 就職試験での評価は未知数だが、アピールする価値のある試験
- 得られる情報セキュリティ知識にこそ価値がある試験
就職試験での評価は未知数だが、アピールする価値のある試験
情報セキュリティマネジメント試験は、業務独占資格でもなく、基本情報技術者試験の合格者が「この資格を持っている人はプログラミングの基礎知識を持っている」と認知されるような、業界内での認知・信頼性が確立された試験ではありません。
したがって、就職活動・転職活動において必ずしも評価が高いとは言い難いのが現状です。
しかし、情報セキュリティ分野への世間の注目度は高いため、この試験に合格したことで自分が得た知識・スキルをしっかりアピールすることは、就職・転職活動でプラスに働くことが考えられます。
たとえば、情報セキュリティマネジメント試験の資格取得を履歴書に記載することで、情報セキュリティについて高い意識があることをアピールできるだけでなく、国家試験に取り組んだという事実から、今後の学びに対する姿勢や努力を評価してくれる面接官もいるはずです。
また、情報セキュリティマネジメント試験と関連した基本情報技術者試験などの資格をダブルライセンスとして取得することによって、IT業界に対してもより効果的なアピールができるようになります。
得られる情報セキュリティ知識にこそ価値がある試験
情報セキュリティマネジメント試験に合格したからといって、就職や転職にダイレクトに結びつくわけではありませんし、IT関連の会社や職種につきやすくなるといった保証があるわけでもありません。
それならば、情報セキュリティマネジメント試験に合格する意味はないのか?
答えはNOです。
情報セキュリティマネジメント試験は、合格までの学びを通して得られる情報セキュリティ知識にこそ価値がある試験だといえます。
なぜなら、ITに関する基礎・基本の知識やスキルを身につけることで、今後幅広いフィールドで活躍する可能性が高まるからです。
IT化が進んだ現代社会においては、程度の違いはあれど、ITを使わない企業は皆無といっても良いでしょう。
そのため、あらゆる企業で情報セキュリティの基礎・基本の知識やスキルの習得、セキュリティ対策が求められており、企業にとってITリテラシーを持った従業員は欠かすことのできない存在となっています。
早い段階から情報セキュリティマネジメント試験の資格を取得しておけば、他者との差別化を図れるだけでなく、これからのキャリアパスに有利に働くこととなるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験の合格が生かせる仕事って?
最後に、情報セキュリティマネジメント試験で得た知識が生かせる仕事について、具体的に以下の2つの観点から解説していきます。
- IT技術者・開発者ではなく、IT利用者側の仕事でも活躍できる
- 社内や顧客からの情報セキュリティ相談に乗れる存在を目指せる
一つずつ詳しく紹介していきます。
IT技術者・開発者ではなく、IT利用者側の仕事でも活躍できる
情報セキュリティマネジメントの知識やスキルがある人は、IT技術者・開発者ではなく、IT利用者側の仕事でも活躍することができます。
企業のシステム担当者や情報セキュリティ担当者だけでなく、総務、人事、経理、営業パーソンなど企業や組織の情報を取り扱う全ての人にとって、情報セキュリティマネジメントの知識やスキルは役に立つといえるでしょう。
たとえば、自社のメールアドレスに取引先の金融機関から次のようなタイトルのメールが届いたとします。
- 【〇〇銀行】お客様の直近の取引における重要な確認について
自社が利用しているメインバンクからのメールであれば、特に疑いもせずに開封してしまうのではないでしょうか。
文面を読み進めていくなかで、不審な点に気付ければいいのですが、もし誤って偽サイトへ誘導されてしまった場合、企業の機密情報漏えいや金銭の搾取にあってしまい、企業に多大な損害を与えてしまうかもしれません。
情報セキュリティマネジメントの知識を有する人であれば、メールを開封したとしても、何かしら違和感を感じればメールを精査し、以下のような点が見つけられれば、このメールが「なりすましメール」だと気付き、必要な対応を取るはずです。
- メールアドレスやURLの綴りが公式のものと違う
- メール文面の日本語が不自然でぎこちない
こうした知識は、開発者や技術者に限ったものではなく、むしろ、ITを利用する側のすべての人にとって必要なものであり、あらゆる業界や職種で役立つものとなります。
社内や顧客からの情報セキュリティ相談に乗れる存在を目指せる
情報セキュリティマネジメント試験の資格を取得することで、社内や顧客からの情報セキュリティ相談に乗れる存在を目指せるという利点があります。
資格の取得は、情報セキュリティに関する一定の知識とスキルを有するという証明になり、顧客からの信頼を獲得しやすくなるはずです。
また、国家資格を持つことで、自分自身に箔をつけられますし、周りからの評価も高くなるでしょう。
さらに、IT関連の知識を活かして営業する際の提案に生かしたり、部署内の社員教育を担当したりするなど、対外的にも対内的にも頼られる存在となり得るのです。
まとめ
今回の重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- 情報セキュリティマネジメント試験は、誰もが挑戦できる国家試験
- 職種や業種を問わず、あらゆる場面で活かすことが可能
- 就職・転職に直接有利に働きはしないが、間接的なアピール材料となる
- 情報セキュリティマネジメント試験の資格取得で、頼りにされる人材になり得る
あらゆる業界でIT化が進み、玉石混合の情報を取り扱う現代において、社会人として働くすべての人が情報セキュリティマネジメント試験の対象です。
試験で習得したことは、様々な場面で活用できますし、今後のビジネスパーソンとしての成長にも生かせるでしょう。
これからの社会でなくてはならない人材となれるよう、まずは第一歩として「スタディング 情報セキュリティマネジメント講座」を受講してみてはいかがでしょうか。
一流講師によるわかりやすい動画講義がスマートフォン一つで受講でき、忙しい方でもスキマ時間を効率的に活用して、合格を目指せる仕組みになっています。
興味を持った今が一番の始め時です。今すぐ行動に移して、新たな自分に出会いにいきましょう!