賃貸不動産経営管理士とは、賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持ったプロフェッショナルです。
賃貸不動産経営管理士の概要を、以下の2つの観点から詳しく解説します。
2021年4月21日の国土交通省令により、賃貸不動産経営管理士は国家資格となりました。
そもそも、賃貸不動産経営管理士が国家資格になったのは、以下のような背景があります。
賃貸不動産経営管理士は2007年にスタートした資格制度です。
資格制度スタート当初は、賃貸不動産の管理を適切に行える人材であることを証明する民間資格でした。
これまで住宅は持ち家の住宅が一般的で、賃貸住宅については法整備がすすめられていませんでした。
しかし、ここ数年賃貸住宅市場は拡大し、より複雑になっています。
賃貸住宅市場が変化している要因は、主に次の2つです。
従来、賃貸住宅の管理はオーナーが自ら行うのが一般的でした。
しかし、オーナーの高齢化や不動産投資の増加によって、いわゆる「また貸し」と呼ばれるサブリースが増えています。
サブリースでは契約条件の誤認が起こりやすく、オーナーと入居者、管理業者とのトラブルが多発しがちです。
また、少子高齢化や晩婚化による独身世帯の増加、外国人居住者の増加などに伴い、賃貸住宅のニーズは増加傾向にあります。
しかも、求められている賃貸住宅の契約形態や管理方法は変化しつつあります。
こうした背景から、不動産業者による賃貸住宅の管理方法を適正化するために、賃貸不動産経営管理士の資格が国家資格となったのです。
2013年に4,000名程度だった受験者数は、国家資格となった2021年に約32,000名となり、賃貸不動産経営管理士の受験者数は年々増加傾向にあります。
ちなみに、受験者の状況によって賃貸不動産経営管理士の資格が、国家資格となるための条件が変わってきます。
以下の表で確認しておきましょう。
受験者の状況 | 国家資格となる条件 |
2020年までの試験に合格し、資格登録も済んでいる | 2022年6月までに業務管理者移行講習を修了
(2022年6月15日に本講習は終了) |
2021年以降の試験に合格 | 資格登録を行う |
賃貸不動産経営管理士の資格取得は、「業務管理者」になるための要件の1つになっています。
業務管理者とは、入居者とオーナーとの間に立ち、賃貸住宅の管理業務において適正な運営を行う専門家です。
その業務内容は、入居者の募集に始まり、重要事項の説明、賃貸借契約の締結、空室の管理、クレームやトラブルの対応、契約終了時の退去立ち会いなど、多岐に渡ります。
業務管理者が必要な理由は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の第12条で以下のように定められています。
第十二条 賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、一人以上の第四項の規定に適合する者(以下「業務管理者」という。)を選任して、当該営業所又は事務所における業務に関し、管理受託契約(管理業務の委託を受けることを内容とする契約をいう。以下同じ。)の内容の明確性、管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性その他の賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施を確保するため必要な国土交通省令で定める事項についての管理及び監督に関する事務を行わせなければならない。
出典:e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第十二条」
業務管理者の設置義務は、全ての賃貸住宅管理業者に適用されるわけではありません。
賃貸住宅管理個数(自己所有物件の管理除く)が200戸以上の賃貸住宅管理業者に対して適用となることも、押さえておきましょう。
賃貸不動産経営管理士の仕事内容は、広範囲かつ細かな業務にまで及びます。
以下の2つの側面から、その仕事内容をご紹介します。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅全般に関する業務を行います。
具体的な業務内容は、オーナーへの入居者募集に関する提案、入居審査、入居者が安心して暮らせるようサポートする賃貸不動産の管理、契約終了・更新時の対応など多岐に渡ります。
賃貸不動産経営管理士はわかりやすくいうと、入居者やオーナーに適切なアドバイスとフォローをしてくれるコンサルタントのような存在だといえるでしょう。
賃貸不動産経営管理士は、業務管理者としての役割も担います。
業務管理者の役割は、以下の管理及び監督を行うことです。
賃貸不動産経営管理士になるには、2つの要件を満たす必要があります。
試験に合格しただけでは賃貸不動産経営管理士にはなれず、合格後に登録が必要であることを覚えておきましょう。
賃貸不動産経営管理士になるには、まず毎年11月に実施される資格試験に合格しなければなりません。
受験資格はないので、不動産業界で働いた経験のない人や学生でも挑戦できます。
出題範囲は、管理業務、賃貸契約、建物、設備に関する基本知識など多岐にわたり、実務で欠かせない知識を問う内容となっています。
不動産関連法規の基礎知識がなければ正答できない問題が多いので、実務経験がない人にとっては難しいかもしれません。
試験は全50問・四肢択一方式。試験時間は120分です。
令和5年度試験は28,299名が受験し、合格者は7,972名。合格率28.2%という結果でした。
賃貸不動産経営管理士として業務を行うためには、試験合格後に賃貸不動産経営管理士として「賃貸不動産経営管理士協議会」に登録する必要があります。
資格登録には、以下の要件のいずれかを満たさなければなりません。
(※)2.は実務経験2年とみなす講習(賃貸住宅管理業務に関する実務講習)の修了をもって代える者等を指します。
登録料は6,600円(税込)で、登録の有効期限は5年間です。
登録に関して、2024年1月以降、資格登録申請時に賃貸不動産経営管理士試験の合格から1年以上が経過している場合には、賃貸不動産経営管理士登録講習の受講が必要となりました。
合格後、登録が済んでいない方は注意しましょう。
賃貸不動産経営管理士になるメリットは、主に以下の3つです。
ひとつずつ解説していきます。
1つ目のメリットは、不動産業界でのキャリアアップや就職に有利だということです。
賃貸不動産経営管理士の資格取得は、賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持ったプロフェッショナルであることを証明するだけでなく、他者との差別化を図る有力なツールとなります。
不動産業界を中心に就職や昇格、昇給などの際に有利に働くでしょう。
また、賃貸不動産経営管理士の資格は実用性が高いので、就職活動中の学生にとって大きな武器となります。
不動産業界での活躍を望むなら、賃貸不動産経営管理士はぜひとも視野に入れておきたい資格です。
2つ目のメリットは、不動産経営に役立つということです。
賃貸不動産経営管理士になる過程で、一般の方ではなかなか勉強する機会のない賃貸経営に関する不動産経営の場面で大いに役立ちます。
賃貸経営に関する知見は、入居者の集客や建物の管理、空家対策、節税に活用できます。
さらに、賃貸住宅の収益性を向上させたり、トラブルを未然に防げたりするなど、不動産経営をより成長させることが期待できるでしょう。
3つ目のメリットは、ビジネスチャンスにつながるということです。
賃貸不動産経営管理士の資格は、不動産管理業者だけにとどまらず、損害保険、生命保険、信託銀行といったさまざまな業界でも応用が効きます。
なぜなら、賃貸不動産経営管理士の資格を持っていることで、賃貸不動産に関する知識を持つ専門家であると客観的に示すことができ、入居者とオーナーの双方からの信頼を得やすくなるからです。
保険の営業をしている方や金融関係でこれからステップアップしていきたいと考えている方にとって、持っておいて損のない資格といえるでしょう。
ここまで、賃貸不動産経営管理士の概要や仕事内容、賃貸不動産経営管理士になるための要件、メリットについて解説してきました。
重要なポイントをおさらいしておきましょう。
賃貸不動産経営管理士の資格は、国家資格になったことで、今後ますます需要が高まると予想されます。
年齢やこれまでのキャリアといった受験要件もなく、国家資格のなかでは比較的取得の難易度が低いことから、誰にでも資格取得のチャンスがあるといえます。
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