危険物取扱者乙種4類（以下、危険物乙4）の合格率は、令和4年度、5年度ともに30％前半まで低下しており、難しくなったとの声が聞かれます。
合格率の低下は高水準な年との調整と言われ、難易度の高さは一時的と見られます。
他の乙種と比較しても合格率は低いですが、効率の良い学習契約や勉強方法を知れば、短期合格も可能な資格です。この記事では、危険物乙4の試験内容が難しいと言われる理由、一発合格に必要な学習方法、やる気がでない時期の乗り越え方について解説します。
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危険物取扱者乙種4類は年々難しくなっている？合格率の推移から解説
危険物乙4の合格率は令和4年度が31.9%、5年度が32.0％と、2年続けて低い水準を記録しました。
原因は高い合格率が続いた後の調整と考えられます。
| 受験者数 | 合格率 | |
| 平成23年 | 294,348 | 34.0 |
| 令和元年（平成31年） | 221867 | 38.6 |
| 令和2年 | 200,876 | 38.6 |
| 令和3年 | 234,481 | 36.1 |
| 令和4年 | 171,816 | 31.9 |
| 令和5年 | 175,215 | 32.0 |
危険物乙4は、他の乙類と比較して合格率が30〜40％台と低いです。
危険物乙4の人気は突出して高く、受験者数に比例して不合格者も多い点が、低水準の原因とされてきました。
しかし、平成23年度は29万人超の受験者数に対し、合格率は34.0％と高くはありません。
令和4年度の受験者数は約17万人ですが、10万人超の下降に比べ、合格率は数パーセントの変動のみです。
一方で、受験者数が約20万人の令和2年は、38.6％と平成23年度より高水準の結果です。
上述した状況から、必ずしも受験者数の多さが合格率を低下させたとは言えません。
上昇した合格率の調整を目的に、試験が難しくなったと考えられます。
合格率の下降は需要への供給不足を招くため、今後は上昇傾向に転じる可能性もあります。
合格率のアップダウンに左右されず、堅実な学習の継続が重要です。
【あわせて読みたい】危険物取扱者乙種4種の難易度と合格率
危険物取扱者乙種4類が難しい理由とは？
危険物取扱者の中で、危険物乙4以外の合格率は60％超と、高い水準で推移しています。
危険物乙4の合格率は30〜40％と低く、10人中3〜4人しか合格できません。
合格率の低さには、試験を高難易度にしている5つの理由があります。
- 覚えるべき専門用語や化学式が多く理解が難しい
- 法令問題は暗記だけでは対応できない応用力が必要
- 物理・化学の基礎知識がないと理解しづらい計算問題
- 似た内容の選択肢で混乱しやすい出題形式
- 試験では見たことがない問題が出る
難易度を高めている5つの理由について、詳しく解説します。
覚えるべき専門用語や化学式が多く理解が難しい
危険物乙4の試験には、普段は触れない専門用語や化学式が出題されます。
ガソリンや軽油を含めた液体危険物には、安全に取り扱うための知識・専門用語が欠かせません。
また、処理には基礎的な科学の知識を要するため、化学式や化学反応の習得も必要です。
化学式は義務教育で履修しますが、日常で化学や物理に触れなければ、馴染みがないまま忘れてしまいます。
このため、最初はテキストを見ても意味を読み取れず、敷居の高さを感じる人も少なくないです。
出題される専門用語や化学式を調べ、ひとつずつ履修すれば、徐々に問題が解けるようになります。
しかし、必要な用語を覚え、頭を慣らすところに行きつかず、挫折してしまう人もいます。
危険物乙4の難易度の高さは、化学や物理に馴染むことの難しさとも言えます。
法令問題は暗記だけでは対応できない応用力が必要
法令問題は、暗記だけでなく現場で実践できる応用力を求められます。
法令とは、危険物の扱いに関するルールを指します。
危険物は状況ごとに法律が定められ、ルールを順守してこそ安全な取り扱いが可能です。
法律の暗記に加え、状況に応じた法律の解釈・遵守ができる力が必要となります。
暗記はテキストの読み込み、語呂合わせを繰り返せば可能です。
しかし、法令の意味を理解し、状況に応じて可否を判断できなければ、身についたとは言えません。
単純な用語の暗記だけでなく、法令の意味を理解する難しさが、試験の難易度を上げています。
液体引火物に生じるトラブルを防ぐには、法令の理解や遵守が必要不可欠です。
暗記だけでなく応用が求められるのは、より実践を意識した試験とも言えます。
物理・化学の基礎知識がないと理解しづらい計算問題
危険物乙4には「基礎的な物理学および基礎的な化学」の科目があり、引火性液体の扱いを物理・科学の視点で身に付けます。
危険物乙4で扱う引火性液体は、扱う環境により化学変化や物理変化を起こします。
たとえば、木炭を燃やせば灰になり、二酸化炭素へと変化する物質です。
高濃度の二酸化炭素を吸い込むと、中毒から頭痛や意識障害が生じ、死に至る危険も生じます。
火災をはじめ、引火性液体に起因するトラブルを避けるためには、化学や物理の観点から安全な環境の提供が必要です。
しかし、物理や化学は日常で触れる機会が少なく、基礎からの学習には根気を要します。
特に文系の人は、理系の分野に苦手意識を持つことも多く、初期に断念するケースも少なくありません。
講座などを利用し、かみ砕いた解説で心理的なハードルを下げ、学習しやすい環境づくりが重要です。
似た内容の選択肢で混乱しやすい出題形式
危険物乙4の資格試験は、五肢択一のマークシート方式です。
3項目の問題に回答し、すべてで60％以上の正答率が合格ラインとなります。
| 危険物に関する法令 | 15問 |
| 基礎的な物理学および基礎的な化学 | 10問 |
| 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法 | 10問 |
記述式に比べ、マークシート方式は選択肢が用意されるため、正答率を上げやすいイメージがあります。
しかし、マークシート方式は問題の正しい解読、類似する選択肢に迷わない力が必要となり、学習の深みが試されます。
熟知した問題は簡単に回答を選べても、苦手な問題は選択肢の類似性に悩み、回答に迷いやすいです。
また、問題数が10〜15問であることも、危険物乙4の難易度を高めています。
問題数10〜15問は一見少なく見えますが、逆に言えば落とせる問題の少なさを意味します。
たとえば、「危険物に関する法令」は15問中9問の正解で合格となりますが、反対に6問落とせば合格できません。
正答率アップには誠実な知識の積み重ねが必要となり、試験の難易度に直結しています。
試験では見たことがない問題が出る
過去問にない「見たことがない問題」が出題されるのも、危険物乙４の難しさです。
受験対策には、過去問を踏まえた出題傾向を把握し、テキストで重点的な学習が必要です。
危険物乙4は前例がない問題も出題されるため、広範囲にわたる知識の取得が求められます。
過去問をベースにした出題は、学びの範囲を狭めることになり、見たことがない問題の出題は必要なことです。
一方で、見たことがない問題は回答しにくく、受験者に「試験が難しくなった」と印象づけるものでもあります。
しかし、見たことがある問題に確実に回答できれば、試験合格は十分に可能です。
過去問やテキストを参考に、出題傾向が高い問題の学習に取り組み、正答率アップを狙いましょう。
そもそも危険物乙4とは？
危険物乙4は危険物取扱者資格のひとつであり、ガソリン・アルコール類・灯油などの扱いに必要な資格です。
危険物は、引火性物質・爆発性物質・放射性物質など幅広い種類が存在し、安全に扱うための方法も異なります。
危険物取扱者は、甲種・乙種・丙種の3種類を定め、各分野の専門知識を有する人材を認定します。
危険物乙4を含む乙種は6種類です。
| 第1類（酸化性固体） | 不燃性の物質他の物質を酸化させ、可燃物との混合により分解・爆発の危険がある |
| 第2類（可燃性固体） | 火災により着火しやすい。 40度以下の低温でも引火しやすい物質 |
| 第3類（自然発火性物質および禁水性物質） | 空気に触れ発火する可能性がある水との接触による発火、可燃性ガスを放つ危険性がある |
| 第4類（引火性液体） | 引火性があり、蒸気の発生や爆発の恐れがある |
| 第5類（事故反応性物質） | 比較的低温度でも加熱・分解の事故反応を起こす 爆発・多量の熱を発生させる |
| 第6類（酸化性液体） | 物質は不燃性 他の物質を強く酸化させる 他の可燃物との混在により燃焼を促進させる |
さらに、危険物乙4に登場する危険物には、以下4項目の特徴があります。
- 引火性の液体であること
- 流動性の高さ
- 発火点が650度以下であること
- 液体の比重は1より小さい物品が多数
乙種は受験資格に制限がなく、門戸の広さから受験者数が多い傾向にあります。特に危険物乙4は、ガソリンスタンドや石油会社で勤務が可能となり、汎用性の高さが人気です。
危険物乙4で一発合格するためには？
危険物乙4は難易度が高い資格ですが、学習計画を立てて学べば一発合格も十分に可能です。
一発合格には、以下3項目の取り組みを強化する必要があります。
- 試験範囲を明確にして学習の全体像を最初に把握する
- 物理・化学の基礎知識を先に固めて応用問題への対応力を強化する
- 模擬試験で本番を想定した時間配分と緊張感対策を行う
ここでは、上記3項目について詳しく掘り下げます。
試験範囲を明確にして学習の全体像を最初に把握する
危険物乙4の勉強は、試験範囲の全体像を知ることから始めましょう。
危険物乙4試験は物理・化学の領域にあり、新しい分野への挑戦になる人も多いです。
新しい分野の学習は、やみくもにテキストをめくっても効果は薄く、苦手意識だけが募ります。
最初は簡単なテキストを用い、資格勉強の全体像をつかむことが大切です。
簡単な問題に触れるうちに、勉強範囲が明瞭になり、難解な問題にもチャレンジできるようになります。
資格勉強のよくある失敗は、難解なテキストを選んでしまうことです。
図やイラストを用いるなど、易しい解説があるものから始めましょう。
物理・化学の基礎知識を先に固めて応用問題への対応力を強化する
危険物乙4の試験勉強は、物理・化学の基礎知識を先に固め、応用につなげましょう。
危険物乙4の試験内容は物理・化学の領域となるため、基礎知識は必要不可欠です。
基礎を学ばないまま応用を学習しても、学習時間に応じた効果は得られません。
テキストや過去問の暗記は、ニュアンスを変えた問題への対応が難しく、応用力には結びつかない可能性があります。
まずは暗記ではなく、物理・化学の基礎知識に着手しましょう。
危険物乙4に必要な学習レベルは、中学や高校で履修する内容に通じ、さほど難易度は高くありません。
基礎知識を身に付ければ、応用力も自然と身につきます。
模擬試験で本番を想定した時間配分と緊張感対策を行う
危険物乙4の合格をより確かなものにするには、模擬試験の活用もおすすめです。
危険物乙4の試験時間は2時間と定められ、時間内で35問に回答しなければなりません。
問題に優先順位をつけ、得意分野から回答し、後から苦手分野に取り組む工夫が必要です。
危険物乙4は計算問題の出題もあり、計算に手間取ると無駄に回答時間を消費し、すぐに制限時間を過ぎてしまいます。
35問の出題から得意分野を見抜き、難解な問題は後に回すなど、優先順位をつけて取り組みましょう。
模試回答の優先順位をつける練習になり、試験の場に慣れる経験にもなります。
特に試験への不安が強い人は、積極的な活用をおすすめします。
危険物乙4に受かる気がしない場合の対策3選
危険物乙4のテキストを読み込むうちに、難解さから壁にぶつかり、合格への不安がこみ上げることもあります。
学習効果には波があり、停滞期には焦りを募らせ、悩みを深めることも少なくありません。
合格に自信が持てない時期は、3つの対策を実践しましょう。
- 過去問を解く
- スキマ時間を活用した効率的に勉強する
- 独学が難しい場合は通信講座や対策セミナーの活用を検討
不安に飲み込まれず、試験対策を強化することが合格への近道です。
上述した3つの対策について、わかりやすく解説します。
過去問を解く
危険物乙4の試験勉強は、過去問を繰り返し解くことが基本です。
過去問を繰り返すうちに出題傾向がつかめ、得意分野や苦手分野も把握でき、試験に向けてすべきことが見えます。
不安なときは過去問に向き合い、解けない問題や苦手な分野を見つけましょう。
「できない」問題を「できる」に変える努力は、試験への不安を払拭するカギになります。
資格試験に挑む人は、誰しも不安を抱えています。
こみ上げる揺らぎに勝つには、「自分はこれだけ勉強した」「こんなに頑張った」という確かな手応えのみです。
不安なときほど着実に、目の前にある課題に取り組む姿勢を大切にしましょう。
スキマ時間を活用した効率的に勉強する
危険物乙4の勉強時間を確保しにくい時期は、スキマ時間を活用しましょう。
スキマ時間の活用とは、通勤中や仕事の昼休みなど、日常の空き時間を勉強にあてる方法です。
スキマ時間の勉強が身につくと、単時間で効率良く学べ、学習時間も増やせます。
しかし、職場での学習に抵抗がある人、移動中は集中できない人もいるでしょう。
そのような方には、オンライン学習サービス「スタディング」をおすすめします。
スタディングでは、スマートフォンを使用した「スマホ学習」を提案し、スキマ時間の学習を後押ししています。
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独学が難しい場合は通信講座や対策セミナーの活用を検討
危険物乙4は物理・化学の基礎知識に加え、専門用語の習得も必要になります。
特に物理・化学の基礎知識がない人は、新しい分野での学習となり、独学の学びに限界を感じることがあるでしょう。
また、独学に加えて学習の機会を得られれば、より効率の良い学習も可能です。
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業種別に見る！危険物乙4取得後のキャリアアップ事例と活用法
国家資格である危険物乙4は、取得できればキャリアアップにも活用できます。
特に以下の3業種でのキャリアアップ、転職には、資格取得が有利に働くでしょう。
- 製造業での活用
- ガソリンスタンド・石油関連での活用
- 物流・運送業界での活用
上記の3つの活用術を分かりやすく解説します。
製造業での活用
総合化学メーカーや電子材料メーカーなど、危険物乙4はさまざまな場所で用いられ、専門性を持った人材が求められています。
引火性液体を使用する精油所では、安全面を重視した生産や保管が必要です。
経由やガソリンが正しく扱われ、爆発や引火の危険がないよう、専門家の視点で監視を行います。
また、法令の遵守を徹底し、正しい運営に導くことも、危険物乙4の重要な仕事です。
工場は危険物の取り扱いも多いため、条件が合えば危険物乙4の資格は有利に働くでしょう。
就職や転職をはじめ、社内でのキャリアアップを目指す場合も、危険物乙4は役立ちます。
ガソリンスタンド・石油関連での活用
危険物乙4の資格は、ガソリンスタンドをはじめガソリンを扱うすべての場所で役立ちます。
引火性液体となるガソリンの扱いには、危険物乙4所持者の立ち合いが必要不可欠となります。
ガソリンスタンドもガソリンや灯油・経由を扱うため、必ず危険物乙4所持者が常駐し、給油の安全を見守っています。
セルフサービスのスタンドも変わらず、危険物乙4所持者がいなければ、一般客の給油もできません。
このため、ガソリンスタンドでは危険物乙4の資格が重宝され、資格所持者は高い時給で勤務が可能です。
物流・運送業界での活用
運搬業界でも、危険物乙4の資格は活躍しています。
燃料を運搬するタンクローリーは、普通自動車免許のみで運転が可能ですが、運搬物により危険物乙4の資格が必要です。
現代は運送業の人手不足が叫ばれており、特に燃料を運搬するタンクローリーの運転手は重要視されます。
資格保持者は専門職として扱われ、安定した報酬が期待でき、年収アップも目指せます。
運送業は今後も伸びが期待できることから、危険物乙4所持者となれば、いざというときの転職に役立ちます。
危険物取扱者 乙4が必要な職種は？
危険物取扱者乙4種を必要とする職場は、ガソリンスタンドや石油会社の倉庫、石油運搬企業などが挙げられます。これらの求人欄を見ると、その多くが「乙4種歓迎」また…
危険物取扱者乙4種を必要とする職場は、ガソリンスタンドや石油…
まとめ
危険物乙4の資格は活躍の場が広く、他の乙種と比較して受験者数は多い傾向にあります。
合格率は30〜40％を推移していますが、近年は30％前半と低下し、「試験が難しくなった」との声も聞かれました。
しかし、令和元年より連続で38％台を記録し、令和3年も36％と合格率は高い水準です。
このため、需要と供給のバランス調整を目的に、難易度が上がった可能性も否定できません。
「試験内容が難しくなった」という声を意識するより、どのような条件でも合格できるよう、真摯な学習が求められます。
危険物乙4は物理・化学の分野に触れるため、特に文系の人は学習に苦労する傾向が強いです。
正しい方法で努力すれば、危険物乙4は一発合格も可能な資格です。
独学で躓いたときは、通信講座やセミナーを取り入れ、学習継続を目指しましょう。
効率良く学習を進めるならスタディングの「危険物取扱者 乙種4類合格コース」の活用もおすすめです。
パソコン・タブレット・スマホを使ったスキマ時間の勉強で、危険物乙4試験の一発合格が狙えます。
※本記事は2025年4月時点の情報を基に執筆しております